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イリーガルワールド

*入国手続き* 

 「『イリーガルワールド』?」


 「安直で分かりやすい名前だろ」


直訳すれば『違法な世界』。確かに名前から簡単に想像がつく場所だ。100%ろくでもないところだと思う。

 「悲しいなー ロクでもないとか思うなよ」


 「だから心読むのやめてって」


 「ははっ 先に言っとくけど、あそこはお前が思っている通り・・・いや、それ以上にヤバいところだ、そこで、お前にはまず着替えてもらう。」


 「・・・着替え?いきなりなんで・・・」


 「着けば分かるさ。だから今はとりあえず・・・」


そういいながら彼はクローゼットの中を漁る。それにしても・・・一体何に着替えさせるつもりなのだろう。あまり変なのじゃなければいいんだけど・・・

 「お前なら一番小さいサイズでいいか・・・これを着てくれ」


 「これは・・・戦闘服?」

ゲームとかでもよく見たことがある、いかにも特殊部隊が着ていそうな、漆黒に染まった服だ。一君が着ているものと非常に似ている。実際に見てみるとやっぱり迫力が違う。


 「戦闘服と言っても、ただの物を多く持ち運べる黒い服だ。防弾性もないし」


だからやたらとポケットがついているんだ。

 「あと下はこれを着てくれ」

グレーとブラックの迷彩柄タクティカルパンツだ。戦闘服とあいまって、かなりかっこいい感じになるだろう。・・・一回こういうの着てみたかったからいい機会かも


****

 「どうかしら?」


 「ああ、似合ってるぞ」


戦闘服のダークさと星宮の持つ栗色の髪の明るさが見事に調和している。・・・普通にかわいいな。


 「じゃあ最後にこれを付けてくれ」


狐のお面を彼女に手渡す。


 「なにこれ・・・お面?」


 「お前の顔が割れると厄介だしな」


 「なるほど・・・よしっ」


狐の面が神秘さを醸し出していて、これもなかなか似合っている。

こういう系統もいけるのか。意外に狐耳とかも似合いそうだな・・・いややっぱり王道の猫耳の方がいいかもしれない・・・今度コスプレしてくれないか頼んでみるか。


 「それじゃあ出発だ」

俺は服を取り出したクローゼットとは違う方のクローゼットの前に立つ。

 「・・・出発するんじゃなかったの?」

 「まあ見とけ。」

ゆっくりとクローゼットの扉を開く。

 「これは・・・隠し通路!?」

 「さあ、行こうか」


*イリーガルワールド*

隠し通路を通る間に、彼のことをもっと知っておく。


 「一君は戦争が起きるずっと前からカシミルに住んでいるの?」


 「ああ、生まれも育ちもカシミルだ。俺が生まれる前に親がカシミルに移り住んだらしい。戦争が始まる前は、栄えていたから何かと住みやすかったんだろうな」


 「確かに地理の授業でそんな風なことを習ったわ。栄えていたから、確か・・・子持ちの家族には手厚い補助金があったとかなんとか・・・そんなことをやった・・気がする」


 「そうだな。カシミル特有の政策で、住人からの評判も高かった。ちなみになんでそんなことができたか分かるか?」


彼が微笑を浮かべながら聞いてくる。


 「・・・分からないわ」


 「まず前提として、ガリスト王国には王が存在するが、所詮お飾りにすぎない。」


 「唐突にディスるじゃん」


 「政治は中央議会が執り行っていて、それぞれの地方にある地方議会がそれを補佐するということになっている」


 「”ということになっている”ってことは実際は違うの?」


 「ああ、それぞれの地方において中央議会と地方議会は同等の権力を持つとされているが、そんなものは建前だ。実際はそれぞれの地方議会がそれぞれの地方の権力のほぼ全てを握っている。特にカシミル地方みたいな中央から遠い地方は、なおさら地方議会の権力が強い。」


政治はまだ勉強したことがないから、初めて聞くことばかりなんだけど・・・あれ?

でもお父様は政治の実権は王にあるとかなんとか・・言っていた気がするんだけど・・・・

うーん。聞き間違いだったかな・・・


 「その権力のおかげで、カシミル地方議会はあんな政策を打つことができたんだ」


 「そうだったんだ・・・」


 「ところで・・・一君には妹さんがいたんだよね」


あえてこのタイミングで聞いてみる。

少し聞きにくい話だけど、さっきからどうしても気になる。

・・・どんな写真だったかはうろ覚えだけど、ベッドの近くに写真があったことだけは覚えている。そして、それがなくなっていたから余計に気になる。


 「・・・リュウちゃんから聞いたのか?」

彼の顔から笑みが消えて、真顔に戻る。だけど今までの真顔と違って、どことなく不気味な雰囲気が漂っていて・・・・得体のしれない恐怖を感じる。


 「一君の家に運ばれて初めて目を覚ましたとき、隣に写真があったわ」

肯定も否定もせず、若干趣旨がずれたことを答える。隆之介君に聞いたことはあえて伏せておくことにする。


 「・・・・」

数秒間の沈黙が私たちを包み込む。


 「ははっ なんだよ、とっくに見てたのかよー」

先に沈黙を破ったのは彼だった。さっきの不穏さとは打って変わって、またいつもの調子に戻る。


 「お前がめまいで倒れたときに、サッと回収したつもりだったんだが、やっぱりもう見られてたかー」


 「なんかごめん」


 「いや謝らなくていい。もともと隠すようなものでもないしな。でも・・・なんとなく見せたくなかったんだ」


少し悲しそうな顔をしているようにも見える。・・・この顔でそう言われると余計に悪いことをした気分になる。聞いてしまったことを少し後悔する。


 「俺の妹どうだった?まあまあ愛嬌があっただろ?」

一君の妹さん・・・どんな顔だっけ。誰かの顔が塗りつぶされていたような・・・両親の顔だっけ?ていうか、そもそも塗りつぶされていたんじゃなくて、破られていたっけ?

・・・ダメだ。考えるほど分からなくなる。


 「えっと・・・実はあの時、意識がもうろうとしてて・・・何を見たかも、そのあと一君と何を話したかもあんまり覚えてないの・・・」


 「なるほどな・・・いろいろ落ち着いたらまた見せてやるよ」


 「・・・うん!」

どんな顔だったかとても気になる。早く見てみたいな~


****


 「・・・ねえ。あとどれくらい歩けばいいの?」

もう数百メートルは歩いたと思う。足場も悪いし、なんか空気もよどんでるし。できれば早く抜けたいんだけど。


 「そろそろ着くぞ。あの扉を抜けたら目的地だ」

やけにごつい扉が目の前に現れる。長かった。この先がイリーガルワールド・・・

彼は金色に輝く鍵をポケットから取り出す。そしてゆっくり扉を開ける。

 「・・・ここがイリーガルワールドだ」

 

