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第一章 第一話 ギャル、転生

日本暦2152年

東京都品川区

明朝8時


『五反田〜、五反田〜、浅草線、池上線へはお乗り換えです』


「…だる…」



明朝8時25分


とある高校


ガラガラ…


「おはよう〜…ねむ…」


「おはよう久遠…って、また髪色変えたん?」


「美咲っちおはよう〜、そうなんだよね、なんかしっくり来なくてさ…」


私は、九重久遠、17歳

何処の高校にでもいる…と思う生粋のギャル


「まぁそんなことはどうでも良いっしょ」


そして、私に話しかけてきたこの者は、ギャル仲間の十山とやま美咲

女子高生に人気のアパレルブランド、ONELIKEなどを展開している十山グループの三姉妹の次女らしい


「あ、そういや美咲っち、昨日のドラマ見た?」


「あ〜、あれ?忙しくて見れてないんだよね…」


「まじ?絶対見たほうが良いって、美咲っちの好みの展開だし」


「話聞いてた?」


「聞いてた聞いてた」


「お〜い、そこはいつまで盛り上がってるんだ?時間過ぎてるぞ〜」


「あ〜すいません」


「もう過ぎてたん?さ〜せん…」


いつの間にか8時半を過ぎていたようである



午前10時頃


「…え〜、今回から3次関数の部分に入っていく。教科書48ページと、タブレットの3次関数のところをまず開くように…」


「…あ〜…、だる、ねむ…」


「…九重、四十八願よいなが五十棲いおずみ十六夜いざよい八字やじ、早くタブレット開けよ〜、その五人、いつも開いてないからな〜」


「はぁ〜…、だるいわ〜…」


「先生、全然ページ行かないんですけど〜」


「またか…四十八願、いつもの嘘じゃ無いんか?」


「マジですって!」


だいたい、今の時代に勉強する必要性あるとは思えんのだけど


「マジ退屈…」


サザ…


「…ん?」


「先生、な〜んかタブレットが変です」


「先生、こっちも」


「五十棲、十六夜、ちょっと待ってろ、すぐ行くから」


ザザザ…


なんだろ、このバグ…


「先生、こっちもタブレット、バグってるっぽいんですけど〜」


「九重もか?ちょっと待ってろ〜」


「はぁ〜い…」


ザザザザザザ…


はぁ…ダルいって、タブレット不調は


シュアァァァァン…


「…は?」


何…これ、タブレットが突然光り出して…


「えっ、ちょ、なにこれ?!」


「えっ、光り出して、えっ、どういうこと?これ…」


横目で一瞬、五十棲、十六夜の方に目をやると、自分と同じようなことが五十棲、十六夜の二人にも起きているようだった…


「きゃっ、えっ、何?えっ、きゃああ!!」


「は、はぁ?な、なんだ?とりあえず、五十棲、十六夜、席から…」


「は、はっ、はっ、吸い込ま…」


「なっ、何、嫌…、私、嫌だっ…」


「お、おい!五十棲、十六夜…」


教室は一瞬にして阿鼻叫喚の様相に包まれ、ゾンビパニックの映画のような状況になっていた


「これは…マジでヤバい…」


「久遠、何ボーッとしてるの!早く逃げてっ!」


「いや無理だわこれ、逃げたくても体が無理っぽい…」


「そんなっ…」


「美咲っちは、私がいなくなっても自分を責めないでよ…」


「そ、そんなこと…言わな…」


美咲がそう言いかけたところで私の記憶は無くなった…いや、正確には前世の記憶と言ったほうが良いだろうか…


「ん…どこここ…」


『お目覚めになられましたか』


「ん?誰なんあんた」


木の精霊だろうか、透明性の高いドレスを身に纏った、いかにも、古のなろう系でよく見たことがある容姿をした精霊っぽい人が立っていた


『私は、聖樹の精霊アルシア=エルディア=セレスティアです。以後、お見知りおきを』


「セレスっちか、まぁ、どうでも良いけど何か用でもあるん?」


『セ、セレス…っち?』


「そう、セレスっち、可愛らしいじゃんその方が。毎回アルシアうんたらかんたら言われるのくどいし」


『えっ、えっ、は、はぁ…』


「んで?何?まぁ何となく分かるけど」


『そ…、そうですね…話を戻しましょう』

『あなたを呼んだのは、とある人物となって、来る戦乱の時代に備えてある国を守って欲しいのです』


「却下」


