天秤
昼食の時間になった。みんな俺たちの避け、遠巻きに見ている。いや、観察していると言った方がいいか。殺人者と殺人者だと思われる二人だもんな。とここで冬本がこちらに寄ってきた。
「あなたは人狼じゃないの?」
「またか!俺は人狼じゃねぇし、この子も人狼じゃねぇ!」
なんとかしてこの子を助けないと。
「そんなこと知らないわ。事実はこの子は今夜死ぬということとあなたが明日の夜死ぬかもしれないってことよ」
冬本が笑い、こちらに顔を寄せてくる。
「だからあなたが人狼じゃないって証明できたら、明日の夜あなたには投票しないであげるわ」
「あんたがどうこうしたとこでどうしようもなんないだろ、それに証明ったってどうすればいいんだよ」
「あら、私は赤石さんと緑川さんと手を組んだのよ。だから三人分の投票がある」
よくこんなゲームで手を組もうと思ったな。考えてたことを読まれ、質問する前に補足される。
「といっても、お金だけの関係よ?1000万ずつあげたらすぐに仲間になってくれたわ」
金を自由に使っていいという説明はこういうことだったのか。
「それともう一つの質問にも答えるわ。あなたこの子に今夜投票しなさい。そしたら助けてあげる」
そんなこと絶対に・・・
「この子はもう助けない。それだけは決まってるわ。だったら自分だけは生きたいって思わない?それだけよ、じゃねぃ」
そう言って去っていった。
「どうしたの?」
メイちゃんが心配そうにこちらを見てくれる。
「大丈夫、ちょっと考え事だよ」
9時になった。一斉に一人の方向に向き始めた。そして俺は・・・
自分の命欲しさに、メイちゃんに指さした。全員一致でメイちゃんだった。メイちゃんが助かる術はなかったのだ。メイちゃんはガラス張りの部屋に入れられ、水を流し込まれ溺死した。俺はなにもできなかった。
『もうどうでもいい、みんな死んでしまえ』
そう思い始めていた自分がいた。