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1話.ヤンキーjk殺される

著者含め、主人公も悪役令嬢とは?と、あまり詳しくありません。勉強しながら書いていきますので、ご了承ください。

 怜蘭(れいら)はいつも好きな時間に起き、気が向いた日には学校に行く。3つ離れた妹は去年中学受験に主席で合格するほど優秀で、朝早くに登校して行く。父は大手企業の営業部部長として勤め、ご時世柄在宅勤務が多かったのだが、最近は妹と同じタイミングで家を出ることが増えた。母は元レディースの幹部である。今では専業主婦をしているのだが、趣味の料理ブログはそのアクセス数の多さから書籍化されるなど、菊池家は地元ではなにかと有名な一家だった。


 珍しく早朝5時に目を覚ました怜蘭はのそのそと起き上がる。というのも、昨日は親友の珠莉(じゅり)を後ろに乗せ、朝早くからツーリングに出かけ、海岸や道の駅、夜景に銭湯と、帰宅した時には疲れきっていた。まだ時刻は22時頃だったのだが、そのまま泥のように寝てしまっていたのだ。


 腹減って死ぬ...冷蔵庫漁るか...。思い立った怜蘭はスマホを確認しながらリビングに降りていく。


「ちょっとお姉ちゃん!昨日また学校サボったわけ!?ていうか、帰ってきてそのまま寝るとかまじ汚い!」


 朝からキーキーキーキー...優等生は周りの期待と立場でストレスが溜まって大変なこった。


「うっさ。風呂も飯も済ませてたし、母さんにも連絡入れてたけど。何?愛蘭(あいら)は人を責めないと生きていけないわけ?」

「はぁ?何その言い方!そもそもサボってること自体あり得ないって言ってんの!」

「だからさ、そのサボることによって愛蘭になにか影響があるわけ?いちいち突っかかってくる暇があるなら、さっさと大好きな学校でも行って勉強しなよ、優等生」

「うざ!ほんとお姉ちゃんって大っ嫌い!」

「はいはい。こんな姉ですみませんねー」


 ギャーギャーと騒ぎたてる妹に反して、面倒くさそうに言い返す。母が昨日作ったであろう手作りパンを適当に掴み、自室に戻って行く際も、リビングからは批難の声が響いていた。


 妹を疎ましく思っているというわけではなかった。妹のことは家族としてものすごく大切に思っているし、誕生日にはきっちりとリサーチしたプレゼントを送り、こんなに可愛い妹に変な虫が付かないかと心配するほどだった。

 怜蘭はその見た目に反して頭が良く、それは天才と言っても過言ではなかった。授業を受けても身になるものなんて無い。面倒なだけだと、中学生の頃から無断欠席を重ねたり抜け出したり、校内での喧嘩も多く素行は悪かった。その度に両親が学校に呼び出されていたにも関わらず、学力の成績はいつも優秀。勉強に勤しむ姿を家族でさえ見たことがなかった。

 対して、愛蘭は姉のようになりたいと地道な努力を積み重ねた秀才だった。同じくして、本当に姉が嫌いというわけではなかった。しかし、天才と比べられるプレッシャーは、まだ精神的に幼い愛蘭には耐えられるものでもなく、劣等感を抱かせるのは容易だった。

 高校生活を心配しているだけなのに、姉を思ってのことであっても、いつも喧嘩腰になってしまう。家庭内での2人の距離は遠くなるばかりであった。


「はぁ......」


 パンを頬張りながら溜め息をつく。せっかくの早起きで朝から愛蘭に会えるのだから、休日にお姉ちゃんのバイクでどこかに行かないかと声を掛けるつもりだった。せめて、前みたいに普通に話がしたかった。姉妹だからこそなのだろうか、2人とも素直になれずにいたのだ。


