【089話】ユキの修行2
*****ガイ領土(3ヶ月経過)*****
あの池の件以来、ユキの事を馬鹿にすることはなくなりその後いろんな魔物を討伐したりして着実に強化を続ける日々を送っていた。
さらに修業中は、領土の主である総司令官が領土内のいろんな地に訪れる度に、副司令官や大将軍がわんさかやってきては跪いていたので、ユキは修業中は誰もこないようにお願いし、ガイとリードは了承し領土内の全ての魔族に伝達した。
そして今、ガイの領土内でも最も危険な場所へむかってゆく3人。
現在船に乗りある島を目指していた。
瞬間移動でも行けるのだが、せっかくなので船に乗り観光しながら行ってみたいとユキが言いだしたためである。
目指す島は総司令官である今となっても近づきたくないような場所らしい。
「ねぇ、ガイさん、いまから行く場所にはどんなマモノがいるんですかぁ」
すでに3人で行動をしてから3ヶ月が過ぎようとしていた。ガイもリードもすっかりユキと仲良くなり、笑顔で言葉を交わすようにまでなっていたのだった。
「ユキ様ぁ、これからいくところですが、かなり大きな魔物がたくさんいるんですよぉ」
ガイがユキの話し方にすっかり感化されてしまっていた。
「うわぁ、たのしみだなぁ。わくわく」
「きっとユキ様もお楽しみいただける程の魔物が多数生息してございますので。」
リードもギャップの激しいユキがすっかり気に入ってしまっていたが、ガイの話し方には若干気持ち悪さを感じていた。
「もうすぐつきますよぉ、あの島ですぅユキ様ぁ」
湖のはずがどうみても海にしか見えない水上にポツンと島が見える。
見るからに魔物の存在すらいる気配もなく、それどころか、どこかのリゾート風な島に見える。
「すごぃ、キレイな島ですぅ。はやく上陸してみたぃですぅ」
はしゃいで、船の最先端に出るユキ。
まるで沈没する船の映画に出てくるようなヒロインの真似をするかのように船の最先端で両手を広げ向かってくる風を気持ちよさそうに受け止めていた。
「ユキ様嬉しそうだな。」
「だな、お連れしてよかったな。」
だがそこはしょせんユキである。ヒロインにはなりきれなかった。
船の最先端にいるユキめがけてなにかが水面から出てきたのだ。
『パクリッ』
水面から出てきたのは巨大な魚の魔物で、船の最先端にいたユキを一飲みして水中へと消えて行った。
「えっ?」
ガイとリードは一瞬の出来事に固まり、表情は笑顔のまま、血の気が引いていく。
「ユキさまあああああぁぁぁぁぁぁっぁ!」
「ユキ様!ユキ様!」
『どっぼーん!』
2人は慌てて飛び込み、先ほどの魚を探すがすでに魔物の姿はない。
ここの水深は何百メートルとある為どうにもならない。
船に戻る2人は水面を探す。
しかしなんの気配もない。
「ど、ど、ど、どうしよう」
「ユキ様。。。なんでこんなことに。」
涙目になる2人の総司令官。
『ザブーーーン!』
物凄い音を立て水面が盛り上がり船から少し離れた場所に、先端の尖った氷の柱が飛び出した。
その先に先程の魔物が刺さっていた。
そして刺さった魔物の大きな口からユキがひょっこりと顔を出す。
ほっとする2人、だがあの巨大な魔物を貫く氷の大きさや、それに何事もなかったのように笑顔で振舞うユキを見て若干悪寒が走った。
「ご無事でよかったですぅ」
「ユキ様、我々どうしようかと路頭に迷うところでした。」
「あははは、わたしもぉビックリしちゃいましたぁ」
ユキの笑顔で安心した2人。そしていよいよ島に上陸した。
「ここでは、どんな修行をするんですかぁ?」
「ここには、先ほど申しましたように強大な魚や魔物が数多く潜んでおります。中でもユキ様に倒していただきたい魔物がおります。その魔物を倒すことができましたら私ガイの領土での修行は終了でございます」
「そんなに強いの?その魔物?」
