第十八話
なんとなく、この人には嘘の言い訳をしたくなかった。
だから、怖がられるのを覚悟してわたしは、わたしのことを言える範囲で話そうと思って、口を開いていた。
「ラヴィリオ皇子殿下……。少し……わたしのことを話させてもらってもいいですか?」
「うん……。でも、君のことを聞いて、俺のことを話さないのはフェアじゃないから、俺の話も聞いて欲しいな?」
「分かりました」
「うん。何から話そう……。そうだ、ちゃんとした自己紹介からしないとね。俺は、ラヴィリオ=セス・マルクトォスです。二十四歳になりました。髪の色は金色で、瞳は青色だよ。俺には、4つ年の離れた兄がいて、仲はいい方かな?」
「えっ……」
「ん? 何か質問ある? 何でも答えるよ」
わたしは、ただただ驚いてた。
だって、わたしの話が終わった後に、ラヴィリオ皇子殿下はお話をされると思っていたのに、先にご自身のことを話し出すんだもの。
「いいえ……、何でもありません」
「そっか。それじゃ続きを話すね。それと、この話は出来れは他の人には秘密にして欲しいかな?」
「分かりました。決して秘密を漏らすようなことは致しません」
「ふふ。ティアリアは難しく考えすぎだよ。これはただの内緒話だよ。まぁ、好きな子に話す内容ではないと思うけど、でも君になら話してもいいと思ったんだ」
「ないしょばなし……」
誰かと秘密を共有すること。
内緒話という言葉に、わたしは少しだけワクワクしてしまっていた。
それが、どんな内容であっても、ラヴィリオ皇子殿下の秘密を知ることがなんだか嬉しかったのだ。
そう、彼の特別になれたような錯覚をしてしまうほどにね。
うん。分かっている。そんなことあり得ないってことは、十分に分かっているわ。
「それじゃ、ちょっと格好悪いけど、俺の秘密をティアリアに教えるね」
「はい……」
「俺ってさ、幼いころはすっごく小さくて、女みたいだってよく思われていたんだよね。でも、酷い話、実際に母上には娘扱いされていた時期があったんだよ……。来る日も来る日も、ドレスを着せられて、可愛い可愛いって言われてさ」
ラヴィリオ皇子殿下の複雑そうな声音にこれは本当の話なのだとなんとなく理解した。
女の子のように可愛い子供時代……。
きっと、天使のように可愛らしい幼少期だったのでしょう……。
そう言えば、昔天使のように愛らしい少年に会ったことがあったっけ。
たしかあの天使のように可愛らしい少年はキラキラ輝く金色の髪と澄んだ空のような青い瞳だったわね。
わたしが、ラヴィリオ皇子殿下の話で昔のことを思い出していると、少し拗ねたような声音で言われてしまった。
「ティアリア……。ぼんやりしている……。もしかして俺の話、つまらない?」
「っ! 違います! ちょっと昔のことを思い出していました」
「ん? どんなこと?」
「えっと……。昔、わたしがまだ六つの時です。天使のように愛らしい男の子にあったことを思い出しました……」
「っ!!」
どうしたのだろう、ラヴィリオ皇子殿下は何かに驚いたかのように息を呑んだ、そんなふうに私には思えた。
「そうか……。お前は覚えていたんだな……。なのに俺は……、俺は……」




