【096話】ミカの覚醒
*****ミーナ領土内の都市*****
またいつものように反乱軍が現れていた。
今回は少数だと情報が入った為、少数であればミカを危険な目に遭わせる事がないのでミーナはアイリにミカを警護させ反乱軍の鎮圧に向かった。
少数と報告を受けていたのだが、都市はすでに壊滅状態でその都市に住んでいる魔族にもかなりの負傷者が出ていた。
「これはひどい、早く手当てをしてあげないと。」
「はいミカ様。皆の者すぐに怪我人を運べ!」
アイリは救護部隊に指示し負傷者を急遽建てられたテント内に運ばせる
ミカは治癒の能力を使い魔力を回復させていく。
(何度見ても凄い能力だ、さすがミカ様。)
負傷した魔族が元の状態に次々戻って行く姿を見たアイリはミカをもはや神を見るような眼差しで見つめている。
一方のミーナは鎮圧部隊を引き連れ、反乱軍と闘っている。
「油断するな!こいつら結構強いぞ!」
ミーナの叫ぶ声がテント内まで聞こえてくる。
反乱軍の数は報告通り少数だったが、いままでと違う点は各自が持つ魔力の大きさだった。
ミーナからすればたいしたことはない魔力であるが都市内であるため全力で魔力を使用すると生き残った他の魔族まで巻き込んでしまう恐れがあるので一人ずつ消滅させていく。
それにミカの負担になることもあり軍から怪我人や犠牲者を出したくない為注意を呼び掛けていたのだった。
だがミーナの思惑とは逆に相手が強いのか油断していたのか解らないが怪我人が続出していた。
鎮圧部隊の魔族が次々にテント内に運ばれてくる。
(あれくらいの数になにやってんだミーナは。)
反乱軍の数のわりには時間がかかりすぎていることに疑問を感じたアイリは様子をみてきますとミカに告げテントから出て行った。
「おい、ミーナいつまでかかってんだ?」
「アイリ!なぜ来た!あんたは警護をしていなさい!ここはもうすぐ終わる!」
アイリが警護から離れたことで物凄い剣幕で怒るミーナ。
「はいはい、わかったよ。」
そう言ってアイリがテントに戻ろうとしていた時に他の鎮圧部隊の魔族が何故か都市の入り口から走ってやってきた。
(なんだあいつ?他の部隊の奴だな。)テントに戻ろうとしていたが、足を止め様子を伺うアイリ。
その魔族はボロボロになりながらも走ってミーナが率いる鎮圧部隊の魔族の一人に何かを伝える。
それを聞いた魔族は血相を変えミーナに報告する。
「ミーナ様、隣の都市でも反乱軍が現れたそうです!」
それは隣の都市で鎮圧をしていた部隊が壊滅し、生き残った魔族が走って報告にきたのだった。
「なんだと!ではここをいち早く鎮圧してからすぐ参る!」
ミーナもアイリもタイミングよく現れた別の反乱軍になんの疑いも抱かなかった。
そして鎮圧できたとおもった矢先、別の反乱軍がまたもや少数ではあるが現れた。
(こいつらどこから…これでは隣の都市が壊滅してしまう。)
「アイリ!すまぬが隣の都市を片付けてきてくれ!」
(この際、ミカ様の警護は手薄になるがこれくらいの数であれば問題ないだろう。)
「人使いが荒いなしょうがないから行ってやるよ。」
アイリはさっさと済ませてくると言って隣の都市へと向かった。
アイリが隣の都市へ瞬間移動したと同時に都市内に潜伏していた偵察隊が一斉に移動する。するとまたもや別の反乱軍がミーナの鎮圧部隊のいる都市周辺に集まりなにかをやり始めた。それにはミーナや鎮圧部隊の誰一人として気が付いていない。
隣の都市に辿り着いたアイリは反乱軍をなんなく鎮圧したのだが、すぐには戻らずしばらく休憩していた。
(まあ少しのんびりして帰るか。ミーナの命令に従うのも気に入らないし。)
ミカの警護のこともあったが、あの程度の反乱軍ならミーナが簡単に始末するという安心感もアイリにはあった。
そして偵察隊の一人がギルタスに報告に現れる。
「そうか、アイリは隣の都市にいったか。あれはもう撒いてあるのか?」
