第百十五話 六人と一頭の旅の始まり
2023.11.22 微修正を行いました。
王宮の門。
ドミンゲス門番長に挨拶をし、王宮を出て馬車はマドリガルタの街中を走る。
前の席は私を真ん中に左がパティ、右側にルナちゃんが座っており、二人とも私の腕を組んでいる。
両手に花というより、犯人護送の気分。
「ちょっとルナさん。
あなたは従者としての立場をわきまえたほうがよろしくてよ」
「あら、パトリシア様。
私はマヤ様を朝から晩まで管理する義務があるんです。
パトリシア様はどうぞ晩から朝までご一緒されたらいかがでしょうか?」
「な、な…… 晩から朝まで…… きゃっ」
ルナちゃんは年上の余裕なのか、一枚上手なのか知らんが、とんでもないことを十三歳の少女に言うもんじゃないぞ。
パティは真に受けてしまい、両手で頬を押さえて顔を赤くしきゅんきゅんと照れている。
後ろの席で座っているエリカさんはそれを見てクックックと笑っているが、いつものように脚を組んでいる太股の間からぱんつが丸見えだ。
あの黒いぱんつ、昨日アドリアナサルタでもらった、私がデザインしたものか?
クロッチ部分も透けているから、肝心なところが見えてるような見えてないような。
ヴェロニカとエルミラさんは私たちをガン無視して、二人で楽しく話している。
二人とも良い友たち同士になれて良かった。
マカレーナへ帰ったらスサナさんが焼き餅を焼かないだろうか。
どうか三人で仲良くやって欲しい。
さて、マドリガルタの検問を抜け、西への街道をセルギウスはスピードを上げ、馬車を引いて突っ走る。
馬車とは思えないような速度で走っているからヴェロニカとルナちゃんはびっくりし、特にルナちゃんは震えて私の腕にしがみついている。
それでもオイゲンさんたちが作ってくれた高性能サスペンションとショックのおかげで大変乗り心地が良いので、ルナちゃんは徐々に慣れてくれた。
往路とは経由地が違い、領主のラミレス侯爵とセシリアさんに会うため少し遠回りして、セレスの街へ向かっている。
マドリガルタからセレスまでちょうど三百キロ。
一日で着くにはセルギウスはともかく、大荷物になり乗車人数が増えた馬車にはきついので、欲張らず往路の最終日に昼休憩したナバルを目標に進む。
それでも二百キロ近くあるので、一日に五十~六十キロしか進まない普通の馬車と比べたら驚異的なスピードである。
七十キロ進んだ先の、エスカロナという小さな街で昼休憩。
ここまで進んでまだ一度も魔物に出くわさず、魔物らしい魔力も感じない。
ただ出てこないだけかもしれないが、魔女アモールの魔除けの結界がどれほど強力なものか計り知れない。
魔族が魔除けというのもおかしな話だが、魔族や魔獣と、魔物は全く別物と前にも説明したとおりだ。
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食事をする店を適当に見つけて、セルギウスには積み込んだリンゴや人参をたらふく食えるほど準備して店に入る。
小さな街なので庶民的な食堂しか無いのだが、ヴェロニカ王女は前から昼ご飯は兵士らと同じワイルドなメニューの食事をするのが当たり前だったので、問題無いとのことだ。
ヴェロニカは身分を伏せて出かけており、格好も貧乏貴族か、私が着ている服の方が貴族っぽいので付き人ぐらいにしか見えない。
食事をしていた時のセリフもこうだった。
「店主! この肉団子のトマト煮込みは最高に美味いぞ!
ソースがしっかり肉に染みこんでいて、肉汁と酸味のバランスが抜群だ!
なんでこれが王宮のメニューのどこにも無いのだ!