「いえ、私やリードならば、瞬時に消滅させることができますが、ユキ様では難しいかと現時点では思いますので、お連れ致しました。」
(現時点で難しいって。それに魔力には弱いってことなのかな。)
「じゃあ、ユキがんばりますぅ。どんな魔物さんなのですかぁ」
さっそくやる気のユキにリードが、魔力でその魔物を連れてくる。
巨大な紫色のフグみたいな魔物だった。
(あんなフグみたいな魔物を倒せないと思われているなんて…なんかくやしい。)
「じゃあ、やってみますぅ」
新たに開発した武器、アイスランスで攻撃するユキ、しかし全てはじきとばされた。今度は冷気を放ち凍らせようとすると、魔物は口から粒子を吐き、冷気を遮断してしまった。
「そ、そんな。。。」
自分の攻撃が全く通じない相手が、フグみたいな魔物であることにショックを受け立ちすくんでいたユキに、魔物が大きな口を開けユキを食べようと襲い掛かる。
「あぶない!ユキ様!」
掛け声と同時にガイが魔物を消滅させてしまった。
「あっ、すいません。たすかりましたぁ。でもぉなんであの魔物にわたしの攻撃は通じないのですかぁ?」
「あの魔物はダイヤモンド並みの硬さがあり、口から吐き出す粒子は高濃度の塩分が含まれており、凍る前に溶かしてしまうのです。」
「ですからぁユキ様ぁ、この地であの魔物を貫く氷と、粒子を凍らす冷気ができるまで何度でも挑戦してみてくださいねぇ」
「ありがとぅガイさん、リードさん、ユキがんばりますぅ」
*****リードの領地(半年後)*****
ガイの領土でダイヤモンド並みの強度と氷を溶かす粒子を吐く魔物を討伐することができたユウキは、さらに水中での戦いも経験しかなりの強化が成されていた。
それに付き合っていたガイやリードも、以前とは一回りも二回りも魔力が大きくなっていた。
そして現在、新たな修業の地であるリードの領土にきている。
ユキは寒さには強いが暑さには弱い為、それを克服するためにリードが選んだ場所でもあった。
この領土内に辿り着くとユキはユウキに姿を戻した。
なぜ姿を戻したのかというとこの場所の気温は恐ろしく高いからだ。
気温は70度以上もあり暑いではなく熱いのだ。火山がありマグマの流れる川があり、魔族は誰一人として住んではいないような場所である。
「ユウキ様、ここからが私の領土での修業となります。ユウキ様の最大の弱点とされます暑さや、火が主流となります」
「そうですか、ではよろしくお願いしますリード様」
相変わらず冷やかな眼差しで2人を見るユウキ、一歩踏み出す度にその周辺が凍り着くほどの冷気を撒き散らしながら歩いている。
そのおかげでガイとリードはさほど暑さも気にせずに進む事ができた。
「ではここより先に現れる魔物は、炎や火炎などを用います。数千度から数万度の炎で攻撃してきますのでくれぐれもご用心を。」
ガイもリードもかなり慎重になっていた。
ユウキが先頭に立ち、襲ってくる魔物を片っ端から凍らせ粉砕する。
ガイやリードも側面や背後からの魔物を狩っていく。そしてマグマの煮えたぎる川へやってきた。
「ここはやばいな気温100度以上あるぞ。マグマは数千度から数万度で煮えたぎっているし。」
「ここには、どのような魔物が生息しているのですか?」
涼しげな表情で問いかけるユウキ、暑さを完全に克服しているように見える。
「はい、ここには紅の蛇や紅の大蛇、ファイヤーゴーレムなどいずれもこの地で危険な魔物が生息しております」
そして川に近くに歩み寄り、川から襲ってくる紅の蛇を氷で貫くユウキ。
しかも氷は溶けることなく突き刺さる。
「川の向こうまでは瞬間移動しますねユウキ様。」
「いえ、このまま進みましょう。川に新たな魔物が潜んでいるかもしれませんし。」
「で、ですが、この川は数万度に及ぶマグマが流れております。」
「ご心配は要りません。」
そう告げたユウキは川に氷でできた橋を作ってしまった。