「はっ、すでに別部隊により準備は整っております。」
「そうか、では我らも向かうぞ!」
ギルタスは自ら立ち上がり反乱軍を召集する。その数は物凄い数でもはや大規模反乱でも類をみないほどの反乱軍であった。
恐ろしい数の反乱軍が都市の入り口付近に一斉に現れ、都市内へとなだれ込みながらその都市で生活している魔族を駆逐し進んで行く。
(フフフ、これだけの数にこれだけの魔力。いかにやつが凄まじい魔力を持っていようがこれだけの魔力の前ではどうにもできまい。)
不敵な笑みを浮かべながら反乱軍の最後方からギルタスも都市内へ入って行った。
一方のミーナは少し焦っていた。
都市内になだれ込んできた魔族が次々と現れたからだ。
(なんだこいつら次から次へと現れやがる。このままではまずいな。一体どこから。)
ミカの護衛の事もあり瞬間移動する事も頭の隅にあったミーナ。
「これは罠かもしれぬ!皆の者一旦引き揚げるぞ!」
そう叫び鎮圧部隊に瞬間移動を告げるミーナ。自らはミカがいるテントに急いで向かおうとしていたのだが。
「あれ。なぜ、移動が…。」
「こっちもだ!移動ができない!」
「な、なんだと!」
ミーナは青ざめた軍の魔族誰一人として瞬間移動できていないのである。
「こ、これは一体。。。」
(その内アイリも戻ってくるだろうし、ここは応戦するしかなさそうだ。)瞬間移動ができない為、闘うことを余儀なくされる。
「もはや闘うしか道はない!皆の者死力を尽くせ!」
そう叫び新たに現れた反乱軍を片っ端から消滅させていった。
テント内にいたミカもさすがに様子がおかしいことに気がついた。
(アイリ様も戻ってこられませんし、ミーナ様の叫び声が激しいですね。もしや何か不測の事態が起こったのでしょうか。)
ミカがそんな事を考えているとちょうどミーナが隙を見てテントの入り口から顔を出す。
「ミカ様申し訳ございません。少々手こずっておりますが、私がなんとしてもお守り致します。絶対にこの場から離れないようお願い致します。」
それだけを伝えるとミーナはテントを出た。
テント内では新たに運ばれてきた負傷者が小声で話す声が聞こえる。
『反乱軍の数が都市を取り囲むぐらいいるそうだ。』
『ミーナ様がいくら強くてもこの数ではどうにもならないだろう。』
(大丈夫なのでしょうか。ですがテントから出ないようにとおっしゃっていましたから私は治療に専念しなければ。)
テントはかなり大きく数千名が寝転べるほどのスペースがあり、現在数百名の負傷者をミカが治癒していき、魔王軍の魔族は回復次第再び鎮圧にでかけている状態だった。
そのテントからすぐに出たミーナだが、すでにテントの周辺には反乱軍が押し寄せ、ミーナの率いる鎮圧部隊の生き残りは数名しかいなかったのだ。
(まさかこれほどの反乱軍が潜んでいたとは。このままではミカ様が危ない。)
内心は物凄く焦っていたが表情には一切出さずに目の前にいる反乱軍を一瞬で消滅させていく。
だが反乱軍の数は想像以上ですぐにテントの周辺は先程と同様に取り囲まれた。
(くそっきりがない!アイリはまだか。もしかして隣の都市も同じような事になっているのか!)
さすがの総司令官ミーナも疲れが出始めた頃、反乱軍の中から一際大きな魔力を持った魔族が現れる。
「ミーナよ、貴様を始末しに来てやったぞ」
「お前はギルタスか!わたしに敗れた負け犬がなんの真似だ」
「ふふふ、相変わらず口だけは達者だのう」
「負けた腹いせに数でわたしを倒すつもりか、情けないやつだ。サシで勝負もできないとはな。」
ミーナは一対一なら勝機があると考え、一か八かの賭けにでる。
「よかろう貴様は俺自らの手で始末してやろう。おい、お前ら我らの仲間の恨みを晴らしてやれミーナ以外の鎮圧部隊の奴らを切り刻んでしまえ!」
ミーナの他に戦闘が可能だったな鎮圧部隊は反乱軍に一斉に襲いかかられる
「やめろ!そいつらに手をだすな!」
