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霧が濃くなり夜を告げる。暗がりに響く地を掘る音。それは一晩中続き、暁の空が広がる頃には多くの墓石が並んでいた。
シルアの墓の前で夜を明かす。木々を分け、光が差し込む。何十人といた奴隷や衛兵の影はなく、無数の墓石が並ぶ。
「僕は、この世界で何をすればいいのか分からないや」
「キリューがやりたい事、見つければいいんだよ!」
「でも僕は奴隷だ。あの中にシルアを殺した男がいなかった。どんなにあがいても奴隷でしかないんだ」
フィアナはキリユウの手に触れると手足が軽くなる。重々しいものが地におち、土埃を立てる。
「うみゅ! 今から奴隷じゃなくなりました!」
枷が外れ、視界が開ける。紅蓮の瞳がフィアナを捉える。フィアナは、陽気な笑みを見せる。奴隷として働くことしかしなかったキリユウには笑顔とは無縁であった。シルアが見せた笑顔と同じ、笑みに目を惹かれる。
「ねぇ、キリュー。フィアと一緒に来てくれない?」
差し出された手は同じ痣のついたものだが、キリユウにとってはとても儚く、綺麗に見える。
運命の歯車は一つ一つ噛み合っていく。