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傷つかない魔王の物語  作者: 泣妃芽TSay
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短い夢

世界の流人「やあ、キルノワ君」

      声が聞こえる。誰?

世界の流人「私は世界の流人さ。」

      何それ?

世界の流人「あー、君が理解するのは難しいかなぁ。」

      僕が馬鹿だから?

世界の流人「君は馬鹿じゃないよ。君の隣の子が優秀過ぎるだけさ。」

      リナが?

世界の流人「ああ。」

      そっか、リナって凄かったんだ。

世界の流人「悔しいかい?」

      何で?

世界の流人「彼女と違って君はごく平凡だからさ。」

      まあ、いつも守って貰ってばかりなのは嫌だ。

世界の流人「そうかい。力が欲しいかい?」

      うん。リナに守って貰うのはやだよ。

世界の流人「じゃあ宵闇の森においで。」

      えっ、そこはお父さんが行っちゃダメって言ってたよ。

世界の流人「誰にも守って貰わなくて済む力が欲しく無いのかい?」

      それは、欲しいけど……。

世界の流人「じゃあ決まりだね。また後で。」




 キルノワの意識が覚醒する。

 隣ではまだお母さんが寝ていた。





◆◆◆





 夕刻、森の中に二人の子供がいた。

 5歳の男の子と女の子だ。

 男の子の方は濁りの無い白髪を肩の上辺りまで伸ばしており、端正な顔立ちをしている。赤い眼もあいまって、5歳ながらに近寄りがたさを感じさせる。

 女の子の方はこちらも背中辺りまで伸ばした白髪だが、毛先に少し茶色のグラデーションがかかっている。緑の目は垂れ目気味の二重で可愛らしい感じだ。


「ねえ、ダメだってルノ、危ないよ。」

「大丈夫だって。ここまで何もおきなかったじゃん。」


 ルノと呼ばれた男の子、キルノワはもう一人の女の子、リスルナーダの制止を無視してどんどん森の深い方に向かっていく。


「そんなに怖いならついて来なきゃ良いじゃん。」

「やだよ、私が怖いのはルノが死んじゃう事だもん。」

「死なないって。……ん?うわぁっ!わあああ!」


 キルノワが少し高い草むらの中に入った直後、彼は悲鳴をあげながら何者かに草むらに引きずり込まれて行った。


「ルノッ!待っt、きゃあぁ!」


 慌ててリスルナーダも追いかけようとするが、その前に草むらの中から蛇のようなシルエットの何かが飛び掛かってきた。蛇のようだが頭は狼に近い。

 蛇狼(みろう)だ。

 リスルナーダは両の手のひらを蛇狼に向ける。

 一見すると子供が蛇狼を恐れているようだが実際は違った。

 手のひら何も無い空間から火の玉が生まれたのだ。

 火の玉は蛇狼の顔に直撃しそのまま追い払う事に成功した。


「やった!」


 しかし蛇狼はそれで終わりでは無かった。

 草むらの中から、今度は警戒するように蛇狼が一匹、また一匹とリスルナーダを取り囲んでいった。

 その状況は()()の子供が生き残るには絶望的だった。




◆◆◆





「お父さーん。明日の狩り、私も行きたーい。」

「良いんじゃないか?最近は体調も安定してるだろ。」

「やったー!」


 私の娘、キラリアは体調が悪くなりやすい。

 小さい頃から心配だったが、13年間育てていくうちに強くなってくれて安心している。

 今も明日の狩りで使う槍を磨いているのだが少しは女らしくして欲しいとも思ってしまう。

 恋人もいるらしいがそれはまだ早いと思う。

 それとこれとは別なのだ。


「なあキラリア、キルノワがどこにいるか知ってるか?」

「ん?ルノ?知らないけど。」


 おかしいなぁ。息子のキルノワは言い付けは守る奴なんだが、夕食の時間になっても帰って来ない。

 もう外は暗いし心配だな。

 キラリアも知らないみたいだしどうしたんだ?

 おっと、妻のキキラが帰ってきた。手には鍋を抱えている。

 またリライラの所で一緒にメシでも作っていたんだろう。

 それにしても、今日も家の妻は綺麗だなぁ。


「ちょっとあなた、リラに『リナが帰って来ないんだけど知らないかしら?』って聞かれたんだけど、家にいる?」


 何だって?


「リスルナーダどころかキルノワも家にいないぞ。あっちの家にもいないのか?」

「えっルノが?……探しに行きましょう。」


 キキラは決断が早い。昔から助けられてばかりだ。


「だが何処を探す?キルノワがリスルナーダとよく行く場所をしらみ潰しに回っていくか?」

「いえ、宵闇の森よ。」

「宵闇の森?あそこは俺が行くなと言い聞かせたぞ。どうしてそこだと思うんだ?」

「親の勘よ。あの子言い付けを守らない時はとことん無視する気がするの。」


 親の勘か。実は俺の勘もそう感じていた。


「お父さん、私もつれてって。」

「キラリア?」

「ええ、リアも行きましょう。」

「……わかった。そしたらダースとリライラにも声をかける。」

「じゃあ私が二人には私から声をかけるからあなたとリアは武器の準備をしていて。」


 まったく、キキラは頼りになるなぁ。

 だが恐らく宵闇の森は化け物みたいな魔物に襲われる事になる。

 キキラとキラリアは絶対に守って見せる。

 キルノワは……おそらくダメだろうな。

 いや、悲観的になるな。リスルナーダならなんとか出来るかもしれないだろ。

 キキラが帰ってきたみたいだ。

 ダースととリライラもいる。

 早く準備を終わらせないと。








いちおう更新予定日は土曜と火曜です。

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