「あー...だるっ。寝よ...」






 菊池家の母、明美の1日は夫と次女を見送ってから始まる。


「パパ、愛蘭、今日もいってらっしゃい!」


 起床時間の早い2人の朝食は前日のうちに作っておき、2人が出掛ける10分前に起床する。見送ったあとはテレビでニュース番組を流しながら豆を挽き、珈琲を淹れる。それからしばらく、今日の夕食は何を作ろうかと、ゆっくりとしたひと時を過ごす。7時を過ぎた頃、菊池家のチャイムが鳴った。


「はーい。あら、珠莉ちゃん!上がって上がって〜」

「明美ちゃん、おはよん。え、待って。コーヒーのちょー良い匂い!」

「最近はまってるの、珠莉ちゃんも一杯目どう?」

「まじ!いいの!」


 

 ふと目を覚ますと、母しか居ないはずのリビングが何やら騒がしいことに気付く。階段を上がってくる気配は...無いな。もう少し寝るか...

(「うっそ!明美ちゃんそれですっぴんってまじ!?お肌綺麗過ぎてやばいわ...」「やだ、ほんと?最近課金したからなー」「うわ!いいなぁ...そういうのってさぁ...」)


 五月蝿い...それは、既にあまり眠気が無かった怜蘭を起こすには十分な話し声だった。仕方なく、リビングまで降りていくことを決める。話し声が未だに聞こえて来る。


「え、なにそれちょーお得じゃん!」

「そうなの!今度一緒に行っちゃう?」

「行く行くー!ついでに怜蘭も連行しよー」

「それ良いわね。あの子そういうの無頓着過ぎて心配なのよ」


「行かねーよ。てか、私が寝てたの知ってるくせに...絶対わざとだろ」


 呆れた、といった様子で階段を降りながら2人に声を掛ける。高校生になり周りが気にし始めるなかで、美容や化粧品、コスメといった類いには関心が無かった。


「あら、わかってたならさっさと降りてくれば良いのに」

「そうだそうだー」


 仲良いかよ...珠莉は明美のレディース時代のメンバーの娘で、昔から何かと家族ぐるみでの付き合いが多く、母親と娘の友達というより仲のいい先輩後輩という関係に近かった。


「で、なんで今日はそんなやる気なわけ」

「えー?なんかいっぱい寝て元気だし、早起きできたから!」


 珠莉は制服に身を包み、教科書が入っているとは思えないペラペラのリュックサックを持ってきていた。遊びに来る時は私服だ。怜蘭を誘って学校に行く気なのは目に見えていた。


「せめて連絡入れろよ...」

「えー、それだけじゃどうせ無理って言われるしー」


 それはそうだ、何も言えない。

 

「それくらい良いじゃないの、学業は学生の本文よ。さっさと準備!さっさと登校!」


 のそのそと支度し始める。


「ちょっと、あんたが遅れたら珠莉ちゃんも遅れるんだからね」

「単車で行くからよゆー」

「なに言っての、今日はママにバイク貸してくれるって約束でしょ」

「まじ...?明日じゃなくて?」

「ちょっと...忘れてたの?」

「やっば、まじで忘れてた...!」


 そこからはものの数分で支度を済ませ、勢いのままに家を出る。


「珠莉、走るぞ」

「おっけーい」

「怜蘭、珠莉ちゃん、気をつけてね!いってらっしゃい!」

「明美ちゃんまたねー!」「いってきまー」


 高校は自転車で行くには離れた距離にある。徒歩20分近くのバス停から1本で行けるバスが出ているが、ぎりぎり間に合うバスが来るまであと10分。全速力で走りきり、息を切らしながらも辿り着いた。


