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てんせい☆  作者: MAKI
82/230

【082話】大天使エル


*****人間界*****



マキとルミエルは人間界の秘密基地に転移してきた。


「ここは?人間界ですよね?」


ルミエルは変な場所に転移してきたため少し動揺する。


「ここは私達転生者が集まる場所です。」


マキは念のために、魔界にいるミサキ達を連れてきたいとお願いする。


しかしルミエルはこれ以上異世界の者達に迷惑がかかると困るのでそれを断る。


「マキさん、あの程度の悪魔でしたら私だけで十分です。ご安心ください」


「は、はい。」


マキも大天使の力が物凄いことを実感していたので頷いた。だが、内心は嫌な予感がしていた。


(言い方を間違えたかな、遅くなるって伝えてきますから少し待ってて下さいといって、付いてきちゃいましたってことにすればよかった)


「では、マキさん参りましょうか」


「はい、それでは地上へ移送します」


2人は秘密基地から地上へと移動し、少しでも気配を察知できるようにと空へ飛び立つ。


大天使ルミエルは大きな羽を広げ、両手を広げ気配を感じ取ろうとしていた。


マキは浮遊魔法で空を飛んでいる。飛んでいるというより普通に立っている状態だった。


しばらくするとルミエルがなにやら気配を察知したらしく、北の方向を指差す。


「どうやらこの先にいるようです。」


そしてその方角に進んでいく2人。前方には学校が見える。どうやらその学校にいるようだ。


「まるで待ち構えているようですね。」


マキの心臓の鼓動が早くなっているのをマキ自身が自覚するくらい嫌な予感がする。


学校のグラウンドのところに上を見上げ微笑む少女がいた。


「あの女の子ですね。」


「そのようですね、マキさん私から離れないでください。」


マキと同世代くらいの少女のように見えるた。


まだかなり上空なのではっきりとは確認できないがどこかで見たことのある姿だ。


(あの女の子どこかで見たような。)と思いながらだんだん近づくにつれ顔がハッキリと見えた。


「そ、そんな…まさか、なんで?どうゆうこと?」


顔を確認したマキは錯乱してしまう、ルミエルはその様子を見てただ事ではないと感じ取った。


「マキさん、どうしました。マキさん!」


「あ、あれは…私の妹のミキです。」


さすがにルミエルも驚いた。


(どういうことだ、マキさんの妹が悪魔なのか?それともこれはなにかの罠なのか。)


「と、とにかく、着地して確かめましょう。」


そして2人は少女の目の前に着地した。


マキはその少女に視線を釘付けにして無言のままだった。


「お姉ちゃん、ミキだよ。どうしたの黙っちゃって」


ミキと名乗る少女は笑いながらマキに話しかける。


「ほんとに、ミキ…なのか?あんたは一体何者なの?」


「はあ?何者って、それはこっちのセリフでしょ?お姉ちゃんいきなり空飛んでるんだから。」


たしかにそう言われればそうである。


「マキさんこの女の子は間違いなく妹さんなのですか」


「はい、間違いありません。」


「まあ、この人間界ではお姉ちゃんだもんね、で、そこの大天使はルミエルね。」


ミキは大天使ルミエルの存在を知っているような言い方だった。


「そ、そうですが、なぜ私がルミエルであると?」


どうみても悪魔らしき気配を感じ取れないため確認してみる。


「そりゃわかるわよ、だって命の恩人なんだもの。わ・た・し・」


おちょくるような視線を送るミキ


「ミキ、なにを訳のわからないことをいってるの? 」


「お姉ちゃんそうでもないよ、その大天使すごく動揺しちゃってるでしょ、それに私の名前実はエルって言ったらわかるでしょ?ルミエル」


「ま、まさか、あ…あなたが、大天使長エル様ですか?そ、そんなはずは…」


明かに動揺している、あの大天使がミキの言葉で取り乱している。


「嘘や作り話ではないって解るでしょ?あの暗黒の空間に吸い込まれ、光もない世界を下手すりゃ永遠に彷徨い続けるところだったわ。それにねあの暗闇の中にいるとだんだん頭がおかしくなっていくのわかる?この気持ち。」


エルと名乗るマキの妹は突然話しだしたが、その話の内容は間違いなくエル様の事だとルミエルは思い出した。


「なんであの時私が犠牲にならないといけなかったのか、なんで私だけこんな暗い何も見えない世界を歩き回っているのか、今頃助かった大天使達は私のことなど死んだものと思い忘れているんだろうとか。」


「でもね数千年も暗闇にいると、その内だんだん見えてくるの、地面が、景色が、そして悪魔達が、気が付いたら悪魔を食べていたりとか、毎日毎日悪魔と戦ってそして食らう。その生活が数千年よ数千年、ねえわかる?」


