【073話】新領土
*****カオス領土の闇穴*****
2人は闇穴に到着した。もちろん雷竜は穴から出てくるはずもなく、穴の中にいると思われる。カオスは焦りまくっていた。
「で、で、で、でわマキ様参りましょうか」
すごい汗だ。表情はもうダメだ帰りたいと語っている。
「カオスさん大丈夫だよ、雷竜出てもすぐ倒すから。じゃあいくよ。」
マキとカオスの足元には結界が張られ、それに乗った状態で直径1キロもある闇穴の中央までスライドしていく、そこからエレベーターのように下に降りていった。
結界はまるでガラスでできているかのように透明で硬い。透明なので下が見える為、カオスは生きた心地がしなかった。
(まさかこんな事になるとは。。。)魔界の魔族でも誰一人として近づかない闇穴のそれも穴の中に入ろうとしているのだ。
そして二人はそれぞれ透明な結界に乗り下降して行く。かなりのスピードで下降しているのだが穴の中は暗いため速度の感覚はあまりない。
かなり降りた頃だった、突然火花のような光が見えた。
(もしかしてあれは。雷竜では。。)カオスの予想通りその光の正体は雷竜だったらしく、同じように下降していたマキも気が付き急降下した。
「マ、マキ様!どうなされました!」
「ああ、雷竜いるからちょっと倒してくるね」
まるでどこかに出かけてきまーす。と言っているような話し方で雷竜を倒してくると言い放つマキにカオスは唖然としていた。
だが雷竜の姿はまだかなり遠いがはっきりと見えてきた頃、カオスは正気に戻る。
過去に魔王が討伐したときに遠くからではあるが一度雷竜は見ているが、こんな間近で見るのははじめだった。
(なんだこの巨大な竜は。。。こんなに大きかったのか。)
その大きさは表現のしようがないほど大きく、もはや魔物という範囲を超えていた。
(いくらマキ様でも、あの雷竜相手にすぐ倒せるはずが…)と思った瞬間雷竜は消えた。
マキの魔法デスホールにより一瞬にして消滅してしまったのだ。魔王ミサと同じく一瞬で消し去ったのだ。
カオスはもう声すらでない。あごが外れそうなくらい口が開いたままになっていた。
「カオスさん口開けっ放しだよ!もうすぐ闇の世界に着くよ。」
「えっ、あっ、は、はい。」
返事をしている間に闇の世界の地にたどり着いた。
薄暗くはあるがそれなりに灯りがある為、周囲は見渡せる。
「ここが闇穴の底ですか。しかし魔界の下にこのような場所があるとは。」
魔界の魔族ですら誰も知らない世界が魔界のすぐ下にあったことに改めて驚くカオス。
「カオスさん、驚いてる場合じゃないよ。今から作業を始めるからここの世界の方達を探してきて。」
「は、はい。マキさん。」
マキはさっそく降り立った場所に魔法陣を描く作業に移る。
カオスは周辺に集められているはずの闇の種族を探しにいく。遠くまで見渡せない為、判りにくかったが、すでに物凄い数の闇の種族が集合していた。そこには一度魔界にきた文官の姿もありスムーズに魔界への誘導ができそうだった。
そしてマキの魔法陣が書き終わる頃には、説明を終えていたカオス。
(さすが司令官だ、指令をだすのがうまい!ああ、だから司令官のかな。)
一人でダジャレを連想しながらカオスの手際のよさを見て感心するマキ
「では、あの魔法陣から魔界に飛ぶ事ができますので、ゆっくり順番に入っていってください。」
カオスと文官はその魔法陣の入り口で闇の種族を誘導した。この場所だけでも数億の闇の種族がいるらしい。
「じゃあカオスさん、後はお願いね。終わったら次の闇穴へ向かうからね。がんばってねー。じゃあ。」
「わかりましたマキさん。マキさんも頑張って下さい。」
マキは小さく手を振って魔法陣に入り、魔界へと戻っていった。
*****空き地(闇王領土予定地)*****
魔界へ戻ってきたマキは今度は総司令官ディオと共にディオの領土にある闇穴へ向かった。
各総司令官の領土に闇穴がある為、結局は全員がカオスと同じ体験をすることになったのだった。
この作業を7回繰り返し、全ての総司令官を闇穴の底に誘導の為送り届けたのは2日後だった。