「じゅ、り...今...なん、分?」

「ちょっと...まって......お茶、」

「っだぁー...お茶うまっ!」

「パス」

「ん。...あ、待って、うちらちょー走ったからまだ時間ある!」

「まじ?天才じゃん」


 怜蘭はバス停横の自動販売機でスポーツドリンク買い、その1本を渡しながらバスを待つ。


「なにニヤニヤしてんだよ...」

「えー?なんか、青春!!って感じじゃん?」

「わっかんねぇ...珠莉のそういうとこ尊敬だわ。走って疲れたから帰りてぇ...」

「うわ!怜蘭っぽ!」


 珠莉が楽しそうに笑う。バスはすぐにやって来た。


「いぇーい、特等席〜」

「おい、あんま騒ぐな迷惑になるだろ」


 珠莉はいつも運転席の真後ろの、他より一段高い位置にある席に座る。まだ他の席が空いていても、駅に着いて殆どの利用者が降車し、車内全体が空くまでは愛蘭はその横に立つ。

 以前は空いていない時も多く、駅まで2人で立って待っていたのだが、この時間この線の利用者の間ではヤンキーとギャルの席という認識が広まっただろうか、2人が休む日も多いというのに珠莉が特等席に座れない日はほとんど無くなっていた。


「ねね、これみてみて。ちょーイケメンじゃない?」

「おい...もうちょい声落とせって...」

「これでも静かにしてますぅ」


 拗ねるように言う珠莉だったが、かなり声量を落としており、周りが迷惑だと思うほどのものではなかった。単に、怜蘭がこの手の話をするのが苦手で恥ずかしかっただけだった。


「いいから見てってばー」


 ぐいぐいと珠莉が押し付けたスマホ画面には、いかにも王子様と呼ばれていそうなアニメキャラが、しきりにこちらを見ては微笑んでくる姿が映し出されていた。

 オタク=危ない奴。という認識の彼女にとって、自分の親友が動く絵に対してイケメンと言う現実は受け入れ難いものであった。






 中学生のとき、キモいだの汚いだのと言って周りが毛嫌いする男子生徒がいた。髪はぼさぼさ、制服はシワシワ、声は小さくどもりがちで、思春期真っ只中の高校生からすれば恰好の的だ。

 しかし、怜蘭はどうでも良かった。こちらから話しかけることも向こうが話しかけてくることもない。関わりの無い人間には興味がなかった。


「き、菊池さんって、お金払ったら、誰でもしてくれるって、ほ、ほんと...?ぼ、ぼく、興味あるなぁ...なんて...」


 程度の低い噂だった。妬み、僻み、嫌がらせの意図で誰かが流した噂はこの時が初めてでは無かったし、苛立つことさえ無くなっていた。だがどうだろうか。幾ら強がっていても、たかが女子中学生。相手は本気では無かったとしても、面と向かって言われたらどう思うだろうか。それが相手との初めての会話であったとしたら。授業中の女子トイレで2人きりの状況で起こった出来事だったとしたら。

 

 気付けば、男子生徒は廊下で他の生徒に囲まれながら泣きじゃくり、無関心は恐怖へ、恐怖は耐え難い嫌悪感を生み、体は教師に取り押さえられていた。突き飛ばされた勢いで背中を打ち付けて強打し、顔に一発入れられた結果であろう鼻血と涙でぐちゃぐちゃな男子生徒。怜蘭が自分のために人を殴ったのはこの一度きりだった。

 





「...アニメかなんか?」


 自分の認識が偏っていることはわかっていた。珠莉は可愛いもの、派手なもの、流行っているものは基本的になんでも好きだ。友人の好みに口を出すべきではない。


「んーんー。なんかね、最近流行ってる乙女ゲームなんだけど、都市伝説があってさー」

「乙女のゲームって何?」

「やっぱか!普通やったことなくても想像くらいつくってー」


 悪戯っぽく笑う。こういう話題に疎いのは昔からだ。それなのに、いつも律儀に質問してくるのが嬉しいやら可愛いやらでついふざけてしまう。


「私も詳しいわけじゃないんだけど__ 」


 乙女ゲームとは。女性主人公を操作し、様々な男性の攻略対象の中から好きなタイプを選んで擬似的恋愛を楽しむもの。特にこの『囚われの姫と5人の王子』は剣と魔法の世界を舞台にした物語だった。


