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第九十七話 インファンテ家のご令嬢

 ジャケットに着替え、午後三時からインファンテ伯爵家にて王宮で約束したご令嬢とお友達三人とのお茶会に行くため、マドリガルタの東の街にある噴水公園に来ている。

 屋敷はこの近くでわかりやすいと言っていたが…、あれか?

 以前来たときはアパートか何かと思ってあまり気にしなかったが、建物の近くへ行ってみると庭が狭いので確かにアパートっぽい。

 だが建物はそこらのアパートより重厚で立派な造りなのがわかる。

 門番に話しかけると話はいっているようで、すぐ通してくれた。


 玄関に入ると王宮並の豪華絢(けん)(らん)さで圧倒される。

 出迎えのやや年増なお姉さんメイドが案内してくれ、そのまま玄関からの短い貫通路を歩き、また玄関扉のような戸をくぐったらそれはとても広い中庭だった。

 なるほど、建物が囗形になっているのか。

 四隅に花壇があり、中心に立派な噴水がある。

 少し奥へ進み噴水と横に直線で結ぶ位置の両側にガゼボ、いわゆる西洋風の休憩所が各一カ所ありその一つにレイナちゃん達がいた。

 レイナちゃんとエステラちゃんがダッと立ち上がる。


「わぁ! マヤ様がいらっしゃいましたわ!」

「マヤさまぁ~!」

「はわわわわ」


 一声がレイナちゃんで、私の名前を呼んで手を振っているのがエステラちゃん、何故か慌ててるのがレティシアちゃんだ。

 マカレーナ女学院では若い女の子達に圧倒されたけれど、三人だけでも私のために集まってくれてちやほやされるというのはとても気分が良い。

 案内してくれたお姉さんメイドは帰っていき、私たち四人だけになった。


「こんにちは。今日はお招き頂いてありがとうございます。」


「ようこそいらっしゃいました! どうぞこちらへおかけ下さい。」


 席を勧められて、レイナちゃんとエステラちゃんの間、対面はレティシアちゃんの席に座った。

 三人ともパーティーの時とドレスは違い軽装で、パティがよく着ている膝丈スカートの可愛らしいドレスだ。

 萌え~と悶えたくなるような無垢な美少女達、たまりませんね。


「今お茶を()てたところなので、入れますね。」


 メイドを使わず、レイナちゃん直々にお茶を入れてくれている。


「爽やかな香りだね。これはミントティーですか?」

「はい、そうです。マヤ様はお好きなんですか?」

「いやあ、実は初めて飲むんですよ。いつもカモミールが多くてね。」

「私が入れたお茶がお口に合いますかどうか…。」


 照れっと少し顔を赤くしてお茶を勧めてくれた。

 そこにベッドと枕があったら、可愛すぎて枕を抱えて転げ回っているだろう。


「うーん、とてもすっきりして癒やされそうですよ。すごく美味しい。」

「ありがとうございます…。嬉しいです。」


 レイナちゃんはさらに照れた顔で微笑む。

 心の中では、頭を打ち付けたくなるくらいだ。


「どうぞこのクッキーも召し上がって下さい!

 私とレティシアが焼いて持って来たんですよ。」


 エステラちゃんがテーブルにある皿に乗ってるクッキーを勧めてきた。

 動物やハートなどをかたどった可愛らしいものがたくさんある。


「うん、ちょうど良い甘さでたくさん食べられそうだ。美味しいですよ。

 昨日は王宮でケーキを食べ過ぎたから、これは食べやすい。」


「わあ、ありがとうございます!」

「あああありがとうございます!!」


 二人とも私のこんな感想で喜んでくれるなんて、恐縮するよ。


「ところで、王宮でご一緒なさっていた…その、口にチョコが付いていたお嬢様は?」


 エステラちゃんが唐突に尋ねてきたので少しびっくりした。

 言うまでもなくパティのことである。


「ああ、あの子は私がマカレーナで使えている領主の、ガルシア侯爵のご令嬢です。」

「ええ? そんなに偉い方のご令嬢だったんですか。へぇ~

 それでその方とはどんなご関係なのですか?」


「エステラ、失礼ですよ!」


 レイナちゃんがエステラちゃんを注意する。

 ほら来た。女の子は恋バナや男女関係の類いが気になる。

 まして思春期の女の子ならばなおさらだろう。

 だがこの子たちとは付き合ったり結婚する意思はないので正直に言う。


「彼女とは将来結婚するつもりです。相手のご両親も了解を得ています。」


「えー、そんなあ。ちょっと狙っていたのにぃ。

 あ、でも貴族は一夫多妻制だから大丈夫ですよね。」

「はわわわわわわわわ。」


 エステラちゃんは合コンのようなノリで本気なのか怪しいけれど、面倒なことにならないかなあ。

 レティシアちゃんは相変わらずである。

 レイナちゃんは無言で少し沈んだ顔をしている。


「あの…、マカレーナってどんなところなんでしょうか?

