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第百四話 インファンテ家にて美味しい夕食

2023.4.30 微修正を行いました。

 それから二日後、何事も無く普通に訓練や周辺偵察を終えて、夕方になった。

 予定通り、インファンテ家へ夕食にお邪魔する。

 今日はバッチリ貴族用のジャケットに、ぱんつはトランクスだ。

 お泊まりもあるかも知れないので、先日借りた部屋着をルナちゃんに洗ってもらい、返すついでに持って来たから準備万端。

 少し早めだったが、いつも通りに飛んでインファンテ家の門前まで到着した。


 門番を通して玄関付きのメイドに案内されたのは、なんとレイナちゃんの私室だった。

 パティの部屋の倍ぐらいあって王様ベッドもあり、白を基調とした豪華な部屋であるが、ぬいぐるみがいくつか置いてあり、気分がほんわかする。

 そこにはレイナちゃん、エステラちゃん、レティシアちゃんが揃ってお茶を飲んでいた。

 クンクン。女の子の良い匂いがする。

 本来ならば五十歳すぎたおっさんには絶対入ることが出来ないであろう、女子中学生と同じくらいの子の部屋は正に秘密の花園である。


「わぁ! マヤ様いらっしゃいませ! どうぞこちらへお掛け下さい」


 丸いテーブルがあり、エステラちゃんとレイナちゃんが左右でその間の席に掛け、、正面にレティシアちゃん。

 早速レイナちゃんがお茶を入れてくれる。

 またミントティーだったが、食前にも良いということだ。


「部屋に中にはさすがに虻がいないから大丈夫ですね」


「もうマヤ様ったら、いじわるですね。ふふ」


「この前はセルギウスのことで迷惑をかけましたね。

 ロサードでしたっけ。

 とても美女だって絶賛していて、また会いたいなあって言ってました」


「まあ。ではマドリガルタをご出発なさる時に、お見送りでロサードを連れて参りますわ。

 ご出発の日はお決まりですか?」


「ありがとうございます。セルギウスも喜びます。

 出発は三日後にしようと思っています」


「学校がお休みなので丁度良かったです。あと三日…寂しいですね……」


 良かったなあ、セルギウス。

 愛しのロサードちゃんにまた会えそうだぞ。

 ん? レティシアちゃんがもじもじしながら話そうとしている。

 そういえば口下手と言っていた。

 頑張れ。今言っちゃうんだ。


「あ、あの……、マヤ様は今晩お泊まりになることを決められていますか?

 私たち、パジャマパーティーをしようと思ってりゅんでしゅ…… あっ」


 あ、噛んだ。でもよく言えたぞ。

 顔を赤くしてまたモジモジしている。

 あああ~ なんて可愛い子なんだ。娘にしたい。


「うう…… マヤしゃまもいかがですか?」


「前にレイナさんから少しお話がありましたし、そのつもりで準備してきました。

 パジャマパーティーにお邪魔させてもらってもよろしいんですか?」


「わぁ! 嬉しいです!」


「レティシア、良かったわね。勿論私も歓迎ですよ。

 マヤ様がお泊まり…… ふふふ……」


 ニヤニヤと笑っているエステラちゃん。何か悪巧みでもあるかのようだ。


「殿方とパジャマパーティーは初めてなので、緊張します。うふふ

 マヤ様、また美味しいお茶とお菓子を準備しておきますからね」


 ニコニコ顔でそう話すレイナちゃん。

 みんなどんなパジャマなのか楽しみだ。むふふ

 三人とそう話しているしているうちに、メイドが夕食の案内にやってきた。


「そうそうマヤ様、お夕食は私の家族と召し上がって頂くようになります。

 勿論お父様もいらっしゃいますので、ご紹介差し上げますね」


「わかりました……」


 予想はしていたけれど、インファンテ伯爵との対面は緊張する。

 レイナちゃんやお母さんの人間性を見たら良さそうな人だとは思うが…。


---


 インファンテ家が普段使用している食堂へ案内された。

 私たち以外まだ誰もいない。

 十人くらい座れる長テーブルがあって、上座があるからそこは伯爵の席だろう。

 メイドさんに案内され、私は上座から見て右側の列の一番前の席に座り、エステラちゃん、レティシアちゃんの順で座っていく。

 レイナちゃんはエステラちゃんの向かいの席だ。

 

