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第百五話 女の子三人とパジャマパーティー

 パジャマパーティーの前にメイドさんが、私が泊まるのに使う部屋を案内してくれた。

 来客用の宿泊部屋だろうけれど、王宮で私が借りている部屋と同じくらい豪華で、トイレもお風呂もあるようだ。

 ベッドは天蓋付きの王様ベッドでキングサイズだ。

 生憎今晩は一人で、誰かが逆夜這いすることもないだろう。

 もしあるとすれば、お母さんがこっそりやって来て、またぱんつを試着させられると想像してしまう。


 先日借りた、爺くさくてパティたちには不評だった部屋着をまた着ようと思ったら、ベッドの上にパジャマらしき物が置いてある。

 さらにパジャマの上にはメッセージが書かれた紙があった。


【マヤ様へ パジャマパーティーは、これをお召しになって下さい。レイナ】


 もうパジャマパーティーをすること前提でわざわざ用意してくれてたんだな。

 パジャマを手に取ってみる。どれどれ…。

 ひぇ~ 濃い青で、テカテカなサテンの、シルクのパジャマだ。

 日本でも良い物は五、六万円していたと思う。

 早速着てみよう。

 滑りが良く袖がスルッと入り、とても着やすい。

 縫い目がしっかりで耐久性も良さそうだ。

 サイズもぴったりで、これは欲しくなってくる。

 普通のパジャマどころか下着やジャージで寝ていた私にとって新世界だ。

 パジャマに付いているタグには「インファンテソーイング」と書いてある。

 インファンテ家が運営している縫製会社が作ってるんだなあ。


 お腹がいっぱいだしベッドでごろ寝していると、ドアノックの音がする。

 開けると、レイナちゃんが直々に迎えに来たようだ。

 彼女はカーディガンを羽織っているが、薄いピンクでフリルがひらひら、スカートスタイルの可愛いパジャマだ。


「マヤ様、失礼します。

 そろそろパジャマパーティーを始めようと思います…。

 まあ! パジャマがとてもお似合いですね。うふふ」


「そうかな。レイナちゃんにそう言われたら嬉しいな。」


「そのパジャマは差し上げます。

 お近づきの印と、私の気持ちですから。」


「え? 頂いて良いのかな?

 こんなに上等なパジャマなのに。」


「うちの商品なので安く買えたのですが、私のお小遣いで買ったんです。

 どうか受け取って下さいね。」


「うわぁ~ どうもありがとう! 大事にするよ!」


 やったぁ!