「なんちゃら国物語とか魔法学校みたいな感じか」

「え、それ見たことあるの...ちょっと感動なんだけど...」

「いや、愛蘭が好きで昔はよく見てたからなんとなくな」

「あーねー。まー世界観的にはそんな感じで、恋愛するのが中心みたいな」

「恋愛ねぇ...」

「って思うじゃん?結構リアルな感じでさー」


 このゲームではリリィという名の主人公を動かせるのだが、小国の捕虜として監禁されていた所を王子に助けられ、王子達の通う学園に転校生として通い始めるところから始まる。

 セリフは選択制ではなくプレイヤーが打ち込むことができ、定期的な恋愛イベントにも参加するかはプレイヤーが決めることができる。最終的には王子の中の1人と結婚しなければならないが、学園を自主退学し、冒険者としてモンスターと戦うことができたり、モンスターを使役するテイマー、農家や薬屋など本来学園を卒業するはずだった5年の間で様々な人生を送ることができ、かなり自由度が高くその珍しさで話題となっていた。


「流石に、きもい、死ねとかは拒否されたけどねー」

「なにがあったら恋愛ゲームでそんな言葉出てくるんだよ...」

「いや、だってさ、ちょっと助けてくれたからって急に彼氏面してくるんだよ?普通にキモくない?」

「そういうもんじゃねーの?恋愛ゲームなんだろ」

「いーや、こいつだけはマジ異常だから。怜蘭もやってみたらわかるって」


 そう言いながらスマホを奪い取ると、拒む怜蘭を「騒いだら迷惑だってばー」と言って静止し、アプリを検索する。


「うわ、ほんとにあるんだ...」

「何が。てか、返せ」


 奪い返したスマホには検索結果が見つからないというメッセージが出ていた。


「サービス終了してんじゃねーか。残念だったな珠莉」

「んー。私も最初はそう思ったんだけどね?」


 なぜこのゲームが今人気となっているのか。それは、単に乙女ゲームに収まらない完成度であるからだけでない。ゲームに纏わる、ある都市伝説が原因だった。

 なんでも、選ばれた人間にしかインストールができないのだとか。更には、別世界の生きている人間を操作している、ゲーム内で主人公が死ねば現実世界の自分も死ぬ、そんな信じ難いものまで噂されていた。


「へー、また変なのにハマってんのな」

「え、だめ?」

「いや、だめっていうか...」

「怜蘭だってインストールできなかったじゃん?」

「まぁたしかに...面白そうなの見つけたな」

「でっしょー、今んとこ普通に面白いだけだけどー」


 妙な噂のある流行りのゲームだ。そういうものほど人は惹かれやすい。製作者の遊び心か、戦略かはわからないが、珠莉がゲームのキャラクターにどっぷり酔心するようなことが無ければ別に良い。この様子じゃその心配も無いだろう。


 そうこうしているうちに駅に着く。この駅で殆どの乗客が降りていく。学校まではもう少しだ。


「まだそのゲームする感じか?」

「んー?今ね、やな女と口喧嘩ちゅー」

「ほーん...んじゃ、そこの席座るわ」

「はいはーい。なんか珍しくない?」

「流石に昨日は遊び過ぎた...」


 本当はゲームに夢中なら邪魔しない方がいいと思ったからだ。





 目的の一つ手前で男が1人が乗って来た。なんとなく、嫌な予感がする。こんなやつ今まで見たことあったか?なんで席に座らねぇ?

