疑心暗鬼
「見たとおり、亡くなってきますね。死因は心臓を刃物で」
「そんなことはどうでもいいんだよ!」
医師という緑川秀二の報告を赤石楽が遮る。
「なんでこんなことになったんだよ、俺はまだやりたいこといっぱいあんだよ!」
と言い、ドアから外へ出ようとする。外へ出たら昨日の人みたいに蜂の巣だ。急いで彼の腕を掴む。
「今外に出たら死ぬんだって分かってんだろ!」
「だってよ・・・」
振り向いた彼の目には涙があった。
「怖ぇよ、だって今ここに殺人者がいるんだろ?そんなんじっとしてられっかよ!」
「そんなことぐらい俺だって知ってる!でもルールだと夜にしか殺せない、だから人狼を俺たちの手で見つけるんだ」
「なにその芝居、まさかそんなところで自分は人狼じゃありませんアピール?そんなことしても誰も信じてくれないわよ」マダム・・・じゃなくて秋野麗子が疑いをかけてくる。もちろん俺は必死に反論する。
「ふざけんな!俺は人狼じゃねぇよ!村人だ」
「そうやってムキになって反論するところが人狼らしいわ」
「そんなこ」
思わず手を出しそうになった時、袖を誰かが引っ張った。誰かと思ったらメイちゃんじゃないか。
「ねえ、じんろう?村人?ってなに?」
「村人って自分の部屋の紙に書いてあっただろ」
ルールをよく読んでないのか?
「ああ、あの狼の絵のこと?」
どういうことだ。今メイちゃんは確かに狼と言ったよな。
「ご、ごめん。人の顔が書かれてたんじゃないのか?」
これから待ち受けてることを予期し、もう一度聞き直す。だが彼女は首を横に振る。
「ううん、狼の顔の絵だよ?」
「コ、コイツ人狼だ!」
男が叫ぶ。このままじゃメイちゃんは殺されてしまう。
「まだ分かんねぇだろ!冷静になれよ!」
「かばうってことはあなたもその仲間ってことでいいわよね?」
「ぐ・・・」
なにも言えず、黙り込んでしまう。
「今日の投票は決まったな」
「ですね」
赤石が言い捨て、緑川も賛成する。きっとこの子はルールなんて分かっていないんだろう。じゃなきゃ自ら人狼だなんて言わない。そしてルールを知らないから人も殺していないだろう。なのに人狼だからルールだからと言ってこんな幼い子を俺たちの手で殺すのか・・・
分からない、俺がしないといけないことは・・・