****

開いた口が塞がらないとは、今の星宮のことだろう。まあ、無理もないか。だって・・・

 「地下にこんな空間があるなんて・・・・」


 「ここはもともと下水道だったんだ。大きな街だからな・・・下水道もかなり大きい。

半径15mもの管で両脇の段差の上にいろんな”お店”が並んでいる。中央の窪んでいるところには今も水が流れている。といっても、上で降った雨水なんだけどな。

ちなみに俺の家の電気や水は全部ここから来てるんだ」


 「すごい・・・ねえ、ここにいる人たちは何をしているの?」 


 「”お店”で買い物をしているだけだ。その商品が少し特殊だけどな」


 「どんなものを売ってるのかしら?宝石類があるんだったら見てみたいんだけど・・・」


 「あるわけないだろ。ここはブラッドショット・アイの住人に向けた商品しかない。そんな食えもしない石ころを買うバカがいると思うか?」


 「・・・確かに」


 「お前でも分かりやすいところから言うと、食料品とか日用品かな」


 「意外に普通なのね」


 「あとは・・・武器、麻薬とかかな」


 「ちゃんと違法だった」


 「ここイリーガルワールドでは合法な商品より違法な商品の方がはるかに多い。だけど一番の主力商品は”情報”だ」



 「情報?」


 「ああ、戦争地帯となったカシミル地方では嫌でも大量の情報が流れてくる。情報は戦争を有利に進めることができる反面、時間が経つと意味がなくなるんだ。1日・・・いや、半日で腐ってしまうと言っても過言ではない。みんなができるだけ早く手に入れようとする。だから価値が高いんだ。」


 「なるほど」


 「・・・まあ、お前も思っている通りロクでもない場所だが、俺たちにとっては安全が保証されている場所でもある。それに以前よりだいぶマシになったしな」


 「前はどんな感じだったのかしら?」


 「胸糞が悪い話だが、とにかく人身売買が酷かったな。特に女。その中でも歳が若いほど高値で取引されていた」


 「・・・」


 「戦争が少し落ち着いた後、今まで逃げ回って生きるのに精一杯だった奴らの一部が余裕を持つようになったんだ。」


 「・・・」


 「醜い話さ。自分の安全が確認できたらすぐに娯楽を求めるようになった。そして、力の弱い者たちからすべてをむしり取った」


 「・・・ちなみに売られたらどうなるの?」


 「それはもう・・・言わなくてもわかるだろ」


 「・・・」


 「さっき話したよな?カシミル地方には子持ちの家庭が多かったって」


 「まさか・・・」


 「無理矢理連れてこられた子供が大半だが、売り渡したケースもある。俺も最初は何考えてるんだと思ったが・・・子供を連れて逃げ回るのは、それだけでも不利だし、同じような人間が次々と残酷な結末を歩んでいくのを目の当たりにしていたんだ。

それだったら一縷の望みにかけてやるって思った両親も少なからずいたらしい。

まあ全員賭けに負けたんだがな」


 「・・・」


 「だがこんなのは戦争がもたらす”たった”一面にすぎない。これと同じくらい、いや死んだ方が楽になることも平気で起こっていたしな。」

 

 「・・・もしかして、あなたに拾われたのって結構運が良かったのかしら」


 「お前の場合は”王女”という肩書つきだしな。神を信じるなら、感謝しておけ」


 「・・・」

さすがに脅かしすぎたか・・・いや、これくらい言っておかないと・・・悲劇に転ぶかもしれない。


 「だから一つだけ約束してくれ。」


 「・・・?」


星宮がお面越しで俺の顔を覗いてくる。・・・直接見ることはできないが、不安な顔をしているのは明白だ。


 「何があっても絶対に俺から離れるなよ」


 「・・・惚れちゃったかもしれない」


 「この女ちょろすぎだろ」


 「・・・・・」


 「いやなんか言えよ」


星宮はいつのまにか正面を向き直している。お面の横のちょっとした隙間から覗けるその顔は、すでにいつもの少し微笑んだ顔・・・・・なんか顔赤くね?


 「え、冗談だよな」


 「・・・・まぁ」


 「え」


****


 「で、私たちは今どこに向かっているのかしら?」


 「この下水道には地下管理室がある。そこには『マダム』と呼ばれるイリーガルワールドの管理者がいる。そいつに会いに行く」


 「そのマダムって人はどんな人なの?」


 「そして、マダムは情報を売って成りあがった。いわゆる情報屋ってやつだな。

あと何か大きな特徴を挙げるとすれば・・・そうだな・・イリーガルワールドに住む唯一の女性ってところだ」


 「唯一・・・」


周りを見渡してみる。私みたいに顔を隠している人が何人もいるが・・・確かに男の人しかいない。それどころか、さっきからいろんな方向から視線を感じる。やっぱり・・・

 「残念だけど、さっきも話した通りの理由だ」


ここは一君たちにとって安全地帯でも、住民全員にとっての安全地帯ではなかった。

・・・これが戦争のたった一面にすぎない、か。私だったら止めてあげられる。だからこそ、絶対に脱出しないと。


 「ここが地下管理室だ。彼女の気分次第で、この先の身の振り方が変わる。

くれぐれも失礼のないようにしてくれ。・・・って言ってもそれはお前らの得意分野か」


 「ええ。分かったわ」

・・・ここが地下管理室。


 「マダム。俺だ」


 「あいよ。少し待ってな」


短い電子音が流れた後、頑丈そうなドアが開く。部屋の壁には数台のモニターがはめ込まれていてどこかの様子を映し出している。中央のテーブルには大量の書類と大きな地図が広げられていて・・・まさに情報屋って感じがする。

 「・・・星宮、この人がマダムだ」

 「お前さんが・・・・・星宮か」

 「は、はい」

葉巻をふかせた初老の女性が私にそう聞いてくる。そして品定めするかのように目を細めて見つめてくる。正直言って、少し怖い。

 「お前さん、今あたしのこと老けてるし怖いって思ったろ」

 「え、いや・・・・・人の心読まないでくださいよ」

 「いや諦めるの早すぎだろ」

一君が呆れたような顔で私を見てくる。・・・図星なのに隠せるわけがないじゃん!

もし私にそんな芸当ができたら、次の日にこの星が爆発してもおかしくない。


 「ハッ 別にかまいやしないよ。・・・だけどなお嬢ちゃん、あたしはそこのすかしてる

クソガキと違って、人の心なんて読めないさ」

 「おい」

 「じゃあ、一体なんで・・・」

急に刺された彼を無視して話を続ける。


 「あたしはただ、顔に出ていることを淡々と読み上げているだけさ。お前さんの場合は仮面の上に出ていることだけどねぇ」

え、うそ・・・私そんなに分かりやすいのかな・・・


 「でも、あたしが今まで見てきた中で、お嬢ちゃんぐらい考えが顔に出ている人間はいなかったよ・・・まあ無駄話はこれくらいにしといて、お互いに自己紹介でもしないかい?