帰ったら作らせよう」
ヴェロニカはたまたまフロアにいた店主らしき人を呼びつけて絶賛する。
テレビがあって一般民衆にまで顔を知られているわけではないから、我が国の王女が庶民向け食堂で、こんな言葉を使って喋っているとは思わないだろう。
王宮なんて言うから店主は不思議な顔をしていたが、褒め言葉なので喜んで礼を言って持ち場へ戻った。
パティも肉団子を夢中になってガツガツ食べており、とても貴族令嬢という食事作法では無い。
帰ったら間違いなくアマリアさんにどやされるだろう。
食事代の精算はみんなヴェロニカが払ってくれた。
六人分で銅貨八枚と安く食べられたのだが……
「この店のメニューはみんな美味かった!
釣りはいらん!
またいつか寄らせてもらうぞ」
と、銀貨一枚を店主に渡した。
店主はまた不思議な顔をして銀貨を受け取り、深々とお辞儀をしていた。
ヴェロニカと最初に出会った時は酷く悪態をついていたが、決闘後に王宮内外での行動をずっと見ていると実にサッパリとした性格で、自分の気持ちに正直なだけかも知れない。
男友達だったら気を遣わないでいられたんだけどなあ。
待てよ、エルミラさんから前に相談されたときに、自分の心が男で、男が好きなのかも知れないとよく分からないことを言っていた。
ヴェロニカが男性っぽくサッパリした性格だからエルミラさんと気が合っていると考えられるが、仲良しなのが性的な方向へ行ってしまわないか心配だ。
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美味しい料理でみんなお腹いっぱいになり過ぎたので、このまま馬車に乗ると乗り物酔いで大変なことになりそう。
だから腹ごなしに、昔の城塞跡が公園になっている場所まで歩いて行った。
セルギウスも後から付いてきている。
この城塞跡は何百年も前のものだろうか。
セルギウスを置いてみんなで丘の上に登ったら眺望がダイナミックで、広大な畑と荒野が広がっており、近くには幅が百メートルほどの川が流れている。
私たちは城塞が展望台のようになっているところで景色を眺めた。
「マヤ様、上から見たらとても雄大ですね。素敵な景色です。
私は生まれた街と王宮の周りしかよく知らないので、こんなの初めてですよ。
マヤ様に巡り会えて、本当に幸運でした」
ルナちゃんがそう言いながら、さりげに私と腕を組んで景色を眺めている。
負けじとパティがもう片方の腕にしがみ付いてきた。
これじゃあ馬車の中と変わらない。
ヴェロニカとエルミラさんは相変わらず仲良し二人組で楽しくやっており、女の子同士のようなスキンシップは無いがイケメン女子同士の友情を育ませている。
エリカさんは一人で景色を長めながら物思いにふけっている様子だ。
彼女ははしゃぐことが多いけれど、基本的にボッチ属性が強いので一人部屋で籠もったり一人で出かけることもよくある。
食事時間も含めてエスカロナには二時間滞在し、腹がこなれたので出発する。
途中、ヒャッハーみたいな声や、ギャース!といった魔物の叫び声のようなものが聞こえたが、セルギウスが勝手に処理してくれているようだ。実に頼もしい。
そしてナバルまで何事も無く到着した。
夕食時になってしまったので早めに宿探しをしなければいけない。
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ナバルも小さな街なので宿屋が限られており、あまり高級な施設はなさそうだ。
庶民向けだが程々綺麗そうな宿を一件見つけたので、そこへ寄ってみる。
「宿を六人分取りたいんですが、部屋はありますか?」
「あぁ…… すみません、お客さん。
もう二人部屋一つしか空いてないんですよ。
何でしたら、この百メートル先にもう一件宿があるんで」
フロントのおっちゃんからそう返答があった。
どうしようか……
「マヤ、私とエルミラはここでいい。
迷って皆が部屋を取り損ねたら埒が無い。
