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異世界戦記は何気にハード  作者: ポン害山城
雄黄編
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十三倍はキツすぎる

 “逆賊、江喜双歩を匿いしこと、許し難い。これより、総力を上げて、雄黄国へ侵攻する。”


 眞からの宣戦布告。それは、抗い難い嵐であった。


 以前、影奏が帝都に残した部下が、眞軍の内訳を事細かに報せる。


「眞の軍勢は四十万。 その内、弓兵が十万、騎兵は七万おります。 なお、兵糧は半年分存在します。」


「分かった。もう下がっていいぞ。」


「はい。」


 部下を下がらせると、影奏は難しい顔になる。何せ、兵力も武器も兵糧も、雄黄軍とは桁違いなのだから、無理もない。特に兵力に至っては、雄黄軍の十三倍もある。まともに戦っても勝ち目はない。


 宣戦布告されたその日、緊急の軍議が執り行われた。最早、戦う以外の選択肢はない。降伏すれば死、負けても死が待っている。

 軍議は大広間で執り行われた。そこには全武将に加え、江喜家の面々も出揃っている。

 出席者を一望すると、玲祈は軍議を開始した。


「今回の戦は、西方に位置する胡久原(こくはら)城、栃瀬山(とちせやま)城、琿陀羅(ぐんだら)城の三城で、敵を迎え撃つ。 影奏、内訳を。」


「はい。では、内訳を発表します。 胡久原城には献突(こんとつ)殿、栃瀬山城には奈良鞍(ならくら)殿、琿陀羅城に私が入ります。城には各々七千の兵を入れます。

 なお、私は西方の総指揮も担当しますので、お二方は私の指示に従ってください。」


「「御意!」」


「次に、江喜様は琅尹(ろうゆん)城に留まり、必要に応じて後詰めをお頼みします。」


「承知した。」


「姫様は、この本城に残り、江喜様と同様に、後詰めをお願いします。」


「うん、分かった。

 じゃあ皆、出陣は明日の朝一番。頑張ってきてね。」


「「「御意!」」」








 出陣を明日に控えた夜、玲祈は縁側に輿を下ろし、一振りの刀を手にしていた。


(まさか、戦で使う日が来るなんてね。)


 この刀は、玲祈が母から譲り受けた品である。玲祈の母は、弱小領主でありながら、周辺諸国との戦に勝利し、遂には連合国結成の立役者となるなど、文武に優れた名将であった。だが、そんな名将も病には勝てず、幼い玲祈を残し、天へと旅立った。あまり物欲のない人物だったらしく、遺品と呼べる品は、この刀しかない。


「母上。 あたしは、母上みたいに勝てるかな?」


 月に向かい、玲祈はぽつりと呟いた。


「返事してくれるわけないか……」


 少しすると、玲祈はあることに気付いた。


(手が震えてる……、情けないよ……)


 自分の不甲斐なさを呪うかのように、玲祈は歯を食い縛る。同時に、震える右手を押さえ、右手を強く握った。


(でも、あたしが皆を守らなくちゃ。)


 全身の力を抜くと、玲祈は再び月を見つめた。その目には、不安と恐怖、そして何より、強い覚悟が宿っている。小さな国の、若い領主の覚悟。その覚悟が、花開くことを祈るばかりだ。







 出陣の前夜、影奏は自分の部屋で、駒と地図を使い、より多くの戦略を捻り出そうと努力していた。


(少し、気分転換でもするか。)


 時刻は深夜一時。殆どの文官武将は眠りについていた。そんな中、影奏は棚の中から水晶玉を取りだし、それを丁寧に磨き始める。


「おーい、起きてるか?」


 何故か影奏は、水晶玉に話しかける。すると、水晶玉に女の顔が映った。水晶玉の中の女は、眠そうに目を擦りながら返事をする。


『あら、珍しいわね、こんな時間に。』


「ちょっと、話したいことがあってさ。」



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