する気があるなら、まずはその仮面を取ってくれ」

彼のほうをちらっと見る。・・・彼は軽くうなずく。どうやらこの人にだったら顔を知られてもいいらしい。・・・ゆっくりと狐のお面を取る。


 「この国の王女・・・写真で見たことはあったんだがねぇ・・・なるほど。これが本物の顔か・・・いいだろう。あたしの名前はベラ・・・・おいクソガキ後ろの方は何だっけ?」

 「ベラ・バーキンだ。いい加減自分の名前くらい覚えてくれ」

え・・・なんかすごい不安になってきた。


 「(ねぇこの人本当に大丈夫なの?)」

 「(マダムは名前を覚えるのが苦手なんだ)」

 「お前たち、何こそこそ話してんだ。・・・あたしは名前って物に興味がねえ。だが情報の質は間違いないから安心しな」


 「じゃあ次は私の番・・・」

 「名称から、星宮紫乃、13歳、145.29cm、王女。ざっとこれぐらいか」

 「すごい・・・私でもそこまで正確な身長を知らないのに」

 「あと誕生日が1月31日で、性癖が・・」

 「あーそれ以上はいいです」

 「マダム、さすがにノンデリすぎるぞ」

 「おっと、そいつは悪かったね。・・・・・・・そうだ。お詫び代わりにいいことを教えてやるよ。」

 「?」

 「飛行機のWifiを使ってそういうのを閲覧するのは・・・やめといた方がいい。端末の記録を消しても、ログが残っちまうからな。あと・・・」

 「マダム!!」

一君、もう少し早く止めてほしかった・・・私の尊厳が崩れ落ちていく音が聞こえる。


 「ご忠告・・ありがとうございます(半泣)」

 「・・・とりあえず、マダムは俺たちの全てを知っていると考えていい」

彼が話の流れを変えようとする。


 「そういうことだ。では、改めて聞かせてくれ。お前さんは何のためにブラッドショット・アイから脱出するんだい?」

 「スタルカ連邦との戦争を終わらせて、ここに住むみんなを助けるため」

 「・・・助ける、か。・・・まあ今はそれでいい」

 「(!?・・・)」

ほんの一瞬どす黒い空気が流れ込んで来た気がする。あたりを見渡してみる。

 「(どうかしたか?)」

 「(ううん。大丈夫・・・)」

まっすぐ前を向いている彼の顔には、何の変化もない。私の勘違いだったのかな・・・・

 

 「それじゃあ、ブラッドショット・アイからの脱出について作戦を立てていこうかい」

 「マダム、その前にこの戦争についての知識にズレがないか確認した方がいい」

 「・・・そうだねぇ。お前さんはこの戦争、『第二次国境戦争』について知っているのことを全て話してくれくれるかい?」


『第二次国境戦争』 ──正式名称『第二次ガリスト・スタルカ国境画定戦争』のことだ。

 「ええっと・・・3年前、突如スタルカ連邦が国境を超えてガリスト王国領カシミル地方に進行した。そして主戦場となったここカシミルでは、全体の民間人の40%に当たる50万人も虐殺された。」

 「ほう・・・誰によってだ?」

 「スタルカ連邦・・・って教わりました」

 「おい、クソガキ」

 「ああ。やっぱりだな」

 「え、私なにか変なこと言ってました?」

 「民間人の虐殺・・・お前さんの言っていることは半分本当だが、半分は大嘘だ」

 「嘘って・・・どういう・・・」

 「考えてみろ。ここはガリスト王国の領土なんだ。戦乱も少し落ち着いたし、住民が協力さえしてくれれば、あたしに頼らなくたって1日2日で脱出できるとは思わないか?」

 「確かに・・・ていうことは、非協力的になった理由があるってこと?」

 「そういうことだ。」

 「お前さんは『バーンダウン作戦』というのを知ってるかい?」

 「バーンダウン・・・聞いたことないです」

 「この作戦はガリスト王国で極秘扱いになっているんだよ。だから一度も報道されてないだろうし、お前さんが知らなくても不思議ではないさ。」

 「どういう作戦だったんですか?」

マダムは大きく溜息をついた後、背を向けて話し出す。


 「あれは凄惨なものだったよ。・・・大都市カシミルにわざとスタルカ連邦軍を侵入させて、その後一網打尽にする作戦だった。でもその方法がとにかく酷かったんだ。そもそも民間人の避難が不完全なのに、スタルカ連邦軍を侵入させたことで被害が増大した」

 「・・・・」

 「しかもそれだけじゃない。奴らはスタルカ連邦軍が完全にカシミルに入った後、民間人ごと大量のミサイルで吹き飛ばしたんだ」

マダムの口調が段々と強くなる。


 「ひどい・・・」

 「(マダムはこの作戦で一人娘を失ったんだ)」

 「(そうだったんだ)」

彼がそっと耳打ちをしてくる。

 「あの時、殺された人間はもちろん、遺された人間もこれが自分達の国、ガリスト王国の仕業だと気づいた人間はほとんどいなかった」


民間人虐殺の真相 ──全てスタルカ連邦によるものだと報道されていたが、実際はガリスト王国軍も自国民を巻き込んだ作戦を取っていた。・・・私に確かめる方法はないけど、現地に住む人々が言うからには本当のことなのだろう。少なくともマダムが嘘をついているようには思えない。・・・あの怒りは本物だった。

マダムはまた深い溜息をつく。


 「あの日・・・娘はカシミルで民間人避難のボランティアをしていたんだ。作戦について何も聞かされずに。カシミル地方北部で戦闘が行われていたから、カシミルはまだ安全だと、みんなが思っていた。だが結果はどうだい。作戦が発動されてから1時間足らずでスタルカ連邦はカシミルまでたどり着いた」


 「・・・」


 「次に会った時はバラバラになっていたよ。ミサイルによって倒壊した家屋の下敷きになっていたらしい。これがガリスト王国の作戦だって気づいたとき、最初こそ怒り狂って復讐してやるなんて息まいていたが、アタシにその方面の力がないことは自分が一番よく分かっていたさ。」


マダムは少し息をついた後、静かに話し出す。

 「もちろんお前さんがその作戦を指揮したわけでもないし、ガキに罪がないのは分かっているつもりだ。お前さんを恨むのもお門違いだってことは重々承知している。」


私は子供だけど、それでもガリスト王国では上の身分だ。娘を自国軍に殺されたマダムが私に手を貸すかどうかで葛藤するのも理解できる。

・・・この戦争は私が知らなかっただけで底知れない凶悪さを秘めているのかもしれない

──安全圏でただ傍観してきた私たちが知らないだけで、知ろうともしないで。


 「だからお前さんには手を貸すよ。だけどこれだけは約束してくれ。」


 「・・・」

私はただ沈黙してマダムの次の言葉を待つ。


 「何があっても停戦交渉を成功させるんだ」


 「もちろん最初からそのつもりよ」

これ以上悲劇を増やさないためにも、私は私しかできないことを何としても成し遂げる。


*作戦立案*


 「それじゃあ、改めて作戦を立てていこうかい」


 「マダムには脱出ルート構築を頼みたい」


 「任せな、もうほとんど考えてあるよ。カシミル地方は東西南北の四つに分割できるといってもいい。カシミルという街はちょうど中央に位置していた。今アタシらがいるのはスタルカ連邦に近い北部だが、ガリスト王国側の南部に移動する際に、街を通るのはあまり得策