 ファッショセンターしままちばかり行ってたからこういう高級衣料品には縁が無くて、って喜ぶところはそこじゃない。

 会ったばかりなのにこんな中学生くらいの女の子からプレゼントを貰えたなんて、どれほど自分に気遣ってくれているのだろうと嬉しくなる。

 そう言えばこの世界に来てから、(かしこ)まって物をプレゼントしてもらうなんて初めてだろうか。

 エリカさんが下心でぱんつを買ってあげるというのは別の話だ。


「それでは私の部屋へ参りましょう。」


 私はレイナちゃんに付いていって彼女の部屋へ向かった。


---


「あら、マヤ様。素敵なパジャマですね。」

「はわわ 格好いいです!」


 レイナちゃんの部屋へ入るなり、エステラちゃんとレティシアちゃんがそう褒めてくれた。

 そういう彼女たちのパジャマは、エステラちゃんはなんとゴスロリ風というのか、真っ黒で半ズボンスタイルだから、スレンダーな白い太股を惜しげもなく見せつけている。

 レティシアちゃんは安心の少女スタイルで、ピンク色で大きなフリルがついて長ズボンのパジャマだ。


 私たちは食事前と同じポジションで席に着く。

 レイナちゃんがお茶を入れる。

 蜂蜜入りのカモミールティーだ。

 うーん、甘い香りで美味しそう。

 テーブルの真ん中にはクッキーが置いてある。


「マヤ様、このクッキーは私が今朝学校へ行く前に早起きして作ったんですよ。

 お口に合うかどうかわかりませんが…。」


「へぇ~ 頑張って作ったんだねえ。早速頂いてみるよ。」


 動物の顔をかたどったクッキーがたくさんで、いぬ、ねこ、くまさんなどの可愛いデザインのクッキーだ。

 この国に熊っていたんだね。

 味は…甘みがやや強いのはレイナちゃん好みだろうか。

 それでも昔から食べ慣れていた森◯の◯ョイスと同じくらいだろう。


「これは美味しいね。ちょっと甘いけれど何だか懐かしい味がするよ。」


「わぁ~ 良かった。マヤ様に喜んでもらって。

 やっぱり甘いですか? 私、すごい甘党なのでだいぶん抑えたつもりなんですが…。」


「私も甘い物は好きだから大丈夫だよ。

 子供の時に食べたクッキーを思い出したなあ。

 動物の顔もすごく可愛い。」


 レイナちゃんは満面の笑みを浮かべてカモミールティーを飲んでいる。

 初々しさが(あふ)れているけれど、この子には先日の試着で私のぱんつの中身を見られてしまったんだよなあ。

 完全に固まっていたし、そのことを蒸し返す気はならないが。

 ちなみに今まで三人にはずっと敬語を使ってきたけれど、こっそりため口に変えてみたが全然気づかないみたいで自然に話すことが出来ている。


 私のことは夕食の時にかなり話したので、私の方からエステラちゃんやレティシアちゃんのことを聞いた。


 エステラちゃんの家はポルラス伯爵家で、マドリガルタで乗り合い馬車や路線の多くを担っているとのこと。

 他の都市への長距離輸送もやっていて、メリーダやセレス方面が多いそうだ。

 たぶんここからセレスのセシリアさんへ送った手紙もポルラス家の馬車で送られたんだと思う。

 それだけ運輸方面に力を入れているならば、彼女の家も大きいんだろうね。


 レティシアちゃんの家はパルティダ侯爵家で、なんとお父様がマドリガルタ区の管理者代表をやっているとのこと。

 マドリガルタ区の領地は王宮が直接持っているが、お父様は県知事みたいなもので立場的にはガルシア侯爵と同じ、レティシアちゃんもパティと同じく侯爵令嬢だ。


 こんな凄い人たちの娘さんと知り合えたなんて、知らず知らずに強い人脈作りが出来ているということは、これも女神サリパワーなのだろうか。

 先日噴水公園でレイナちゃんの馬車を見かけたときは、御者だけで護衛がいなかった。

 そんなお金持ちのご令嬢に護衛がいないとは不自然な気がするが、それだけ治安が良いのか、火と水属性の魔法が使えると聴いたから、ゴロツキぐらいなら吹き飛ばせる魔法力があるのかな。


「レイナちゃんは魔法が使えるみたいだけれど、二人も魔法は使えるの?」


「私は火属性の魔法しか使えませんが、いろんな魔法を覚えたから強力ですよ。

 マドリガルタはあまり悪いやつがいないけれど、前にそこの市場へ出かけたときに私のお尻を触ってきた男達がいたから、ファイアーショットで髪の毛をチリチリにしてやったわ。アッハッハ」


「エステラ、あれはやり過ぎでしたよ。」


 エステラちゃん怖い…。

 確かにゴロツキぐらいなら大丈夫そうだな。


「あ、あの…、私は水属性の魔法だけ使えるんです。

 生活魔法ばかりで…、攻撃魔法はウォーターショットとフリージングぐらいしか出来ないんですが…。」


「それでも自分の身を自分で守れることって素晴らしいことだよ。

 三人とも魔法が出来るなんてすごいね。」


「ありがとうございます…。マヤ様はやっぱりお優しい…。」


 レティシアちゃんは照れている表情だ。

 三人とも揃って魔法が使えるなんて思わなかったよ。

 確かに、少し集中すると淡い魔力を感じる。

 エステラちゃんは攻撃的で、他の二人は優しい感じがした。


「やっぱり学校で魔法を勉強しているのかな?」


「私たち三人はカスティーリャ女学院の三年生なんです。

 魔法使いのような強い魔法力ではありませんから魔法専攻ではなくて、普通科に魔法の選択授業があるんですよ。

 お金が掛かるので多くは貴族の女の子が在学していますが、平民でも実力がある子は授業料免除の特待生だったり、お金持ちの商人の子もいますね。」


 ふうむ、マカレーナ女学院と同じだね。

 エリカさん暇してることが多かったから、講師でもしてあげれば良かったのに。


「女の子ばかりの学校、すごいよね。

 マカレーナ女学院へ臨時講師の手伝いで行ったことがあって、圧倒されちゃったよ。」


「マヤ様ならば女の子に大人気だったんでしょうね。ふふふ」


「ははは。そういうわけでもなかったよ。」


 そんな感じで学校の話がしばらく続いたところで、レティシアちゃんがモジモジと何か言いたそうにしていた。

 こっちから話を振ってみるか。


「レティシアちゃん、どうしたの?

