ブラッドタイプB
彼女がいつものように遅れてやってくる、歩道橋の向こうから手を振って。
やれやれ・・・と僕はいつものようにため息をつく。
彼女はいつも僕を振り回す、僕の都合なんておかまいなく。
今日もスタジアムに野球の試合を観に行こうと、突然の真夜中の電話。
「待った?ごめんごめん」息を切らした彼女が楽しそうに笑う。
「まぁ、今日は早いほうだったんじゃないかな?」僕はいたずらっぽく笑い返す。
僕はいつだって君のことを待ってばかりだよ、そう言いそうになって、慌てて
「お腹空いていない?何か食べようか」と尋ねた。
スタジアム近くのレストランで、ハンバーグをほおばる彼女は、まるで僕のことを男とは思っていない。大きな口をあけて、むしゃむしゃと食べる君はまるで子供のようだ。
でも、好きな人の前では、いつもどんな風に気取ってるの?
レストランを出ると、外はすっかり黄昏て、スタジアムの灯が巨大な宇宙船のように見えた。
彼女は人ごみをかき分けるように先を急ぎながら、もたついている僕の手を不意に握った。
一瞬、温かな彼女のぬくもりに僕の胸がドキリとする・・・。
「行くわよ」彼女はそう言うと僕の手を握ったまま走り出した。
彼女の血液型はB。きっと僕の気持ちなんか見えてないんだろう。
こうして僕は今日も彼女に振り回される。
でも、それが今は楽しいと思えるよ。