『は、はい?…い、今なんと…?』


「だ、か、ら〜、却下」


『はっ?』


「私、そう言うのマジダルいし、面倒い」


『あ、あの、面倒いじゃなくて…』


「あ〜、そういうのいいから」


『は?』


「こういう転生系?的なやつは、勇者になって世界救ってくれ的な?やつは正直食傷気味なんだよね〜。しかも、戦系なんてそういうの嫌いだし〜、そういうのだったらそんなこと関係なく生活したいわけ、Do You Understand?」


『は、はぁ……?』


「飛ばされた上でそれって、マジダルいわ〜…」


『あ、あの…少しキツい言葉使いますけど、転生者は何かしら強いものを持たなきゃこの世界では生きていけませんよ?何しろ、転生者なんですから』


「知らんがな、それを持たせるのはあなたたちの役目でしょ、知らんよそんなん」

「あと、あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ〜」


『は、はぁ…ま、まぁそうですね。分かりました、では、魔法の属性や系統の説明から行いますね』


「あ〜、そういう説明眠くなるからパス、サポート系で適当に付けといてくれれば良いから」


『えっ、は、はぁ…』

『で、では、能力を付与しますので、私の前に…』


「あなたの目は節穴ですか?目の前にいますけど〜」


『……』


「あれ?どうしたん?話聞こか?」


『…こ、このクソ女!黙って聞いてればなんなんですかその態度!!』


「いや、あんたが勝手に始めた物語でしょ」


『う、ぐぅ…』


あまりにも瞬殺だったので笑いそうになった


「いいから、ちゃっちゃと付与してよ」


『は、はい…』


シュオオオオオオオン…


『はい、あなたに能力を付与しました』

『この世界の住人は、基本的に主属性、副属性の二属性あるいは、それにEX属性を入れた三属性を持っている人が多いです』


「要するに、EXスキルは、パッシブスキル的なやつね…面白ろ」


『…続けます。それで、貴方には主属性が光属性の、副属性は花属性、EX属性は転生者ということで2つあって、心属性と夢属性です』


「なんか面白そうな属性…」


『では、あなたの転生後の国へ転送しますね』


「それって、変更出来ないの?」


『無理です』


即答された…


「まぁ、しょうがないか…」

「んじゃ、転送よろ」


『あ、え、あ…はい、分かりました』

『転移魔法起動、転移を開始します』


シュオオオオオオン…


「あ、そうだ。セレスっち、一つ聞いていい?」


『な、なんでしょう』


「私の周りに誰か家族みたいな人いるん?」


『え?ああ、そういえば...あなたは悪役令嬢になることになる予定の令嬢、エリザベス・ヴァン・アストリアの幼なじみ、アデリーナ・ローゼンフェルドとして転生することになっています』


「マジ?悪役令嬢の幼なじみ?性格変わりすぎて変に思われない?」


『一応、あなたの転生する人は、転生時4歳くらい活発な女の子となってるとは思いますよ』


「あ〜、なる、りょーかい」


『それ以外の設定は、アデリーナの記憶として共有出来るようにしてますので…では、良い転生ライフを!』


「どこぞのアニメみたいに言わんといて!」


シュオオオオオオン…


眩い光に包まれて、九重久遠の意識が遠のいていく

今、この空間が開けたとき、私は、九重久遠改め、アデリーナ・ローゼンフェルドとしての人生を歩む


「まぁ、私なりに気ままにやればどうにかなるっしょ」



ドタン!


「きゃっ!」


ドサッ


「いったぁ…」


目を覚ますと、私、九重久遠改め、アデリーナ・ローゼンフェルドは、ベッドから転げ落ちていた

どうやら転生は成功したようだ


アデリーナの記憶によると、私の家、ローゼンフェルド家は、現女王、ミストレナ・ミリーニャ王の側近のヴァン・アストリア家の分家に属するところらしい


ガチャ…


「アデリーナお嬢様、大丈夫ですか!?凄い音しましたが…」


「アデリーナ、大丈夫ですの!?」


メイドっぽい人と一人の少女がドアを開けるなり、駆け込んできた

こういう転生後の一言目ってどのテンションで言うのが正解なのか分からんのよなぁ…

こういったアニメ見ててもよう分からんし…


「うん…大丈夫、ベッドから落ちただけだから…」


このトーンで良いのかな?

