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若狭タモツと介助スーツ 第3話
三十年をかけて、ようやく研究が完成した。
その頃にはタモツ自身も年を取り、病を得ていて、介助を必要とする身となっていた。
「どうやら間に合った」
彼は大満足であった。
早速自らを第一号のモニターとして、新製品のテストに入った。
椅子から立ち上がる。
実験室のドアを開けて廊下を歩く。
階段を降りる。
建物の外に出て周辺の道を散策し、スキップし、ジョギングしてみる。
すべての動きが若い頃のようにスムーズでスピーディーであった。
「完璧だ!」
タモツの生涯をかけた研究はここに完成したのだった。
市場に出ると、人格移植型介助スーツは大ヒット商品となった。
タモツは億万長者になった。
長年の努力が報われたのである。
そして時は流れ、人格移植型介助スーツが開発されてから十年がたった。