意中の人に「好き」って言うのが恥ずかしいので、「おっぱいくれ!」って告白した結果、「あんたバカでしょ?」と言われながらも付き合うことになった彼女から、ガチ告白された
昼休み。
校庭から離れた所にある部室裏。
半年前に一目惚れした意中の女子に、俺は今から告白する!
「お前のおっぱい、俺にくれ!」
「わざわざこんな所に呼び出して何を言うかと思えば……あんたバカでしょ? 私の胸は着脱式じゃないんだから『はいどうぞ♡』なんてプレゼント出来はしないのよ?」
俺が所属している野球部のマネージャーで、高校内でも美人として有名な同級生の愛梨沙に告白したが……失敗してしまった。
「……少しだけ期待しちゃったじゃない、バカ」
彼女が小声で呟いた言葉の意味がよく分からないけど、とにかく俺は振られたんだ……。
「ちょっと待ちなさいよッ! 野球バカ!」
「……何?」
告白に失敗したショックのまま、この場を離れようとした俺を呼び止める愛梨沙。
「……まさかとは思うけれど、ひょっとしてさっきの『おっぱいくれ!』って……告白のつもりだったりしないわよね?」
「?」
「さも当然のように『告白だったろ?』みたいな顔をされても困るんだけれど……って――え? ほ、本当にあれ、私に対する告白だったの!?」
「ああ勿論。俺の投げる最速160㎞のストレート並みに分かりやすかっただろ?」
「どこがよッ! 伝わりにくいにもほどがあるわ! 暴投も暴投、大暴投! 満塁の状況だったら、ランナー3人がホームに帰ってこれるくらいの大暴投よッ!」
「……マジで?」
こくん、と頷きで返す彼女。
伝わっていなかったのなら、もう一度伝えなければならない。
「愛梨沙のおっぱい、俺にくれ!」
「残念ッ! 直すのは呼び方もだけれど、肝心な部分はそこじゃないわ!」
「おっぱいくれ!」
「ねぇ、わざとやってる? そろそろ本気でキレてもいいかしら?」
彼女の怒気を孕んだ声を聞いて、俺はもう正直に打ち明けることにする。
「だってさ、恋してる女の子に面と向かって『好き』とかって言うの……恥ずかしいじゃん?」
愛梨沙の顔を見れずに言う。
「あんたの恥じらいポイント、ぶっ壊れてるわね。普通は逆で『おっぱい』のほうに羞恥心を覚えるものよ」
マジか。
俺がズレているのか……。
けど、しょうがねじゃん?
他人はどうであれ、俺にとっては好きとか愛してますよりも、おっぱいのほうが言ってて恥ずかしくないんだからさ。
「告白の返事、フリーズ!」
「プリーズね。凍らせてどうすんのよ」
「話を逸らすな!」
「あんたがね」
「くっ、殺せ」
「私に犯されたいの?」
「まぁ、少しは……」
「意外ね。あんたは受けより攻めのタイプだと思ってたわ」
ぐっ、駄目だ。
口では愛梨沙に勝てん。
ここは恥じや照れを我慢して、素直に伝えるしかないか……。
「俺と、つ、付き合って……下さい」
「今のあんたでは、その辺りが及第点かしらね」
「新種の大福?」
「今の告白が、1番最初のに比べればギリギリ合格って意味よ」
「……つまり?」
「こ、この私が、あんたと付き合ってあげるわッ! 感謝しなさいよね!」
上から目線で言ってきた愛梨沙の頬は、やや赤みがさしていた。
♢ ♢ ♢
放課後。
付き合うことになった愛梨沙との帰り道。
制服のブラウス越しでも一目に分かる2つの大きな膨らみ。
それに俺は手を伸ばして……
"パシッ"
払いのけられた。
「あんた今、どこ触ろうとしたの?」
「おっぱい」
「正直な所だけは褒めてあげるけれど、付き合って初めての下校デートとしては落第点ね」
「俺にくれるって言ったじゃん、おっぱいを」
「言ってない言ってない。付き合ってあげる、としか言ってないわ」
「なら放課後デートって、何すればいいの?」