じゃない」


 「やっぱり地域住民が多いからですか?」


 「もちろんそれもあるさ。何もない場所に人はいないからねぇ。だが一番の理由は別にある。おい、クソガキ。教えてやりな」


 「わかったよ。・・・この戦争では地元住民たちが自警団をいくつか立ち上げたんだ。」


 「・・・自警団って何かしら?」


 「簡単に言うと自分たちの安全を守るために、自分たちで作った組織のことだ。こいつらは両陣営の軍隊に情報を渡したりして安全を保証されてきた。」


 「その人達が危険なの?」


 「ああ。醜いことに、自警団に入っていない人や他の自警団に所属している人には容赦がなかった。盗みから殺人まで、いろんな悪さをお互いに働いていた。まあ、それだけ自分達が生きるのに必死だったとも言えるけどな」

この前まで普通の生活を送っていたみんなが必死に生きようとした結果がこれなのだろう。



 「そして戦争が落ち着くにつれ自警団は縄張りを持つようになった。それが厄介なんだ」


 「つまりカシミルという街を縄張りにする自警団がいる・・・ってことなのかしら?」


 「そのとおりだ。ちなみに東部の鉱山跡地、南部の渓谷地帯、西部の工場群跡地、そして北部の下水処理施設周辺も自警団が縄張りにしている」


 「ここもそうなんだ・・・」


 「まあ北部だけは少し事情が違って、自警団という体制が嫌いな奴らの集団なんだ。だから正確に言うと自警団ではない。ただの武装集団って言ったほうがいいかもしれない」


 「そこのクソガキはそんな北部の連中をまとめ上げている・・・リーダーみたいな存在だ」


 「え・・・そうだったの?」


 「・・・俺は一度もそんな風に考えたことはないけどな。でも誰かがみんなをまとめ上げないとすぐ他の奴らの縄張りにされて荒らされるだろ?だから仕方なくやってるだけだ」


 「アタシのことを他の自警団への脅迫材料として使うところが癪に障るがね」


 「ははっ マダムがいるおかげで、あいつらもやすやすと手出しができないから本当に助かってる。ありがとうな」


 「ハッ 本当かよ」


もし彼が普通の学校生活を送れていたなら・・・案外、生徒会とかに向いているのかもしれない。戦闘服の代わりに制服を身に着けた彼が、困っている生徒に手を差し伸べている姿をなんとなく想像する。・・・わりと制服も似合いそうだな・・制服コスしてくれないかな。


 「ここからはアタシが説明しようかね」


 「お願いします」



 「正直言って自警団程度であれば強行突破もできる。いくら武装しても所詮は民間人だからな。でもクソガキみたいに他の自警団にもリーダー格の奴らがいる。そして厄介なことにこいつらのほとんどは戦闘に長けている。」


 「ちなみに一君ってどのくらい強いの?」

彼に直接聞いてみる。


 「マダム、俺のことを褒めれるのはここしかないぞ」

どうやらマダムに丸投げするらしい。


 「チッ ムカつくが、他のリーダー格と同等・・・いや、それ以上に強いかもしれない。

アタシが見てきた中で一番射撃が上手い。自分がガキだからこその短所と長所をよく理解しているから並大抵のやつは脅威にすらならない」


 「おお~ 一君すごいじゃん!」


 「しかも大胆かつ謎の自信もあり、多くの卑怯な戦法を思いついて、ためらいもせず実行する、そして窮地ではゴキブリ並みのしぶとさを発揮する。そんな男だ」


化け物みたいなスペックだ。自分の弱点を理解している人は大体強いって小説でも相場が決まってるし。


 「なんか最後の方悪口じゃなかったか?」

 

 「そんなに強いなら中央を通り抜けられると思うんですけど・・・」

 

 「それがそうにもいかないんだ」


 「奴らとクソガキの決定的な違い・・・それは”仲間”だ」


 「えっ・・・一君、友達いないの?」


 「べ、別に作ろうとしてないだけだし」


 「言い訳が友達できない人のそれじゃん・・・」


悲しいかな。この化け物は能力があっても友達がなかった。



 「まあ、仲間っていうよりかは利害関係が一致しているからつるんでいる・・・”取り巻き”と言った方が正確だけどねぇ。そいつらもそれなりに戦闘に長けていて、人数も多いから孤独なクソガキだけだと突破は難しいんだよ」


 「うわ、学校にもそんなのいたなぁ~取り巻きをしてる人達」


 「お前は王女だから・・・やっぱり取り巻かれる方か」


取り巻かれる、か。確かにそうかもしれない。だけど私と純粋に仲良くなろうとして取り巻いてきた子はいったい何人いたんだろう?・・・私の身分を見て仲良くなろうとする。

考えたくもないけど、半数以上は・・・・・・


 「・・・」


 「悪い。何か気に障ったこと言っちまったか?」


 「ううん。何人取り囲んでくれていたか数えてたの。一君と違って数が多いからさ!」


 「なんだこいつ」


 「お前さん、王女なのに学校に行ってるのかい」

マダムが不思議そうな顔をして聞いてくる。


 「はい。行ってますけど・・・」


 「・・・ああ、そうか。そういや変わったんだったねぇ」


 「何が変わったんですか?」


 「いや、お前さんより前の世代の王族たちは貴族専用の学校にも行かず、独自の王室教育がなされていたんだ」


 「あー確かに、私の世代から変わると父も仰っていました。従来の王室教育と並行して学校にも行くことになるって・・・」

 「俺も聞いたことがある。中央議会がそれまで改正がタブーだった王族に関する法律に手をつけ始めた・・・とかで一瞬話題になったよな」

お父様が相当嫌がっていた記憶しかない。私は学校に行ってみたかったから別に良かったんだけど・・・


 「そろそろ、話を戻そう。さっきも言った通りクソガキには友達がたったの一人もいない。」

 「おい」


 「だから自警団の縄張りを避ける必要がある」


 「でも東部、西部、南部、中央、全てに自警団がいるんですよね?」


 「その通りだ。しかしここでうれしい知らせがあるんだよ。三カ月ほど前、東部のリーダー格であった人物、オットー・アルベルトという男が失踪したんだ」


 「あいつが?」


 「・・・いったいどんな人なんですか?」


 「自警団のリーダー達の中で最も危険な男さ。その凶暴性と並外れて大きい体格は人間の範疇をはるかに超えているといってもいい。もともと炭鉱夫だったらしいが・・・」


 「北部を襲ってくる回数が一番多いのもこいつが率いる自警団だ。一度サシで勝負したことがあるがマジでヤバかった。あいつは射撃技術も高かったが、なにより怪力で・・・近接戦闘で半殺しにされた」


 「その人は何で失踪したんですか?」


 「アタシも詳細な理由を現時点でつかめてはいない。だがブラッドショット・アイでこれだけ長い期間、姿を現さないってことは、あくまで一般論だが、死んだ可能性の方が高い」


 「マダムはあいつがもう死んだと考えてるのか?」


 「その通りだ。・・・もちろんこれからもっと調べる必要があるし、リスクが大きいのは分かるさ。だが、戦闘に慣れていない人間を連れて脱出するにはこのチャンスに賭けるしかない」



 「まあ、それもそうだな・・・」

いまいち話に追いつけないけど、もしこの情報が本当なら・・・またとないチャンスであることだけは分かる。


 「あの・・・私はどうすればいいんですか?」


 「クソガキも言ってたと思うが、まずはここでの生活に慣れてくれ。脱出決行まではまだまだ時間がかかるからねぇ。アタシはこれから情報の真偽を確かめる。クソガキもそれでいいか?」


 「異論はない。それじゃあ俺たちは・・・」


 「待ちな!」


 「まだ何かあるのか?」


 「ここからは乙女同士の腹を割った話をする」


 「へ?」

全く予想していなかった展開だ・・・



 「・・・いや百歩譲って星宮が乙女だとして」


 「なぜ譲る?」

私は誰が何と言おうと正真正銘の乙女でしょ。

・・・ていうか、普通2人きりで話す理由の方が大事では?