 しばらくすると、夫人と妹さんらしき女の子が現れる。

 女の子はパティの年齢と同じくらいにも見えるが、もっと幼い感じだ。

 そもそもパティは身体が育ちすぎである。


「まあマヤ様いらっしゃい。

 エステラさんとレティシアさんも、一緒に食事をするのは久しぶりね」


 私とエステラちゃんたちが立ち上がる。

 お母さんの姿を見ると、先日尻もちついた時に見えた穴あきおぱんつが脳裏に浮かんでしまった。

 あれは稀に見るすごいラッキースケベだった。


「今晩はお世話になります」


「おば様、今日もよろしくお願いします」


「よ、よろしくお願いします……」


「紹介するわ。この子はレイナの妹のアイナです。

 レイナの三つ下ね。

 弟もおりますが、まだ二歳なので今は乳母に任せております。」


「初めまして、モーリ男爵。

 お噂は予てから姉より聞いております。

 お姉様方はお久しぶりですね」


 アイナちゃんがカーテシーで挨拶をする。

 この子はブロンドのセミロングヘアーで、レイナちゃんよりしっかり者のような雰囲気だ。


「マヤ・モーリです。どうぞよろしくお願いします」


 私はどうも挨拶が苦手で、気の利いた言葉がなかなか出てこない。

 ろくな妄想しかしていないからだろうか。

 レイナちゃんのお母さんがずいっと前に出た。

 そして懐からぱんつを取り出して、前に掲げた。

 あれはもしや?


「マヤ様、あなたがデザインした下着を一つ、早速試作してみましたの。

 締め付けが無くなってとても楽だし、それでいて可愛いデザイン。

 なんて素晴らしいの!」


 私がデザイン画で描いた、ふんどし型ショーツだ。

 ふんどしと言っても極力通常のショーツに近いデザインで、鼠径部(そけいぶ)の締め付けが無いようにゆったりしていて、腰の部分は細めでハイレグになっている。

 お母さん自身が試着をした脱ぎたてぱんつかもしれないと思ったら、興奮した。


「それは良かったです。女性の身体のために考えてある物です。

 きっと売れるでしょう」


「本当にそうですわ。男性のもありましたわね。

 また試作してみようと思いますが、夫はなかなか試着してくれませんし、マヤ様はお帰りになってしまうし、とても残念です……」


 ある意味、旦那さんである伯爵は常識人っぽそうなので、安心した。


「あなたに礼金をお渡ししないといけませんわね。

 それからマカレーナのアリアドナサルダの店長に手紙を渡して欲しいの」


 先日もお母さんと一緒にいて、控えていたお付きのメイドから小さな袋と手紙をお盆から手渡された。


「お礼は白金貨が三枚です。

 今後の売り上げ次第でまたお支払いが出来ると思います」


「え? こんなに頂いてよろしいのですか?」


「何をおっしゃいますの。

 売り上げが伸びたら白金貨何十枚どころじゃないかもしれませんのよ」


 お母さんが顔を近づけ、ふんどしぱんつをさらに見せつける。

 こう見るとレイナちゃんが大人になったような、ドキッとする綺麗な女性なんだけれど、性格にやや癖があって美人お笑い芸人のように思えてしまう。

 しかしあんな落書きで、しかも日本で売れていたデザインを模倣したものが三百万円相当になるとは、地球のデザイナーさんに申し訳ない。

 でもありがとうございます!


「それでお支払いはどうしたら良いのかしら?

 売り上げの伸びがはっきりするまでは何ヶ月かかかりますし、マカレーナにお金を送っても良いのですが……」


「この先、時々マドリガルタへ行くこともあるでしょうから、その時でもよろしいですよ」


「まあ! 嬉しいわ! レイナもそのほうがいいわよね!」


「はい、お母様……」


 レイナちゃんが顔を赤くして(うつむ)いている。

 この子は私のことを本当にどう思っているのだろうか?