声のトーンをアニメだと、無口な少女がしゃべるような自信無さげ?のような声を出した


「そう…なら良かったですわ…でも、一応ソフィア様に見てもらいましょう」


「うん…」


この人が幼なじみであるヴァン・アストリア家の三人姉妹の長女、エリザベス・ヴァン・アストリア、要するにさっきの聖樹のセレスっちが言ってた悪役令嬢、ごく一般的な悪役令嬢ではこの歳はまだ純粋な令嬢と言ったところだろう


「良かった…アデリーナお嬢様に何かあったんじゃないかと心配しましたよ…」


「はははははっ…」


ヘドバンしてる?ってくらい首を振りすぎて、思わず苦笑してしまった


この人は、ローゼンフェルド家のメイドの一人のエミーリア・クライン。メイドの仕事を卒なくこなしているできるメイドさん。しかし、心配したときのやりすぎなくらいのオーバーリアクションがあるのが玉にキズ…らしい

…確かにオーバーすぎるな…


「エミーリア様、ソフィア様を呼んできてくださる?」


「りょ、了解です、エリザベス様!」


「エリザベス、多分、大丈夫…だと思う」


「何を言ってるんですのアデリーナ、あなたの身に何かあったらどうしますの!そもそもだいたい、どういう寝方をしたらベッドから落ちるなどあるんです?!それで将来、ミストレナ女王の側近になんてなれるとお思いですの?!」


悪役令嬢ものの作品なら、こうなったらものすごく長くなるんだよな〜…マジダルいって…


「エリザベス様、と、とりあえず落ちついてください。ソフィア様に見せる前に何かあったらどうするんですか!」


お、ナイス、さすがメイドさん


エミーリアが終始戸惑いながらもエリザベスを止めた


「エミーリア、何やってるんですの!ソフィア様を早く呼んできてください!」


…いや、止めきれなかった


「は、はい!も、申し訳ございません!呼んできます〜!!」


ドタドタ…


「わっ…」


ドゴッ!!


「ファウッ!!」


「何やってるんですの!エミーリア!!」


「ウゥッ…」


猛ダッシュでドアに向かったからか、盛大にドアにぶつかった。勢いだけなら2年くらい前に発売された、New Switch Re:6の大乱闘系の最後に相手キャラをふっとばした時のあの感じのよう