 怜蘭は記憶能力に長けていた。基本的に、一度見たものは忘れない。それに、この先にはもう彼女たちの通う高校以外には住宅街か公園しかない。乗客は同じ制服を着た学生が1人に自分たちと見かけない男が1人。考え過ぎだとは思ったが、一応、珠莉にメッセージを送った。しかし、

[見たことないけど、別に普通じゃない?バスだし]

と言われ、怜蘭も自分の気にし過ぎとして片付ける。母からの[夕食何がいーい?]という連絡にどう返そうか、珠莉と何か食べに行くのも良いかもしれないと考えることにした。





 

「お降りの際はバスが完全に停車してから__ 」

「あ、着いた!おり__ 」



「「「ぐあああっっっ!!!!」」」



 車内に、誰かの叫び声が響き渡る。今まで聞いたことの無いようなけたたましい叫び声に、怜蘭は振り返る。

 珠莉は声を掛けようと振り返った拍子に見てしまっていた。後部座席から立ち上がり、降車口に向かおうとした生徒を、あの男が刺した瞬間を。目の前で人が刺された...強烈な恐怖に襲われる。叫ぼうとするも声が出ない。一刻でも早くこの場から逃げ出さなければならないと、どれだけ脳が警鐘を鳴らしても足は重く体は震えて動かない。


 怜蘭は焦った。余りにも現実離れした光景に体が硬直する。違和感はあった。気付けていた、警戒していれば、目を離さなければ、なのに...。


「や、やめろ...来るな!やめてくれ、助けて...」


 刺された生徒の悲痛な叫びも虚しく、2度、3度、繰り返し刺され呻き声すら上げなくなった。男が振り返り、怜蘭と目が合う。目的はわからない。それでも、次は自分たちだと否が応でもわからせられる。珠莉は動けそうに無い。

 ならどうすれば良いか、その結論が出た瞬間体が動き出す。このままあっさり自分が殺されたら珠莉は逃げられない。


「立て!!」


 こちらに向かってくる男の前に立はだかり、怜蘭は叫んだ。自分がこの男を止めるしか無い。少なくとも、珠莉がこの場から逃げるまでは。


「...くそっ、まだ足りのか......」


 男がぼそりと呟く。


「あ"ぁ!?てめぇ、人殺しといて頭おかしんじゃねぇのか!!」

「っ!...黙れ」


 そう言うなり、男が刃物を振り下ろす。


「怜蘭!?」

「うるっせぇな!いいからさっさと行け!!」


 庇った左腕に包丁ともナイフとも言えない刃物が食い込んでいる。痛いなんてものではない。患部から熱と共に激痛が広がる。普通の人間であれば発狂するか嘔吐でもするところだ。それでも、怜蘭は右手で男が刃物を握っている方の手首を掴むことができていた。


「逃げましょう!!」

「ちょっ、離して!怜蘭が!!」

「駄目です!!今の私たちには逃げることしかできません!」


 運転手が珠莉を引っ張り、バスを降りていく音が聞こえる。


「余計なことを...ぐっ、お前、くそっ!離せ!」

「うるせぇ!ぶっ殺してやる!!」


 怜蘭は本気だ。“ 殺される前に殺す”この時、本気でそう思ったのだ。後のことなんて今はどうでもいい。

 男の腕を捻り上げると、メキョリという音を立て刃物が零れ落ちる。男は呻き声を上げ、よろめきながら後ずさる。その隙を怜蘭は見逃さなかった。距離を詰め、急所目掛けて思い切り蹴り上げる。


「ゔっ、ぐぅ...」


 男が痛みに悶え、その場に倒れ込む。良い一発が入った。刃物は遠くに転がり、手の届く距離ではない。少し、先ほどまでの熱が引いた頭で冷静に考える。刃物は怜蘭からも距離がある。なら、殴って気絶させ、その隙に逃げた方が早いだろう。そう判断し、拳を振り上げた。


 

 グズッ



 奇妙な音が体内から耳に響く。腹が熱い。それは、1点に力が込められ、無理矢理肉が突き裂かれた音だった。

 何が起こった?そんな疑問は痛みに掻き消された。末端から徐々に寒くなり、流れ出す血液だけが温かくて心地良い。視界が霞み、気付けば暗闇に包まれていた。


 遠くから近づいてくるサイレンを耳にしながら、怜蘭の意識は途切れた__

少しずつ投稿して行きます。感想やレビュー、いいね、ブックマーク全て励みになります。読んでいただきありがとうございました。

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