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別の世界ではただの日常です

存在しないはずの録画

作者: 茅野榛人
掲載日:2024/02/03

 押入れの掃除をしていると、奥から巨大な段ボールが出て来た。

 中には大量のVHSが入っていた。

 僕は昔、テレビ番組をVHSに録画しており、見たい時に何時でも見れるようにしていたのである。

 しかし今は、すっかりインターネットにハマっており、テレビは全く見なくなってしまった。

 もうこのVHSは、処分した方が良いと思ったのだが、中々決心がつかない。

 何時見たくなるか分からないと思い、ずっと保管していたものだ、簡単に捨てたくない。

 それに久々にVHSに録画されたテレビ番組を見たくなって来た。

 僕は掃除を一時中断し、VHSに録画されたテレビ番組を見る事にした。

 さあ、何から見ようか……ん? 何だこのVHS……。

 僕はどのテレビ番組から見ようかと、VHSに書かれた文字を読んでいると、何個か知らないVHSがあった。

 そのVHSには、テレビ番組の名前と、話数と思われる数字が書かれていた。

 他のVHSの文字も見てみたが、全部記憶に残っていた。

 残っていなかったのは、このVHSである。

 記憶が無い為、少々気味が悪いが、気になった為、第一話からこのVHSを再生してみる事にした。

 内容は、昔のアニメのようだった。

 しかしVHSに録画されていたアニメは、一切見た記憶が無いアニメだった。

 第一話を見終えて、僕が見たアニメをインターネットで検索してみた。

 なんと、インターネットには一切情報が無かった。

 マイナーなアニメだからと言うわけではない。

 VHSに録画されていたアニメは、存在しないアニメだったのである。

 なら、このVHSに録画されていたアニメは、一体何なんだ?

 途中でコマーシャルが入っている以上、録画である事は間違いない。

 ただインターネットで検索をしても、何も出て来なかった。

 見た記憶が無いと言い、存在しないアニメと言い、隅々まで不気味である。

 しかしこれだけは確かである。

 このVHSに録画されている存在しないアニメは、本当に、本当に! 面白い。

 何度見ても飽きる気配が全くしない。

 今日はもう、掃除はいいや、残りの十二話を、直ぐに見てしまいたい。


 少しでも暇が出来たら、直ぐに謎のアニメを見た。

 僕が今まで見て来たアニメやテレビドラマ、映画より何倍も面白い。

 先が、先が兎に角気になる。

 そしてとうとう最終回に辿り着いてしまった。

 全十三話だと言うのに、あまりにも短すぎる。

 まだ三話程度しか見ていないようにさえ思えて来る。


 とんでもない終わり方をした。

 いや、ストーリーは素晴らしかった。

 一切文句は無い。

 しかし、十三話の間ではストーリーは完結せず、第一部が完結したのである。

 段ボールの中を見てみても、第二部以降を録画したVHSは無かった。

 気になる! 滅茶苦茶気になる! しかしどうすれば良いんだ、存在しないアニメの第二部以降を見る方法なんて。


 仕事を投げ捨て……あのアニメの第二部以降を見る為だけに生きる日々を始めてから……一ヵ月が経った……。

 何処に行っても……第二部以降は見当たらない……。

 せめて死ぬまでに……第二部以降を見ないと……あまりにも巨大過ぎる心残りが残ったままになってしまう……。

 何処にある……何処だ……何処にある! 何処にある!

 突然インターホンが鳴った。

 扉を開けて誰が来たのかを確認すると、そこには大勢のスーツを着た男性達がいた。

「突然ですが、貴方を保護しに来ました」

「……はあ?」

「諸事情で身分や理由はお教え出来ませんが、こちらの指示に従って下されば、危害は加えませんので」

「え……ちょっと……」


「ありました」

「あったか、良かった」

「それにしても、まだあったとは」

「完全な根絶は至難の業だよ」

「まあ……そうですよね。昔放送されたこのアニメが、あまりの面白さに、人々の生活を疎かにしてしまい、急遽第二部以降の放送を中止、人々から録画を回収、視聴した人々から、このアニメや、記憶を抹消する際に見た光景の記憶を抹消、ごく限られた人だけが知る存在になった。しかし未だに録画が全て回収出来ておらず、見てしまう人がいる……確かに根絶は難しいですね」

「ああ……我々の仕事は、まだまだ終わらないよ」

「それにしても……皮肉ですね」

「ん?」

「面白いも……ほどほどにしないといけないなんて」

「んー……難しい所だな」


「そうだ! これ見ようぜ!」

「何その昔のDVDみたいなやつ……古くね?」

「これね、ダークウェブで売ってた、めっちゃ面白いアニメ!」

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