ミーナの叫びも空しく残った鎮圧部隊は一人残らず切り刻まれてしまい、もはや闘える状態なのはミーナ一人となってしまっていた。
「フッフッフ、あとは貴様だけだなミーナよ!」
余裕の表情のギルタス。いくらミーナでもギルタスには勝てるとしてもこれだけの数の反乱軍の魔力が一斉に襲いかかってくればひとたまりもない。
「もはやこれまでか。だがお前らの9割は道連れにしてやる!かかってくるがいい!」
「ふん、貴様ごとき俺様一人で十分だ。」
(やはりひっかっかたか、こいつは部下の前では格好つけたがりだったからな。相変わらず愚かな奴だ。)
ギルタスはプライドが高かった為、まんまとミーナの作戦にひっかかったと思ったミーナは笑みを浮かべる。
「お前が私と勝負するだと!相変わらず愚かな奴だのう」
「ミーナよ、以前の俺と同じだと思わぬほうがいい。」
ギルタスには余裕があった。ミーナははったりだと思っていたようだが次の瞬間驚く光景を目の当たりにする。
ギルタスの背後にいる恐ろしい数の魔族の魔力をギルタスが吸収し始めたのだ。その為ギルタスの持つ魔力はミーナを遥かに凌ぐ程に増大していた。
「な、なんだと、魔力を吸収しただと…そ、そんなことが。」
通常では考えられない方法だった。魔力の吸収は魔族や魔物を倒す事によって得られる報酬のようなものなのだが、ギルタスは生きている魔族から魔力を奪い取っている。
結果的にはここにいる魔族が一斉に襲いかかってくることと同じになってしまっていた。
「どうだミーナよ!これでもまだ刃向うか。」
「だ、だまれ!そんな寄せ集めの魔力など蹴散らせてやるわ!」
ミーナが怒りをあらわにし、ギルタスにありったけの魔力を放出する。
「はっはっは、その程度か!」
だがギルタスの膨大な魔力の前に放出した魔力は簡単に弾かれた。
「見たか、総司令官である貴様よりも魔力では勝っておる。まあ心配するなお前はゆっくり時間をかけて殺してやる。」
勝を確信したギルタスはそう告げるとミーナに魔力をぶつけミーナはそのまま都市内にあるビルに吹き飛ばされ倒れ込む。
「よし、ミーナを捕まえて俺の目の前に連れてこい!」
数名の部下が負傷したミーナをひきづりながらギルタスの前に放り投げた。
「う…くそがっ…お前ごときにやられるとは…」
「まだ減らず口が叩けるとは大したものよのう。」
ギルタスは目の前に転がっているミーナを踏みつけ両手、両足の骨を砕きさらに蹴りあげた。
『ガハッ…』
口から大量の血を吐きだし、手足は折られた為、身動きすらできない。
「おい!お前らもっとかわいがってやれ!ただし死なない程度にな。」
ギルタスがそう告げると集まっていた反乱軍が転がって身動きが取れないミーナの顔を蹴り、腹を蹴り、頭を踏みつける。
だんだん意識が遠のくミーナだったが、この後自分が死んだ後に残されたミカやアイリの事が心配になっていた。
「このバカ女め!」
「ほんとなら今すぐにでも殺してえくらいだ!」
「こいつらがやったように魔物に食わせれば面白いかもな」
罵声を浴びせながら死なない程度に痛めつける反乱軍達。
ギルタスは目的も果たした為、目の前にあるテントに視線を向け近寄ろうとしていた。ちょうどその時にアイリが走って都市内に戻ってきたのだ。
「ミーナ!どこだ!」
異常なまでの魔力が隣の都市にいたアイリにまで感じられた為、ただ事ではないと思い瞬間移動したのだが何故か都市には入れず都市外に出てしまった為、そこから走ってきたのだ。
「貴様はアイリか、貴様もミーナと同じ目に遭わせてやるからまっていろ。」
「お前はギルタスか!瞬間移動できなかったのはお前の仕業か?それにミーナがどうしただと?」
「フフフそうだ、この都市へは瞬間移動はできぬように部下に砂を撒かせてあるからな。それにミーナならそこで虫のように転がっておるわ。」
(砂だと?ああミリアの砂漠の砂か、まさかそのような手段に用いるとは…それにミーナが転がっているって…あっ!)
