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第百四十七話 シルビアさんからの手紙

 王都からマカレーナへ帰ってきて早三ヶ月が過ぎた。

 あれからアーテルシアは現れることがなく、魔物の残党のようなものが時々領地内に少数現れるくらいだ。


 毎朝の日課である訓練ではヴェロニカが徐々に力を付け、ローサさんの指導の(もと)で基本技能が身についてきた。

 彼女は元々武術に長けていたため吸収が早く、速度はローサさんや私には及ばないものの動きがとても綺麗で伸びしろはまだまだありそうだ。

 もっとも私は前々世の能力と女神様パワーで強化されているわけだが、私もローサさんの指導でさらに技を磨き上げた。


 魔法については、サリ様が街にバリアを掛けた翌日に土と火の属性を付与してくれた。

 魔力量が十分すぎるほど上がってしまったので全属性が使える資格があるとのこと。

 とうとう全属性の魔法が使えるようになった。

 全属性が使えたのはエリカさんだけだったので彼女はちょっと悔しそうだったが、私もその分一緒に魔法の勉強に励んだ。

 勉強が終わった後は当然のようにエリカさんの部屋でエッチなことをするのが習慣になっていた。

 エリカさんの性欲は留まることを知らない。

 全身舐められていない身体の箇所が無いくらい、とにかく私よりエッチなのだ。

 あんなところまで舐められて、意外に気持ちいいという感覚よりくすぐったいだけだった。


 私の部屋で夜のエッチはジュリアさんが中心で、時々エルミラさんやビビアナとイチャイチャした。

 パティやヴェロニカ、ルナちゃんはそれを知って知らぬ振りをしているのか、そういった話はツッコんでこない。

 そのわけはこうだと思う。


 ヴェロニカは常に身体を動かして発散しているせいか性欲はあまり強くないように見えるが、二人で体術訓練をしていると無意識に巨乳が当たったりで、知らずにスキンシップにはなっていた。

 私から何も言わないと例え◯ふぱ◯状態になっても気づかないようなので、黙ってそれを楽しんでいる。


 ルナちゃんは、自分の仕事を奪われまいと結局いつものように着替えの手伝いをしてくれ、私の股間を見ても淡々としている。

 王宮の時のようにお風呂で洗ってくれることは無くなったので、かぼちゃぱんつ姿も見ることが無くなった。

 健康的な太股や胸の谷間が見られなくなり、寂しい。

 サリ様の前で彼女から微妙な結婚の誓いの発言があったけれど、あれはノリだったのか、何となく聞きづらくて進展が無い。


 パティは将来性欲が強くなりそうな気がする。

 彼女はそろそろ十四歳に近づいており、着替えや一緒に寝るということはまだ恥ずかしがっているが、人前で腕を組んだりするスキンシップは積極的だ。

 夕食が終わった後に彼女の部屋で少し話をしたり、それが無くてもお休みのキスはかかせない。

 彼女は今のところそれで満足しているのだろう。


 マルセリナ様は大聖堂で元のように暮らし、カタリーナ様も自分のお屋敷へ帰っていった。

 大聖堂へは時々マルセリナ様に会いに行き、光属性の防御系魔法を勉強している。

 二ヶ月前にサリ様と会ってから、私に対して以前にも増してニコニコと上機嫌な態度で接してくれているのは嬉しい。

 エッチな展開はいつぞやの性教育の時以来何も無いが、そういうことが無くても銀髪でオッドアイ、真っ白な肌の神秘的な容姿を見ているだけで満足してしまうほどだ。


 パティとカタリーナ様は週に二、三度ほどお互いに屋敷を行き交いしてるほど仲良しにやっている。

 その間に私も一度だけバルラモン家のお屋敷にお邪魔して、お茶をご馳走になった。

 やはりガルシア家よりずっと大きな屋敷で、こっちへ住まわせてもらおうなどとちょっと思ったりしたのは、パティに秘密である。

 カタリーナ様はガルシア家で寝泊まりしている期間に、パティと服を交換し合ったりしているうちにミニスカがマイブームになったようで、ブリーツスカートを着用しているのを見る機会が多くなった。