真下にはマグマの川が流れ、熱気で橋が溶けると思われたが全く溶けず3人はその橋を渡り始める。
「こ、これは、すごい。」
「な、なんてすごい能力なんだ。」
橋の上を歩く3人に次々襲いかかる紅の蛇に紅の大蛇。大蛇にいたっては10メートルくらいの大きさがあったがなんなく倒す。あまりにも簡単に倒してしまう為リードは少し落胆する。
「ユウキ様、このような場所では修行になりませんでしたね、申し訳ございません。」
ユウキの表情は全く変わらず涼しげだったので、リードは自分が選んだ場所は失敗だったと反省する。
「いえリード様、この地は私にとってかなりの修業になっております。」
「ですが、魔物も簡単に討伐なされておりますし。」
「我々もユウキ様のお傍にいる為、苦戦を強いられることもなく魔物を駆除することができております。」
「いまのところはそうですが、この先どのような魔物が潜んでおりますかわかりませんし、それにわたしの冷気にも限界はあります。」
(ユウキ様は俺に気を使ってそのような言葉を。。)
そう語るユウキだが表情を見る限り余裕にしか思えない。しかしユウキ自身は冷気を数時間に渡り使用するなど初めての経験であり、内心かなり焦っていた。
「とりあえず向こう岸まで参りましょう。」
マグマの川は向こう岸まで数キロ先にあり、やっと半分までさしかかった頃にリードでさえ見た事のない魔物が現れたのだ。
『ゴォォォォ…』
全身が燃えたようないでたちの5メートルくらいはある虎のような魔物が現れた。
どうやら相当の魔力を秘めているようだ。きっとかなりの魔物を喰らい、魔力を溜め込んだのだろう。
「なんだこいつは!ユウキ様、未確認種です!お気を付け下さい。」
「未確認種だと!リードやるぞ!」
「おお!いくぞガイ!」
ガイとリードが炎の虎に向かっていく。
しかし、炎の虎の口から吐かれた光線により、ガイは足をリードは腕を焼かれてしまう。
「ぐ…まさかこんな攻撃を仕掛けてくるとは。」
「な、なんだこいつは。火の光線を吐く魔物など聞いたことない。」
負傷したガイとリードに再び魔物が襲いかかるが、ユウキが氷の壁を作りだし攻撃を防ぐ。
ユウキはかなりのやけどを負ったガイとリードを守りながら戦うのは不可能と判断しいったん引き揚げることにした。
「ガイ様、リード様、一旦引き上げましょう」
「はっ!」
ユウキがそう叫び3人は瞬間移動し川岸へと移動した。
ガイとリードは魔力により焼かれた箇所を治療し、ユウキはやけどの個所を冷気で冷やす。
「申し訳ございませんユウキ様、我ら2名が不甲斐ないばかりにご迷惑をおかけし、さらに命まで救っていただき。」
「ガイ様とリード様がご無事でなによりです。ですが先程の魔物はかなり危険なようですね。」
「はい、火竜の数倍、いや数百倍の強さがあるかもしれません。もしかしたら雷竜クラスの化け物かもしれません。」
「雷竜ですか。。」
雷竜と聞いて表情が変化したユウキ。
(マキさんはあの雷竜を簡単に消滅させてしまうほどの能力をもっている。ならば私もこんなところで躓いてなんかいられません。)
ガイとリードの負傷も完治したようなので、ユウキは一人立ちあがり橋を渡り先程の火虎を倒すと告げ進みだした。
「ユウキ様、お戻りください。あの未確認種は危険すぎます。」
ガイもリードも必死でユウキを止めようとする。
「大丈夫ですよ、もう少しそこでお休みください。」
初めて見せた笑顔でそう告げられたガイとリードは従うしかなかった。それにユウキほどの能力があれば簡単に倒せるはずで、自分達がいる為にかえって邪魔になってはいけないと判断したためでもあった。
そして2人はユウキを川岸から見守っていた。もしユウキが危なくなったら瞬間移動で助けるようにするつもりだ。
「ユウキ様なら大丈夫だろう。」
「そうだな、あれほどの冷気をお持ちであれば余計な心配は無用だったか。」
