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第百六話 小悪魔なエステラちゃんの恋

 楽しいパジャマパーティーが終わって、後は歯を磨いて寝るだけだ。

 この世界に来て一年数ヶ月、テレビもスマホも無いので夜中一人では本を読むぐらいしか娯楽が無いのだが、私は元々あまり本を読む習慣が無い。

 だからエッチな妄想をして時間を潰し、すっきりするなら一石二鳥だ。


 だが今晩は、近頃の疲れが溜まっているうえに女王づくしで悶々するのは間に合っている。

 ふわふわ寝心地が良い王様ベッドに寝転んでしまったら、掛け布団の上でいつの間にか寝落ちしたようだ。


 夜中にふっと目が覚める。

 私はやや神経質なので、眠りが浅くなったときは何となく気配を感じたり、目覚まし時計が鳴る直前に目が覚めてしまうような体質なのだ。

 体質というより「過緊張」というストレスの病なんだが、転生しても治っていない。

 サリ様はそこまで気が利いてくれないのかねえ。


 ギィッと、ゆっくりドアが開く音がした。

 安宿ではないので、マカレーナでも王宮でも私は寝るときに鍵をしていない。

 魔力を感じる。これは…エステラちゃん!?

 なんで? わざわざレイナちゃんの部屋から抜け出してきたのか?

 パジャマパーティーの時に少し様子がおかしかったのはそういうことか…。


 私は寝たふりをしている。

 エステラちゃんは、静々と歩いてベッドに近づいてくる。

 ベッドの前で停まった。

 ゴソゴソと何か音がする。

 ファサッという何か布が落ちた音がした。


 うわっ ベッドの上に乗っかってきた!?

 私の腰の辺りを跨いでいる。

 そして私の顔の横で両手をついている。

 恐らく私の上で四つん這いになっているのだろう。

 ハァッ ハァッと少し荒い息が顔に掛かる。


「マヤ様、起きているんでしょう? すぐわかるんだから。」


 バレていたか。(まぶた)の動きでわかりやすいからな。

 私がパチッと目を開くと、エステラちゃんはビクッとした表情をしていた。

 自分でわかっていたはずなのに、そういう反応は可愛い。


 あ…、パジャマを脱いで黒のレースのブラとぱんつだけになっているのか。

 精一杯背伸びして着けてみた感じで、他の二人よりはやや大人びた雰囲気の子なんだけれど、アマリアさんや女王みたいな大人の女性の迫力を知っていると、十五歳の女の子にはとても物足りない。


