第2話 1つ目の分岐点:幻の花畑
天気の良いとある日、俺は齢4歳の妹クレアと森へ出かけていた。保護者として、我が家が雇っている騎士アルトさんが護衛として付いてきていた。
コウ「今日は付いてきてくれてありがとね、アルトさん」
アルト「コウ様とクレア様を守るのが、私の仕事だからな。気にしなくていい」
クレア「そんなことないよ!いつも保護者してくれて助かってるもん!」
アルト「はははっ、そう言ってもらえると、私も働き甲斐があるってものだ」
コウ「あ!見えた見えた!あそこだよ!俺が見つけた花畑!」
俺が指を差した先にあったのは、湖を囲むように辺り一面に広がる花畑。
呆然と立ち尽くすアルトを置いて、はしゃいだクレアが花畑へと走っていった。
花畑の真ん中で一回転して辺りを見渡した後、仰向けに倒れて笑っていた。
アルト「この場所、コウ様が見つけたのか?」
コウ「そうだよ、クレアとアルトさんに見せたかったんだ」
アルト「信じられない、この森にこんな美しい花畑があるなんて……」
コウ「自称この森マスターのアルトさんでも知らない場所なんてあるんだね」
アルト「ぐ、だがしかし、こんな場所誰も……」
クレア「見て!お兄ちゃん!花の冠!」
コウ「凄い、器用に作ったね」
クレア「これ、お兄ちゃんにあげる!」
コウ「俺に?」
クレア「うん!こんな綺麗なお花畑にクレアを連れてきてくれたお礼!」
コウ「そっか、でも、俺じゃなくてアルトさんにあげなよ」
アルト「私にか?」
コウ「いつもクレアもお世話になってるし、俺なんかに渡すんじゃなくて、アルトさんへの感謝のつもりでさ」
クレア「んー、じゃあ2人にあげる!」
そう言って、クレアは俺とアルトさんの頭に花の冠を被せた。
そして、クレア自身も、自分の頭に花の冠を乗せた。
クレア「これでみんなお揃いだよ!」
コウ「さすがはクレア、優しいね」
クレア「えへへ!」
アルト「……大切にさせてもらうよ、クレア様」
クレア「うん!」
和やかな雰囲気が流れ始めたタイミングで、遠くから爆発音が鳴り響き、地面が少し揺れた。
音が聞こえた方向へ向くと、灰色の煙が上がっていた。
コウ「何!?」
アルト「まさか、山火事か?」
クレア「怖い……」
コウ「……俺、ちょっと見てくるよ」
アルト「コウ様!危ないから行ってはダメだ!」
コウ「俺のスキルがあれば大丈夫だよ、すぐに戻るから」
クレア「お兄ちゃん!待って!」
アルト「クレア様!?あーもう、待って!」
こうして俺と、俺追いかけたクレアを追いかけて、アルトさんが煙の元へ向かった。
子供の好奇心は誰かに止められるものではない、生まれながらの天才と呼ばれるほどのスキルを持った俺は調子に乗っていたのかもしれない。
後にこの行動は、俺に“トラウマ”を植え付けることとなる。