ここが熱帯地でなければユウキは簡単に凍らせることができただろうが、今のユウキは常時冷気を使用しているため大きな攻撃を仕掛けるほどの余裕はなかったのだ。
(もっと強い力で、相手を上回らないと)ユウキは1人心の中で呟き、炎の虎をどうやって倒すか考える。
橋を渡り、紅の蛇などを簡単に倒しながら先程火の虎が現れた場所まで進んで行く。
『ゴォォォォ…』
何かが燃えるような音と同時に火の虎が現れた。
ガイとリードは遠くからその様子を見守っている。
「きましたね、あなたを倒して私はマキさんに少しでも追いつきます。」
魔物に話しても通じはしないが、ユウキは攻撃をしかける。
ダイヤモンド並みの強度を誇るユウキの必殺技アイスランスを魔物にめがけて解き放つ。
『ボォォォォ!』
だが、アイスランスは火の虎の口から放たれた光線により溶かされてしまった。
「やはり硬度が足りないようですね。」
冷気の使い過ぎで攻撃力が低下している為、簡単に攻撃を塞がれてしまったのだ。
(このままではマキさんを超えるどころか、逆に魔物に駆除されてしまいかねない。ならば…)
ユウキは自らの体温上昇を防ぐために使用していた冷気を遮断し、全ての冷気を攻撃に回した。
「これでおしまいよ!」
その攻撃は凄まじく、火の虎は一瞬で凍り着きさらに無数のアイスランスによりハリネズミのような状態で火の虎は尽き果てた。
あまりにもの冷気の為、橋の下を流れるマグマまで凍ってしまい辺りは真っ白な世界に変わり果てる。
ガイとリードがいた数キロ手前の橋の入り口まで凍りつき白くなっていたのだ。
「な、なんて能力だ。。。」
「まさかこれほどまでとは…」
凄まじい能力を目の前で見たガイとリードは立ちつくし茫然としている。
だがすぐに異変に気がついた。
「お、おい!リード!ユウキ様が!」
「ん?ユウキ様がどうし…ああああ!ユウキ様!」
ユウキは冷気を全て出しつくしたため橋の上で倒れてしまっていたのだ。
すぐに瞬間移動しガイがユウキを抱きかかえ安全な場所へと瞬間移動した。
ユウキを抱きかかえたガイはユウキの異常な汗と体温に驚き一刻の猶予はないと判断する。
熱帯地からすぐ近くに位置する都市へ瞬間移動し部屋を用意させベットに寝かせたユウキを大量に集められた氷で冷やし、さらに部屋の温度を氷点下にするなどガイとリードは必死に手当する。
「こ、ここは…」
「ユウキ様!よかった。。。」
「ユ、ユウキ様。。」
ユウキが目を覚ますとガイとリードは涙を浮かべ喜んだ。
「ガイ様、リード様。わたしを助けていただきありがとうございます。なんてお礼をいえばいいのか。」
「なにをおっしゃいますか!我らもユウキ様には何度も助けて頂いております。こんなのは助けたうちには入りません!」
実際、魔物を討伐し一人でぶっ倒れただけだったので、ガイの言ってる事はある意味正しかった。
「私はなんて情けなく、しかも弱いのでしょう。ですがこれからも修業の為お付き合いお願いできますでしょうか?」
ユウキは情けなかった。これではマキとの差がどんどん開くと。そしてこの地に留まりマキよりも強くなろうと決心したのである。
「もちろんです!ユウキ様。」
「我ら2人ユウキ様の闘いを見て心底尊敬致しました!我らこそ足手まといにならないよう精進致しますので、修業のお手伝いをさせていただきたくお願い申し上げます!」
2人は跪き、修業の手伝いを再度お願いしユウキは嬉しそうに返事をした。
その後、熱帯地に留まったユウキは暑さを克服することを優先し、数ヵ月後には熱気を少しの冷気で遮断し、攻撃力も数段増すようになっていた。
このリードの領地ではユウキにとってとても強力な力を得る修業となり、そして数ヵ月後魔王城へ戻ることなる。
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