やっと帝に会えるかも
帝都にやって来てから十一日、未だに謁見は叶っていなかった。家老達は影奏の部屋に集まり、今後のことについて相談し合っている。
「どうしましょうか?」
疲れきった表情の苑宰が、皆に今後のことを問う。
「これ以上粘っても無意味じゃ! 帰って戦……」
前回同様、過激な発言の目立つ江宰。だが、影奏の睨みによりそれ以上は言わなかった。こんな状況では、一挙手一投足に注意を払わねばならない。
「今日も謁見は無しだろうな……。」
白く燃え尽きた格好をした金宰が、つい弱音を吐いてしまう。室内はいっそう重苦しい空気に包まれる。そんな状況を打破しようと、影奏が提案をした。
「もう一度掛け合ってみましょう。それで駄目だったら、その時はお暇すると言うことでどうですか?」
皆一様に、期待などしていないようだ。それでも、万が一と言うこともある。最後の賭けとばかりに、四人は暁権の部屋へ向かおうと立ち上がる。その時、扉の向こうから暁権の声がした。
「おはようございます。 入ってもよろしいですか?」
この十一日間、暁権の方から訪ねてくることなど一度もなかった為、四人は顔を見合わせて不思議がる。
「どうぞ。」
影奏に許しを得ると、暁権は文官を二人連れて入ってきた。そして、頭を深々と下げ、祝いの言葉を述べた。
「お喜びください。 帝が皆様にお会いになると仰っております。」
思いも寄らぬことに、重苦しかった空気は一瞬で晴れた。
「真ですか?」
「はい。 申し訳ありませんが、急ぎ支度を整えてください。」
「分かりました。 」
かくして、影奏達は正装に身を包み、貢ぎ物を持って、玉座へと向かった。