ギルタスが笑みを浮かべながら見る視線の先には両手両足が折れ曲がり、さらに反乱軍に踏みつけられた為、顔は血だらけになり腫れあがり軍服は破れ全身あちこち斬り刻まれたミーナの姿が。
「ミ、ミーナァァァァァ!」
自分のライバルであるミーナが無残な姿に変えられた為にアイリの怒りは頂点に達し、恐るべき魔力を撒き散らす。
「お前だけは絶対に許さん!ギルタス覚悟しろ!」
アイリがギルタスに襲いかかろうとしていた時、アイリの声が聞こえたミーナは最後の力を振り絞り大声で叫んだ。
「アイリ!ミカ様を連れて逃げて!お願い!私のことはどうでもいいから、これは私があなたにする最後のお願いよ!だから早く!」
声にならないような声で必死に叫ぶミーナにアイリはギルタスにはなにか秘策があり勝てないと伝えているようにも聞こえた。
「わかった。ミーナ!ミカ様を避難させたらすぐに戻るから絶対死ぬな!」
ミーナはアイリの返事を聞くと気を失ってしまった。
アイリは後から追い付いた部下に応戦を命じ自らは、テント内で治療をしているミカの元へ駆けだした。
「ミカ様!緊急事態です!早くこの場から脱出しますので、お急ぎください!」
「はい?どういうことでしょうか?」
「申し訳ございませんが説明している猶予はございません!失礼します!」
アイリは一刻の猶予もない為ミカの手を握りしめテントの外へ連れ出した。
(アイリ様がこのように取り乱しているなんてただ事ではありませんね。)
そしてそのまま都市外へ走り瞬間移動しようとしていたのだが。
テントを出たミカの目に映った光景は、無残にも斬り刻まれた鎮圧部隊の魔族達、それに少し離れた場所にいたギルタスの目の前に転がっているのは紛れもなくミーナだ。気を失っているのか死んでいるのかは解らないが全く動く気配すらない。
さらにミーナの姿は、顔が腫れあがり両手両足はおかしな方向に折れ曲がり、いまも反乱軍により踏みつけられていた。
その場に立ち止まり無表情でしかも無言でその光景をじっと見つめている。
「なんだコイツは、もしかして天界からの使者というのは貴様の事か?」
ギルタスが話しかけるがミカは微動だにしない。
(このままではミカ様が危ない。)
そう感じたアイリが声をかけようとしたが何故か声が出ずその直後ミカが呟いた。
「ひどいことを。」
その一言を呟いた直後、ミカの体が金色に光り輝き白かった羽根が金色に変わる。
金色に輝くその姿はとても眩しくしかも美しい。
ミカの手にはいつのまにか聖剣が持たれていた。
そしてその聖剣を反乱軍のほうに向ける。
おびただしい金色の光が反乱軍に照らし出され、恐ろしいほどいた反乱軍は一瞬にして浄化された。
「な、なんなんだ貴様は!何者なんだ。」
あまりにもの出来事に驚くギルタス。
ミカは相変わらず無表情で返事もしない。
今度は聖剣を振りかざし、ギルタスに向かい振りおろした。
「うわああああああぁぁっぁ、こ、こん…な…バ、バカ…な。」
聖剣をただ振りおろしただけだったがギルタスは真っ二つに斬り避けれ消滅した。ミカが金色の天使に変身してからわずか数分で莫大な数の反乱軍は消滅してしまったのだ。
(な、なにこれ…こ、これがミカ様の天界の能力?な、なんて恐ろしい。。。)アイリはその場から動く事もできずただ茫然と立ち尽くしていた。
ミカはそのままゆっくりと瀕死のミーナに近づき抱きかかえる、ミカの白い服がミーナのおびただしい出血により赤く染まる。
「ミーナ様、痛かったでしょう。」
そう呟くとミーナは金色の光に包まれる。アイリは何が起こり今なにをしているのかすら理解できない。
光に包まれたミーナは折られた両手両足が元に戻り、さらに怪我も魔力も回復し服に至るまで新品同様になっていた。
元に戻ったミーナだが、あまりにもの出来事に声もでず茫然としていた。
アイリに至っては反乱軍を討伐する瞬間から現在まで全てを目の前で見てしまった為、魂が抜けかけていた。
ミカはさらに負傷した魔王軍の魔族にもミーナ同様の光を放出し、魔王軍の魔族全員が元の元気な状態にもどったのだ。
「ミ、ミカ様!あ、あ、ありがとうございます。そして申し訳ございません!」
「ミカ様!この度はこのような無様な鎮圧をしてしまい申し訳ございません!」
ようやく正気に戻ったミーナとアイリは、慌ててひれ伏し頭を地面に付け謝罪する。
もちろんミカの治癒により元の状態に戻った鎮圧部隊全員がその場にひれ伏していた。
「皆さま、どうかお顔をおあげくださいませ」
ミカの透き通る声が脳に直接伝わる。
一斉に顔を挙げる魔王軍の魔族。
アイリは恐ろしく震えている。
助けて貰ったのだが、それ以上に先程の光景が目に焼き付いて離れないのだ。
「ミーナ様、アイリ様、この度の軍でのお手伝いをさせていただいたおかげで『聖天使』となることができました。感謝いたします」
逆に感謝されたミーナとアイリ。
(なぜお礼を?もはやこのお方は我らの予想を遥かに超えていらっしゃる。)
ミカにとって魔王軍に同行することにより治癒に専念し平和を願い続ける日々が修業となり、さらにミーナが身を呈して守ろうとし傷ついた姿を見て悲しみ反乱軍に怒りを表した結果変貌を遂げたのである。
早くても後数百年はかかると思われていたのだが、魔界の魔力の作用もあり短縮され、そしてミカは聖天使になってしまった。