 美しい太股を露わにしている女の子を目の前で見られるのは、若さの特権だよな。

 おっさんになったら遠くでしか眺められないのだよ。

 パティがいるのでなかなか凝視することは叶わなかったが、一回だけ何かを落としてしゃがんだときに白いぱんつを拝むことが出来たので、頭の中でラッキー!と叫んでしまったほどだ。


 アマリアさんと侯爵閣下へのマッサージもまた定期的にやるようになり、アマリアさんの巨乳と美尻で興奮し、侯爵閣下のもっこりパンツでげんなりするのが毎回の事だが、お小遣いがもらえるので頑張ってやっている。


---


 街での活動。

 ラウテンバッハへはちょくちょく通い、図面だけでは足りないところを説明したりで飛行機の外装はかなり出来上がってきた。

 本当に地球のビジネスジェット機そっくりで、地球の物がこっちへやってきたような懐かしい気分になった。

 それにしても、オイゲンさんとテオドールさんは手探り状態でよくぞここまで作り上げられたことに、彼らの技術力の高さに感心した。

 実質、動力が無いグライダーを作ってもらっているので大きさ的に二十億円クラスの地球のビジネスジェット機ほど高価にはならないが、もう聖貨一枚分は使ってしまったそうなので(こころ)(もと)ない。

 やはりもう二枚分は必要かも知れないので、女王に頭を下げるしかないのかなあ。

 機体は、主翼や尾翼の操舵も出来るようにしてもらっているので、そこら辺がかなり難しいそうでお金と時間がかかってしまう。

 魔力注入で室内灯がつくようになり、新幹線並みの気密構造にして換気もちゃんと出来るようにしてもらっている。

 このペースだとあと三ヶ月後に完成できるかもわからないが、だんだん形が見えてくることにワクワクしてきた。


 受付のアンネマリーさんとも仲良くさせてもらって、誰もいない時を見計らってショールームでお話をしたりする。

 人妻と普通に話していると安心するのは私だけだろうか。


---


 アリアドナサルダでは私がデザインした下着の入荷が始まり、マカレーナのお店でも売り上げがとても好調のようだ。

 店長は大絶賛していたが、アドリアナサルタのマーケティングの上手さもあるだろう。

 やはり女性用のボクサーパンツが若年層によく売れているそうで、『見られても大丈夫』というキャッチフレーズの効果もあったらしい。

 ボクサーパンツだからって見られても良いものではないと思うが…。

 そういえばビビアナが履いているのを一度見た。

 なんと猫しっぽが出せる穴があり、そういうかゆいところまで考えられているのだな。

 たぶん耳族が多い街にまでセールスに行ったに違いない。

 ボクサーパンツは安価なのでスサナさんあたりも履いていそうだが、私が下着をデザインしていることは、二人には黙っている。

 エルミラさんはあれで口が軽いので、そのうちバレてしまうだろう。


 ふんどしショーツや女性用トランクスは締め付けがあまりないのでこちらもよく売れている。

 デザイン料は王都へ行ったときにまとめてもらうことにした。

 デザイン画もいくつか描いて店長に見せるだけして、レイナちゃんのお母さんにまた渡すつもりだ。

 それなのに店長のミランダさんはまた私を店長室へ連れ込み、とうとうぱんつまで脱いでヌードを披露してしまった。

 せっかくなので観賞させてもらったが、エッチなポーズで興奮してその時はインスピレーションが湧くどころではなかった。

 でも寝転んで妄想していると、フッとデザインが思いうかぶことがあるので全く効果が無いわけではないから、ミランダさんの頑張りを賞賛したい。


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 その三ヶ月間は何事も無かったわけだが、とうとう衝撃を受ける出来事が発覚した。