「どうしたのかな? 私のことが好きでこんなことをしてるの?」


「そうですよ。うふふ」


 エステラちゃんはゆっくり顔を近づけ、私に軽く唇を触れるだけのキスをした。

 私は拒まずキスを受け入れた。

 今は無理に振り払っても返って彼女を傷つけるかも知れない。

 キスだけならば、と…。


「今のは私のファーストキスなんですよ。

 マヤ様が最初で良かった。ふふ」


「下着だけになってファーストキスは、順番が違うんじゃないかな。」


 エステラちゃんはそれについて何も答えず、身体を沈めて頬を私の胸に寄せた。

 細身なのでふわりとした感触は無いが、視界に入る黒髪は子供と同じくらいつやつやで美しい。

 肩の肌は白く、びっくりするくらいみずみずしかった。

 若いっていいねえと思う時である。


「男の人の胸って、広くて硬いのね。当たり前か…あはは

 心臓がすごくドキドキしてる。

 私のこんな姿で? 嬉しいな。」


 私は無言で彼女の頭を撫でた。

 指でスッと()ける黒髪、この滑らかさはいったいどういうトリートメントをしているのかと思ってしまった。


「マヤ様ってやっぱり優しいんですね。

 もし強引に押し倒されてしまったらどうしようかと思っちゃった。」


「最初からキスだけのつもりだったんだね。

 私を試そうとしたのかな?」


「マヤ様となら…もう少し先まで行ってもいいですよ。」


 エステラちゃんは小悪魔のような笑みを私に向けた。

 そして再び四つん這いになり、私の頬やおでこなど顔の周りをたくさんキスしてきた。

 可愛いなあ。女王やジュリアちゃんだったら顔を舐められるようなキスだから。


「初めてなのに、こういうことをよく知ってるんだね。」


「そっ それは、本を読んだからですっ」


 やっぱりそんなところか。

 エルミラさんがハマって読んでいた、いけない♂♂恋愛小説でなければ良いが。

 エステラちゃんは身体を起こし、腰の上に馬乗りになった。

 まずいな…この体勢は分身君が元気になったら…。


「私はマヤ様のことが好きです。

 レイナも、レティシアも、みんなマヤ様のことが好きなんですよ。

 でも私がマヤ様を一番好き! だから今こんなことしてるの。」


「私が君のことを好きじゃなかったら、ということを考えたことあるのかい?」


「……マヤ様は私のことがお嫌いなんですか?」


「そんなことはないさ。

 綺麗な黒髪は私好みだし、スタイルは良いし、はっきり物が言えるところがいいかな。」


「私のことを見てくれてたんですね。嬉しいわ。」


 エステラちゃんはにっこり微笑んだ。か、可愛い…。

 女の子は笑顔が一番だというのがわかる瞬間だ。


「君のことは好きだ。でも愛してはいない。」


 こう言うと、彼女は真顔になった。


「【好き】と【愛している】とはどう違うんですか? 教えて下さい。」


 予想通りの質問だったので、私なりの解釈で答える。


「私が女性に対しての【好き】は、この人の性格が好きだとか、尊敬している、また会ってまたお話ししてみたい、つまり友達みたいな感覚だ。

 同じく【愛している】は、友達の感覚に加えて、いつも一緒にいて欲しい、もっと大事にしたい、この人と抱き合いたい、性欲を満たしたい、そういういう気持ちなんだよ。」


 エステラちゃんは少し戸惑った表情になる。


「私は…私は…、出来るならマヤ様と一緒にマカレーナへ行ってみたいです。

 それだけじゃないわ。

 勿論尊敬もしています。

 何だったらこんなことだって…。」


 エステラちゃんは私の左手を取り、ブラ越しだが彼女のささやかな右胸に当てた。

 Bカップぐらいだけれど、柔らかさはわかる。

 さすがに恥ずかしいのか、彼女は目を背けて顔を赤くしている。


「君の気持ちはわかったよ。

 でも私の気持ちは急には変わらない。

 私は他にもたくさん愛している人がいる。

 正直言うとその何人もこの先全員愛していける自信が無いんだ。」


「そう…ですか…。でも私は諦めない。」


「いつか振り向いてくれるまで、なんて思わない方が良いよ。

 君が傷つくだけだ。」


 もう少し胸の感触を楽しみたかったが、ここで手を離した。

 こんな時でもおっぱいのことを気にしてる私だぞ。

 まだ若いんだから、学校を卒業してからでもいい男が見つかると思うがね。


「だからって他の男の人を探して愛していける自信が無いわ!

 学校は女の子しかいないけれど、家のパーティーやお呼ばれしたパーティーだって男の子はたくさん来て、声も掛けられるの。

 でもマヤ様ほど素敵な男はいなかったわ。

 今が私のチャンスなの。」


 誰かから前に聞いたような話だけれど、面倒なことになったなあ。

 無理に諦めさせないで、フェードアウトを期待するしか無いのか。


「や… なに? 何か動いてる…」


 し…、しまった。意思に反して分身君が元気になってしまった。

 ちょうど分身君がエステラちゃんの下着のクロッチ部分に当たっている。

 下手をすれば「入ってる」になる。非常にまずい。

 するとエステラちゃんが後ろへ()け反った。


「なんですか? これ。

 男の子ってドキドキするとこういうふうになるんですか?」


 なんだ、ちゃんと勉強してるじゃないか。

 学校の性教育か、誰かに聞いたのか知らないが。

 分身君は、青いサテンのズボン越しで、まるで富士山のようになっていた。


「いやあ、まあ元気な男の子の正常な反応なわけで…。」


「マヤ様は私を女として見てくれているのはこれでわかりました。

 さあ、私に見せて下さい!」


「ええ? 何で今見せなくちゃいけないかな!?」


 エステラちゃんはズボンのゴム紐部分を腰からずり下げようとしている。

 私はそれに抵抗するが…。


「ちょっと、せっかくレイナちゃんからもらったパジャマが破れちゃう!」


「ええ? これはレイナのプレゼントだったんですか?

 悔しいわ!