 「マダムは違うだろ」


 「ハッ だからモテないんだよクソガキ。アタシらが話してる間に表で情報でも買ってろ。フライトボックスの情報も出回っているはずだ」


 「・・・確かにそれは欲しいな。事故の解明に繋がるかもしれない。・・・星宮、少しマダムに付き合ってくれるか?」


 「うん。私は大丈夫だよ」


 「じゃあマダム、頼んだぞ」


 「あいよ」


*乙女の会話*


 「にしても・・・」

一君が部屋を出て、マダムと二人っきりになった。彼女が話し始める。


 「まさかクソガキにも恋の季節がやってくるなんてねぇ」


 「・・・え?」


 「クソガキのあんな真剣な顔、久しぶりに見たよ。ありゃあ間違いなく惚れた女を守るときの顔だった」


 「ええー!?ほ、本当ですか!??!」


 「・・・ただの冗談だよ・・・なんかすまんね。そんなに喜ぶとは・・・」


 「別に喜んでません」

別に知ってたし。本当だとしたら展開が早すぎるし。・・・そういう展開も期待してないし


 「だけどな、お前が来てからどこか楽しそうな顔はしていたさ。」

少しの間沈黙が流れる。マダムはただのコンクリートの壁を見つめながらそう話す。

頭の中にある記憶を思い出しているようにも見える。


 「なんかマダムさんは一君の母親みたいですよね」


 「ハッ このアタシが?」


 「ええ。彼の細かいところまでしっかり見ているようだし。私とマダムさんが2人きりで話すのを許したのもお互いにかなり信頼しているからだし・・・なんていうか・・ただの取引をする関係には思えないんです」

 「・・・商売をする以上、相手の細部まで観察することも信頼を得ることも重要さ。何回も取引をするお得意さんなら、なおさら状況を把握しておかないとねぇ」

少し威圧的だったマダムの顔が少し柔らかくなった気がする。これが顔に出るってことなのかな・・・


 「ふふ  そういうことにしておきます」


 「・・・そういうお前さんはどうなんだい?」


 「・・・私ですか?」


 「表でクソガキが・・・『何があっても絶対に俺から離れるなよ』みたいなこと言ってた時、お前さん若干メロついてただろ?」


 「えっ、いやあれは・・・・・」

・・・見られてた?監視カメラとかあった?しかも私、お面を着けていたはずなんだけど。


 「・・・演技か?」


 「そう!そうです!!全部演技です」


 「ハッ そういうことにしといてやるよ」

そうそう全部演技だったし。だけど・・・


 「・・・だけど彼のことはすごく信頼しています」


 「ほう。会って一日も経っていないのにかい?」


 「説明が難しんですけど・・・私はその人が損得勘定で動いてるのか、それとも本心に従って動いているのかが、うっすらと分かるんです。・・・彼が私に脱出を持ちかけた時、私には本心に従っているように思えたんです」


 「自分の勘に随分な自信があるようだねぇ」


 「ええ。王族をやってるといろんな媚びている人を見ることになるので」


 「実力はお墨付きってわけかい。ならアタシはどんな風に見えるんだい?」


 「正直今は分かりません。だけどあんなセリフを言った彼がマダムさんのことを信頼しているので、私も信頼しています」


 「そうかい・・・にしてもお前さんと喋っているとお前さんが王族だってことを忘れそうになるねぇ」


 「・・・それって褒めてます?」


 「ああそうだよ。お前さんには・・・そうだな・・上流階級によくある、鼻につく感じが全く感じられない。お前さんの父親とは大違いだよ。」


 「まあ・・・そうかもしれませんね」


私のお父様・・・おじい様の三男で、私が生まれる前に王にはなれないと言われ続けていたけど・・・いろんな分野に才能を持っていて、皇太子であったおじい様の長男が急死されたとき、他の王族の推薦によって次男を抜かして皇太子の座に就いた。私が生まれて何年かした後、おじい様は御隠れになりお父様は晴れて王になられたけど・・・


 「さて、ここからが本題だ。アタシがわざわざお前さんを一人にしたのは、この戦争が起きた本当の原因について話したかったからだ。クソガキにもまだ話してない」


 「本当の・・・原因?」


 「ああ。アタシはお前さんの父親に原因があると睨んでいる」


****


 「今までの話・・・本当何ですか?」


 「スタルカ連邦が攻めてきた理由を一番きれいに説明できるのはこれしかない。それに何年もかけていろんな奴らに情報収集をさせたから、信憑性もある。クソガキにこの話をするかはお前さんが決めてくれ」


 「・・・」


 マダムがしてくれた話をまとめると、この戦争はそもそもお父様が政権を中央議会から奪おうとしたのが原因だった。私にもなぜかは分からないがお父様はずっと王政を望んでいた。それこそ皇太子の時から。そんなお父様が目を着けたのが、スタルカ連邦との極度な対立だった。


当時の中央議会は戦争派と交渉派があり、どちらも同じくらいの勢力で拮抗していた。ニュースでも連日報道されていたのを覚えている。そんな中、お父様は秘密裏に議会に介入して交渉派の人達の大半を、戦争派に鞍替えをさせた。たった一日で。


同じ日にスタルカ連邦側にも『明日にでも宣戦布告を行う』という嘘の情報を流し、スタルカ連邦を焦らせて、先に戦いを仕掛けてくるように仕向けた。

お父様の思惑通り、スタルカ連邦は先に攻め込んできて、戦争派しかいない議会も交渉などを考えもせず全面戦争を始めた。

ガリスト王国の軍隊は奇襲を受ける形になったが、お父様の息がかかった軍隊があらかじめカシミル地方で待ち伏せをしていたので、戦争初期ではスタルカ連邦を押し返していた。

