鬼の家老がお迎えに
東西二つの大陸が存在するこの世界は、百年にも及ぶ戦乱が続いていた。各地で群雄が割拠し、人々は乱世しか知らずにいる。
武眞時代。そう呼ばれたこの時代は、戦乱の世に新たな風を吹き込むこととなる。
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西大陸の最東端に雄黄と言う半島が存在する。ここには山に囲まれた小国が存在し、領主の雄黄氏の指導の下、緩衝国として独立と平和を維持してきた。
国の中心に位置する雄黄城。この城の一角にて、弓兵の調練が行われていた。
「位置につけっ!」
声高に指示を跳ばすのは、雄黄家の家老、月白影奏。豪勇で名を馳せる女将である。
「構え!」
弓兵が弓を引くと、正面に魔方陣が出現する。
「放てっ!」
影奏の号令と共に、前列の弓兵が矢を放つ。魔方陣を通過すると、矢は赤い光をまとい的に炸裂する。藁でできた的は黒く焦げ、大きな穴がぽっかりと空いた。
「よし、次!」
「あの、影奏様。」
使用人が重い足取りでやってきた。
「どうかしたか?」
使用人は少しばかり言いにくそうに口ごもっていたが、意を決し、とある報告をした。
「それが、姫様が外出してしまいまして。」
それを聞くなり、影奏から殺気が放たれる。兵も使用人も、なるべく目を合わせまいと視線をそらす。
「こんな日に限って(怒) お前たちは鍛練を続けろ! 私は姫様を連れ戻してくる!」
「御意っ!」
指示を出し終えるなり、影奏は厩舎から一角獣を連れ出し、勢いよく駆け出した。