第百十一話 ガルベス公爵との会談
ガルベス公爵の屋敷へ来たときの応接間へ再び。
航空会社のCAさんのようにキリリとした若いメイドが、リーナ嬢の昼食部屋からそのまま私のお付きになって、エスプレッソを用意してくれた。
甘い物を食べた後でエスプレッソを飲むと、苦みが心地よい。
しばらくすると、ガルベス公爵が仏頂面でやって来た。
私は立ち上がった。
私の偏見だが、こういうおっさんはエロい体型の美人メイドか執事が付いてくるものとばかり思っていたが公爵一人だけだし、王宮でのパーティーでも近くにお付きが見えなかったのは意外に思っていた。
「公爵、美味しい昼食まで頂いてありがとうございました。」
「うむ。エトワールから優秀な料理人を探して雇っているからな。
まあ掛けたまえ。」
「はい。」
ガルベス公爵がどかっとソファーに掛けてから、私も座る。
「リーナが世話になった。
卿にはすごく懐いている。
さっきも部屋を少し覗いてみたが、ガルシアの娘とも仲が良いようだな。
礼を言うぞ。」
「いえ、とんでもございません。」
覗いたのかよ。どんだけ孫娘のことを気にしているんだ。
「あれはなかなか友達がいなくてな。
本当は学校へやりたいが、私の次男が小さい時も周りは友達のフリをして媚びを売る者ばかりだった。
だから孫にが学校へ通わせず、家庭教師を雇っている。
卿も意味はわかるだろう?」
「はい。大きな力を持っていれば、おこぼれに肖ろうと媚び諂う者が出てくるのは当然でしょう。」
「それで息子は嫌な思いをすることが多くなり、一時はずいぶんひねくれてしまった。
だが唯一心を開いていたのが、今の嫁のミランダだ。
息子は彼女のおかげで立ち直り、今やわしの代わりに東奔西走し、わしはほとんど隠居の身で孫の面倒を見る暇があるということだ。」
「はあ、そうですか…。」
年寄りになると、何かと自分語りがしたくなるからな。
時々聞くに堪えなくなることがあるが、うんうんと聞いてあげるしか無い。
ちなみにガルベス公爵の長男が、亡くなったフェリペ王配。
つまり女王の夫だ。リーナとヴェロニカは従姉妹になる。
何故長男が婿に行って次男がガルベス家の跡継ぎになっているのか、そこらはいろいろとありそうだが、私は知らない。
「モーリ男爵、卿もリーナを嫁にする気はないか?」
リーナと結婚する話をしてくるのは予想していた範囲だが、そこから話を持って来たか。
「彼女は素直で良い子だし、身に余る光栄です。
ですがまだ十歳だし、私と結婚してガルベス家に何か利点があるのでしょうか?」
「王国の勇者が謙遜するな。
卿は自分の価値と力を見誤っている。
王宮ではインファンテの娘らと一緒にいたではないか。
あれが何を意味しているのかわかるか?」
「それは…。」
「あれほど力を持っている家の娘が王宮のパーティーで若い男に近づく目的は、婿にするため唾を付けておくことに決まっておろう。
無論、すぐ結婚したいなどと露骨には言っていないだろうがな。」
うーむ、レイナちゃん達が下心で近づいてきたとは思いたくないが…。
両親に煽られたかもしれないし、食えない人たちだ。
レイナちゃんのお母さんが穴開きぱんつを履いていたのも下心なのか?
