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第2章 第7話 神々の啓示

  事はそう簡単なものではない。

 魔王軍に対して軍が動くには外交問題や政治的問題が発生する。

 かといって勇者の要請となれば無下にも出来ない。

 アグムルの魔術師が王都に連絡し指示を仰ぐ事になった。

 

 魔術具や宝玉が置かれた執務室で魔術師が魔法陣を囲んでいる。

 部屋の中で4人の魔術師、将軍と2名の騎士、勇者がいた。

 魔術師たちが呪文を唱え終えると重い沈黙が訪れる。

 

 

「どうだ? 王宮はなんと言っておられた?」

 

「そ、それが……宮廷魔術師がこちらに来られると」

 

「な、なんだとぉ!?」

 

 

 執務室に眩い光が満ち、門をくぐるように人が現れる。

 背が高く細面の老婆、黒いローブを身に着けた者、騎士が続く。

 老婆は胸に瑪瑙めのうがあしらわれた銀糸のドレスを身に着けている。

 杖には大きな赤紫のルビーが付いていおり、光を放っていた。

 

 

「あ、アグムルの砦へようこそ」

 

「ああ、いい、いいよ。

 押しかけたのはこっちだからね、……ふん、久し振りだねぇ勇者」

 

「……」

 

「召喚の時以来……か。

 生意気な娘だとは思ったが、随分とお転婆じゃないかえ?」

 

「……」

 

「コンゴールも思い切ったもんじゃ。

 けどイリグランデはコンゴールとは違う、派兵は出来んよ」

 

「王国軍の随伴は望んでいません、ボク一人でも行きます」

 

「そういう訳にもいかないねえ。

 せっかく召喚したんだ、勝手に死なれてもこまるのう」

 

「イリグランデの為にコンゴールの勇者を放っておけっていうの?」

 

「そもそもどうやって助けるっていうんだい。

 大陸中央をまっすぐ進んだとしても何ヶ月も掛かるんじゃよ?」

 

「彼等に加勢しに行きたいって訳じゃない、別のやり方で事態を変えたいんだ」

 

「別のやり方は隠し事って訳かい。

 気に入らない……が暴走されても困る。

 カスミ――国王の代理人として命ずる、()()()()を行いな」

 

「なっ!?」

 

「厳密には勇者の管轄は神様さ。

 国としちゃうなづくわけにゃいかないが神命(しんめい)とあらば従うさ。

 あんたもね。」


「……」

 

 

 誰も口を挟むことが出来なかった。

 長く重苦しい沈黙のあと、勇者が剣を抜く。

 スッと手の甲に刃を滑らし垂れる血を剣に滴らせると乾いた砂に水がみ込むように刀身に吸い込まれていく。

 

 みるみるうちに剣から白い煙のようなものが溢れ出し執務室の床を埋め尽くす。

 しばらくすると執務室が消え一面に白煙が満ちた世界が現れた。

 

 

「あんまりお手軽に神界しんかいにこられても困るんだけど」

 

 

 現れたのは巨人かと思わんばかりの女性。

 銀糸ぎんしのような長髪と輝かしい金色のドレスを纏っている。

 白く長い槍を持ち上げ床を軽く突いてから空間全体に響くような、それでいて澄んだ通る声で呆れていた。

 

 

「申し訳ありませぬ。

 勇者カスミがイリグランデを離れコンゴールへの助力を乞うておりますゆえ神判しんぱんを仰ごうと」

 

 

 老婆が事の経緯を説明する。

 女神は勇者カスミをじっと見つめて、深い溜息を漏らす。

 

 

「――では神判しんぱん(くだ)します。

 勇者カスミは自ら助け手を求め、得られれば国を出ることを許します。

 イリグランデは陽が正中の刻、神殿にて祈りを捧げなさい」

 

 

 その場にいた者はみな、気付くと執務室にいた。

 束の間の奇跡。

 将軍はひざまづき感動に涙を流していた。

 騎士もローブを着た者たちも頭を挙げられずひれ伏したままだ。


 勇者カスミだけが仏頂面をし、宮廷魔術師が彼女を横目で見て口角を上げる。

 

 

「万事解決じゃの、神の加護が得られるなら文句はない。

 さて、国王に報告しに戻るか。

 お前さんはちゃんと助けを乞うてから出かけるんじゃな」

 

 

_/_/_/_/_/

 

『ぐう』


 … 

 … 「わーい! もふもふー」

 … 「顔洗ってるー、いいこねー」

 … 「こうやってお手するでしょ? で、ナデナデすると気持ちいい時はぎゅーってしてくるんだよ」

 … 「お膝で気持ち良さそうに寝られるとうごけないよう」

 … 


『たま よ起きなさい』

 

  

 呼びかけられたが僕は目を覚まさなかった。

 

 

「キキィ! チュー」


 

 ねずみの鳴き声に飛び起き、キョロキョロと獲物を探す。

 ポトリと落ちたねずみが起き上がり逃げようとする。

 反射的にねずみに飛びつき息の根を止める。

 まるまると太っていて、なかなかの珍味だ。

 

 

『ふふふ、おはようございます。

 お目覚めはいかがですか』


『うまいです』

 

 

 ねずみを頭からバリバリ食べながら答える。

 状況を見渡すと、ここは宿屋でもなければエリーもいない。

 ここはどこでこいつは誰なんだ?

 

 

『ここは神界の麓で、私は神様です』

 

『心を読むなよぅ。

 神様って言うけど、僕の知ってる神様は猫語出来ないぞ』

 

『そりゃあ私は猫の神様ですから』

 

 

 神様が軽くお辞儀をすると髪の毛……たてがみ

 が流れ猫耳が現れた。

 なんだその申し訳程度の猫ようそは。

  

 猫の神様は銀色のたてがみと焦げ茶の耳、しっぽ。

 見た目は人間そのものでメスである。

 

 

『あなたをこの世界へ連れて来たのは元の世界の神です。

 ですが今、この世界は危機に瀕しています。』

 

『お断りします』

 

 

 僕は片手で爪を構え引っ掻く仕草をする。

 あっちのかみさまもこいつも、ろくな事を押し付けてこない。

 まだあっちの方はやむなきなんとかで結果としてエリーやタンビに会えたからいいけれどコイツはユウシャと雰囲気が似てる。

 

 

『面倒くさいにゃあ……、おっと。

 神託ではありません、警告です。

 望むと望まざるとも運命はうねりに沈んでいくことになります』

 

 

 あ、瞳孔とか口調とか雰囲気が猫っぽさだしてきた。

 ちょっと面白くなってきたけど、それってようするに寝床ベリアが巻き込まれるってことかな。

 

 

『ですから試練に打ち勝つ為に、新たなる能力を授け――』


『いらないよ、お断りします。

 運命がどうとかしらないけど、僕はじゆうにするよ』

 

 

 打ち勝つのは僕じゃなくて寝床ベリアだしね。

 あいつが負けたら僕に勝てるわけがない。

 弱肉強食けもののおきてで負けるならあきらめも付く。

 

 

『いらないとか言われてもこまるにゃ、やるにゃ。

 ご主人さまにおこられる。』

 

『あ、かみさまにもご主人さまいるんだ』

 

『にゃっ! とにかく! どうされるかは貴方次第。

 以上』

 

『さっきのねずみお土産にもう一匹くれない?』

 

 

 目が覚めると宿屋でエリーの寝床にいた。

 普通に寝てた感あるなあ……。

 藁床わらどこからねずみが飛び出て逃げ出したのでとっさに飛びつく。

 とったどー!!




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