ガチャ…


「何を朝から暴れてるのよ、まったく…騒がしいったらありゃしないわ…」


一人の女性が呆れながら部屋に入ってきた


「ソ、ソフィア様、ちょうど良いところに…」


「ソフィア様、早く来てください!」


「ちょっと、同時にしゃべらないでよ、二人とも少し落ち着きなさい」


母上様だ…

この人はソフィア・ローゼンフェルド、ローゼンフェルド家の正統家系のものであり、このアデリーナの母親。

ローゼンフェルド家の現在いまがあるのもこの人のおかげということらしい


「ソフィア様、アデリーナがベッドから落ちて…」


「いつものことじゃない、…で?何?アデリーナ、頭でも打ったの?」


「いえ、そんな感じは…」


「エリザベス、今は貴方には聞いてないわ」


「あ…ごめんなさい…」


「…で?どうなのアデリーナ」


「打って…ないと思う」


「そう、なら良いわ」


「でも、ソフィア様…」


「心配しすぎなのよ貴方たち。頭打ってないなら心配することじゃないわよ」


「しかし…」


「くどいわよ、エリザベス」


「ご、ごめんなさい…」


「他に何もないならもう行くわ、貴方たちにずっと付き合ってられるほど私も暇じゃないの」


「申し訳ありませんソフィア様。私、エミーリアが情けないばっかりに…」


「全然良いわよ貴方のせいじゃないじゃない。それよりエミーリアは怪我はない?」


「私は体は丈夫なので…」


「そう…」


ガチャ……バタン


エミーリアと少し話したのち、母上はこの部屋から出ていった



それから4年後


「あ〜、それ面倒いからパスで」


「アデリーナ!何寝ぼけてるんです?やる気ありますの?!」


この5年の間に、徐々に喋り方をフランクにしていった

最初は、エリザベスに散々注意されまくっていたものの、もう諦めたのか、今ではこのフランクな喋りでも特段何か言われることは無くなっている


「だって、それ詠唱するの面倒いし、発動に時間かかるじゃん。それにコスパもタイパも悪い、無理無理、パスパス」


「そんな気持ちでは戦場に駆り出された時に何も出来ませんわよ!アデリーナはそれで本当に良いと思ってますの?!」


「前から何度も言ってるけど、私は戦いなくないし、戦う気もない。魔法覚えてるのも単位のためだし」


「…見てる側からしたら愉快ね、でも、私たちのことを忘れているのかしらぁ?」

「行くわよ、バーストレベル3、闇聖樹の力、我に仇なす者に解き放て!レベルバースト・ジャッジメント!」


「まずい!!」


ズゴゴゴゴゴゴ……ドゴンッ!!


「無属性防壁、カウントカウンターシールド!」


キィィィィッン!!


「へぇ…でもこれで終わりとでも思ったぁ?出力3倍!30発!!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ズドドドドドドドド…ドゴゴゴゴゴゴゴン!!


「シールド50!スキルオーバーライド!」


キュイイイィィィィン…キンキンキンキンキン!


ここは、セント・ミリーニャ・エリシア魔法学院

多種多様の魔法属性を持つ生徒が通うミリーニャ国最大の魔法学園である

今は、どういう状況かと言うと…


だいたい15分ほど前


「はい、今日はここまで。来週は実技メインでやっていく…以上」


「はぁ…来週実技とかマジダルいって…」


「マジダルなんて言ってられませんわ、あなたは単位ギリギリなんですから」


「ギリギリでも取れてれば良いでしょ別に」


「アデリーナ、あなたって人は…」


エリザベスが呆れながらそう言った


「うん?なんか言った?」


「いえ、別に…なんでもないですわ…」


「ちょっとお待ちなさいなあなたたち!」


目の前に、いかにも気が強そうな女子二人が仁王立ちで立っていた


「あの二人は…」

「行きますわよ、アデリーナ」


「うん?どうしたん?」


「良いから行きますわよ、後で話しますわ」


「待ちなさい、と言っておりますわよね?逃がしませんわよぉ」


仁王立ちしていた二人のうちの一人が私たちの進路を封じた


「邪魔ですわ、どいてくださる?」


「なぜ私達がどかなければならないのですか?」

「私は、シュタインベルク家の天才令嬢、カロリーナ・シュタインベルクその者ですわ」


あ、天才令嬢って自分で言うのね。弱そう…


「そして、隣にいるこの者は」


「…ドラクロワ家、双子令嬢の片割れ、ヴィクトリア・ドラクロワです…。今日は、姉が風邪で休んでるから私一人で来てやっただけ…、まぁ、私一人でもあなたたち相手には十分だし」


…いや、呼んでないんだけど、あと、声小さいな


「わざわざ自己紹介ありがとう、私は、ヴァン・アストリア家の令嬢、エリザベス・ヴァン・アストリア、そして、隣にいる者が、幼なじみで、ローゼンフェルド家の令嬢、アデリーナ・ローゼンフェルドですわ」


「よろ…」


ペコリと軽く会釈をしておいた

まぁ、この先会うことはないと思うけど


「へぇ…ローゼンフェルド家ねぇ…」


「ふぅん…」


「で?なんですの?何も無ければ行きますわよ」


「無いわけないでしょ」

「あなたたち、私たちと勝負しなさい。まぁ、私たちが勝てば、ローゼンフェルド家、ついでにヴァン・アストリア家は私たちのものとさせて貰いますけど」


「は?」

「あんたたち、一体何様のつもり?あなたたちのものになんかさせるわけないわよ!」


「それは私たちに勝ってからほざけばぁ?」


「まぁ、私たちが勝つけど…」


「あなたたちムカつきますわね…、あなたたちになんの…」


「エリザベス、ちょっと私に言わせて」


「アデリーナ?…ええ、良いですわよ?」


「あなたたち、勝てるとかほざいてっけど、戦わなきゃ勝てないでしょ、戦う前からそういうの言うの、めっちゃ負け犬の遠吠え感強すぎて、ばっかみたい、あまり強い言葉を使わないでよ、弱く見えるから」


