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第百四十三話 おっぱいプリンの行く末は

 屋敷へ帰り、アーテルシアのことを侯爵に話さないといけないがまだ帰宅していない。

 午後はスサナさんとエルミラさんは屋敷内の仕事があるので、ヴェロニカは一人で型の練習をしていたらしい。

 そういうところは一途で真面目な彼女だ。


 不真面目な私は自室でごろ寝をしていたら、パティがやってきた。


「マヤ様、失礼します。実はお願いがあるのですが…。」


「なんだい、パティ。」


「プニュとモニョのことをお父様とお母様にお話をしなくてはいけないのですが、マヤ様にも着いて来て欲しいのです。

 私一人では断られそうで不安なんです。」


 プニュとモニョ、ペットとして飼ってるパティに任せっきりにしてしまったから名前を忘れていたけれど、おっぱいプリンのことだ。

 私が捕まえてきた張本人だから責任を持たねばならない。


「そうだね。じゃあ今からお母様のところへ行こうか。」


「はい。よろしくお願いします…。」


 パティはバスケットを手に持っているが、その中におっぱいプリンが入ってる。

 私が捕まえたときは王宮の部屋にあったお茶缶に入れていたんだけれど、よく窒息しなかったなと思う。


---


 アマリアさんの私室。

 アマリアさんはデスクに文字の表を広げ、カルロス君に勉強をさせていた。

 まだ三歳児なのに英才教育をやってるなあと思ったが、才女のパティは二歳から文字の勉強を始めたらしい。

 私は二歳の記憶など当然無く、三歳の記憶が僅かに、四歳でおぼろげに残っているくらいだから脳の作りが違うのかねえ。


「二人揃って、どうしたの?」


「あの…お母様! 実は王都へ行ってから、ペットを飼ってるんです…。」


「なあに? そのバスケットの中に入ってるの?

 猫ではなさそうね。」


「この子たちなんです…。」


 パティがパスケットの蓋をそろっと開けると、おっぱいプリンが二匹ともぴょこんっと飛び出て、床でぷよぷよと動いている。


「きゃあ! なんですか!? 魔物?」


「キャハハハハハハッ!! おっぱいおっぱい!」


 アマリアさんはびっくりして仰け反り、カルロス君は大はしゃぎである。

 当然このおっぱいプリンたちは、アマリアさんのおっぱいより小さい。


「な、なんですの? これは…」


「すみません。

 これは私が王都の近くで魔物を退治していたときに拾ってきたんです。

 邪気は無いですし、肉は食べなくて野菜しか食べないようなので危険はないと判断しました。

 エリカさんも大丈夫だろうと言ってます。」


「マヤ様がそうおっしゃるならば良いですが…

 それにしても気味が悪いわ…

 もし悪さをするようなことがあったら、魔法で退治しますからね。」


「はい…お母様…」


 どうもアマリアさんはお気に召さないようだが、パティには申し訳ないが一目見て気に入る方が変わっていると思うよ。

 おっぱいプリンたちは()んで()ねたり先程より動きが活発になっていた。


「このおっぱい、おねえちゃんみたいヒャハハハハッ

 ママよりちいさいねキャハハハハッ」


「こ、こらっ カルロスったらあっ!」


 ほほぅ パティのおっぱいはこのくらいなのか。

 それで親近感があるのかもしれないな。うんうん

 おっぱいプリンたちはさらに動きが激しくなった。

 これはまさか…まずい!


 ポヨヨヨヨォォォォン!!


 おっぱいプリンの二匹が、アマリアさんのおっぱいの上に乗っかった!