 私、王都からあまり遠くへは行ったことがないんです。」


 レイナちゃんが場の空気を変えようとしてか、話題を少しずらす。


「王都よりもずっと南にあって暖かいし、食べ物も美味しいですよ。

 街は綺麗に行き届いているし、物は安くていいですね。

 そうそう、海に近いからお魚料理もたくさんありますよ。」


「わぁ~ 素敵なところですね~ 私も行ってみたいですわぁ~」


「そういえばインファンテ家では【アリアドナサルダ】というお店をいろんな街で経営していると聞いて、そういえばマカレーナでも見かけたなあと思って。

 ご両親はマカレーナにいらっしゃったことはおありなんでしょうか?」


「ええ、下着のお店なんですが、お母様が経営してるんです。

 マカレーナはとても遠いのでお店が開店したときの一回しか行ったことがないらしくて、普段は他の従業員の方にお任せしているんです。」


 会社グループのトップはどこもそんなところだろうね。

 若い頃、ホテルの会社でも社長の顔を見たのは一度だけだった。


「実は先日、連れにアリアドナサルダ本店に連れて行かれましてね。

 女性専門かと思って嫌々だったんですが、男性の物も売れていたんですね。

 恥ずかしながら、私も下着を買わせてもらいました。」


 実はトランクスが一枚銅貨五枚、ビキニパンツが銅貨三枚と、五千円と三千円相当だからなかなかの高級品である。

 ファッションセンターしままちの物だと五千円で二十枚くらい買えそうだ。


「ええ!? そうなんですか? どうもありがとうございます!

 どんなものをご購入なされたのでしょうか?」


 レイナちゃんが目をキラキラさせながら、まさかこんな純真そうな子が下着の話に食いついてくるとは思わなかった。

 エリカさんが買った男性向けランジェリーは黙っておこう。


「あぁ、柄物のトランクスと黒いビキニパンツを三枚ずつです…。」


 中学生くらいの女の子にこんなことを答えるのは恥ずかしい…。

 反対に私からどんなぱんつ履いてんの?って聞いたら軽蔑されるだろうか?


「素敵です! マヤ様にはきっとどれもお似合いだと思いますよ!」


 そう言いながら私の私の下半身を見つめるレイナちゃん。

 この子も変わった子だった…。


「うふふ。

 レイナは勿論、私とレティシアもアリアドナサルダの下着を履いているんですよ。

 貴族の女の子には御用達のお店なんです。」

「はわわわわわわわ エステラったらそんなことを…。うぅ…」


 エステラちゃんはそう言いながら立ち上がり、両手でスカートの裾を持ち上げて「何でここでカーテシー?」と思ったら、ぱんつがぎりぎり見えそうで見えない位置で止めて、小悪魔っぽく微笑んでいる。

 おませな子が私をからかっているだけなんだか、どうしても綺麗で可愛い太股に目線が行ってしまうのはムッツリの(さが)なのか。

 あともう少しなのにっ 残念。


「うーん、コホン。レイナさん、お茶のお代わりを頂けますか?」

「あっ はい!」


 ごまかすためにお茶のお代わりを頼んだが、ポットのお湯が切れているようで、レイナちゃんは水魔法で小さな水玉を作ってポットに入れ、火の魔法でお湯を沸かしていた。


「へぇー、レイナさんは水と火の対属性の魔法を使えるなんて、珍しいですね。」

「ええ、生活魔法や簡単な攻撃魔法だけですが、水属性と火属性が使えるんです。

 マヤ様はどの属性をお使いになられるんですか?」

「私は水、風、光、闇の四属性が使えるんです。」

「すごいです! 闇の魔法が使える方には初めてお会いしました!

 もしかして、王宮や魔物退治で飛んでいたのが闇の魔法なんですか?」

「ご明察です。動くには風魔法と併用しなければいけませんが、慣れるとなかなか便利ですよ。」


 そう言いながら、レイナちゃんが入れ直してくれたミントティーを飲む。

 私はあまり自慢話で優越感を満たすことを好まないが、時には女の子にちやほやされてみるのもいいものだ。

 うーん、お茶が美味い。


「あのっ マヤ様!

 私も王宮で小さな子を抱いて飛んでみたようにしてもらえますか?」


「あぁ…、それはやめたほうが…。

 そのスカートでは下着が見えたらいけないので。ははは」


「そ、そうですね。私ったら…。」


「じゃあマヤ様だけ飛んで見せてもらったらどうですか?」


 そう提案してきたのはエステラちゃんだった。


「それだけなら問題無いですよ。」


 私たちは一旦席を外して、すぐそこの噴水が近いところまで集まった。


「じゃあ、いきますよ。」


 外なので遠慮無く私はグラヴィティと風魔法を同時に発動して浮きかけたその時。

 彼女らにふわりと風が舞い上がり、スカートが(めく)れてしまった。


「きゃっ!」

「え!?」


 エステラちゃんは黒のレースで少し透けてる大人ぱんつ、レティシアちゃんはなんと淡いピンクの紐パン。

 そしてレイナちゃんは…しゅ、しゅごい。

 腰の紐が3ラインで股間が透け透け蝶々レースの白いセクシーぱんつ!


「あっ…」


 私はそこで固まってしまった。


「マヤ様…、見ましたね? うふふ」


 まさか、エステラちゃんはわざと私に風魔法でスカートを捲らせたわけではあるまいな?

