【093話】天界と人間界
*****人間界*****
悪魔ミキと神であるテミスとアースが行動を共にするようになってから3か月が過ぎようとしていただが人間界の時間が止まっている為、3人に時間の感覚はない。
「時間が止まったままだとどれくらいこうやってウロウロしているのかわからなくなるわね」
ミキが不機嫌そうに言う。
「そうですね、全く風景に変化がございませんからね。」
テミスが笑顔で答える。
「しかし、異世界からの転生者が結構いることに驚きました。」
「そうですね、しかも私たちみたいにグループで行動していましたからね。」
アースとテミスが話す通り転生者が先日現れた。しかも突然5人もだ。
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○先日現れた転生者達
他にも転生者がいるのではないかと言いだしたミキがテミスとアースを連れて世界各国を旅していた。
ある都市に辿り着いた時の出来事だった。
いつものように上空から街を眺め、転生者らしい気配がないかと飛んでいると5人組が普通に街を歩いている姿が目にとまった。
「ミ、ミキ様あれは…。」
「そ、そうね。動いているってことは転生者のようね。」
ミキでも察知できなかった転生者がいきなり5人も現れたのだ。
(こんなに近い場所にいたのに察知できなかったなんて。)
こんな近くに5人も転生者がいるのに察知できなかったことに驚くミキ。
街を歩く5人の転生者とおもわれる者達もミキ達に気が付いた様子はなかった為、ミキ立ちは街に降り立った。
そして5人の目の前に立つとその転生者と思われる5人組も立ち止まる。
5人組みの転生者と思われる者達は無言で無表情だった。
(きっと私達と同じ、絶望を感じた時に突如現れた本により転生してきたのね。)ミキは自分達と同じ境遇で転生したのだろうと思い話しかけようとしていた。
「ねえ、あなたたちもあの本で転生してきたんでしょ?わたしたちも…ってなにすんのよ!」
ミキが話しかけてる途中で5人組の1人がいきなりミキに向かってなんらかの攻撃を仕掛けてきた。
「ちょ、ちょっとなんで襲ってくるのよ!」
攻撃をかわされると今度は5人全員が一斉にミキに襲いかかってくる。
「ミキ様あぶない!」
「ミキ様下がってください!」
ミキを襲おうとした5人組は神であるテミスとアースによりあっさり消滅させられてしまった。
「話し合おうと思っていたのになんで襲ってきたんだろ。」
「ミキ様もっと警戒してください危険すぎますよ。」
「そうです、我々のような転生者ばかりだとは限りませんし。」
「いや、きっとあの子たちも私たちのように、なんらかの事情があって絶望の中で転生してきたかもしれないでしょ?だったらかわいそうじゃない!」
テミスとアースは反省した。神である自分達より神らしいことを平然と言う悪魔のミキに心底凄いと思った。
「ミキ様がそのようなお考えであったとは…、申し訳ございませんでした」
「早まった真似をしてしまいました。」
「まあ、結果的に襲われたわけだから、もしかしたら違う転生だったかもしれなかったわけだし、それにいちいち謝らなくてもいいからね。」
と、こんなことがあったのだ。
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そしてまた転生者に遭遇してしまう。
それはミキが突然喉が渇いたからといって、どこかの都市のスーパーに立ちよった時である。
「そこの3人!何者だ!」
ジュースを手にし、レジに代金だけはちゃんと残してスーパーを出た瞬間声をかけられる。
「えっ?」
「い、いつのまに。。。」
驚く3人。気配を消していたのかどうかは解らないが、今度の転生者と思われる者達は4人組だった。
(まただわ、察知できないなんて。)
今回も察知することができなかった。
そして3人は新たに現れた転生者の元へ行く。
「何者って言われても、私たちもあなた達と同じ転生者よ。」
ミキはいつもの調子で言い返す。
「そんなことは解っている、どこの異世界から来たときいているんだ!」
(しかし、なんでこんなにえらそうなのよ!こっちが何者かわからないからかしら。)