 何か聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてね。」


 彼女は相変わらずおどおどしているが、精一杯振り絞って口を開けた。


「マヤ様は…、キ、キ、キスをしたことがあるんですか?

 ありますよね…、十九歳ですもんね…。

 申し訳ありません! 変なことを聞いてしまいました! ううう…」


 出た。パジャマパーティーに付きものの恋バナか…。

 彼女を傷つけないように、どうやって答えよう。

 あまり嘘を言うのも良くないし。

 猫耳娘や男の娘ともキスしたし、女王様とその執事ともキスどころかいんぐりもんぐりしてしまいましたなんて言ったら、倒れてしまいそうだ。

 もっとも、私のプライベートでもあるし、誰とどんなふうにまで言う必要は無い。

 こう言うしかないか…。


「私は…、生まれ故郷の国からこの国へ流れてきて困っているときに、今一緒に来ているガルシア侯爵の令嬢に助けてもらったんだ。

 そういう縁があって義理というわけではないけれど、彼女が私のことを好いてくれて、それからいろいろなことがあってお互い尊敬し合い、私も彼女が好きになってね。

 マカレーナの屋敷にいる女性達とも仲良くやっているよ。

 みんな素敵な女性だ。」


 キスという言葉を使わなかったが、遠回しに言い過ぎたかな。


「そ、それはその方とお屋敷の方の皆さんとも…キスをされているということですか?」


「勿論お屋敷にいる女性に手当たり次第キスをしているわけじゃないよ。

 お互いがちゃんと愛し合って、気持ちが一つになるんだ。」


「あ、愛し合う…きゃっ」


 レティシアちゃんは両手で顔を塞いでしまった。

 何か違うことをしていると勘違いしていないだろうか。

 レイナちゃんとエステラちゃんも顔を赤くしながら静聴している。


 この国では十五歳から結婚が出来る法律ではあるけれど、聞いた話では全体的に極々一部だけ早婚で、許嫁をやってる一部の貴族や、平民は農村部で結婚が早いらしい。

 確か猫耳族も早いと聞いた。ビビアナはどうしてるかなあ。

 この子らを見ていると恋に未熟だろうし、この国の平均結婚年齢は二十歳過ぎだろう。


「ねえマヤ様、キスってどんな味がするんですか?」


 次に質問してきたのは、この三人の中では一番耳年増なエステラちゃんだ。

 そう言われても、唾液の味しかしないんだが。

 おお、そうだ。


「飴を舐めた後は、甘い香りと味がするよ。」


「あっはっはっ それはそうね。あっはっはっ」


 何か知らんがウケたらしい。

 アマリアさんが飴をなめてて甘い香りがしたのを思い出した。

 この世界に来てからのファーストキスはアマリアさんだから、忘れもしない。

 さて、こちらから逆に質問してみようか。


「君たちは誰か好きな人はいるのかな?」


「気になりますか? 私は…マヤ様のような方がいいです…ポッ」


 レイナちゃんは、マヤ様でなくマヤ様のような、で何か誤魔化された気がする。


「私は~… ひ・み・つ。うふふ」


 エステラちゃんは、誰か好きな人がいるからそう誤魔化す返答だ。

 いないならいないと答える子のほうが多いと思う。


「わ、私は、マヤ様のことが好きです! はわわわ…言っちゃった…」


 意外にはっきり言ったのはレティシアちゃんだった。

 まだLOVEなのかLIKEなのか曖昧な気持ちにも取れる。

 取りあえず、彼女の頭を撫で撫でしたら顔がさらに赤くなって、頭がボムっと爆発したようか感じがした。


「へぇ~ レティシアはやっぱりそうなんだ。ふーん」


 彼女は最初ニヤついた表情をしたが、すぐに何か思い詰めた顔になる。

 面倒くさいことにならないといいがなあ。

 レイナちゃんは場の空気を変えようと、私が帰る日の話をした。

 みんな見送りに来てくれるようで、とても嬉しい。


 その後は学校の出来事や美味しいお菓子のお店の話をしたり、私は聞き手の方が多かったが和気あいあいと女の子らしい会話の中に入って楽しむことが出来た。

 明日は学校なのであまり夜が更けないうちにお開きになって、三人はレイナちゃんの大きなベッドで一緒に寝て、私は部屋に戻った。

 頼んだら一緒に寝させてくれそうな気がしたけれど、十四、五歳の子達だからあまり教育には良くないだろうとやめておいた。

 でも先日はパティと一緒に寝たし、ルナちゃんには股間を毎日のように見られているし、教育者面は出来ないよね。


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