【085話】悪魔と神
*****人間界*****
人間界は相変わらず時間が止まったままとなっている。
現在ミキは、時間が止まったままの人間界でなにかを探していた。
時間が止まっている為、悪魔本来の姿には戻れないが黒い羽は出す事ができた。
そして世界各地を飛び回り、他に転生者がいないか探しているのだった。
(転生者の主な特徴は、異世界で突出した能力を持った者に限られているわ。今のうちにそいつを見つけてこちらの仲間に加えておくのも面白いし。)
「だけど例外もあるみたいね。あの天使の子は天界では最強ではないのに転生してたし。」
独り言を呟きながら捜索しているミキ。なぜミカがそれほど強くないのに転生したかの理由を知らないのである。本来ならば大天使長ミカエルが転生するはずなのである。
だが、転生者はすべて女性である。仮にミカエルが転生したところで、魔王と同じく消滅していたかもしれない。
いろんな事を考えながら数日間世界各国を巡っていると、遂に1人見つけ出すことができた。見つけ出したというより察知したのである。
ミキ特有の察知能力である。
転生者なら異世界の能力を察知することは可能だが、ミキの察知能力は他の転生者よりかなり優れている。悪魔に成下がり暗闇を彷徨い続けた結果、自らの危険を回避するために自然に身についてしまったからだ。
(たしかこのあたりのはず。)
ミキが察知した場所は、海外のとある都市。そして都市名が書いてある看板を目にし何かを思い出す。
(たしかこの都市は数年前に大規模なテロが起きて壊滅状態になった都市だわ。)
だが現在はビルが立ち並び、かなりの人も車も見えるが全て止まったままである。
だがそのビルの影に怯えながら一人歩く少女の姿が確認できた。
(あ、あの子だわ。まちがいないわ。)
ミキは少し離れた場所に降り、羽を隠しその少女の前に立ち話しかける。
「あなた転生者ね?元々はどの異世界からこの人間界にやってきたの?」
いきなり動く人間が目の前に現れ、言葉も出ずに固まってしまう少女。見た目はミキと同じくらいの年齢で、髪型はショートの銀髪だった。
「ああ、私は元天使で現在悪魔のミキっていうわ。あなたは?」
銀髪の少女はこの時間が止まった世界で、動いている人間がいるのが嬉しかったのか、ミキに抱きつき泣きだした。
「や、やっと。動いてる人に会えた。わたしはテミスっていいます。転生者と言われましたが、私は人間です。なぜ今みんな止まってしまっているのかもうわけがわからなくて。」
(この子は、自分が転生者だと解っていないのね。うーん、どうすれば…それに私は悪魔だって名乗ってるのにスルーなのね。)
少女に抱きつかれた状態で考えるミキ。自分に宿っている悪魔の力でなんとかできないものかと考える。
(そうだわ、もしかしたらあれを使えばなんとかなるかもしれないわ。)
ミキの目が赤色に変わる。
全身から黒い気配が漂い抱きついたままの少女ごと包み込んでしまう。
それは天使を悪魔化させた能力である。
「う…ううう。」
ミキに抱きついていた少女は、少しミキから離れなにやら頭の中を整理している様子に見える。
(転生者は悪魔化しないのかな。でも記憶は戻ったみたいね。)
次第に表情は先程泣いていた少女とは思えないくらいしっかりとした表情に変わっていた。
「わ、わたしは、神界の一人テミス。あなたのおかげで、失っていた記憶が甦りました。」
「そう、それはよかったわ、あなたは一体どうやって転生をしたの?」
テミスは転生前、神界にいたテミスであったが、何故か濡れ衣を着せられ牢獄送りとなり、数千年の間幽閉されてしまっていた。そこで突如現れたのが転生大全集であり、それを読み転生したということだった。
「なるほど、神界か。私と真逆の異世界にいたのね。いや、元々は近い存在だったのかもね」
「あなたはどのようにして転生をなされたのでしょうか?」
ミキは自身が悪魔に成下がったいきさつを語り始めた。それを聞いたテミスは涙を流し、テミス自身長い間幽閉されていたことから同調し、共に闘うことを決意した。
「数千年もの間、そのような世界を彷徨い続けていらっしゃったなんて…。」
「まあもう済んだ事だしそれはいいわ。テミスあなたの能力ってどんなものなの?」
「はい、私の能力は『破壊』することです。全ての物質を破壊する力を持っていることで、おそらく幽閉されたのもそれが原因かと。それに他にも幽閉された者がいましたので、もしかするとその者も転生しているかもしれません。」
(なるほど、神界だからきっと恐ろしく強力な能力を持った者の集まりなのかもしれないわね。だから他に神界からの転生者がいてもおかしくはないわね)
「じゃあ他に転生者がいないか一緒に探してもらえる?」
「はいミキ様、共にあなたの敵となる者を倒しましょう」
(やけに協力的ね、もしかしたら洗脳くらいはできたのかしら。)
テミスの目が赤くなっているので、悪魔化までには及ばないが、洗脳くらいはできていると思った。だがそれはミキの話を聞いてただ単に目が充血しているだけだった。
テミスは幽閉されていたもう一人の神の事を思い出す。
「たしか私が幽閉されたのと同じように『戦の神』だった戦士が幽閉されていました。きっとその方も策略により私と同様ではないかと思われます。現在の紛争地や戦争の起こっている地を探すのはどうでしょうか?」
「テミス、あなた頼りになるわね。あなたの言う通りにしてみましょう。」