食事もここでする。
明朝の出発は八時で良いか?」
「ああ、それでいいよ」
即断即決だな。
優秀だと思うが、ただエルミラさんと一緒にいたいだけのような気もした。
「エルミラ、初めて私たちは一緒に寝るんだな。
とても嬉しいぞ」
「ええ、今宵は共にいろいろ語りましょう」
あ…… ありゃ黒だな。
一緒にシャワーを浴びるのかな。
ちょっとエッチな想像をしてしまった。
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宿屋のおっちゃんから紹介があった、その百メートル先の宿屋に来た。
「今晩宿を四人分取りたいんですが…ありますか?」
「ええ、ご用意できますよ。
二人部屋が二つになるけれど、いいかい?」
「じゃあそれでお願いします」
フロントのおっちゃんに聞いたらOKなんだけれど、さっきのおっちゃんとこのおっちゃんの顔が良く似ている。
兄弟なのか? 知らんけど。
さて、問題は部屋割りだが……
パティとルナちゃんの言い合いが始まっている。
「さ、パトリシア様。
マヤ様と晩から朝までどうぞ。
私はエリカ様と一緒の部屋で良いですから」
「え…… え…… マヤ様と…… 恥ずかしいですぅ」
ぶりっこかよ。
パティとは王宮の彼女の部屋で、ザクロの林での戦いがあった後、一緒に寝ている。
あの時がとても恥ずかしいことになっていたけれど、また何か期待しているのか。
王宮と違って狭い寝室になるし、余計に恥ずかしかろうに。
「ぇー ルナちゃんもいいけれど、ゎたしゎマヤ君と一緒の部屋がいいなぁぁ」
エリカさんがそう言うように、私が気兼ねなく出来るのは彼女だからなあ。
漏れなくエッチなことが付いてくるのは間違いないが。
「じゃあ私はパトリシア様と一緒の部屋にしますから、マヤ様はエリカ様の一緒の部屋でいいですよ」
「わーい やったぁ!!」
ルナちゃんがそう決めて、エリカさんが大喜びだ。
ルナちゃんとパティは犬猿の仲だと思ったけれど、そうじゃないのか?
二人が仲良くやってくれることに越したことはないが、ちょっと心配だ。
決まったところでルナちゃんたちは部屋へ行く。
セルギウスには馬車を馬車置き場に持って行ってもらい、いったんアスモディアへ帰ってもらう。
エリカさんも一緒に馬車置き場へ付いていって、王宮滞在時に新しく覚えたセキュリティ魔法を馬車に掛けるとのこと。
普段アホなことを言っているけれど、高名な魔法使いと言われるだけあって魔法知識は豊富だ。
四人で宿の夕食を取る。
まずくはなくそこそこな味で皆もそこそこな評価の味だった。
お昼のお店が大当たりのせいもあるだろう。
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エリカさんと部屋へ。エリカさんはウキウキだ。
狭いけれどシャワーもトイレもついている部屋なのはありがたい。
だから彼女はシャワーを浴びた後、タオルも巻かずに全裸のままだった。
履いてるぱんつを観賞する楽しみも無い。
だが私は、ベッドの上で本を読んでいる全裸のエリカさんをチラチラ見てしまう。
夜が更け、あとは寝るだけだが…
「ねぇ~ マ・ヤ・く・ん わかってるでしょぉぉ
久しぶりに男の子といいことしたいなぁ」
「ん? 久しぶりに男の子?」
「え? あ 何でも無いわ。
早速始めましょう うひひ」
やっぱりモニカちゃんとは黒なんだろう。
王宮滞在中は毎日のように女王を相手にしていたから、エリカさんの歳でもピチピチギャルのような瑞々しさを感じる。
女王も年齢に対して若かったが、本当の二十代はおっぱいの張りが違う。
性戯は圧倒的に女王の方が気持ち良かったが、久しぶりのエリカさんはどうか。
行為が始まると身体中を舐めまわされ、舐め技が格段に上手くなっていた。
モニカちゃんとはそういうことをしていたんだな…… むひひ。
今回はエリカさんのしたいようにさせて、私は楽をしてしっぽりと楽しんだ。