いやいや、あの人はちょっとおかしいだけだろう。
それよりエステラちゃんが身体を使った行動は際どかったし、やはりそういう目的だったんだろうか。
本当に好きだったのならば良いが、もしただの演技であれば悲しい。
「それよりもだ。
卿は王女と仲良くしているそうじゃないか。
あれほどの跳ね返りをうまく手懐けて、王女と結婚するつもりでもあるのか?」
そら来た。よく調べているな。
反女王派としては当然気になることだろうから予想していた質問だ。
ヴェロニカから求婚されたということは漏れていないだろうが、こちらから今言う必要は全く無い。
「いえ。王女とは剣や体術の訓練を一緒にすることが中心で、プライベートでの付き合いはありません。
彼女は戦闘好きなので、私の力の方が気になって仕方がないようです。」
「ふん、そうか。今のところは…ということだな。
強い女が卿の力に惚れているということは、卿自身を惚れているのと変わらない。
卿ほどの絶大な力を持っている男は、この国では他にいないからだ。
王家の女が、力が強い者を欲することは不自然ではない。」
ガルベス公爵はさっきからインファンテ家や王家のことを言っているが、結局自分もそうなのだと言っているようなもので、ツッコミどころが大ありだ。
だが露骨にそう話してきているわけだから敢えてのかもしれないし、ガルベス家が力を付けるためにはよほどリーナと私を結婚させたいのだろう。
「ですが私は、魔物退治と魔物が発生するデモンズゲートが何故出来るかを探るため、近いうちに旅へ出るつもりです。
魔物の件が解決するか、しないまでもある程度落ち着くまでは結婚するつもりがありません。
一体何年かかるかも検討がつきません。
そんな男と結婚させたいのですか?」
「十年経ってもリーナは二十歳だ。
卿もまだ若い。丁度良かろう。」
……これ以上話してもガルベス公爵の意思は変わらないだろう。
問題はもしヴェロニカやレイナちゃんと結婚することになったら、ガルベス公爵がどう出るかだ。
だがパティとは必ず結婚するつもりでいる。
マルセリナ様にもプロポーズをした。
「私はガルシア侯爵の娘パトリシアと、マカレーナの大聖堂の聖女様と結婚することをすでに決めています。
それからリーナとも結婚を許してくれるのですか?」
「これは驚きだ。ガルシアの娘とは予想をしていたが、まさか聖職者とも結婚するつもりとは、正に英雄色を好むということか。ハッハッハッ」
初めてリーナ以外でガルベス公爵が笑ったのを見た。
一夫多妻制に寛容と受け取って良いのだろうか。
ガルベス公爵くらいの男なら妾の数人はいるだろう。
それでも私をハニートラップにかけないところは好感が持てる。
女王なんて自分自身でハニートラップをかけているようなもので、一体どっちが悪徳なのかわからないよ。
もし私が女王と毎日エッチなことをしているとガルベス公爵に知られたら、激怒されるだろうな。
「ガルシアの娘やその聖女とやらもまとめて面倒見てやる。
だが王女は別だ。
わしの言うことを聞かず王家へ婿に行った長男…。
あげくに病で死んでしまった。
王家が息子を殺したようなものだ。
本当は病じゃないかもしれない。
わしがもっとしっかり止めていれば…、悔やんでも悔やみきれない。」
「そういうことでしたか…。」
いろいろ闇がありそうだけれど、私が女王やヴェロニカの様子を見た限りでは、さすがに陰謀論はないと思う。
何かきっかけがあれば和解出来るかも知れない。
今はそのタイミングでは無さそうだから、時を待とう。
いや、今晩女王には少しだけ話してみるか。
「一先ず結婚の話はこれくらいにしましょう。
リーナがいい子なのは今日で私もよく分かりました。
素直だし、人を見る目があります。
将来下の者をしっかり面倒を見る力が出てくると思いますよ。」
「おー、そうかそうか。
卿も人を見る目があるな。」
さっきまで王女のことで不機嫌そうだったのが、リーナの話になるとコロッと変わってニコニコ顔になった。
ガルベス公爵の機嫌を取るにはこれが一番簡単そうだ。
それからガルベス公爵と私の話は続き、秘密情報というものではないが、ガルベス家のプライベートが聞けたり商売の話などいろいろ有用な情報を得ることが出来た。
リーナの両親は優雅にゆったり暮らしているわけでなく、インファンテ家のように仕事で忙しいようだ。
それでも朝食と夕食は原則として家族と一緒で取るそうだ。
ガルベス家も家族を大事にする家なのははっきりした。
最も収穫なのは、私がガルベス公爵の信用を少なからず得ることが出来たことだ。
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さて話を終えるタイミングをどうしようかと思ったときに、昼寝から起きたリーナとパティがこの応接間にやって来た。
「ふわぁ~ よう寝たわ。
お祖父様、マヤとの話はもう済みましたか?」
「おおリーナや。話は終わったぞ。」
何言ってるんだ。リーナが来なければずっと話を続けてたぞ。
年寄りは話が長すぎる。
「それでは閣下。そろそろ私たちは失礼しようと思います。」
「うむ。またマドリガルタへ来たらここへ寄るがいい。」
「ありがとうございます。」
「えー、マヤもう帰るのか?