すでに数十億の闇の種族が魔界へと移住してきていた。ミカとユキは住民登録で大忙しだったが、闇の種族の武官や文官、それに闇王の側近などに作業を振り分け住民登録は順調に進んでいた。
「ふぅぅぅやっとおわったぁぁぁ!」
大の字になりひっくり変えるマキさすがに魔法の行使はかなり疲れるらしい。
「マキちゃんお疲れ様。」
「マキねぇちゃん、闇竜討伐大変だったねぇ。少し休んじゃってねぇ。」
「ありがとう。でもミカちゃんもユキも大忙しだったんじゃない?」
「最初はどうなることかと思ったけど、今は作業を手分けしてるからだいぶ楽になったよ。」
「うん、そぅだよぉ。ミカ姉様のおかげでぇすっごぃ楽になったんだよぉ。」
「マキちゃんご苦労様、とりあえず闇穴の一箇所は終わったわね、各領土にあと4づつあるから、あと28の雷竜を倒さないとね。総司令官が戻ってくるまでゆっくりしてるといいからね。」
現在は4人とも女子高生の姿でそれぞれが作業をしている為、魔王もミサキの姿になっていた。
「はい。。。。。がんばります。」
(あと28匹もいるんだ。。。)
まだまだ闇穴へ特攻して魔法陣を描く日々が続くのだが、それほど急がないためゆっくり休憩を取り万全の状態で行けばいいよとミサキに告げられた。
しばらく休憩していると最初に闇穴へ行ったカオスとその次に行ったディオが誘導を終え戻ってきていた。
「あれ?カオスさんにディオさん。もう終わったの?」
「闇の種族の方が、自分達の事でもあるからと言われまして、あとは自分達で頑張りますといわれまして。。」
「そっかあ、じゃあすぐに次の闇穴にいけるね。」
「いえ、その前にマキさんに魔界最高のおもてなしをさせていただこうと思いまして。」
「はい?なんで2人がわたしにおもてなし?」
「闇穴への突入といい、雷竜の討伐といい、我ら二人は心底マキさんに惚れてしまいました。そこで是非お疲れのマキさんにせめて料理でもふるまおうかと思いまして。」
カオスは魔力を使い、予め自らが用意していた料理を瞬間移動させてきた。
「どうぞ、マキさん。すきなだけ食べて下さい。」
テーブルいっぱいに魔界高級料理が並んでいる。
「うわあああすっごおおおい!」
マキは料理を見ると、目が輝き飛びつくように食べまくった。
(マキさんは本当に食べ物に目がないな。。)
「カオスさん、ディオさんすっごいおいしい!こんな料理作れるなんて尊敬しちゃう、今度作り方教えてね」
マキは大満足でそう応えた。
カオスとディオは、マキの喜ぶ姿がとても嬉しかった。
救出作戦が始まってから10日が経過した。
すでに数百億の闇の種族の人々が、魔界に移住してきていた。
空き地だった場所は都市になっていた。
魔族の建築能力は凄いものがある。
さらに闇の世界には魔界にない貴重な資源もあった為、それの発掘も行われた。
その為、結果的には住居や食料以上の利益をもたらすこととなったので、闇の種族が魔族にたして負い目を感じることはないと魔王ミサが言っていた。
さらに魔王は魔力を使い、新領土の領主となるメアリーの為に恐ろしい程の大きさの城を建ててしまった。
闇王であるメアリーの王としての立場を尊重する意味もあり、さらに魔王の妹としての立場を考慮してわざわざ大きくしたのだ。
「魔王閣下、私のような難民にこのような立派なお城は恐れ多くて頂けませぬ。」
現在、その城内のある一室で、話をしている最中だった。
ミサキ、ミカ、マキ、ユキと共にソファーに座っていた。
「それに魔王閣下、我ら闇の種族は礼を尽くしても尽くしきれません。このご恩はわたくし自ら魔王様に忠誠を誓い配下となることと、闇の種族も魔界の魔族へと帰化する次第でございます。」
「そんなことはしなくていいよ。メアリーは後輩であり友人であり、魔界ではあの3人同様妹だからね。闇の種族はそのままでいいからね。」
「そうですよメアリーちゃん、お姉様がいいっておっしゃってるんだから、ありがとうって言えばいいのですよ。」
「うんうん、そぅだょ。それにぃメアリーは闇の王様なんだからぁ、これくらぃ大きいのじゃなぃとねぇ。」
「普段はリリイさんがいてくれるから、そんなに気を使わなくてもいいんじゃないかな。それに空き地だったんし、闇の種族の人達が移住してきても、領土のほんの一部しか埋まってないんだし。」