・・・確かに当時のニュースも世論も「王のおかげで助かった」とか言って褒めたたえていた気がする。


もしカシミル地方で勝っていたら、戦争初期の王の行動が評価され、王が株を上げることになる。

もしカシミル地方で負けていたら、戦争の責任を戦争派しかいない議会に丸投げして、ただでさえ失政が目立っていて評判の悪かった議会の息の根を止めれていた。


スタルカ連邦もお父様に嵌められたことに気づいていただろうし、負けたとしても辺境のカシミル地方を渡せば停戦交渉に乗ると考えていたのだろう。

だけど実際はそう上手く行かなかった。両軍が拮抗し、ただ命をすり減らした。目標を達成できていないお父様が戦争をやめることはないし、多くの人命を費やしたスタルカ連邦も戦争をやめることは面子を潰すことになるからやめたくてもやめれない。


結果として荒廃したカシミル地方を挟んで、両軍は睨み合いを続けている。

誰がどう見ても不毛な争いだ。そして先に折れたのはお父様らしい。ガリスト王国の王族で王の次に身分が高い私を停戦交渉に向かわせた。そして今に至るということだ。

・・・だけどこんなことを一君に知られたら・・・いや、国民に知られたら・・・・・ただじゃ済まないことになる。議会も、王族も。


 「さっきと言うことが矛盾してしまうが、お前さんの停戦交渉で一番重要なのは・・・とにかく隠し通すことだ。これを知られた暁には、余程上手く立ち回らないと大変なことになるだろうからねぇ」

マダムの言っていることは間違っていない。間違ってはいないけど・・・・・


 「一つだけ教えて頂けませんか?」


 「なんだい?」


 「マダムさんの言っていることが本当なら、なんで他の人に言わなかったんですか?・・・あなたも・・その・・恨んでいるんですよね?」


 「ハッ 恨んでいるさ。だから今、復讐をしている最中だろ」


 「・・・え?」


 「お前さんはこの事実を知ったことでこれからずっと悩まされることになるだろうなぁ。それこそ、ブラッドショット・アイから脱出したとしてもねぇ。」 


 「・・・」


 「アタシは王族の利益だけを優先した上っ面の停戦交渉になるくらいなら、協力してやる価値なんざないと思っていた。でもお前さんを見て考え直したよ。お前さんなら両国民が納得のできる停戦交渉を結べるのかもしれない。」

・・・停戦交渉をする上でこの情報を知れたのはかなり大きい。


 「それがどれだけ難しいことなのかは私にも分かります。だけどあなた方を絶対に失望させません。」


 「・・・そいつは楽しみだねぇ。期待しているよ」

停戦交渉を本当の意味で成功させられるのは私しかいない。それが確定した瞬間だ。


 「さて。重い任務を引き受けてくれたお礼になにかいいことを教えてあげようかい。

そうだねぇ。」

この流れ・・・さっきも見た。まずい・・・



 「できれば一君のことでお願いします」


 「あのクソガキの性癖は・・・」

寸前で彼に矛先を向けることができた。ごめんね一君。でもめっちゃ気になるから止めないね。本当に悪いとは思ってるから〘大嘘〙


 「シスコンだ。それも重度の」


 「なんですと!?」


 「・・・食いつきがいいねぇ。」


 「ち、ちなみにシスコンになった原因とかって・・・」


 「アタシも噂で聞いたことしかないが、自分の妹に性癖を歪められたらしい」


 「うおーーー!!漫画でなんっっかいも読んだことのある展開・・・やっぱり本当に実在するんだ!!! マジで妹に性癖改造されるお兄ちゃんってすばらs・・・・・」


 「・・・・・」

 

 「あっ〘正気〙・・・・聞かなかったことにして頂けませんか?」


 「・・・アタシは何も見てないし聞いてないさ」

あぶないあぶない。私としたことが・・・危うく取り乱すところだったよ。

なんかマダムがドン引きしている気がするけど・・・まあ気のせいか。


 「・・・ああ、そういえばお前さんはブラコン妹物の漫画ばっかり読んでいたねぇ」


 「なっ・・・私がブラコン拗らせ撫で待ち純愛お兄ちゃんっ子な訳ないじゃないですか」


 「誰もそこまで言っとらんわ」


 「あっ〘2回目〙・・・・すいません。また取り乱してしまうところでした」


 「・・・(もう手遅れだと思うんだがね。)」


****


・・・・あいつらの話長すぎないか?もう何十分経ったんだよ。・・・3人グループで他2人が自分の知らない話題で盛り上がっていて、傍で愛想笑いしているときぐらい孤独な気分。

それすらも漫画で読んだ表現で、俺が実際に体験したことじゃないから余計に悲しい。

短い電子音がなる。

あぁ、やっと話は終わったようだ。解放される・・・

 「お前らなぁ・・・話長すぎなんだよ」


 「ごめんごめん。でもとっても有意義な話だったからさ!それに・・・そんなにせっかちだと女の子が寄り付かなくなるよ」



 「寄り付く女がいないから結構」


 「星宮、気が向いたらまたいつでも話をしに来ておくれ」

随分とマダムに気に入られたようだ。マダムの協力は確実なものとして見ていいだろう。


 「はい。ありがとうございました!」


 「あ、そうだ。ブラコンは恋愛面でなにかと不利だから気を付けることだよ」

 

 「・・・はい」

 

 「・・・お前ら本当に有意義な話をしたんだよな?」


****

 「さっきマダムと何を話してたんだ?」


 「一君にはとても聞かせられないような話」


 「・・・・・俺の悪口?」


 「いや人の悪口で盛り上がるほど、心がすさんでないから・・・ただの世間話だよ。私が全然王女に見えないっていう話」


 「ああー確かに。喋っていても何も違和感ないんだよな・・・ただの女子中学生ですって言われても多分気づけない」


 「逆に王女って聞くと普通の人はどんなのをイメージするのかしら」


 「うーん。なんかこう、世の中を舐めた態度で、苦労知らずで・・あと頭悪いことばかり言ってそう・・とか?」


 「ひっどい言われよう」


 「あくまで俺の持っていたイメージだ。まあ実際は違ったんだがな」


 「そうだよね。謙虚で苦労も知ってるし、超天才だし、おまけに可愛いしー」


とっておきの笑顔を彼に作ってみせる。相変わらずの真顔だが、どことなく口元が緩んでいる気がする。


 「そうだな・・・(どこが天才なのか早く見せて欲しいけど)」


 「ところでさ。一君って戦争前はどんな感じだったの?」


 「そりゃあもう。勉強もできて、運動もできて、女子人気も高くて・・・」


 「・・・本当は?」


 「少しは信じてくれよ。・・まあいいや。実際の俺はそんなキラキラした人間じゃなかった・・・・ていうか俺は・・・たしか小4の時から学校に通わなくなったしな。いわゆる不登校ってやつ?」


 「嫌なら別にいいけどさ・・・何で不登校になったとかって・・・」


 「別にいじめられてたわけでも、クラスに馴染めなかったわけでもない。みんなと話を合わせるのは少し疲れたけど・・・でもなんか・・・ある日突然嫌になったんだ」


 「・・・理由は分からないの?」


 「ああ。自分自身でもよく分からない。でも俺の両親も妹も学校に通わないことを受け入れてくれたんだ。・・・親が納得してくれたのも嬉しかったけどさ、なにより妹が嫌な顔一つしなかったのがとても助かったんだ。