「はぁ?」


「舐められたもの…そっちがそうなんじゃないの…」


「で、では、どっちが強いか試しませんこと?私たちアデリーナ・ローゼンフェルドと私、エリザベス・ヴァン・アストリアの二人と、あなたたちカロリーナ・シュタインベルクとヴィクトリア・ドラクロワの二人同士」


「まぁ、私はダルいからパスだけど」


「は?」


「あんなに語っておいて、敵前逃亡ですか…」


「あはははははっ!結局逃げるのね…ダッサ!」


「ア、アデリーナ!良いからやりますわよ!!」


「…やだ」


「あんなこと言われたままで良いんですの?!」


「戦うのダルいもん、戦いたくないし」


「何情けないこと言ってるんです?!やりますわよ!!強制ですわ!」


「はぁ……強制なら仕方ない…か…どっちみち私もムカついてたし」


「お、やっとやる気になったぁ?まぁ、どっちみち私たちが勝つけどぉ」


「私たちにあなたたちは敵わない…それが運命…」


で、今、この状況…というわけ


「だる…」


「アデリーナ、なにしてるんですの!しっかりやってください!」


「分かった分かった、やるからその間周囲守っといて」


「分かりましたわ…まったく…」


「炎の聖樹よ、我の声に呼応し、炎の守護により我地わがちを守れ…イグニッション・フィールド!!」


エリザベスの詠唱により、周囲に炎の結界がエリザベスを中心に円状…バリア状に広がった


「へぇ…フィールドバリア系ですか…でも、延命したところでなぁんにも変わりませんわよぉ!ブレイズフレイム、ブレイズチャージ!」


「エリザベスに強制って言われたらやるしかない…よね…さて、やりますか…はぁ…だる…」


うだうだ言ってる間も横目で相手二人をずっと見ていた

それで分かったことがある

さっきからカロリーナばかりが攻撃をしている

ヴィクトリアは、カロリーナを補助する魔法も使っていない。授業で覚えた魔素の流れの感じ方を使ってもヴィクトリアの魔素に動きがない

おそらくヴィクトリアの魔法は、発動するまでの条件が重めの魔法

さらに、今、カロリーナが魔法発動期間短縮系のスキルを使った

…となればおそらく、私の読みは合っている


「夢聖樹よ、我が夢の前に、我が世界に顕現せよ」


「深淵の聖樹、私に呼応せよ…。深淵より宿りし力、敵を滅ぼせ…ミッドナイトオールレンジブラスター…」


やはり…相手フィールド系スキルの消失を目的とした魔法

しかも計算上、消失スキル到達と、先ほど発動したカロリーナの攻撃と短縮の複合スキルの攻撃が防御フィールド消失1秒後に通過する

ただし、魔素量の95〜99パーセントを消費するため、外せば終わりのいわゆるロマン砲…

なら…


「…魔法陣展開…」


シュオオン…


「…幻影よ、刃となり、敵を穿て」

「目標、カロリーナ・シュタインベルク及びヴィクトリア・ドラクロワ二名…」

「ロックオン完了…」

「ミラージュ・デモン・ストライク 乱憐裂鬼みだれざき


シュゥゥン…


その瞬間、エリザベスが展開したスキル、イグニッション・フィールドがヴィクトリアの放ったスキル、ミッドナイトオールレンジブラスターによって強制消失した


「え、フィールドが!?なんで!?」


「エリザベス動かないでね、魔法がすぐ横通るから」


「え、あ、え…わ、分かりましたわ…」


クォオオオオオオォン…

ヒュン…チュイイイイン……シャシャシャ!……


ミッドナイトオールレンジブラスターによって生まれた矢のように鋭い魔弾にアデリーナが放った幻想の刃が当たった


「…貫け」


シュオオオン!

シュカアァァァン!!


アデリーナが放った言葉により、幻想の刃も呼応し、そしてその刃が魔弾を貫き、魔弾を切断した


「なっ…」


「…やばい、終わった…」


「ど、どうしますのヴィクトリア?!…いや、どうにかしなさいよ!!」


「…無理、魔素残り1パーセントしかない…」


「そんっなっ…」


「…仕方ない、無属性魔法、ビッグプロテクト!どうにか持って!!」


ドンッッ!!…チュイイイイン……シャシャシャ!……


「貫け、そして乱れろ」


バリン!


