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非科学な科学部のアリスな白昼夢

非科学な科学部のアリスな白昼夢 ~昆虫採集編~

登場人物紹介 (全話共通)


 カメヤマ ナオキ


 高1。身長150㎝のもやしっ子。近年稀に見るおかっぱ頭が特徴的。とにかく気が弱い。注射の針を見ただけで泣く。女子と目が合うだけで失神する。


 オモダカ レイカ


 高二。身長154㎝。闇の帝王のような話し方をする。粘り着くようなジト目。彼女を見た者はその後一週間は出会う人全てがジト目に見えると言われている。麺派。小麦製品をこよなく愛するが、米は大嫌いである。厨二病で、今すぐにでも革命を起こして全世界から米を抹消せねばならないと考えている。日々カメヤマを革命軍の一員にしようと洗脳に躍起になっている。


 アボガドロ


 高3。身長は2mを超える大男だが、なで肩で体格は良くない。本名不詳。目が異様に大きく、化学者のアボガドロの肖像画に似ていることから「アボガドロ」と呼ばれている。神を自称しているが、信仰してくれているのはオモダカのみ。胡散臭いオーラを放っているため、近づく者は少ない。




 以上が理科部の人物紹介となる。

 だが、読者諸氏はあまりこの情報を信頼しないで頂きたい。

 ここからは、全ての性質、全ての現象、全ての法則、全ての概念は歪められうる。

 ガチョウに乗った人は空を飛びうるし、仔犬のしっぽからは子供が生まれうる。


 この門をくぐる者は、一切の常識を捨てよ。


 ぼくは昆虫が大好きです。


 ある日、ぼくはカノウモビックリミトキハニドビックリササキリモドキを捕まえに森に行こうと思いました。


 すると、高3のアボガドロ先輩が心配そうな顔をして言います。


「カメヤマ君、森には悪霊がいっぱいだ。魔除けにこれを持って行きなさい」


 先輩が差し出したのは、オモダカ先輩です。


「いやです。絶対持って行きたくありません」


「なんでだ?」


「だってぼく、オモダカ先輩がきらいなんです」


「きみ、好き嫌いはいけないよ。神の言うことはちゃんと聞きなさい。悪霊に取り憑かれたらどうするんだ」


 その後、同じやりとりが百三十八回続いたあと、結局ぼくが折れてオモダカ先輩を持っていくことにしました。


 ぼくはオモダカ先輩を鞄のストラップにして森へ行きました。


 オモダカ先輩はわがままです。


 森の真ん中で小豆バーを食わせろと地団駄踏みます。ぼくは丸一日かけてやっと崖に生えてる小豆バーを取ってきたのですが、大人しかったのはそれを食べている間だけで、食べ終わると今度は革命軍に入らないかとしつこく勧誘してきます。


 小豆バーを取るので疲れているのに夜通しご飯派殲滅革命の話をされて、ぼくはもう、ふらふらです。


 貧血になったぼくは、次の日、うっかり池にオモダカ先輩を落としてしまいました。


 内心ほっとしてその場をさっさと離れようとしていると、池の中から声をかけられます。


「あなたが落としたのは、金のオモダカ先輩ですか、銀のオモダカ先輩ですか」


 ギリシアの彫刻のような精霊が池から出てきて言います。


「ぼくはなにも落としてません。すみませんが急いでるんです。それじゃ」


 ぼくが逃げようとするも、精霊はぼくの前を回り込んできます。


「まあ謙虚ですねえ。そんなあなたに金の……」


「いりません。拒否します」


「まあ感心なこと!」


 精霊は金のオモダカ先輩を押しつけて去ってしまいました。


 仕方なくぼくは金のオモダカ先輩を鞄につけ、また昆虫採集を続けました。


 しかし、金のオモダカ先輩はすばらしい人でした。


 小豆バーを要求することもなければ、革命軍に勧誘することもありません。


 それどころか、一緒に昆虫採集を手伝ってくれました。


 目的のカノウモビックリミトキハニドビックリササキリモドキを採取し、ぼくは金のオモダカ先輩と理科室に帰りました。


 理科室には、アボガドロ先輩がいました。


「おお、帰ってきたか。カノウモビックリミトキハニドビックリササキリモドキはとれたかね」


「はい、とれました」


「それはよかった。ところで」


アボガドロ先輩は目を細めて金に輝くオモダカ先輩をじいっとみつめます。


「あれはなんだね」


「金になったオモダカ先輩です」


「金は光の象徴、光は神の象徴。とすると私の他にも神がいることになってしまう。よくないね」


 すると、金のオモダカ先輩も微笑みながら答えます。


「自分を唯一神と呼ぶなど、傲慢なのだ。反革命的であり、粛正されるべきなのだ」


 戦いは突然始まりました。


 オモダカ先輩が手を振り上げると宙に無数の小豆バーが出現します。それが一斉に矢のように空を裂き、轟音とともに理科室を破壊します。


 一方のカンザキ先輩は床一面を田圃に変え、米を見ただけで蕁麻疹がでるオモダカ先輩を発狂させます。


 もう理科室のなかは無茶苦茶です。


 神々の戦いの巻き添えを食らってはたまらないので、ぼくは急いで逃げました。


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