高圧的な言い方にキレそうになるがきっと警戒している為だろうと思いぐっと堪える。
アースとテミスは黙ってその様子を見ていた。
「人に聞く前にまずそちらから名乗りなさい!それが礼儀でしょ!」
とりあえず言われた通りに答えるのはプライドが許さない為、言い返す。
「我らは天に準ずる異世界の者達で集まった4人だ!」
(天に準ずるって…結構アバウトな自己紹介ね、でもテミスやアースと同じってことかしら。)天界関係者であればいきなり襲ってくることはないだろうと思ったミキは自分達が何者であるかを明かす。
「そう天界関係者なのね。私は悪魔でこの2人は神よ。あなたたちもあの本で転生してきたんでしょ?」
ミキが隠さず悪魔だと告げると4人組の表情は変化する。
「悪魔だと!では死ぬがよい!」
悪魔と解ると4人は一斉に襲いかかってきた。
(まただわ、悪魔ってよほど嫌われているのね。)
警戒していたためたやすく攻撃をかわすミキ。
「貴様ら!ミキ様になにをする!」
「これでもくらえ!」
『ドカァァァァァァァン!』
『バキバキバキ!』
黙って様子をみていたテミスとアースは、4人の態度にブチキレそして前回同様に4人を始末してしまった。しかも今回はかなり残酷な始末の仕方だった。4人のうち2人はテミスにより破壊され粉々に砕け散り、残る2人はアースにより千切りにされた。
「ちょ、ちょっと!なんでやっつけちゃうのよ!手加減して対話しようとか思わないの!」
(この2人無茶苦茶だわ。神なのに。。。)
怒ったミキそういわれ始めて自分達がやりすぎたことに気がつくアースとテミス。
「申し訳ございません。ミキ様が襲われるとつい反射的に…。」
「わたしもつい、カッとなってしまい。」
下を向きまたやりすぎた事を謝る2人の神。
「まあ、やっちゃたものは仕方ないからもういいわありがとね。」
お礼を言うミキアースとテミスはミキの器の広さに感服し自分達の情けなさを反省した。
「まあでも私のせいで攻撃してくるのかもしれないわね。やっぱ悪魔ってイメージ悪すぎるわ。」
「いえ、対話も持たずに悪魔というだけで全て判断し襲ってくるやつらが悪いのです。ミキ様は決して悪くありません。」
「そうですあの大天使にしてもそうです。必ずや我らがミキ様をお守りし奴らを葬ります」
頼もしい2人は、ミキのためならなんでもやってしまいそうだった。表情も真剣そのもので、ミキはこの2人が本当に神だったのだろうかと心配になってきた。
「そのセリフ神が言ってもいいのかしら…」
結局この先数名の転生者が現れたのだが、全て好戦的であったが為、1名も仲間に加わることはなかったがその全てにおいてミキは察知する事ができなかった。
(この様子だとまだまだ転生者は存在しそうね。)
人間界を一回りする頃には1年近くが経過していた、後は決戦の日を待つだけであった。
*****天界の門(修復中)*****
ミカエルは書物を漁る日々を送る中で、たまに天界の門の様子を見に来ていた。
「だいぶ直ったようじゃのう。」
「はい、ミカエル様あと少しで完全に修復される予定です」
門を修復する天使と会話を交わしながら、ミカエルは表情には出しはしないがかなり焦っていた。
(魔王のことじゃ、なんとしてでもミカを聖天使にしようとするじゃろう。どうしてもそれより先にやつらと対話を持たなければならん)
だが、それだけではなかった。天界の門の破壊により本来の使命である異世界での侵略行為などを阻止するための行動も起こせず、現在あちこちの異世界でいろんな問題が起こっているのだ。
天界の門が直り次第天界は慌ただしくなる。
もはや人間界のことだけを考えるわけにはいかなくなったミカエルだった。
ミカエルはなんとかエルもミキもどちらも救える最善の方法がないかと模索していたがアリエルとルミエルは違った。
アリエルとルミエルは天界の門が直った時点で、もう悪魔と化してしまったエルをどうこういっている場合ではなくなると判断し、さっさと倒して他の異世界でのトラブルを解決しなければいけないと思っていたのである。
なので天界ではミカエルの意見と、アリエル、ルミエルの意見が真っ二つに別れてしまうこととなるのである。
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