・・・妹はその時小2で、俺のせいでクラスの奴らから多少はいじられてた。本当に悪いことしたと思ってる・・・それだけは後悔してるんだ」


 「・・・多分だけどさ、一君の家族は、一君が学校そのものに向いてないって気づいてたんじゃないかな?」

 

 「学校そのもの・・・・・俺の家族が?」


 「うん。自分では分からなくても、周りの人から見たら分かることだってある。

・・・例えば、他人の計算ミスにはすぐ気づけるけど、自分の計算ミスにはなかなか気づけない、とか。」


 「・・・つまり俺は無意識のうちに、自分が学校そのものに向いていない可能性を排除してたってことか?」


 「私はそう思う。世の中の人達全員が、学校っていう仕組みに適応できるとはとても思えない。だけど学校に行くのをつらく思っても、その仕組みは存在して当たり前のもの。だから原因を疑うときに真っ先に排除されて、いじめとかクラスの雰囲気とか・・・条件によって変化するものばかりに注目がいく──本当は学校という制度を負担に感じているかもしれないのに。もちろん後者の方が断然多いとは思うけどね」


 「なるほど・・・確かに一理あるな」


 「妹さんもそれに気づいていたんじゃないかな。『もう、どうしようもないお兄ちゃんだな~ 私が分かってあげないとほんっとにダメなんだから』って」

もし私が妹だったら間違いなくそう言う。


 「いや、いくら俺の妹でもそこまで言ってなかったぞ。それともお前が妹の立場だったらそう言うのか?」


 「あ、あくまでも私の想像だから。・・・そもそも一君の妹さんはどんな子だったの?」


 「あいつはな・・・・・・本当に俺の妹なのか怪しいくらい俺に似てなかった」

まさかの義妹伏線!?・・・兄妹恋愛の禁忌を完全に無効化する最強のカード。

えへへ・・これは・・・妄想がはかどりますな。


 「・・・なに気持ち悪い顔してんだ?」


 「んあ!?いや気のせいだよ!続けて続けて!」


 「・・・あいつは俺と違って社交的な性格だった。どんな人ともすぐ仲良くなって、友達も多かった。しかも頭も良くて、スタイルも顔立ちも並外れて良かった。才色兼備を擬人化したらああなるだろうな。・・・俺にはないものばかりだった」


彼は随分と自虐的に語るが・・・彼に社交的な性格がないとしても、頭は良さそうな印象だし、顔も整ってるし・・・妹さんを見たことはないから絶対とは言えないけど、割と負けず劣らずだとは思う。


 「だけど一つもったいないところがあったな」


 「もったいない?」


 「ああ。あいつの欠点を一つ上げるとすれば・・・ブラコン属性がついてたことだな」


 「ブラコンは欠点じゃない!!!」


 「お、おう。急にどうした」


・・・まずい。また取り乱しかけてしまった。落ち着いて、冷静に、言い訳をしよう。


 「あ、いや・・その・・・・ブラコンとは言うけれど、妹さんが一君のことを大切にしてたってことだから、欠点ではないかなーって思ったりしただけだよ!」


 「・・・それもそうだな。ていうかそれなら大声出さずに最初からそう言えよ」


 「ごめんごめん。ちょっと喉の調子がおかしかったみたい」


ふぅ、危ない危ない。何とか誤魔化しきれた。発作が出ないように注意しないと・・・


 「まあそんな妹と違って俺は学校にも行ってなかったし、マダムやお前にいじられた通り、友達なんていなかったのかもしれない。それこそ戦争が始まる前からな」

真面目なトーンから、また自虐的な調子に戻る。


 「さっきまでの考え方と矛盾しているかもしれないけど、もしチャンスがあるならまた学校に行ってみたい・・・今なら感じ方とか何か変わってる気がする」


 「じゃあさ、私が脱出するときに一緒に来てよ」


 「ははっ ついていったところで、どうやって生活すればいいんだよ。身寄りもないし」


 「それなら私に任せてよ!」


 「そういえばお前王女だったな」


 「またそういうこと言う!」


 「まあでも・・・ガリスト王国に行って、普通の生活を送って、友達を作って、一緒に毎日騒ぐのもいいかもしれないな」


 「友達なら・・・カシミル地方から脱出する前でも、私がなってあげるわよ。第一号にね!」


 「・・・ありがとな」


彼は真顔を崩しながら、いつもよりいくらか小さい声でそう返す。


 「脱出した後を想像してたらなんか楽しくなってきた。

どうせだったら、友達以外にも彼女とか作るか・・・妹系彼女とか俺には合ってそう。

お前はどんな男を彼氏にしたいとかあるか?あ、でも王族だからそういうの考えたことなさそうだな・・・」


これはもう間違いない。・・いや・・・これは・・どっちだ?ネタの可能性もある。・・・ひとまずここは冷静に、当たり障りのない返事で切り抜けよう。


 「あ、あのさ」

 

 「どうした?」


 「・・・私がなってあげようか?」


 「え」


 「あ、いや。妹系彼女じゃなくて、普通に妹でいてあげようかってこと」


 「ああ、そういうこと・・・・いやいやいや全然”普通に”じゃないが?なんなら彼女ポジより近いが?〘※神狩個人の感想〙」


 「お願いお願いお願い!・・・昔からお兄ちゃんがいた人達が羨ましかったの!カシミル地方にいる間だけでいいからさ・・・」


 「まあ俺は一向に構わないけd・・・」


 「やったー!! これからよろしくね♪ お兄ちゃん」


 「・・・・おう 。よろしくな・・・

(あ、これ多分兄というものに大きすぎる幻想を抱いてるタイプだ)」


 「・・・なんか言った?」


 「いや別に。ただ・・・面白いことになりそうだなって思っただけだ」


冷静な態度かつ当たり障りのない対応で、無事妹ポジを占領することが出来ました。


****

 「やっと着いたー」

そういいながら星宮は、ベッドに倒れこむ。一応そこは俺のベッドなのだが・・・にしても・・・


 「もう傷の方は大丈夫なのか?」


 「まあ鎮痛剤も打ってくれたし。痛みもないよ」

体だけ上げながら星宮は話す。


 「鎮痛剤はもうとっくに切れてるぞ。俺がお前に飲ませたのは1時間ぐらいで効果が切れるやつだ」

そろそろ21時を回る。イリーガルワールドで少なくとも2時間は過ごした。


 「え。じゃあ・・・」


 「お前の体の回復力どうなってるんだよ・・・太ももの包帯を取ってみてくれ」


 「分かったわ」


・・・・!?

