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プレゼントに病はいかがですか?  作者: 誰だと思う?笑
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夢?

朝日が緑のカーテンの隙間から見える。


少し肌寒い、秋も終わる11月の朝日。


そんな清々しい朝の光とは反対に、俺の体はパジャマが肌にべっとりとつく程汗びっしょりで、心臓は胸に手を当てなくてもわかるくらいにバクバクと鳴っていた。


変な夢を見たからだ。

生々しくて、感覚のある夢。

だけれど現実離れした夢。


その夢の中で聞いたであろう第2西暦という言葉と、奇術という言葉だけは覚えていたのだが、それ以外の夢の内容は直ぐに忘れてしまった。


なんの世界だったかも、どんな人間の感覚を借りていたのかもわからないけれど、どこか懐かしいような、デジャヴのような感覚があったということも記憶には残っている。


それにしても第2西暦という言葉も奇術という概念も本当に現実離れしている。


だけれどやはり感覚だけは現実的で、五感全てが揃った世界だった。


本当に誰の体の感覚で感じていたのだろうか。

一人称の視点が全くもって違ったのだから、俺の脳はそれこそ大変だっただろうなぁと思う。


よく脳は実際はなんとかパーセントしか使われてないとか言われるけど、その説が本当に有力に思える。


自分以外の人間の意識を擬似的に作ることができるだなんて。


俺は知らなかったぞ?


だから…多分そんな夢を今まで俺は見た事がないから、ここまで焦っているのだろう。

初めて夢の中の焦りが現実世界での焦りになったのだから。


「あー、あーーー。」


声はいつも通りでる。けれど焦りが恐怖かが残っているのか、少し枯れていた。


同じように手足の感覚は普通だけれど、何が体が変な感じをしていた。


よくわからない違和感があったのだ。


俺は元々痩せ型だったが、ガリガリという程でもなかったし、それなりに食べるほうだったからそこそこ太ったことも何回かある。


だけれどいつもより自分の体がか細く思えるような……体の中のエネルギーを使い絞ってしまったような違和感があったのだ。


身体の中の臓器や生きていくために必要であろう量の脂肪すらも絞って、無理やり軽くしたような…人工的な感覚があったのだ。


( はぁ……最悪の目覚めだ。)


そんなことを思いつつ、そろそろ替え時だと思っている薄めの掛け布団を体から避け、肌寒い空気を感じながらクローゼットへ向かった。


ひんやりと足に伝わるフローリングの冷たさが心地よかった。


廊下の一番先にある部屋に入って、暗いウォークインクローゼットに足を入れた。


電気のスイッチを押し、カチッという音がなった数秒後、まだ明け方の暗いクローゼットが柔らかくも人工的な光で満たされる。


今日はなんの服を着ようか。


ウォークインクローゼットがある割に少ない服を見て思う。


私服の学校は地味に大変だ。


自分のファッションセンスが相手にわかりやすく伝わってしまう。


それに、…これは俺だけの悩みかもしれないが…俺はそんなに服を持ってないし、何枚も同じ服を買ってたりするから


「お前、いつも同じ服だけどさ、服洗ってんの?」


なんてことをよく聞かれたりする。

意外とこういう言葉は胸に刺さるのだ。


なんだろうね、ハゲを気にしている時にハゲを指摘されるような気分というか…。


言葉を返す時こそ平気な顔をしているが、内心焦っていたりするのだ。


…そんなことはどうでもいいか。


俺はまずジーンズを適当に選んではいた。

汗のせいでジーンズ生地が滑らない。


ジーンズの生地が伸びるのはあんまり嬉しくはないが仕方がない。

俺は無理やりジーンズを引き上げ、ブチッという糸の切れる音を聴きながらベルトを巻いた。



濃いめの紺のジーンズは…千円くらいで買っただろうか。


金欠の俺にとってはまあまあな損害だ。


許さん、あの夢。


ジーンズがかかっている壁のとなりにトップスがかかっている。


黒、黒、白、グレー、カーキ……と地味な色が並ぶ中で1番明るい黄色の服に手をかけ、

(やっぱり目立ちそうだから辞めるか)

とカーキの服にかかるハンガーを外した。


カーキの服には薄く十字架が書いてあり、下には……筆記体で何を書いてあるかはわからないが……英語が書いてあった。


英語の点数93点の友達に聞く限りは

「ああこれ?えーっと……俺の十字架を見ておけって書いてあるぜ?」

らしい。


まあわざわざ読むような馬鹿は居ないだろうからいいか、と思いつつパジャマの汗で湿った布を掴んで、ボタンを外していく。


11月の風が汗に当たって、いつもより寒く感じた。


下にヒートテックを着て、その上に長袖カーキのそれを着た。


ヒートテックのおかげでそれなりに暖かかったが、まだそれでも寒い。

長袖カーキの服は安物だから布が物凄く薄いのだ。

それこそ下の服が透けるくらいには。


まあだとしてもこの上にパーカーでも着ておけば寒くはないだろう。


そう思いながらカーキの服を取った壁と反対側にかかっている黒いパーカーを手に取った。

このパーカーは裏起毛だから着るとぽかぽかする。


黒のパーカーは無地だからさっきの英語も隠せるしいいかもな。


俺はその黒いパーカーを着て、顔を洗うために洗面台へ向かった。


フローリングの冷たさが少し暖かくなっていた。

もう完全に日が昇ったんだろうか。


そんなことを考えつつ、短い廊下の一番先にある洗面台のある部屋のドアを開けた。


ガチャリ、と劣化したドアの開く音がする。


自分の前に、鏡が見える。


「は?」


鏡を見て、思わず声を上げてしまった。


鏡の中に、俺とは似ても似つかない…比べるにも値しないような、美しい艶のあるプラチナブロンドの髪に、透明感しかない肌、そして緑色の目を透き通るように光らせる、正真正銘の美少女がいた。


親に見られる前になんとかしなきゃいけないんだろうけど、そんなこと絶対出来ない。

というか、出来っこない。

一流の特殊メイクさんでもなきゃあ無理な話だ。

美少女をタレ目長髪ブス男に変えるなんて聞いたことないし…なぁ。


もう一度、鏡をまじまじと見る。


俺が右腕を動かせば鏡の中の美少女も同じ動きをするし、俺が変顔をすれば同じ表情をしてみせる。


どう頑張っても俺はこの誰かになってしまったみたいだ。


だけれどなぜか嫌とは思わない。


何故かその人には見覚えがあって、俺はその美少女を目にした瞬間、何故か涙が出てしまったのだ。


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