第九十九話 シルビアさんのラベンダーティー
「レイナさん、今度改めてお邪魔しますが、今日はお暇しようと思います。
エステラさん達に挨拶をしていきたいので、部屋まで案内して頂けますか?」
「はい。母までもいろいろご迷惑をおかけしまして、申し訳ございません…。
あの…、お昼は学校がありますので、今度宜しければご夕食でも…。」
「わかりました。三日後でも大丈夫ですか?」
「はい! 喜んで! お母様にも伝えておきます。」
レイナちゃん自身、私へのお持てなしが上手くいかなかったから気分がスッキリしなかったろう。
お母さんとも会わないといけないから丁度良いので、三日後にまたお邪魔することにした。
エステラちゃんたちがどこで待っているのかレイナちゃんはわかっているようなので、脱いだ服を持ってその部屋へ向かった。
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レイナちゃんとレティシアちゃんが休憩していた別室にて。
「あら、レイナ、マヤ様。ずいぶん時間が掛かったけれど、どうしたんですか?
おかげで退屈しちゃったわ。」
「ごめんなさい二人とも。
でも三日後にまたお夕食の時にマヤ様とお会いできることになったんです。
あなたたちも如何かしら?」
「そうね…。マヤ様はもうマカレーナへお帰りになるからその日しか無いわね。
わかった。伺うことにするわ。」
「わ、私もお邪魔します! マヤ様ともっとお話ししたいです!
私、口下手だから…。」
「そういうことでマヤ様、三日後を楽しみにしております。うふふ
お泊まりもよかったらすぐ準備できますから。」
「わかりました。私も楽しみにしております。
今日はすみませんが、これで失礼します。
あ、この部屋着は今度お返ししますね。」
「玄関までお送りしますね。」
私は玄関先でレイナちゃん達に見送られ、そのまま王宮まで飛んで帰った。
ああ~ 三人ともやっぱり可愛いなあ。
ちょっと変わった子達だったけれど、私もあの頃のような新鮮な気持ちになってわいわいやってみたいものだ。
身体だけ若くて心はおっさんというのはどうもバランスが悪い。
さて、夕食ギリギリになるから急いで帰ろう。
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王宮で、私が借りている自室にて。
ルナちゃんが私の帰りを今か今かと部屋でうろうろして待っていた。
「あ、マヤ様お帰りなさいませ! 遅かったですね。
あれれ? どうしたんですかその部屋着は?」
「ああ、ちょっとお茶をこぼしてしまってね。
インファンテ家でこの部屋着を借りたんだ。
この服を洗っておいてくれるかな。」
私はルナちゃんに元々着ていた服を渡すと、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。
他の女と浮気をしていないかチェックする嫁なのか?
今日は女の子とべったりくっつくようなことは…あ、ズボンを下げてぱんつを見られたときにレイナちゃんとエステラちゃんがくっ付いてきたような。
「マヤ様、ミントティーをお飲みになったんですね。」
「ああ、そうだね。初めて飲んだけれど美味しかったよ。
今度君にも入れてもらいたいなあ。きっと美味しいんだろうね。」
「そ、そうですか…。じゃあ今度用意しておきます…。」
ルナちゃんは少し顔を赤らめる。案外チョロかったな。
「マヤ様、すぐお夕食ですから参りましょう。」
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王宮でいつも私たちが食事をする個室食堂にて。
私が来たときはもう皆が集まっていた。
「なんだい? マヤ君が部屋着なんて珍しいねえ。」
第一声はエリカさん。まあ古風な部屋着を着るのは初めてだからね。
「ああ…、よく…お似合いですよ…。」
パティ、それは全然似合ってないですよとすぐわかる言い方だぞ。
「マヤ君…、それはちょっと年寄り臭くないかな…。」
いつもちょっと空気が読めないエルミラさんは、はっきりもの申す。
確かに私もじじ臭いと思っていた。
「インファンテ家でちょっとお茶をこぼしてね。
それで着替えをそのまま借りて帰ったんだよ。」
「ぷっ 何やってるんだか。」
エリカさんは私がこぼしたように思っているみたいだが、レイナちゃんがこぼしたことをいちいち言う必要がないので、そういうことにした。
朝食中に、ぱんつの試着のことは除いて、レイナちゃんのお母さんと知り合い、下着のデザイナーとしての収入もこの先ありそうだという経緯をみんなに話した。
「あーーーーーーーっはっはっはっはっはっはっ
ひーーーーっひっひっひっひっ
マヤ君、うっはっはっ おかしすぎて ひーーひっひっ
ぐほぇっ ゴホッ ゴホッ
……戻しちゃいそう……
あはっ マヤ君にぴったりで あははっ」
エリカさんが身体をのけぞり大爆笑している。
平和になったら魔物討伐の収入が無くなるんだから、本職になるかも知れないんだぞ。
「マヤ様がデザインした下着…、履いてみたいです…。」
パティは顔を赤くしてモジモジとしている。
大きくなったら私が考案したエッチなぱんつを履いてもらうのもいいな。
「マヤ君、それならもっと動きやすい下着を考えておくれよ。
最近擦れて痛かったり、何だか気持ち悪いんだ。」
スポーツ女子のご意見、もっともだ。
目が良くなったせいで動きが激しくなったからか?