 アマリアさんのドレスはいつものように胸元が大きくカットされていて溢れそうになっていた。


「キャァァァァァァ!!」


「ああああ!! プニョモニョ! お母様から離れなさい!!」


 二匹は何だか嬉しそうにアマリアさんのおっぱいの上でポヨポヨ動いているが…


「これってアマリア様の胸を仲間と思っているんじゃないですか?」


「冗談言ってないで、早く取って下さいまし!」


 私は急いでおっぱいプリンを掴んで取ろうとしたが、ぴょんと跳ねて逃げてしまった。

 その勢いでアマリアさんのおっぱいをむんずと掴んでしまった。


「ま、マヤ様ったら… 子供たちがいますのに…ポッ」


「あやややや! すみません!」


 アマリアさん、こんな時に顔を赤くしなくても…


「マヤ様何してるんですかーーーーーーー!!」


「これは事故だから仕方ないよっ」


「マヤ様の運動能力なら避けられるはずですよ!」


「うっ それは…」


 そうしているうちにおっぱいプリンたちは自分からバスケットの中に入ってしまった。

 お茶缶にも自分から入っていったので、狭いところが好きな習性なんだろうか。


「もう、飼ってもいいですけれど、あなたの部屋か庭だけにして下さい。

 あとはお父様にお聞きなさい。」


「ありがとうございます! お母様!」


 ふう、やれやれ。

 とりあえず難関と思われたアマリアさんの許可はもらえたか…

 おっぱいプリンの動きが変だったから、もしアマリアさんに乳液をブシューってかけていたら魔法で始末されていたかも知れない。

 良かった良かった。


---


 ガルシア侯爵閣下の執務室。

 アマリアさんの部屋でドタバタやっているうちにフェルナンドさんと帰宅していたようだ。

 前日のように、デスクの前で話をすることにする。

 侯爵はその座席に座っており、フェルナンドさんはその後ろでニコニコと立っている。


「二人揃ってどうしたんだい?

 結婚の報告ならまだ早いぞ。ハッハッハッ!

 ハッ まさか子供が出来たんじゃなかろうね!?」


「馬鹿なことを言わないで下さい、お父様!

 今日はちょっとお願いしに来たんです。

 お母様からは許可を得たんですが…」


「ああ、アマリアが許可したのならばいいんじゃないか?」


「いえいえお父様。見ていないのにお母様を信用しすぎますわ!」


「うーん、じゃあ何だい?」


「この子たちです。」


 アマリアさんの時と同じように、パティが持っていたバスケットの蓋を開けたらぴょこぴょこんと跳ねて床でふにょふにょと動いている。


「おおおお!!?? 何だいこれは??」


「ほほぉ。魔物ですかね、旦那様。」


 ビックリしていた侯爵閣下だが、意外にフェルナンドさんは落ち着いて見ている。

 お年柄、経験豊富だからなのか。


「これ、王都の近くの森で私が捕まえてきたんです。

 邪気は無いし草食で人は襲ったりしなさそうなので、パティが気に入って連れてきたんですよ。」


「だが魔物は魔物だぞ。

 この世界の生物ではない物を育てていくというのは良くないと思うがね。」


「閣下のおっしゃることはもっともです。

 実はこいつらを見つけた森で、この種と同じ魔物と同型の大きなもの、恐らく成体をたくさん退治しました。

 たくさん寄ってきた時、最初は襲われたかと思いましたが後で考えてみるとじゃれていたようにも思いましたし、可哀想なことをしてしまいました。

 残ったのは幼体と思われるこの二匹だけでした。」


「難しい問題だな…。」


 侯爵閣下は悩み顔だ。

 あっさり許可が下りるかと思ったが、そうはならなかった。

 外来種だから処分してしまうのも正論だ。

 領主という立場的にも魔物に対して安易な考えは出来ない。

 感情だけで決めるのは本来の筋では無い。


「お父様! お願いします!

 この子たち、とてもいい子なんですよ!