「み、みなさん。わ、わたしは…」
メアリーは頭を下げたまま泣いていた。
「まあこれで移住は無事終わりそうね。闇の世界が暗闇に覆われるのは、数百年後ってことだから。」
「それまでにあの暗黒の壁を食い止める手段ができるかもしれませんね。」
「マキねぇちゃん、わたしはぁまだ暗黒の壁みたことなぃんだけどぉ、どんな感じなのぉ?」
「私も気になります。対策を立てるにしても一度拝見しておいたほうがよろしいかと。」
「それもそうね。じゃああなた達見てくる?メアリーちゃんお願いできるかな?」
「は、はい。私の力ではどうにもなりませんでしたが、皆様の能力でなんとかできれば、それに越したことはありません。」
「じゃあ行こっか。」
ミサキの瞬間移動で、最初に集まった闇穴まで移動する。
「メアリー、闇の世界から暗黒の壁までは瞬間移動で行けるんだよね?」
「はい、大丈夫です。」
「ならすぐだね、それじゃミサキ姉さん行ってきますね。」
「あっ、ちょっと待ってて。」
ミサキはそう告げると瞬間移動し、どこかへ行ってしまった。
だが、数分後戻ってくる。何故かカオスとディオが一緒だった。
「カオス、ディオ、頼んだわよ。」
「はっ、魔王閣下!」
「それとみんな、暗黒の壁には絶対に入っちゃダメよ。」
「はいお姉様。」
「はぃですぅ。」
「姉さん了解です。」
それぞれが返事をした後、ミサキは再び瞬間移動してどこかへいってしまった。
「では行こっか。」
マキは大きな透明な魔法陣を構築し、その魔法陣に全員が乗り込み、闇穴の入り口までスライドした後、遊園地の乗り物のように、真下へ一直線に下っていった。
「うひゃぁぁー。すっごぃぃぃ。」
「マキちゃん、こ、こわいよ。」
「マキさんの魔法は凄いですね。」
ミカ、ユキ、メアリーの3人は話す余裕があるが、カオスやディオは驚いて話すこともできない。
(この前の魔法陣より大きいが、な、なんて速度だ。)
(なんでこんなスピードで、普通に会話ができるんだ、この方達には驚くばかりだ。)
などと、感心していたのだが、肝心なマキの声がしない。
ミカ達も返事のないが気になり視線を向ける。
「え?ええええ!マ、マキちゃん!しっかりして!」
「マキねぇちゃん。なんでぇ気絶してんのよぉ。」
「マ、マキさん。。」
マキが返事をしなかった理由は、あまりにもの落下速度に気絶してしまったからだった。
(自分で落下させといて気絶してしまうとは。。)
(マキさんらしいと言えばマキさんらしいな。)
このままでは、闇の世界の地面に激突しかねないので、ユキが物凄い冷気を魔法陣の真下へ噴射して速度を緩める。
地面に激突したところで、マキ以外はかすり傷ひとつ負わないだろう、しかしマキは生身の人間と同じなのでそうはいかない。
「さすがユキちゃん。。でも冷気が強すぎてマキちゃん凍りかけてるよ。」
「ほんとだぁ。もぅ世話がやけますねぇ。」
「ミカさんの治癒でなんとかならないのでしょうか?」
「あっそっか。やってみるね。」
速度は落ちたが、冷気により凍りかけたマキを、メアリーに言われ治癒するミカ。
「うーん。こ、ここは?」
ミカの治癒により目を覚ましたマキ。キョロキョロすると、すぐに何をしていたのか思い出した。
「マキちゃん気がついたのね。よかったー。いつの間にか気絶してるからビックリしたよ。」
「あはは、ごめんごめん。ちょっと速度調整失敗しちゃったみたいで。」
(あの速度を平然としてられるミカちゃん達って。。)
「マキねぇちゃん、しっかりぃしてよぅ。」
「あはは、ユキもごめんな、冷気で速度落としてたのか。」
(こいつの能力もとんでもないな。)
「ユキ冷気ありがと、速度落としたからもういいよ。」
「ふぁい。」
ユキの冷気が解除され、魔法陣の速度はかなり落とされた。
「マ、マキさん気絶していたとは。」
「だな。自分で落下させといて気絶するとは。」
カオスとディオは、二人小声で話していた。
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