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若狭タモツと介助スーツ 第5話

 研究者が五年の歳月をかけ調査した患者のほとんどは、人格移植型介助スーツの使用者であった。

 反対に介助ロボットやノーマル型介助スーツ利用者には患者が見られなかったのである。

 使用者本人の若い頃の人格を移植された人工知能は、最初のうちは問題なく装着者の動きをサポートした。

 しかし時がたち、装着者自身がどんどん年齢を重ねるに従って、本人の脳の判断速度と人工知能の判断速度の差が大きくなっていったのだ。

 一見、支障がないように見える生活は、知らず知らずのうちにストレスとなり、装着者自身の精神を蝕んでいた。

 この論文は大いなる驚きと共に、共感を持って世の中に受け入れられた。

 医療機器メーカーをスポンサーとして持つ多くのマスコミは、積極的に人格移植型介助スーツを宣伝していた。

 そのため、この製品に関するネガティブなニュースは全く取り上げられてこなかったのだが、人々は薄々気がついていたのである。

 若狭タモツも患者の一人であった。

 とくに彼の場合は、三十代の頃の人格を移植していて判断速度の乖離は激しかった。

 症状も重篤となり、ついに医者から人格移植型介助スーツの装着を禁じられたのであった。

 その後、タモツは看護士や介助ロボットの助けを借りながら晩年を過ごすこととなった。

 新型老人性うつ病も完治し、おだやかな日々を送った。

「人間、年相応が一番だよ」

それが若狭タモツの最期の言葉だったという。(了)

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