 憧れの先輩ぐらいなら良いのだが、恋愛対象にされていたら難しいな。


---


 ギィっとドアが開いて、一人の貴族紳士がやってきた。

 お母さんはぱんつをサッと隠し、インファンテ家の三人は席に着いた。


「みんな揃っているようだな。

 ふむ、君がモーリ男爵だね。

 私がインファンテ家の当主、レオポルド・インファンテだ。

 娘と妻が世話になっているようだが、何か失礼は無かったかね?」


「いえ、とんでもございません。何も無いです。

 初めまして、マヤ・モーリと申します」


 薄い色の金髪でビジネス風の七三分け、ダンディーで堂々とした風格の人だ。

 とても、自分が作ったぱんつを履いて下さいと土下座していた人の旦那とは思えない。


「はっはっは。気遣わなくてもいいんだよ。

 妻の性格はよく知っているからね」


 お母さんまで顔を赤くして(うつむ)いていた。ちょっと可愛い。

 どちらかと言えば亭主関白の古風な人だろうが、たぶん仲良くやっていると思う。


「君たちも久しぶりだったね」


「おじ様、いつも素敵ですね。うちのお父様は見習って欲しいですわ」


「はわわ お久しぶりでしゅ……」


「はっはっは。いつもレイナと一緒にいてくれてありがとう。

 娘の今があるのは君たちのおかげだよ」


 エステラちゃんとレティシアちゃんまで顔を赤くして(うつむ)いた。

 伯爵は思春期女子キラーでもあるのか。

 見た目も格好いいし、相当な人格者かも知れない。

 私もまた四十歳くらいになったら、この人のようになれるのだろうか。


「さて、モーリ男爵には礼を言わなければならない。

 特にこのマドリガルタ東地区は魔物の襲来が酷かったが、君のおかげで大きな被害は出ず街は救われた。

 どうもありがとう!」


 伯爵は手を差し伸べ握手を求めてきたので、それに応え握手をした。

 両手でしっかり握られ、彼の感謝の気持ちが伝わってくるようだ。


「恐縮です。仲間や騎士団の力が無ければとても無理でした」


「君は謙遜家(けんそんか)かな。

 王家の徽章(きしょう)と王国名誉戦士の称号をもらったそうじゃないか。

 それは君が思っているよりすごいことなんだよ。

 私もこうして君と知り合えてとても光栄なんだ。

 もし困ったことがあったら何でも言ってくれ。力になる」


「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」


 これでインファンテ家とのコネクションが出来上がったという訳か。

 いますぐ何かをお願いするのも不躾なので、いつかお世話になろう。

 あまり親密になるとレイナちゃんを嫁にさせるとも言い出しかねないからね。

 レイナちゃんみたいないい子が嫁になるのは光栄なことだけれど、パティたちやマルセリナ様やジュリアさんもいるし、正直言って混乱している。

 サリ様の願い事パワーが強すぎるんだよ。


「君たちも席につきたまえ。

 今日は精一杯のご馳走を用意したから、どうか食べていって欲しい」


 伯爵の話が終わると、待ってましたかのようにメイドさんたちが続々と料理を運んできた。

 コース式で、毎日食べている王宮の料理も良い物だけれど、それ以上の内容だった。

 前菜に出てきたサラダの生ハムがとても上質で、涙が出そうなくらい美味い。


 次はなんと鶏肉と野菜が入ったパスタのパエリア。

 この国は麺類の食文化が無くて、この世界に来てパスタが食べられるなんて夢にも思わなかった。

 伯爵に聞いたら、一つ国を挟んだルクレツィア国からの物らしい。

 丸っきりイ◯リアである。


 口直し、フランス料理だとソルベに当たるものには、オレンジのシャーベット。

 甘みが強くとても濃厚で、きっとシルビアさんのところのオレンジだろう。

 オレンジ大好きなリーナ嬢も食べてるのかなと思いつつ。


 メインの牛ヒレ肉ステーキはスライスしたニンニクが乗っており、香ばしくて柔らかい。

 じゅわっと肉汁が口の中に広がり、思わず『うーまーいーぞー!!』と口から光線が出そうになってしまった。


 デザートは、メロンと生クリームをふんだんに使ったケーキ。

 甘みが強いメロンと甘さを抑えた生クリームのバランスが絶妙で、女の子たちが食べているときは、甘い物は別腹のごとく、皆が至福の笑顔で味わっていた。


 伯爵との会話もはずみ、聞かれたことは主にマカレーナでの暮らしことが多かった。

 女の子たちもうんうんと興味深く聞いてくれていた。


 私から尋ねたことは、インファンテ家の経営について。

 縫製工場を営んでおり、夫人の下着店があるのはなるほどと思った。

 また、不動産や土木建築、農園、飲食店、宿屋もやっている多角経営だから、女王が言っていたとんでもない豪商だということに納得した。

 この料理も、経営している高級料理店から料理長らをわざわざ出張させて作らせたケータリングだということだ。

 昔は宿屋で働いていたということを話したら、宿屋の経営をマカレーナでやってみないかとも言われたが、魔物退治が終わってからという話にさせてもらった。


 ガルベス公爵の話も出てきて、特に敵対することも無く、インファンテ家は中立の立場であることもわかった。

 私がガルベス公爵との関係を築くことが出来れば、将来的にうまく世渡りが出来るかも知れない。

 勿論王女の方から求婚してきたことは伏せておいた。


 私にとって有意義な話をたくさん得ることが出来たが、お母さんや妹さんにはちょっと退屈そうだったから悪いことしたかな。

 またマドリガルタへ来たときには面白い話をしてあげられたら良いのだが。


 それで今度来るときは、今作っている空飛ぶ乗り物で行くかも知れないことを話したら、伯爵は無論みんな食いついてきた。

 高魔力と闇属性が無いと動かすことが出来ないことも話したらがっかりされたが、資金がもし足りなければ援助するとの話も頂き、有り難いことだ。


 時間が長くなったのでお母さんと妹さんは少し早く席を外し、そして夕食会はお開きとなった。

 次はいよいよお楽しみのパジャマパーティーである。


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