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異世界戦記は何気にハード  作者: ポン害山城
雄黄編
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連合なのにまとまらず

 城へ戻った玲祈は、本丸の風呂場へ直行する。山国である雄黄国には多くの火山が存在しており、その産物である温泉が無数にある。なので一家に一つ、かけ流しの温泉があるのだ。


「ふぅ」


 泥を洗い流し、玲祈は湯船に浸かる。とは言え、ゆっくりしている暇などない。戸を隔てて、影奏が催促してくる。


「姫様、なるべく早く出てくださいね。」


「分かってるよぉ」


 と言いつつも、玲祈はなかなか上がろうとしない。余程気持ちいいのだろう。

 ここで、影奏の怒気をはらんだ声が響いた。


「ひ・め・さ・ま?」


「今上がるから待って。」


 玲祈は渋々風呂から上がり、脱衣場へ入った。脱衣場では影奏の他に、女官が二人待機しており、玲祈の着替えを開始する。

 着替えの間に、影奏は玲祈に対し注意事項を伝える。


「姫様、何を言われても、動じてはなりません。 特に、苑儒(えんじゅ)様にはお気をつけを。」


「安心して。これでも領主だから。ちゃんとやり遂げて見せるよ。」


 玲祈は満面の笑みを見せる。当主になってから早五年、玲祈も一端の領主になってきた。


「分かりました。これ以上は何も申しません。気張って下さい。」


「うん!」







 さて、着替えを済ませた玲祈と影奏は、会談場所となる寺へと移動した。これからやって来る大名は三人。いずれも雄黄国とは比べ物にならない国力を有している。


 玲祈と影奏は寺の門前に立ち、大名達の到着を待つ。少しすると、一人目の大名がやってきた。公家装束に薄化粧、大名だけでなく、その臣下の装いも華美である。


江喜(ごうき)殿、お久し振りです。」


「うむ。 出迎え、かたじけない。」



江喜双歩(ごうきのそうほ)』……雄黄国の西に隣接する江喜国の大名。西大陸でも有数の歴史を持つ名族である。



 臣下達に指示を出し馬から降りると、双歩は扇をひらひらと扇ぎながら玲祈に近づく。その表情は、緊張をはらんでいた。


「どうかなさいましたか?」


「実は、玲祈殿に頼みがある。」


 それを聞くなり、玲祈は庭の隅に移動した。


「それで、頼みと言うのは?」


「此度の会合の主題は、勿論存じておろう?」


「はい。 最近勢力を増している“(しん)”についてですよね。」


「うむ。恐らく、苑儒殿は徹底抗戦を唱えるであろう。そこで、本番になったら、そなたには非戦を唱えていただきたい。」


 不思議な頼み事であった。国力や年齢を考慮すると、明らかに双歩の方が発言力が高い。だが、こんな頼み事をするのには理由があった。


「構いませんが、あたしから言うより、江喜殿が仰った方がいいと思いますよ。」


 双歩は小さくため息をついた。


「そなたの言うことはもっともだ。だが、そうもいかん。我が臣下達の殆どが徹底抗戦を唱えておる。表立って非戦を唱える訳にはいかん。どうか、頼む。」


「そう言うことでしたら、出来る限りのことをさせていただきます。」


「頼むぞ。」


 深々と頭を下げると、双歩は寺の中へと入っていった。

 大変な頼み事を引き受けてしまい、玲祈の表情が暗くなる。心なしか肩も重そうだ。そんな玲祈の事情とはお構いなしに、二人目の大名がやって来る。


「玲祈殿、久しいな。」



苑儒蓮介(えんじゅのれんかい)』……雄黄国の北に隣接する苑儒国の大名。国衆からのし上がった傑物である。



「お久し振りです。」


 暗い表情から一変、玲祈は瞬時に笑顔を作る。蓮介が来たと知ると、影奏が駆け付けた。


「苑儒様、よくぞお越しくださいました。部屋へご案内します。」


 風呂場で話していたように、蓮介は要注意人物。影奏は一刻も早く玲祈から蓮介を引き剥がそうとする。


「頼むぞ。」


 にこやかに話す蓮介。一見すると警戒するようなことは無さそうだ。


(良かった、何も言われなかった。)


 玲祈は、ほっと胸を撫で下ろす。


「玲祈殿。」


 すれ違い様に、蓮介が口を開く。


「は、はい。」


「世の中には、話し合いでは解決できぬ事もある。 そのこと、努々忘れぬように。」


 小さいながらもどすのきいた声が、玲祈の耳に響いた。玲祈と違い、蓮介は数多の戦を駆け抜けている。その迫力は凄まじい。

 玲祈はぐっと歯を食い縛った。


 それから三十分後、ようやく最後の大名がやってきた。その見た目は一言で言うならば、小太りの中年である。


「これはこれは玲祈殿、暫く会わぬ内にまた美しくなられたのぅ。」



金統流玄(きんとうのりゅうげん)』……元商人。婚姻政策で金統家の当主の外祖父の地位を得る。金統家の事実上の支配者。



「うふふ、お上手ですね。誉めても何も出ませんよ。」


「本心を申したまでよ。して、他の二人はもう到着したのか?」


「はい。」


「そうか、では参ろう。」


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