 王宮でも、旅の馬車でもずっと大人しかったんです。

 お野菜しか食べませんから人に危害を加えることはありません。」


 パティは必死だ。

 王宮の部屋で可愛がってきて、それが処分されてしまうのであれば親子関係にも亀裂が生じる。

 何よりパティの心が大きく傷ついてしまう。


「旦那様。パトリシア様とマヤ様が責任持って管理するということであれば良いではないでしょうか。

 害が無いのであれば、どこかの世界では犬や猫と同じような生き物なのかも知れません。

 この魔物がどう繁殖するのかわかりませんが、この幼体二匹だけのようですし、当面は大丈夫と私は考えます。」


 さすがフェルナンドさん。

 憶測の範囲ではあるが、現状では最も無難な提案だ。


「うーん、わかった。

 それが幼体ということはもっと大きくなるはずだが、成体になるまでどれだけ時間がかかるのかもわからない。

 捕まえてからどれくらい経つのかね?」


「もうそろそろ一ヶ月になります。大きさはその時から全く変わっていません。」


「ふむ。犬や猫、鳥でも子供は一ヶ月でずいぶん大きくなるからなあ。

 成体になるまで時間がかかるかも知れない。

 まあ、一ヶ月で何も起きていないというのならば危険は無かろう。

 それではこうしよう。

 屋敷の外へは極力出さないこと。

 君たちが不在の時は、誰か他に面倒を見てくれる者を見つけること。

 それでいいかね?」


「わかりました、お父様。ありがとうございます!」

「ありがとうございます。」


 ふえー、何とか上手くまとまった。

 不安いっぱいだったパティの表情は、すっかり笑顔に変わっていた。

 だが安心するのはまだ早い。

 私たちが不在の時は、ジュリアさんかビビアナ、あとはスサナさんの中の誰かに頼むしかない。

 気持ち悪がらずに気に入ってくれれば良いのだけれど…。

 それはさておき、アーテルシアについて侯爵に話さなければいけない。


「それで閣下、もう一つお話がありましてそれが本題です。」


「ほう、何かな。」


 私は邪神アーテルシアが現れた経緯を話した。

 アーテルシアは遊びで魔物を呼び寄せて被害を出させていること、女神サリ様、ヴェロニカ王女、ラミレス侯も承知しており対策を始めていること、そして私を狙いに来る可能性が高いことが今の一番の懸念である。

 もしかしたらマカレーナに大きな被害があるかもしれないことも話した。


「ふーむ、まず君はどうしたいのか聞きたいな。」


「街に被害が出るのであれば、私は街から出てどこか人気(ひとけ)が無い場所でキャンプでもして暮らすことを考えています。」


「おいちょっと待ってくれ。

 それではパティや他のみんなのことはどうするんだ?

 いつ倒せるかもわからない邪神のために、君は我が家と縁を切るつもりかね。

 君はもう自分だけのものじゃないんだよ。」


「勿論、時々は食料調達などで戻ってきますよ。」


「うーん…」


 侯爵は再び悩み顔。

 すまんねえ、難題ばかりで。

 私の隣でパティが震えており、何か言いたげだ。


「マヤ様! そんなことをおっしゃるなんてびっくりしました。

 時々しか会えなくなるなんて、私…耐えられません!

 もっと他の方法を考えましょう!」


「アーテルシアが本気を出せば、街ごと吹き飛んで無くなるかも知れないんだよ。

 とてもじゃないが私でも守り切れない。」


 正直、アーテルシアの気分次第だからあいつが何をどうするのか分からない。

 ただ私を倒すのならばとっくにやっていることだから、私に対して嫌がらせをして面白がるのが目的であれば街ごと私を消し飛ばすこともないだろう。

 もし街に現れたら外へおびき寄せるしかないのか…。

 街は魔素が薄いからデモンズゲートを開くことが出来ず、外からしかやってこない。

 そういったことも話した。


「今、マヤ君は(せい)(きゅう)なことをしなくてもいい。

 ヴェロニカ王女とも話す必要があるから、この件は保留だ。

 食事が終わった後でも、エリカ殿も交えて皆と話そう。」


「わかりました。」


 こうして、アーテルシア対策会議が今晩のうちに行われることになった。


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