 さっき私は風魔法と併用するって言っていたことから思いついたのか?


 レイナちゃんはモジモジと顔を真っ赤にし、レティシアちゃんは両手で顔を塞いでいる。

 エステラちゃんは腰に手を据え堂々としている。

 しかし何のために?


「さあ、みんなの下着を見てしまったんですから、マヤ様の下着も見せてもらえますか?」


 エステラちゃんがそう煽ってきたが、なんでまだ?

 私の勝手予想だが、まさかレイナちゃんが私の下着について興味津々だったから彼女に見せてやりたいと?

 ずいぶん回りくどいが、自分たちから見せないように偶然を装って私にぱんつを見させて、見返りにということか?

 訳が分からんが、恐ろしい子!


「あのう、見せるもなにもこんな外では…。」

「ガゼボのテーブルが陰になりますから、大丈夫ですよ。」

「はぁ…。」


 なんて乱暴な。

 四人でまたガゼボに戻り、私が座ると両側ににエステラちゃんとレイナちゃんが座り、レイナちゃんの隣にレティシアちゃんがどぎまぎしながらのぞき込むように座る。


「で、どうすればいいのかな…?」

「そのままズボンを降ろして下さい。」と、エステラちゃん。

「はあ。」


 自分でもなんで中学生みたいな子相手にこうも素直にぱんつを見せてやろうと気になるのだろうか不思議だ。

 たぶん普段から女性の前でぱんつを脱ぎまくって麻痺しているのだろう。

 私はベルトを外し、ズボンをずらす。

 三人ともドキドキしながらの表情で見つめている。恥ずかしい…。


「マヤ様、す、素敵です…。思った通りお似合いです!」

「きゃっ これが男の子の…。」

「はわわわわわわわ。」


 ありゃ、トランクスを履いてきたかと思ったら、ビキニパンツだった。

 このもっこりは若い女の子には刺激的だったか…。


「そろそろいいだろうか…。」

「ごめんなさい! もういいですよ…。」

「えー 私はもうちょっと見たいなあ。」

「はわわわわわわ。」


 エステラちゃんの期待に応えず、私はズボンを上げて元通りにした。


「マヤ様! ありがとうございます!

 私、男性が下着を履いているところを見たことが無くて、とても参考になりました!

 いつかお母様と一緒に仕事をすることになりそうなので、実際に男性が履いてらっしゃるお姿を常々見たいと思っておりました。

 でもそんなお願いを聞いて下さる若い男性が…私は男性が少し怖いのでなかなか出来なかったのです。

 でもすごい偶然でしたが、お優しいマヤ様の下着を拝見することが出来て感激です!」


「ああ、そりゃどうも…。ははは…」

「あの…、私の下着はお母様に勧められて試着しているものなので…。」

「うん、とても素敵でセクシーでしたよ。うん」

「そうですか!? ありがとうございます!」


 下着メーカーの社長の身内ってそうなの?

 開発元の従業員が試着するという話は聞いたことがあるが。


「ああああ~ マヤ様の、男の子の股間…、なんて刺激的なのでしょう!」


 エステラちゃんが何かおかしくなっている。


「はわわわ 殿方の大事なところ… おろおろおろ」


 レティシアちゃんは両手で頬を押さえてキョドっている。

 ああ、もういいや。ちょっと落ち着こう。


「レイナさん、すみませんがまたお茶のお代わりを頂けますか?

 とても美味しいのですごく気に入りました。」


「あ、はい! マヤ様にそうおっしゃって頂けてとても嬉しいです!」


 レイナちゃんは魔法でお湯を沸かし直して、ティーカップにミントティーを入れてくれた。


 ブゥーーーン


「あっ (あぶ)が腕に。」


「きゃあ!」


 中庭の花壇から飛んできた虻が、お茶が入っているティーカップを持っているレイナちゃんの腕に止まった。

 レイナちゃんはびっくりして、よりによって熱いお茶が私の股間にかかってしまった。


「あちちちっ」


「ああ! ごめんなさい!」


 幸い女神ぱんつだったからたぶん大丈夫だと思うが、私は念のため素早くスモールリカバリーを股間にかけて、大事をしのいだ。

 極端に熱くなかったし、こんなところでも女神ぱんつが役に立つとは。


「申し訳ありません! 大事なお客様に私はなんてことを…。グスン」

「いやいや、泣かなくていいから。分身…、いや身体は無事ですよ。」

「グスン…」


 ズボンを拭こうにも、台拭きのカウンタークロスしかない。

 このまま飛んで帰るなら差し支えないか。

 ルナちゃんに頼んで洗ってもらおう。


「ああ、せっかくだったけれど、このままお暇しますね。」

「いけません、どうかお詫びをさせて下さい!

 屋敷で替えの物を準備しますので。」

「あの…、お願いします…。」


 このまま帰るとレイナちゃんの気持ちにずっとわだかまりが残ってしまうだろうから、ここはお言葉に甘えるしかないな。

 それで私はインファンテ家のお屋敷にお邪魔することになった。


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