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異世界戦記は何気にハード  作者: ポン害山城
准救編
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勝って財布の紐締めよ

 賊の討伐で名を上げた玲祈だったが、その生活は非常に苦しいものだった。手柄を挙げた末に与えられた領地は、賊に支配され荒廃した土地であり、兵も百人以上与えられることはなかった。


「ふう、疲れた。」


 現在、玲祈は農民や兵達にまじって開墾の真っ最中だ。仕事が一段落すると、玲祈は石に腰を下ろした。


「いやぁ、姫様は鍬の扱いに長けておりますな。」


「西大陸にいた頃は毎日やってたからね。」


「道理で上手いわけだ!」


 前回、徳壁が言っていた通り、玲祈は兵や民衆から絶大な信頼を得ていた。賊の討伐もそうだが、身分関係なく普通に接してくれると言うのが大きいらしい。


 今日やる分の開墾が終わると、影晶が式神に台車を引かせてやって来た。台車の上には、金銭の入った袋が山とつまれている。影晶がやって来ると、人々はこぞって台車の前に集まった。


「じゃあ皆、三列に並んで~!」


 玲祈の指示に従い、人々は三列に並んだ。全員が並び終わると、玲祈と影晶と式神から、金銭の詰まった袋が手渡される。この金銭は、玲祈が賊の討伐で得たものであり、今日の開墾に参加した人々への報酬である。




 その夜、玲祈は影晶と二人で夕食をとっていた。のだが、二人の前にあるのは白いご飯でも魚でもなく、チーズを乗せて蒸かしたじゃがいもであった。


「ハフッ、ハフッハフッ」


 そのじゃがいもを、玲祈ははふはふと美味しそうに頬張っている。その幸せそうな顔は、まるで天使の笑みのようである。


「姫様は本当にお芋がお好きですね。」


「小さい頃から食べてきたからね。何だか食べると安心するの。

 ……、」


 突然、玲祈は黙りこんでしまった。


「どうかなさいましたか?」


「いや、苦労させちゃって悪いなって思って。」


 昼間の開墾の時のように、玲祈は報酬のほとんどを兵や民衆に分配している。それは、これまで困窮していた者達の生活を、少しでも楽にしてやろうというものだった。


「何を考えているかと思えば、そんなことを気になさっているのですか? 姫様が民のことを思ってやっているのですから、咎めたりはしません。」


「そうじゃないの。 これまで何度も助けてもらってるのに、まだ何も返せてないから心苦しくて。」


「うふふ、姫様はお優しいですね。 ですが、そのようなことは気になさらないで下さい。姫様を支えるのが私の役目ですから。」


「それだとあたしの気がすまないの! 手近なことでもいいから、何でも言って!」


 どうしても何か恩返しがしたいと言い張る玲祈に対し、影晶はどのような返答をするのだろうか。


「でしたら、一つお願いがあります。」


「なに!」


「寝ぼけて私の胸に顔を埋めて、匂いを嗅ぐのをやめて下さい。意外とくすぐったいんですよ。」


「そ、それは……」


「あら? 聞いてくださらないんですの?」


「うっ、でも……」


 結局、玲祈は影晶の願いを聞くか否かは明言せず、その日一日は終わった。




 翌日、この日は一日何もない日であった。玲祈は庭先の小さな畑の手入れに力を入れ、影晶も縁側でお茶を飲みながら優雅に読書をしている。そんな時に、とある来客がやって来た。その来客は、後の玲祈に大きく関わることとなる人物なのだが、その事はまだ誰も知らない。

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