3.本当は。
そんなことを思いながら机に突っ伏していると、ちょんちょんと肩をつつかれた。
起き上がると僕の親友である青葉海斗が立っていた。
『遥人、知ってる?』
スッとホワイトボードを差し出してくる。
唐突の文章に首を傾げていると、海斗が何かを書き殴る。
『過去に繋がるポストの話』
興味深い文章に僕も自分のボードを取り出して返事を書く。
『なにそれ?』
『三組の女子に聞いたんだけど、神崎神社の前に白いポストがあるらしくて』
___その文章を見た瞬間、僕の心臓が跳ね上がる。
神崎神社は、咲良の実家だ。
『そのポストに手紙入れると過去に届くんだって』
そこまで書いて、海斗がちらりとこちらを見て、また視線を戻す。
『でも本当に過去に伝えたいことがある人にしか見えないらしい』
『そんなうまい話があるの? なんか胡散臭い……』
そしてまた顔を見合わせて笑う。
『でも、いきなりなんで? 俺とポストに関連あったっけ』
『また考え込んでるみたいだったから』
さらりと僕の心を読んでくる海斗。さすが親友。
『書いてみれば? 届かなくてもさ』
揺らいでるだろ、と書き足して口角をあげる彼を見やり、僕は天を仰いだ。
そうだ、海斗の言う通り僕の気持ちは揺らいでいた。
僕はどうすればいい? どうするのが正解なんだろう。
そう思いつつも、きっとどこかで答えは決まっていた。
___届かなくてもいい、これがけじめになるなら、君に手紙を書くことにしよう。
『決めた、気休め程度に書いてみるよ』
そう書くと、海斗は嬉しそうに笑い、僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。
“拝啓、神崎咲良様 元気ですか? 君と出会って、三度目の春が来ました。二年になってからできた親友に、過去に繋がるポストの話を聞いたのでこうして手紙を書いています。恥ずかしいことに僕は君がいない世界に馴染めずにいて、まだどこかで君の姿を探しています。街中で君に似た姿をしている人を見ては君じゃないかなんて思って、違う人だと認識した途端、君の”
そこまで書いて、はたと思った。
君は未来に自分がいないことを知らない。
過去で、僕の隣で生きている。
笑っている。
そう思った瞬間、なにかが崩れ落ちた気がした。
過去では君は生きていて、だけど今君は僕の隣にいなくて。
その事実に、頭がおかしくなりそうだった。
ぐるぐる考えているうちに、手紙を書く手が止まる。
……やっぱり、君のいない世界なんて。
ああ、今日はもういいや。