 だったらマヤ様が離さないと破れちゃいますよ!」


 なんだ、秘密のプレゼントだったのか。

 私は諦めてズボンから手を離すと、一気にズボンが下がった。


 ポロン…


 あ…、とうとうエステラちゃんにも見られてしまった。

 レイナちゃんにも見られたし、エッチなことをしてない女性にもたくさん見られてしまった分身君、君はそんなに目立ちたがりなのかね。

 エステラちゃんは手をくわえながら無言で分身君をまじまじと見つめている。


「マヤ様…、これは女の人が赤ちゃんを作るときにみんな受け入れているのですか?」


「そうだよ。赤ちゃんを作るときばかりじゃなくて、愛し合うときもみんな受け入れているんだよ。」


「そんな…、入らない…。」


 何だかマルセリナ様と似たような反応をしてるなあ。

 ちゃんと教えてあげないといけないだろうか。


「女性の気持ちが高まればちゃんと入るんだよ。

 心配しなくていいさ。」


 と、真面目に話しながら私の下半身は丸出しの、とても間抜けな姿だ。

 そろそろいいだろうから、私はトランクスとズボンを履き直した。

 するとまたエステラちゃんは小悪魔の笑みの顔になる。

 また私の腰の上に乗っかってきた…。


「マヤ様、こうするんですか? 練習させて下さいよ。」


「え? ええええ??」


 エステラちゃんは不器用ながら前後に腰を振っている。

 ええええ?? ちょっとショック。

 ほんとにどこで覚えたんだろ。


「エステラちゃん… あんまりそんなことすると…

 出ちゃうから… 赤ちゃんを作る種が…」


「え? どんなものか見たいです!」


「ダメだって。パジャマが汚れちゃう!」


「きゃっ!」


 私は勢いで上半身を起こして、エステラちゃんをベッドに押し倒した。

 今度は私がエステラちゃんの上で四つん這いになる。

 分身君が噴火するのはぎりぎり耐えることが出来た。


「ふふ このまま最後まで行って良いんですよ。」


「キスまでって言ってたでしょう。冗談も程々にね。」


「はぁい。

 それにしても、レイナからもらったパジャマが余程大事なんですね。」


「女の子からのプレゼントは大事にするのが当然だろう?」


「そうですか…。わかりました。うふふ」


 急にエステラちゃんが私の顔を掴み、むっちゅうとキスをした。

 今度は、はむはむと柔らかい唇を挟んでくる。

 十を数えた時間ぐらいで、私は顔を離した。


「マヤ様が何と言おうと、私は愛していますよ。

 だから… だから… うう… マカレーナに帰っても私のこと忘れないで!

 ううっ グスン… うぇぇぇぇん~」


 あぁ… 泣いちゃった。

 まさか私が何人もの女の子を泣かしてしまうなんて、昔の私のことを思ったら考えられないことだ。

 私はエステラちゃんを抱き起こして、泣き止むまで抱いて、頭を撫でた。

 こんなことをしていると本当に愛おしくなっちゃうよ。

 まさかこれが狙いで、今死角でテヘペロしてないよね?


「二人が目が覚めてもいけないし、そろそろ部屋に帰った方がいいんじゃないかな?」


「それは心配ないですよ。

 二人には軽く眠りの魔法を掛けているから、朝まで起きることがないわ。」


 恐ろしい子…。

 強い魔力じゃ無さそうだから、私なら感知してはね除けることが出来そうだが…。

 それにいつの間にかケロッとしている。

 ほんとこの子は小悪魔だよ。


 エステラちゃんはベッドから降り、ゴスロリ風のパジャマを着る。

 薄暗い部屋でもわかる、美しい白い肌。

 ほんとこの子は綺麗だよな。


「じゃあマヤ様、部屋へ戻りますね。おやすみなさい。」


「ああ、おやすみ。」


 彼女は静かにドアを開け、退出していった。

 分身君が噴火前に収めてしまったので、今にもまた噴火したいと言っているから、すぐに悶々と始めた。

 ああああ~ エステラちゃ~ん!


 その時ギイっとドアが開いて、エステラちゃんがまた入ってきた。


「マヤ様… あっ…」


「あっ」


 その瞬間、噴火した。


「男の人ってそうするんですね。うふふ

 パジャマのボタンが一つ取れたから、見に来たんです。

 ……あ、あった。

 それではお邪魔しましたぁ~ うふふ」


 私は呆然としながらエステラちゃんが退出していくのを見送った。

 ぐぬぬ…十五歳の女の子に見られてしまうなんて…屈辱だ…orz


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