ミキは黒い羽で、テミスは金の羽でそれぞれ飛び立ち、現在戦争中、もしくは紛争中の国々へ飛び立ち存在するかどうか解らない転生者を捜索することとなった。
何カ国を捜索したが気配は感じられす、あきらめかけていた頃ふとある国の存在を思い出しそこへ向かった。その間ミキとテミスは自分達の転生前の話や人間としての現在までの話などで盛り上がりとても仲良くなった。
そして数日後ある戦争国に辿りつく。
今まさに戦争の真っ最中である国で、あまりにも危険すぎる為報道もされず誰も立ちいる事ができない状態だった。あちこちに無残な屍が転がる。
「本当人間て愚かよね。同族で殺し合って何が楽しいのかしら。まあ私も同族をかなりの数食べちゃったけどね。」
「いえ、ミキ様の場合は生きる為に食べただけですし、この愚かな人間とは全く違います。」
「テミスって本当にやさしいね。数千年ぶりに仲間ができて嬉しいわ」
「私も神界での恨みも忘れ、人間として朽ち果てるだけの生涯を送ってしまう所でした。本当に感謝しております。」
そんな会話をしていると、ミキがなにかを察知する、同時にテミスも感じ取った。
「テミス近いわね。」
「ですねミキ様。」
2人はお互い目を見て頷き、気配の感じる場所へ向かう。
その場所は破壊されつくした街だった。ビルは壊れ、あちこちに戦争の犠牲者が転がっている。しかし動いている者は見当たらない。
「たしかにここのはずなのよね。」
「はい気配はそのままあります。」
悪魔と破壊の神はまさに気配のするその場所に立っていたのだが、誰もいない。
ふと地面に目を向けるとマンホールの蓋が見えた。
「テミスここだわ」
ミキはマンホールの蓋を開け、中に入り込む。テミスもそれに続く。
かなり下まで降りると地下通路になっていた。
戦争を想定しての地下通路のようだ。奥にはドアが見える。
「なるほど、どうりで見えないはずだわ。」
「ですね、このような場所に隠れる所があったのですね。」
明らかにドアの向こうから気配が感じ取られたのでミキは声をかける。
「そこにいる方、私達は怪しい者ではないから出てきなさい。」
ミキが声をかけると半開きになったドアから人影が見え、そこから人が出てきた。
出てきたのはミキより幼く見えるテミスと同じ銀髪でショートの女の子だ。
「あなた達はなぜ動けるの?」
同年代のしかも動いている女の子を見て安心したのか、特に驚く事もなく普通に話しかける。
「私達は転生者よ。そしてわたしの名前はミキ、こちらがテミスよ。あなたのお名前は?」
「私はアース。転生者ってどうゆうことですか?」
アースは時間が止まって全ての人や者が動いていない中で、自分だけ動けるのは何かあると思っていたので、ミキの転生者だと言う発言に興味を持った。
テミスはアースの名前を聞いて驚いていた。
「じゃあこちらにきて、今その記憶を蘇らせてあげる」
アースはミキの元へ駆けてきた。そしてミキはテミスの時と同じく悪魔の力を発揮する。
ミキの能力により記憶と能力を取り戻したアースは何かを思い出すかのように泣きだした。
(目は赤くなってるからこの子も洗脳できたようね。)アースもテミス同様に泣いたため充血しているだけだったのだがミキは気がついてなかった。
「あ、ありがとうございます。そこにいるのは破壊神テミスですね。全て思い出しました。あなたのおかげです。」
「やはりアースだったのね、名前を聞いてそうだとおもったわ。」
「じゃあ、あなたが何者で、どうやって転生したのかを聞かせてもらえるかしら」
「私はテミスさんと同じ神界にいた『戦士』です。テミスさんの事は知っています。私と同じく幽閉されていましたので、是非私も仲間にお加えください」
頭を下げミキにお願いする。ミキは了承するが、アースとテミスに確認をする。
(悪魔化はできなかったにしろ洗脳はできているとおもったけど、どうやら違うわね。)目を見ると赤かった目は普通の色に戻っていたからだ。
「あなた達2人はいわば私とは敵対関係にあってもおかしくはない神界でしょ?それでも悪魔である私と共に行動をするのに抵抗はないわけ?」
洗脳もできていない神2人が仲間になりたい事が信じられずもう一度確認する。
「ミキ様が先程なさいました記憶を取り戻す際に、洗脳のような感覚が伝わりましたが、それとはまったく別です。ミキ様の無念は我々とは比べ物になりません、それにミキ様は悪魔ですが、それとは別のやさしがあります。おそらくアースさんも同じだと思います」
「はい、私もテミスさんとおなじです。長い年月の無念を共に晴らす為に是非とも協力させていただきたいです。それにミキさんには惹かれるモノがありますし。」
「あなた達は神なのに悪魔と仲間になるなんて、おもしろい子達ね。まあいいわこれからもよろしくね。そうだあななたち今いくつなの?私は15歳で来年高校生になる予定だけど。」
「私はミキ様と同じ15歳です。」
テミスはどうやらミキと同級生のようだ。
「14歳です、この国の状況をみてお解りのように学校どころではありませんが。」
アースはミキやテミスより1学年下のようだ。
「じゃあ3人とも同じような年齢なのね、だったら話も合うし仲良くなれそうね。」
ミキが笑顔でそう告げると神2人はとても喜び頷いた。
こうして悪魔と神2人は仲間になり、この3人に敵対するものには3人協力し闘う事を誓い合った。




