燃える雄黄さぁ逃げろ
雄黄軍は完敗した。金統家の裏切りにより主な城は爆破され、残りの城は全て眞と金統の軍勢に占領された。
緑豊かだった雄黄国に火が放たれ、赤々と燃えている。その光景を、暁権と流玄は静かに見つめている。
「大義でした。 帝もお喜びになっていることでしょう。」
「帝にお喜びいただけるとは、この流玄、末代までの栄誉にございます。」
恵比寿様のような満面の笑みで、暁権にぺこぺこする流玄。玲祈を裏切っておきながら平然と胡麻をすれるのは、成り上がりの真髄とも言えよう。
「火が消えたら、雄黄城跡の清掃をお願いします。」
「はい、承知しました。 しかし、一つ気になることがあるのですが、伺ってもよろしいですか?」
流玄は、上目遣いで手を擦りながら暁権に問いかける。それに対し暁権は、一切目線を合わせることなく返答した。
「私に答えられることなら何なりと。」
「何故帝は、この様な半島を欲しておられるのですか? 山ばかりな上に鉱石も採れない、石高も実りも少ない。あるのは温泉くらいのものですぞ?」
この問いを聞き終えた瞬間、暁権は怒りの形相で流玄を叱りつけた。
「その様なこと、あなたが知る必要はありません。」
「あ……申し訳ありません。」
燃える盛る故郷を、玲祈は山道から見つめていた。滝のように涙を流し、深く絶望している様は、哀れで、とても声などかけられない。そんな玲祈の隣に影奏は寄り添い、宥めていた。
「ねぇ、影奏……」
「はい。」
「兵は何人残ってる?」
その問いに、影奏の表情が曇る。
「“私を含めて七人です”」
「そう……」
そしてまた、玲祈は大粒の涙を溢す。