通気性が良くて、伸縮性があって薄手の生地を使ったり、何種類か出来そうだ。
エルミラさんのためになら…むふふ…頑張れそうだ。
スサナさんとローサさん、あと王女にも履いてもらいたいぞ。
夕食はそんな話で持ちきりになり、終わる。
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再び自室にて。
「マヤ様、お食事の後になっちゃいましたけれど、お風呂はどうなさいますか?」
「シャワーだけで良いよ。」
「じゃあお背中だけ流しますね。」
自分もすっかり慣れてしまった。
マカレーナでもやっぱりこういうふうになるんだろうか。
あっちは自室にお風呂が無いから、エリカさんと鉢合わせると面倒臭い。
ルナちゃんによってするスルスルと部屋着を脱がされ、ズボンも降ろされる。
「なんですか! この下着は!」
「あ…忘れてた。これは試着をお願いされてね。
ほら、夕食の時にインファンテ家のお母さんが下着のデザイナーって聞こえたでしょ。
それでいろいろ履かされたんだよ。」
真っ赤な象さんTバックを脱ぐこと、本当に忘れていた。
ノーパンで帰った方が良かったかな。
もしエリカさんに見られていたら笑い死にされたかもしれない。
女王だったらますますエッチないたずらをされてしまうだろう。
「もう…脱がせますからね。
……あの……エッチなことを考えてますか?
引っ掛かって脱げないんですけれど…。」
しまった。女王との妄想をしたら思いのほか反応してしまい、パオーンになった。
しばらく静まりそうにない…。
「ちょっと…自分でやるから…ゴソゴソ…はい。」
自分で引っ掛かり部分を脱いで、分身体がびよーんと現れる。
……女の子の目の前で……痛々しい。
「殿方は大変ですね。さあ、お風呂場へ参りましょう。」
ルナちゃんの、私の扱い方というかスルー耐性は慣れてきたもんだ。
主人に気を遣わせないという心掛けはさすが王宮メイドだね。
そしていつものようにカボチャパンツスタイルでシャコシャコと洗ってもらい、シャワーで流して終わり。
ルナちゃんは今日の仕事を終え、部屋を退出していった。
いつも夕食前にお風呂へ入るから、彼女の夕食が遅くなってしまい悪いことしたな。
お詫びをしたいところだが、そのたびに何かをあげていると癖になって付き合いの上で良くないので、またの機会にしよう。
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今日もおっぱいプリンとかぱんつの試着などいろいろあって疲れたから、シルビアさんが早く呼びに来ないかなあとベッドでウトウトしかけた時に、ドアノックが鳴る。
昨夜のシルビアさんの件で、彼女と話したいこともある。
「マヤ様…。今晩も陛下と…、お願いします…。」
いつものようにシルビアさんが呼びに来たが、少し様子がおかしい。
やっぱり昨夜のことだろうか。
あれだけアヘ顔で乱れていたから気まずいのだろう。
「シルビアさん、お話ししたいことがあるんです。
時間は大丈夫ですか?」
「それは…、その前に陛下がお待ちですので、先にお話願えますか?」
「わかりました。行きましょう。」
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女王の部屋。シルビアさんも一緒に入室している。
女王はいつものベビードールの格好で、今日は白だ。
「いらっしゃい。シルビアまで連れて来てどうしたの?」
「マルティナ様、今晩はシルビアさんとお話がしたくて……その前に少しお時間を頂けますか?」
「ふーん…、そう。うふふ
わかりました。今晩は私はいいわ。シルビアと二人でゆっくりお話しなさい。
その代わり明日はたっぷりと…ね。」
「え? あ、はい。ありがとうございます。シルビアさん、行くよ。」
「あぁっ…」
私はシルビアさんの手を引っ張って廊下に出た。
女王は何となく察したのか、何も咎めることなく了解してくれた。
昨晩のことはどう考えても異常だ。
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「あの…、マヤ様。どうして?」
「昨日のシルビアさんを見て、何かたくさん思い詰めていることがあるように感じました。
私は気持ちがすっきりしないんです。
よかったらお話を聞きたいんです。」
「わかりました。私の部屋で良ければ…どうぞ。」
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シルビアさんの部屋は女王の斜め向かい。
お邪魔して二人でゆっくり話すことにする。
部屋の間取りは私が借りている部屋とほとんど同じみたいで、立派な本棚があって本がずらっと並んでいる以外は質素だ。
あまり女性の部屋という感じはしない。
「何もありませんが、今お茶を入れますね。」
私の部屋と同じようなテーブルと椅子があり、椅子に掛ける。
シルビアさんが、レイナちゃんのように水魔法でポットに水を入れ、火の魔法でお湯を沸かす。
シルビアさんも魔法が使えるなんて知らなかった。
魔法が使える女王のSPでもあるから、彼女も使えるのは不思議でないか。
そしてティーカップとティーポットも事前に温め、ラベンダーをティーポットに入れ、熱湯を回し入れる。
三分ほど待ち、お茶をティーカップに注ぐ。
非の打ち所が無い見事な入れ方だ。
「マヤ様…、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
うーん、ラベンダーの良い香りだ。
ラベンダーティーは気分が落ち着く効果があり、今の状況にぴったりだ。
飲むととても美味しい。
シルビアさんも自分のお茶を入れて、椅子に掛けてお茶を飲む。
「さすがシルビアさんですね。
このラベンダーティー、とても優しい味がします。」
「そんな…、優しい味だなんて初めて言われました。
とても嬉しいです…。」
シルビアさんは少し頬を赤らめ微笑んだ。
凜々しくて…綺麗で…格好いい。憧れすらある。
昨夜の乱れた姿が信じられないくらいだ。
いつもお世話になってるし、身体も交わってしまった。
それだけで身の程知らずかも知れないが、何か思い詰めているなら聞いてあげたい。
私はそんな気持ちがとても強くなった。