いっぴき
大学ニ年生というのは気楽なものである。
入学したての頃に掲げた高い志は忘却の彼方。
遊び方を覚えた、就職までのモラトリアム期。
そう、大学2年生とは、この世の春だ。
授業ブッチは当たり前、サークル合コンお酒は必須。
大学一年時にまずはお酒を限界まで飲んで吐き方を学ぶところがスタートライン。つぎに先輩たちの手ほどきでコールを覚える。潰される前に周囲を酔い潰すために、コールをかけてかけてかけまくる。飲んで飲んで吐いてまた飲んで!的なアレ。ホストじゃなくてもやるんです。
その後は気の合う先輩から麻雀やダーツ、クラブなんて大人っぽい遊びを教わる人も多い、らしい。
残念ながら、かなり初期段階から私の肌にあわないけれども。
酒もタバコも、おまけに男女の駆け引きも、鮮やかなネオンも人々の喧騒も街の雑踏も、好きじゃないのだ。仕方あるまい。ついでに授業はまじめに受けたい。
まあ、そんなわけで。
ちょっと無理をしないと、大学でうっかり作ってしまった、きらきらしたリア充の友人達とは相容れないのである。
彼女達の生態は、私にとっては謎だらけ。
髪の毛の色の微妙な変化はオシャレの基本で、ネイルはやっぱりジェルじゃなくっちゃだめらしい。脱毛は今が期間限定で安いから、やらないなんてありえないそうだ。海外旅行も行かなくちゃいけないらしいし、夏は海とBBQ、冬はスノーボードをしなければ死んでしまうんだって!
なんとまあ不思議な生き物なのだろう。
話す話題も、おんなじように、私にとっては摩訶不思議。昨日のドラマの話、それに出ていたかっこいい俳優の過去の出演作品なんて知らない。ブランドのセール情報、恋に効くパワースポット、芸能人のゴシップ、サークルの飲み会の話。
ぜんぶ知らない分からない。
まったくついてゆけず、興味もない話が多い。
それらに、曖昧に微笑む日々。
やっぱり、同じ系統の人と、つるめばよかったなぁ、なんて。後悔しちゃったり。
……してないんだな、これが。
もちろん、ちんぷんかんぷんの話題はつまらないし、大学の友達とは一生続くような深い仲にはなれそうにもない。
だがしかし、後悔はしないだろう。
これにはいくつかの理由がある。
私はちょっと変わったものが見える。そのことが、大きな理由のひとつである。
見てるとかなり面白い。
もはや観察することが趣味であるくらいには、私は愉快なものが見える。
おかげさまでちょっと毛色の違う仲間達の中でも、かなり楽しくやっているのであります。
私、相良ゆき。大学2年生。
趣味は、小人の観察です。