マキもルミエルも黙ってミキの話しに耳を傾けていた。


ルミエルはもう大天使の片鱗すら見られないほど憔悴しきっている。


「そうやって毎日悪魔を食べている自分は何者なのかって、やっと考えることができたの。そして気が付いたの自分はとっくに悪魔だったってことに。それになぜ悪魔の目が赤いか知っている?それはね全てを血に染めてやりたいくらいの憎しみしかないからなの。それにあの色になるとどんな暗い場所でも昼間のようにハッキリ見えるのよ、不思議でしょあはははは」


すでに目の前の少女は妹のミキではなくただの悪魔であることはわかった。


しかしルミエルにとっては命の恩人であり、憧れの存在しかも悪魔になった原因が自分にあることから人間界にやってきた本来の目的も忘れ去ってしまっているような表情に変わり果てていた。


「しかしなんでミキの姿なんだ?ミキはどうなった?」


ミキが最初から悪魔ではなかったはずと思い問いかける。


「私もお姉ちゃん達と同じ転生者よ、ずっと隠してたけどね。お姉ちゃんが転生者だってことも知っているわよ。天使に、氷の女王に、魔界の魔王。そして冥王や砂、海の女神とか、最近だと闇の王ってのもいたわね。私は暗黒の世界に堕とされた哀れな天使だけどね。」


「じゃ、じゃあどうやって記憶や能力がもどったの?」


「私は最初から記憶も能力も持っていたわ、あの長かった暗闇からあの本のおかげでやっと抜け出せてこれで天界を滅ぼせると。だけど転生した短い人間の寿命を満喫してからでも遅くはないと思い、悪魔としての記憶も能力も眠らせていたのよ。」


「じゃあどうして眠らせていた記憶が目覚めたんだ?」


「だってお姉ちゃんが天使を家に連れてくるからじゃない。」


マキがミカを家に遊びに連れてきたときにミキは天使だと一瞬で見破り眠らせていた記憶が甦った。だがミキはその時にはなにも行動を起こさず頭の中を整理する。


天使が人間界で人間として生活しているということは天界へと戻れるからだと判断し、本来の目的である天界を滅ぼす為にしばらく様子を伺っていたらしい。


「じゃあ、わたしのせいで…ミキは。。」


「人間界の姉妹としてはすごい楽しかったよ、でも本当の正体は悪魔なのよ。」


「なぜ私には本当のことをもっと早く言ってくれなかったの?私が魔女ってことも知ってたんでしょ?」


「魔女?お姉ちゃん。 私はね他の転生者の正体は全て見破ったんだけど、お姉ちゃんの正体だけはどうしてもわからなかったの。」


マキが魔女だということを知らないのではなく、魔女ではないと言い張るミキ。


「私は魔女だよ、魔法の世界もちゃんといったし魔法の世界に妹もいるし、正真正銘の魔女だよ」


「じゃあなんで転生前の姿と今の姿が同じなの?それに魔法なんてどの異世界にも存在しない、魔法の世界なんてものはないよ。私は天界でも記憶もあるから間違いない。」


いくら元大天使長といえど、なにを根拠にそんなことを言っているのかは解らないが、マキは実際そこで生まれ育ち転生までしているのだ。


だがミキははっきりとそんな異世界は存在しないと言っている。


「嘘だと思うのならルミエルに聞いてみなさいよ。」


自分の名前を呼ばれ、ビクッとしたルミエル。


「確かに、魔法や魔法の世界といった異世界はありません。」


(いやこの前みんなで行ったし、堕天使も倒したのに。)


「じゃあお姉ちゃん自身も自分の正体がわかっていなんだね。今のままでもかなりヤバイ力があるから正体がわかっちゃったらもっとヤバイかもね。」


「もう私のことはどうでもいい、ミキが天界を滅ぼす理由はわかったけど、なんでわざわざここに出てきたの?」


「それは気配を感じてお姉ちゃんだと判ったしそれに大天使までいるからよ、お姉ちゃんにはお別れのあいさつと、このルミエルを私と同じ目に遭わしてやろうとおもったから出てきたのよ。」


ルミエルは諦めた表情で立っていた。同じ目に遭わされても仕方がないのは自覚しているからである。


「私は覚悟はできております。実際今目の前でエル様が話すまで忘れかけていた事も事実ですし。」


「ルミエル様、ここに何しにきたんですか!しっかりしてください!」


(これはヤバイな、このままじゃやられてしまう。)


マキは転移魔法を行使しルミエルと共に天界へと転移した。



「逃げても無駄なのに。お姉ちゃん。フフフ…。」


人間界でまた1人となったミキは、笑いながら、あてもなく歩き出した。

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