夕食も食べていかんか?」
「もう王宮で食事の準備をしている頃だから無駄にはしたくないし、マカレーナから付いてきた私の仲間も家族のようなものだから、出来るだけ一緒に食事をしたいんだ。
だからごめんね。
また近いうちにご馳走になるから。」
「食事を捨てるのは勿体ないし、家族は大事だから仕方がないのう。」
「マヤ様はそういう所が律儀で好きよ。うふふ」
「明後日は見送りに行くからな。
妾が来るまで出発するでないぞ。」
「大丈夫だよ。九時には出るからよろしくね。」
こうしてガルベス公爵との会談は無事に終わり、王宮へ帰った。
ヴェロニカとの結婚については課題があるが、ガルベス公爵からの信用を得られたのはリーナのおかげだな。
結果としては及第点だ。
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そしていつもの通りエリカさんたちと四人で夕食を取る。
エリカさんはお付きのモニカちゃんを見ながらニヤニヤしてて気持ち悪い。
二人には何があるんだろう。
そして夜は女王の寝室。
明日が最後だからか今晩もシルビアさんが参戦し、ベッドの上には素っ裸になった熟れた女性が二人、お姉さん座りと呼ばれる脚を一方に流した座り方をして私の目の前にいる。
私の分身は、エレオノールさんの美味しい料理のパワーが行き渡っているようで、いつのまにかカチンカチンになっていた。
「それでガルベス公爵とはどうだったの?」
「意外に思われるでしょうが、孫娘を溺愛していて、家庭内ではすごく家族思いの人物でしたよ。
孫娘も素直で明るく元気で、いい子でした。
その孫娘と私を結婚させたがっているようです。」
「なるほど、そうね。確かに意外ね。
あの子はまだ小さいけれど結婚の話なんて、彼は焦っているのかしら。」
「私も意外に思いました。
私たちが知っているガルベス公爵とは別人のようです。」
私はガルベス公爵の悪徳なところを直接見たわけでは無いから、別人とも言われるとしっくり来ない。
特にシルビアさんはガルベス公爵の配下と言われる貴族にお祖父さんを殺されたのだから信じがたいことだろう。
真相はわからないが。
「ヴェロニカとの結婚や、インファンテ家との繋がりが出来たことも気にしておられました。
面倒になるので、ヴェロニカが結婚するつもりのことは話しませんでしたが。」
「それはいいとして、あなたの気持ちはどうなの?
二人と結婚したいの?」
「う…。二人とも私のことを好いてくれているし、従姉妹同士のせいかわかりませんが、分かりやすい性格なのは共通していて私も気楽です。
ただ結婚する判断として二人のことはまだ知らなすぎるし、第一リーナは十歳ですから恋愛対象から外れます。」
「ふふ。それならヴェロニカのことは心配ないわね。うふふ」
「彼女に何かあるんですか?」
「ううん、何でもないわ。
それよりシルビアがもう我慢出来ないようね。
早く始めましょ。」
シルビアさんは無意識に花園と胸をまさぐり、硬くなった私の分身を見つめて顔を真っ赤にしていた。
私はシルビアさんをすぐ押し倒し、いきなり繋がった。
女王は、私の分身がシルビアさんの花園で暴れているのを後ろからジッと観察して、自分で花園を触りながらニヤニヤしている。
「いいわぁ~ 二人とも。
みんな丸見えよ。すごくエッチだわ。うふふふ」
シルビアさんと私は同時に果ててしまい、彼女は半分失神したように動かなくなってしまった。
同じように女王とも始めたが、シルビアさんと違ってなかなか終わらせてくれなかった。
相変わらず性欲が強い…。