「手」
愛梨沙は俺に自身の左手を差し出す。
「……いきなり恋人繋ぎとか、俺、恥ずかしいんだけど……」
「だから恥じらいポイントがおかしいわよ、あんた! あと、いきなりそんな、指の1本1本を絡め合う上級者向けの繋ぎ方なんて、す、するわけないでしょッ!? 私はハレンチじゃないんだから!」
赤くなりながら、早口に捲し立てる彼女。
珍しく愛梨沙と恥じらうポイントが一緒になった。
うん、そうだよな。
すれ違う人々の目線やら、お互いの体温を感じながら歩くとか――もはや公開羞恥プレイ。
恥ずかしくて、出来るわけがない。
「なぁ~んだ。お前だってやっぱり恥ずかしくて出来ないことがあるんじゃん」
「……あんたと一緒にしないでくれる?」
「何で? 同じ穴のアルマジロだろ?」
「ムジナね」
「一緒一緒w」
「…………」
軽口で返しながら歩いていると、隣に愛梨沙の姿がなかった。
失言したかと思い慌てて振り向くと、俺から少し離れた所で立ち止まり、しっかりと互いの目線が絡んだ状態で話し始めた。
「小学生の頃から『俺はプロ野球選手になる!』と言っていて、周りに冷やかされたり小馬鹿にされようとも、外が暗くなるまで黙々とひたすらに練習していた、あなたの姿がカッコよかった」
愛梨沙と俺はクラスが別々なだけで、同じ小学校だったのか。
「野球以外はてんで駄目で、成績も最底辺だったあなたが中学の先生に言われた『野球選手なんて目指しているから、お前は馬鹿なんだよ』という問題発言に対するあなたの返事『俺が自分で選んだ道なんで、後悔はしてないっすよ? 強豪野球高校に特待枠で入学も決まりましたし』に、あなたの自信と本気と結果が表れていて――凄かった」
ああ、あの教師、その件が原因で左遷されたらしいよ。
「小学5年生の頃から、高2の今日まで。ずっとずっと好きでした。あんなおバカな告白だったけれど、そんな所も含めて、あなたのことが――大好きです」
俺の顔を見ながら、視線を交えて言い切った彼女。
……知らなかった。
愛梨沙が俺のことを、そんな昔から好きでいてくれたなんて……。
俺も伝えないと。
素直な気持ちを。
他の部員の誰よりも、俺に言ってくれる「お疲れ様」の声と表情が優しいような気がして、その可憐な笑顔に一目で好きになってしまったことを――伝えなくては。
「お、俺も! 愛梨沙のことが! す、すす……すすすす素敵なおっぱいだね!」
ぐわぁぁぁあああああ!
全然駄目だったぁぁぁぁぁあああああぁああ!!
目が! 目が!
目が合った状態で好きとか!!
言えるわけねぇじゃねぇかよぉぉぉおおおおおおお!!!!
「バァ~~~ッカ!」
俺の残念告白を聞いた彼女は、そう言いながら走り出していく。
またもや失敗した俺だったけど、「バァ~~~ッカ!」と言った際の彼女の笑顔は、夕日に照らされて――最高に綺麗で輝いていた。
♢ ♢ ♢
夜。
愛梨沙から届いたLINE。
『私の顔と目を見ながら、好きってちゃんと言ってくれるまでは、おっぱい触らせてあげないからね
(/ω\*)キャッ♡』
1日でも早く彼女に伝えられるように、マジで頑張ろうと思ったのは言うまでもない。
彼女に「好き」と伝え、生おっぱいをようやく触ることが出来たのは、約2ヶ月後の8月1日。
愛梨沙のおっぱいは、ぷるっぷるで、もちもちたぷんたぷんで、すんげぇいい匂いだったんだけど「バカバカバカ! 顔を埋めるのは許可したわ! でも、匂いを嗅いでいいとは言ってないわよッ!」と、メチャクチャに怒られました。
……女の子って難しい。
夢のプロ入りをして、愛梨沙にプロポーズしようとしたら、また恥ずかしさに耐えられず「おっぱいくれ!」と言ってしまい「あんたバカでしょwww」と言われたのは……また別のお話。