 「もう傷が塞がっているのか・・・いくら何でも早すぎだろ」


 「昔から怪我の治りが早かったのよ」


 「まあその方が都合がいいか」


 「・・・?」


 「飯を食ったときにも話したが・・・ブラッドショット・アイから脱出する前に、お前に簡単な訓練を施しておきたいんだ。・・・自分の身を守れるくらいにはな」


 「なるほど・・・」


 「思ったより元気そうだから明日から始めてもいいか?」


 「うん。大丈夫」

どうやらマダムと会ってから覚悟も決まったようだ。


 「よし。じゃあ今日はもうゆっくり休もう。俺の妹の部屋に案内する。そこで着替えてから寝てくれ」


****

 「ここが俺の妹の部屋だ」


 「すごい・・・」

まさに女の子の部屋といった感じ・・・ピンクを基調として、ベッドにはたくさんの縫いぐるみ置かれている。少し低いテーブルにはいろんなジャンルの本が置かれている。ここが戦場であることを忘れさせてくれるような、とてもかわいらしい部屋だ。


 「服はこのクローゼットの中にたくさんあるから、適当に選んでくれ。ちょうどサイズも同じくらいだと思う」


 「うん!」


 「じゃあ、おやすみ・・・」


 「あ、待って」


 「どうした?」


 「着替え終わるまでさ・・・外で待っててよ。似合ってるかどうか見てほしいからさ」


 「・・・・分かった」

****


よし。私の服選びのセンスを彼に見せつけてやるわ。


 「まずは左のクローゼットから開けてみようかな・・・」

中にはぎっしりと服が詰まっている。


 「本当にたくさんある・・・」

一君の妹はオシャレ好きだったのかもしれない。


 「どれもかわいいな・・・あ?!!?」

これは・・・メ、メイド服!?・・・・・よし。


****

 「着替え終わったわ」


 「じゃあ開けるぞー」

わざわざ俺を呼び止めたからには相当な自信があるということだ。

見せてもらおうj・・・!?


 「じゃーん。猫耳メイドだよ。似合ってる?」


不意打ち猫耳メイド!?頼んでもないのにその姿を拝 めるなんて!

ヤバい。なんか興f(検閲)


 「に、似合ってるが、それで寝るのか?」


 「あはは どんな反応するか見てみたかっただけ!・・・いい顔が見れたよ」

星宮がニヤリと笑う。うそだろ・・・俺どんな顔してたんだ?


 「それにしても・・妹にこんな衣装を着させていたなんて・・・悪いお兄ちゃんだな~」


 「俺じゃない!コスプレ趣味があったのは妹だから」


 「ふふっ そういうことにしといてあげる!」


目の前でドアが閉まる。


 「・・・いや本当に違うから」


ドアの奥でも聞こえるように大声で言う。


それにしても似合ってたな。妹がなぜかコスプレ好きだったんだが・・・

猫耳+メイド服、か・・・これ以上考えると新しい扉が開きそうだからやめておこう。

・・・・尻尾も似合っているのでは?


****

私の猫耳メイドコスプレ。・・・あれは間違いなく刺さった。顔にはでてなかったけど、目の動きが明らかにいつもと違った。あえて尻尾は外しておいたから・・・次に期待させておこう。


 「それでは改めて・・・真ん中のクローゼットを開こうかしら」


****

 「着替え終わったわ」


 「・・・・」

よし開けるぞ・・・もうただのコスプレ程度じゃ動揺しなi・・・!?


 「じゃじゃーん!スクール水着~」


これは・・・俺の妹が小学生の時に着てたやつ!?・・・視界が一瞬グラつく。

妹系王女+スク水+ポニーテール・・・・・俺の脳内世界でいろんな単語が繋がってゆく。 ──ダメだ。これ以上考えると、頭が・・・・新しい扉が何個も・・・何個も開いてしまう。


 「似合ってるかな?・・・お兄ちゃん」

星宮の声で一気に脳内世界から現世に引き戻される。


 「・・・その格好でお兄ちゃんっていうな。恥ずかしくないのかよ」


 「少し恥ずかしいけど・・・お兄ちゃんのその顔が見れて満足だよ」

星宮はまたもやニヤリと笑う。完全に遊ばれている。


 「・・・・早くまともなのに着替えてくれ。」


 「はいはい」


 「・・・次ふざけたら明日一日、ずっとそれを着てもらうからな」


強めに釘を刺しておく。次は耐えられないかもしれない。


 「あはは 分かったってお兄ちゃん」


さっきからお兄ちゃん、と呼んでいるが・・・自分が年上だった時どうするんだよ。


****


 「はぁ~面白かった」

彼に聞こえないくらいの小さい声でそっとつぶやく。


 「次はちゃんと選ぼうかな」

最後に残した右側のクローゼットを開く。どうやら部屋着はこのクローゼットの中にしまっていたらしい。


 「キャラクターTシャツ・・・クマ柄のパジャマセットアップ・・・ピンク色のもこもこルームウェア・・・・・良さそうな服は・・・・・ただの白いTシャツ?」


しかもちょっと大きい・・・


 「待って。大きいってことは・・・・まさか!?」


頭の中で電流が流れる。そして一つの仮説にたどり着く。


 三つのクローゼットの中にはオシャレで可愛い服装と性癖が垣間見える服装の両方が入ってた。これらはきっと妹さんの趣味だった。

 だけど、今私が持っているこの無地の白いTシャツとは系統が違いすぎる。

妹さんの性格を察するに、キャラクターの一つや二つが入っていてもおかしくない。

 さらに言うとサイズも明らかに大きい。つまりここから導ける結論は一つ。


「おさがりTシャツ・・・!!」


****

 「どうかしら」


 「・・・」


俺のおさがりTシャツに白のラインが入った黒いショートパンツ ──Tシャツが大きいから、腰の少し下まで裾に覆われている。・・・偶然なのか?偶然俺のおさがりのTシャツを着ているだけなのか?・・・いや。まさか知っていながらわざと選んだのか?


 「お兄ちゃん?・・・どうしちゃったの?」


星宮はまるで俺を試しているかのような笑みを浮かべる。間違いなく確信犯だ。また俺のことを弄ぶつもりか・・・・頭の中で深呼吸をイメージする。・・・よし。


 「いや何でもない。そのダボッとした感じがよく似合ってるし可愛いと思うぞ。」


 「・・・ありがとう」


なんとかその場をしのげた。やはり真顔で対処するのが一番得策だ。


 「じゃあ今度こそ、おやすみ」


 「うん、おやすみー」


目の前でドアが閉まる。・・・長くて楽しい一日だった。こいつのおふざけがちょうど俺の弱点を突いてくるから疲れるけど。


 「・・・今日は早く寝ておくか」


静かな夜が今日もやってくる。喜劇か悲劇か・・・この脱出劇はどちらに転ぶだろうか。

表現の調整って本当に難しいですよね(挨拶)。今まで自分が書いてきた文章であっても、「ここもうちょっとこうすれば良かったー」とか思うことが多々あり、そのたびにエピソードの編集・保存を繰り返す日々です。こんな拙作ですが、1人でも楽しんで頂けると幸いです。今作はダークなところはとことんダークにして、ふざけているところはとことんふざけさせて、といった風に書きたいところです。

他にも我々が住む世界のミームを少しづつ織り交ぜていきたいです。学校でパソコン君という大変名誉のある称号を頂いた私だからこそ(←ほら、涙ふけよ)、少しニッチなネタも混ぜれるかもしれません。

作品に対する感想もぜひぜひ聞かせてください!

それでは引き続き、ブラッドショット・アイをお楽しみください。

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