 昼食が済んで、自室で寝転び休憩をしている時だった。


 コンコン「失礼します。」


 入ってきたのはルナちゃんだった。

 お昼に部屋へ来るのは珍しいが、何だろう。


「マヤ様、王都からお手紙が届いたんですが、シルビア様からなんです。

 王都で何かあれば女王陛下から来るでしょうし、一体なんでしょうね。」


 ルナちゃんはそう言いながら、不思議そうな顔をして手紙を手渡してくれた。


「うーん、シルビアさんかあ。ありがとうルナちゃん。」


 彼女は一礼をして部屋と退出して行った。

 ルナちゃんが言うように女王陛下からではなく執事であるシルビアさんから手紙があるというのは不自然だし、もしや女王に何かあったのだろうかと勘ぐってしまう。

 きちんとエスカランテ家の紋章でロウの封印がしてある封書だから大事なことだと察するが、まず開けて読んでみないことには…。

 なになに…


『拝啓 マヤ様がマドリガルタを発ち三ヶ月が過ぎましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 女王陛下も私も元気でやっております。

 実はとても嬉しいことがあり、マヤ様にお知らせをしたくてお手紙を書いた次第でございます。

 私、お腹に子供が出来ました。』


 は…… はあ? シルビアさんが妊娠? 誰の子? まさか…


『勿論、あの時のマヤ様との子です。

 もうこの歳では結婚することもなく、まして子供が出来るなんて思っておりませんでした。

 こんな幸せなことがあるのでしょうか。

 実際に妊娠がわかったのはあれから四十日くらい経ってからのことで、今から一ヶ月半前のことです。

 女王陛下にはすぐお知らせし、喜んで下さいました。』


 私は血の気がサーッと引いていくのがわかった。

 あの時避妊の魔法をかけたはずだが…

 百パーセント効果があるというわけではないのか?

 そうでなければ女王がこっそり解除の魔法を掛けたとしか思えない。

 確かに日数では私との子で間違いないし、シルビアさんは他の男と軽々しく遊ぶような女性ではない。

 シルビアさん自身が喜んでいるのだから、中絶をして欲しいなんて絶対に言えない。

 そんなことをしたら彼女の心に大きな傷が出来るだろう。


『マヤ様と私の間に出来た子だと知っているのは女王陛下だけです。

 女王陛下と相談し、公式的には魔物に倒され亡くなった戦士との間に出来た子にしようと思っております。

 この子が分別できる歳になったらマヤ様が父親だと教えるつもりです。

 それまでマヤ様にお辛い思いをさせてしまいますが、マヤ様の将来のためにもどうか(こら)えて下さい。

 お忙しいと存じますが、マヤ様にお会いしとうございます。

 愛するマヤ様、どうかいつもお元気で。

                敬具

       シルビア・エスカランテ』


 …………。

 涙が止まらない。

 私に子供が出来た…。

 地球では叶わなかった初めての子…。

 なのに、喋るようになってからは「お父さんだよ」と言えないのか…。

 情欲に負けて行為に及んだ結果だから私の責任だ。

 だがシルビアさんは大喜びだから、二人で祝ってあげないといけない。

 パティやガルシア侯爵まわりには裏切りの行為だから、このことは墓場まで持って行かないといけないのは非常につらい。


 誰にも言えない…。

 強いて言えばルナちゃんだけか。

 もし言うとしたら、シルビアさんと女王に会ってここへ帰った後にどうするかだろう。

 とにかくマドリガルタへ行かねば男ではない。

 明日の朝にでも一人で発ち、二、三日滞在して戻ろうか。

 余裕を持って一週間か。

 一人で飛んでいけば早朝に出発して暗くなるころには着く。

 なるべくスピードが出せるようにゴーグルや、呼吸しやすいように風魔法も付けよう。

 シルビアさんを介して女王から何かお呼びがかかったと理由をつけるか、アリアドナサルダのデザイン料をもらいにいくという理由も良かろう。

 あまり荷物を持っていけないが、早速今日の午後は出かける準備だ。

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