「はっ!?」


ドシャシャシャシャ…ジャキジャキジャキジャキジャキ…


アデリーナが放った幻想の刃がプロテクトを破壊し、そのままカロリーナ、ヴィクトリアの体に当たり、そして割いていった


「キャッ…キャアアアアアアア!!!」


相手二人の叫び声が木霊する


ドサッ…


5秒ほど二人の叫び声と斬撃音が木霊したあと、相手二人は力なく倒れ込んだ


「今回の勝負、私たちの勝ちだわ」

「でも、アデリーナ大丈夫ですの?あんなに斬撃魔法与えてしまって…」


「大丈夫っしょ、なにせ使った魔法、夢属性だからね」


「そうですのね、それなら大丈夫ですわね…」


「私たちが、この私たちが…、負け…?あり得ない…、あり得ないですわ…」


「…カロリーナ、ごめん、私が決めきれなかったから…」


「…良いのよ…」


「では、帰りますわよ、私、疲れましたわ…」


「うん、帰ろっか」


「…あの、エリザベスさん、アデリーナさん、一つお願いが…」


「は?何?」


帰ろうとしていたその時、ヴィクトリアに呼び止められた


「…あの、私たちの方から勝負仕掛けておいて、虫が良すぎるかもですが…」


「何が言いたいのよ」


「もしかして、私たちの仲間になりたいとか?」


「は?んなわけないでしょ」


「だから虫が良すぎるって言ったんだよ、おそらく」


「そ、そのとおりです…」


「虫が良すぎるって分かってるなら言わないでくださる?」


「このバトルはあなたたちが始めた物語でしょ、落とし前つけなよ」


ヴィクトリアは少し黙ったあとこう発言した


「そう…ですね…では、もし仲間になったあとに私たち二人どちらかまたは両方裏切った場合は、裏切ったものをこの国から追放してください」


「え…はぁ!?事前にもし負けた場合の話をした内容と違うじゃない?!」


ヴィクトリアの発言にカロリーナは驚きとともに声を荒げた


「…これが落とし前ということです…きっと」


「そんなこと…ヴィクトリアの家への誇りは!!我が家への誇りと偉大さは!!それを捨てろって言うの!?」


「学院でこの先ずっと今回の負けを言われ続けて、肩身狭い思いするよりはマシでしょ!!それくらい分かってよ!」


さっきまでのヴィクトリアの様子からは想像のつきにくい、怒号にも似た悲痛なともとれる叫びを発した


「ご、ごめん…」


「…なので、お願いします。仲間にさせてください…」


「あなたたち、私たちが許すと思っていますの?!あれだけの私たちを侮辱して、強制的に戦わされたんですのよ!許すはずありません…」


それ言うならあなたも同じことしてるよエリザベス…


そう思ったが、その言葉は飲み込んだ。仲間だし


「エリザベス、許しちゃおうよ今回は」


「はぁ!?何を言ってますのアデリーナ?!あなたはあんなことされたのにそれを許すってことですの?!あなた、カロリーナ、ヴィクトリアに毒されたのですの?!」


「そういうわけじゃないし、許してはいないけど、まぁ、こんなに必死だし、何より裏切れないだろうし、裏切ったら国外追放って言質、取ったし」

「それに、上手く使えればもし、戦わなきゃならないときが来たときの戦力になるかもだし…まぁ、戦いたくないけど」


「……はぁ、アデリーナ、あなたすこぶる優しすぎますわ…」

「アデリーナがそれだけ言うなら今回だけは許しますわ…」


「てなことでとりあえず、今から仲間ってことでよろりん」


「は、はぁ…」


「あ、ありがとうございます!」


こうして、カロリーナ・シュタインベルクとヴィクトリア・ドラクロワの二名が仲間になった

そして、この時はまだ知らなかった。私がカウンセラー資質があることを


「ヴィクトリア、本当にアデリーナさんの仲間になって大丈夫ですの?私には、おちゃらけてるようにしか思えないのですけれど…」


「…でも、実力は本物…私が認める…」

「それに、もう裏切れないから…」


「そう…ですわね…」

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