存在しないはずの録画
押入れの掃除をしていると、奥から巨大な段ボールが出て来た。
中には大量のVHSが入っていた。
僕は昔、テレビ番組をVHSに録画しており、見たい時に何時でも見れるようにしていたのである。
しかし今は、すっかりインターネットにハマっており、テレビは全く見なくなってしまった。
もうこのVHSは、処分した方が良いと思ったのだが、中々決心がつかない。
何時見たくなるか分からないと思い、ずっと保管していたものだ、簡単に捨てたくない。
それに久々にVHSに録画されたテレビ番組を見たくなって来た。
僕は掃除を一時中断し、VHSに録画されたテレビ番組を見る事にした。
さあ、何から見ようか……ん? 何だこのVHS……。
僕はどのテレビ番組から見ようかと、VHSに書かれた文字を読んでいると、何個か知らないVHSがあった。
そのVHSには、テレビ番組の名前と、話数と思われる数字が書かれていた。
他のVHSの文字も見てみたが、全部記憶に残っていた。
残っていなかったのは、このVHSである。
記憶が無い為、少々気味が悪いが、気になった為、第一話からこのVHSを再生してみる事にした。
内容は、昔のアニメのようだった。
しかしVHSに録画されていたアニメは、一切見た記憶が無いアニメだった。
第一話を見終えて、僕が見たアニメをインターネットで検索してみた。
なんと、インターネットには一切情報が無かった。
マイナーなアニメだからと言うわけではない。
VHSに録画されていたアニメは、存在しないアニメだったのである。
なら、このVHSに録画されていたアニメは、一体何なんだ?
途中でコマーシャルが入っている以上、録画である事は間違いない。
ただインターネットで検索をしても、何も出て来なかった。
見た記憶が無いと言い、存在しないアニメと言い、隅々まで不気味である。
しかしこれだけは確かである。
このVHSに録画されている存在しないアニメは、本当に、本当に! 面白い。
何度見ても飽きる気配が全くしない。
今日はもう、掃除はいいや、残りの十二話を、直ぐに見てしまいたい。
少しでも暇が出来たら、直ぐに謎のアニメを見た。
僕が今まで見て来たアニメやテレビドラマ、映画より何倍も面白い。
先が、先が兎に角気になる。
そしてとうとう最終回に辿り着いてしまった。
全十三話だと言うのに、あまりにも短すぎる。
まだ三話程度しか見ていないようにさえ思えて来る。
とんでもない終わり方をした。
いや、ストーリーは素晴らしかった。
一切文句は無い。
しかし、十三話の間ではストーリーは完結せず、第一部が完結したのである。
段ボールの中を見てみても、第二部以降を録画したVHSは無かった。
気になる! 滅茶苦茶気になる! しかしどうすれば良いんだ、存在しないアニメの第二部以降を見る方法なんて。
仕事を投げ捨て……あのアニメの第二部以降を見る為だけに生きる日々を始めてから……一ヵ月が経った……。
何処に行っても……第二部以降は見当たらない……。
せめて死ぬまでに……第二部以降を見ないと……あまりにも巨大過ぎる心残りが残ったままになってしまう……。
何処にある……何処だ……何処にある! 何処にある!
突然インターホンが鳴った。
扉を開けて誰が来たのかを確認すると、そこには大勢のスーツを着た男性達がいた。
「突然ですが、貴方を保護しに来ました」
「……はあ?」
「諸事情で身分や理由はお教え出来ませんが、こちらの指示に従って下されば、危害は加えませんので」
「え……ちょっと……」
「ありました」
「あったか、良かった」
「それにしても、まだあったとは」
「完全な根絶は至難の業だよ」
「まあ……そうですよね。昔放送されたこのアニメが、あまりの面白さに、人々の生活を疎かにしてしまい、急遽第二部以降の放送を中止、人々から録画を回収、視聴した人々から、このアニメや、記憶を抹消する際に見た光景の記憶を抹消、ごく限られた人だけが知る存在になった。しかし未だに録画が全て回収出来ておらず、見てしまう人がいる……確かに根絶は難しいですね」
「ああ……我々の仕事は、まだまだ終わらないよ」
「それにしても……皮肉ですね」
「ん?」
「面白いも……ほどほどにしないといけないなんて」
「んー……難しい所だな」
「そうだ! これ見ようぜ!」
「何その昔のDVDみたいなやつ……古くね?」
「これね、ダークウェブで売ってた、めっちゃ面白いアニメ!」