式神たくさん大撹乱
玲祈と影晶の脱獄は、すぐ暁権に察知され、壁という壁に結界を張られてしまった。そこで二人は、城の裏門へ向かっている。
影晶に手を引かれた玲祈は、影晶の背中を見ていた。影奏と似通ってはいるものの、どこか違うその背中に妙な感情を抱いている。
(なんか落ち着く。)
「あれま。」
突然、影晶の歩みが止まり、玲祈はその背中に顔をぶつけてしまう。
「ど、どうしたの?」
「裏門が封鎖されていますね。」
「やっぱり駄目だったね……」
「そんなことはありません。」
すると影晶は、袖口から小さな紙人形を取り出す。
「それって、式神?」
「はい。この子達に、一仕事してもらいましょう。」
一方、玲祈を捕らえることを命じられた暁権は、私兵を全て動員して捜索に当たっていた。その隣で、冥興は暁権をじっと見つめている。
「どうかしましたか?」
「珍しく慌ててるんでな。」
「でしょうね。」
「そんなに凄い奴なのか?」
暁権は水晶玉を取り出すと、それを冥興に見せた。水晶玉の中では、様々な色の光がちかちかと点滅している。緑や青、そして、中心には一際大きな真っ赤な光がある。
「なんだこれ?」
「この光は、私の結界内にいる術者の魔力を示しています。 緑や青は我が軍の術者、どちらも平均値です。そして、この赤い光が、今回の侵入者のものです。」
「桁違いだな!」
専門外のこととは言え、強い者と分かっては、冥興も落ち着いてはいられない。だが、暁権は別の任務を言い渡した。
「あなたには万が一の場合に備え、出陣の支度をしておいてもらいます。」
「ちっ、まぁいい。行ってくる。」
そんな矢先、一人の兵が駆け込んできた。
「丞相! 玲祈を捕縛しました!」
「意外と早かったですね。ここまで連れてきなさい。」
「御意っ!」
その瞬間、別の兵が駆け込んでくる。
「お喜びください! 北門付近にて、玲祈を捕縛致しましたっ!」
それに続き、続々と同様の報せが舞い込んでくる。しかも、捕縛した場所は、兵によってまちまちであった。
それから数分経過すると、複数の玲祈が連れてこられた。その数、なんと十五人。連れてきた兵達も、各々の連れてきた玲祈を見て困惑している。
「どう言うことだよ?」
「恐らく、式神でしょう。」
暁権が印を結び、手を左に凪ぎ払うと、玲祈もとい式神は、一つ残らず紙人形に戻ってしまった。それを見た暁権は、その場にいる兵達に指示を飛ばす。
「皆さん、一人でいる玲祈は式神です。本物の玲祈は深傷を負っており一人では逃げられません。術者と共に行動しているはずです。この事を各所に伝え、ただちに玲祈を捕縛しなさい。」
「「「御意っ!」」」




