幼なじみ
四話目の投稿です。
この後、もう一話投稿予定です!
ご意見、ご感想お待ちしておりますm(_ _)m
「七海、またこんな所で変な想像してるのか?」
ベンチに座り文庫本に目を落とす七海に声を掛ける男子学生。
大法院誠
七海の幼稚園の頃からの幼なじみであり、周りから距離を置かれている彼女に対し、唯一普通に接してくれる男友達だ。また、家族以外で七海のオタク度合いを唯一知る人物でもある。
「変な想像って失礼ね! マリリンの何処が変なのよ!!」
ため息を吐く誠……
いや……、周りに知られると変に思われてるから隠してるんだろ?
などとは口が裂けても言えない……
以前に似たような事を言ってしまい酷い目にあった……、何故隠さなければならないのか永遠、永遠語られてしまったのだ!
ちょうど日曜日だったのもあるが、近所に住む誠がちょっとコンビニに買い物に出掛けた際、偶然七海と遭遇。
七海も買い物帰りだったのだろう、買い物袋を手に持っていた。
恐らくまたマリリングッズ、しかもそれと気づかれないようにその買った店とは違う包装紙で包み直し、手さげバックも持参である。
「なあ、そんな手の込んだ事しなくちゃならない程、隠さなきゃならないものなのか? 昨今アニオタなんて普通だと思うぞ?」
何気に言った一言……、それが不味かった……
別に彼女は隠している訳ではないと言う。確かに俺は知っているし、俺の前では普通に昨日見たマリリンの素晴らしさを説いてくる……
なら何故? 彼女曰くマリリンを否定されたく無いらしい。
「だってね、人にはそれぞれ趣味趣向があるでしょ? 合う人もいれば合わない人もいる。もしマリリンの素晴らしさが分からない人がいるとしたら……私、マリリンの素晴らしさを知って貰う為にトコトン語ってしまうと思うの! ちなみに誠がマリリンの素晴らしさを否定したと仮定して語ってみる?」
などと言い出し、何気に頷いてから……永遠だった……
もう遅いから一旦帰ろう、家族も心配しているよ? と宥めすかし家に帰らせたのだが次の朝……俺の家の前で待つ彼女……
登校中も休憩時間もお昼も俺のクラスに押し掛け、マリリンの素晴らしさを説く……
泣いて勘弁してくれと頭を下げた事を思い出す。
永遠のマリリンの素晴らしさを語られるのも辛いのだが、それよりも周りの目が恐い……
七海は学園のマドンナである。
その七海と一緒に登校し、休憩時間の度、俺のクラスに押し掛けヒソヒソ話しては満面の笑を浮かべる……
男共からの殺意を感じた……
一応、七海とは幼い頃からの幼なじみという事で認知はされている。また俺が大法院家の人間という事で直接文句を言って来る者はいない。
大法院家……歴代の総理を輩出し、この街、いや! この国を裏で操っていると噂される一族である。
誠の父はこの学園の理事も務め、七海の家族とも交流が深い。
なんでもこの街の合併や学園の設立には、誠の父と七海の父が裏で動いていたとかいないとか……
という訳で、この学園内で誠に危害を加えようなどと考える勇者は存在しない。
だが……聞いた話しによると、一緒に登校、休憩時間に誠のクラスに来るのはまだ我慢できたらしい。
皆頭では理解しているのだ! 誠は七海の幼なじみであると! 学園のマドンナである為か、友達の少ない七海……それには皆気付いていて、自分達が崇めているが為に、七海に友達が出来ないのだと肩を落としてはいた……まあだからといって崇めるのを止めたりはしないのだが……
だからこそ、唯一学園内で親しくしている俺もある程度は認められているらしい……
だが……俺とコソコソと話しながら七海が見せたあの満面の笑み! あれがいけなかった様だ……
普段七海は周りの生徒達に少し微笑む事はあっても(それでもキュン死する輩が続出するのだが……)あんな満面の笑みを見せる事はまずない!
マリリンを語るだけで嬉しすぎて笑顔になっているだけなのだが、ヒソヒソ声で話している為、周りの男共にはそんな事は分からない。
ただただ七海にそんな笑顔をさせる誠が羨ましく妬ましい……
仲良くしている友に肩に手を置かれ、言われた言葉に恐怖を覚えた。
「まあ、お前に何かしようなんて考える勇者はいないだろうけど……なんだがな……勇者より魔王が生まれそうな気配だ……気をつけろよ……」
ま、魔王!!!
それ以来、学園では七海とは距離を置いている。
なのに思わず声を掛けてしまった……文庫本に目を落とし澄ましているが、頬がヒクヒクしていたのだ……あれ、絶対読んでないだろ……
「いや、マリリンが変だとは言ってないだろ?」
お前が変なんだ!! なんて言わないよ……絶対。
「まあ良いわ、それより……今気付いたけど何か変な感じしない?」
本を閉じ周りを見渡す七海。次の瞬間……
ドカーーン!!!
ば、爆発音!? 学園の創立記念碑が建つ辺りか? あんな所に爆発物?
「俺ちょっと見てくるよ! 七海はここにいろよ、なんか危なそうだからな!」
「なんでよ! 私も行くわよ、気になるじゃない!!」
……言い出したら聞かないんだよな……
「……分かったよ! けどなんかあったら不味いから俺から離れるんじゃないぞ!」
「うん!」
七海と誠、爆発音のする方へかけて行く。
そこでとんでもない事になるのだが……そうとはまだ知らない七海と誠であった。
魔王……カタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