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silver sword~光と影~  作者: 神無 輪音
8/12

歩みだした光

沙毅がギルドを出てから約4ヶ月なにをしていたかというと…



「ん?この道使うとあの廃墟の側を通るな…。よっていくか」


と道のりを確認していくと、旅に必要な物を買い出しに行く。


「とりあえず保存食と武器、余裕があればローブとかかね」


ギルドへ続く大通りの露天を冷やかしながらそれらしき店を探しつつ観光もする。

表通りから2本ほど裏道に入りひっそりとした通りにその店はあった。


店の名は「ゼフェイン武器防具店」。

沙毅はまず店の外観で一言こう思った。


(ボロッ…)


沙毅がそう思うのも無理はない。その店の外観は古びて所々隙間が空き、換気性は抜群だが冬場は寒くなりそうな石壁であり扉は腐食が広範囲に渡り触れば崩れそうな木の扉である。


(こいつぁ…とんだ大ハズレかもしれねぇ)


そんな事を思いつつ意を決して店内へと入る。


店内の壁に武器はない、かといってそこらに樽が置かれて入っているわけでもない。

どうしたものかと悩んでいると奥から足音が聞こえだす。

そして奥から出てきた者は沙毅を観察し、沙毅もその人物を観察する。


「おぬしは客か?何を求める」


まるで某指輪を火山に棄ててくる物語の賢者のような出で立ちをした老人が出てきた。


「身を護る武器を…」


沙毅が短くそう返すとその老人は予算はいくらか聞いてきたが沙毅は素直に道中狩った魔物しか無いことを伝える。


「ま、とりあえず魔物はこっちで引き取ってやろうかの」


と沙毅から魔物を受けとると一旦奥へと引き上げていく。


「さて、おぬしは先程身を護る武器をと言っておったが…本当にそれでよいのか?」


と好好爺めいて聞いてくる老人に沙毅は違和感を感じていた。


(おかしい…どこかで会ったことがあるのか?…いやないはずだ)


「もしやどこかで会ったか?などと考えておるのかのぅ」


自らの髭を撫でつつそう沙毅に問いかけるが


「残念じゃが会ったことはないぞ。」


沙毅の心を読んだかのように老人は先回りして言う。


「だが、それにはひさしぶりと言うべきじゃの」


と沙毅の首にかかっている「比翼連理の翼」を指しながら言う。


「懐かしいのぅ…まだワシが現役の時に持てるすべてを掛けて手にかけた物に再び巡り会うとは」


顔を綻ばせながら穏やかな表情ではあるが、眼光は先程よりも鋭い。まるで目の前の若造を見通すかのように。


「それで…武器は売ってくれるのか?」


「もう少し余裕を持つがよい若者よ、まぁよい…武器の希望はあるか?」


「短剣を1本、それと出来れば長剣それも片刃で浅くそっている物を。」


沙毅の希望を聞いた老人は奥へと目的の物を取りに行く。

その間沙毅はこのあとの事を考えていた。

(依頼の目標は相当めんどくさい。いくら死ねないとはいってもどのレベルの不死なのかわからないからな…どっかの呪いで不死になった奴ならそれはそれで良いのか。最悪フードと仮面被ればいいし、そういう種族といえば切り抜けられるだろう)

そこまで考えた所で老人がかえってきた。


「短剣は形状が違うものを3種、長剣はおぬしの注文の物はこれしかないんじゃ」


老人はカウンターの上に持ってきた物を並べると沙毅に、手を見せて欲しいといわれ、沙毅は手を老人の前に出す。

沙毅の手を揉みながら老人は何かに気づいたかのように沙毅の手を離すと何もいわず再び奥へと行くと1本の日本刀を持ってきた。


「おぬし…天凜族と契りを結んだ者だったのか…」


(天凜族?なんだそれ…いや…契りってまさか)


「それで…あんたに売ったあの魔物でならどれが買えるんだ?」


「これなら売ってやろう、短剣はサービスじゃ」


「どういう風の吹き回しだ?後でギルドからお尋ね者などお断りだぞ」


この老人がギルドに自分が武器を奪っていったなどといわれギルドに手配されることを沙毅は警戒していた


「お尋ね者などにしたりはせぬよ。老人の気紛れじゃ」


というと沙毅に日本刀と短剣を渡す老人。その眼光は先程とは違い穏やかなものになっていた。


「失礼ながら貴方は?」


沙毅は今更ながら気になった事を聞いてみる。この老人明らかに只者ではない風格を纏っていながら普通の人間にしか見えない違和感に薄々察しがつき始めていた。


「わしか?わしはただの老人じゃよ。多少いたずら好きなだけのどこにでもいる老人じゃ」


ホッホッホッなどと笑いながらそう言うと沙毅は確信した


(こいつぁ…フィー関係か忘れられた賢者だ)


忘れられた賢者とはこの世界のお伽噺の登場人物の一人である。

名も忘れられ何をしたか詳しい事はわかっていないが確かに実在し、世界を救った者の一人である。

ただ唯一残っているのは生前彼が創った作品だけである。かくいう比翼連理の翼も彼の作品である。

そんな人物が何故こんな場所に居るのか全くわからなかったが、ここは人がぎりぎりいる辺境らしく、国や貴族からの干渉もなく過ごしやすいそうだ。


「こいつの代金はあの程度では足りないだろう?代わりの物も持ち合わせもないぞ?」


「かまわぬ、老人の気紛れと言うておろうに。金は後で払いに来るがよい」


さっさと依頼に行けとばかりに魔物の買い取り金額を渡し、奥へと引き上げていく老人に沙毅は無言で礼をすると店を出ていく。

その後保存食とポーションを雑貨屋で買いついでにローブとリュックサックも売っていたのでそれも買う。

これで魔物の買い取り金額もほぼ全額使い果たし、装備を整えると門の方へと向かい街の外へと出て行く。

「んじゃちょっくら行きますか。」



空は何処までも青かった。



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