【071話】闇の世界
*****魔界*****
マキの転移魔法により、1便と2便に別れて魔界にやってきた。
1便でミカとユキを無事魔王城に送り届けたが、2便のミサキ、メアリーは何故か空き地に転移してしまった。
「あれ?なんでだろ…。」
(きっとあの看板のせいかも…魔界の印象深い場所が魔王城とこの空き地だなんて言えないなぁ。)
「ここは…。なつかしい場所についたわね。」
ミサキは久しぶりに来た空き地を眺めていた。
空き地といえば空き地だが、数万キロ、いや数千万キロも更地となった魔界では異様な場所でもある。すべて魔王ミサによって消し飛んだのだが。
「ここが魔界ですか。何もないのですが、もしかして皆さん地下に住んでいらっしゃるでしょうか?」
初めて見る魔界が空き地だったメアリーは、そんな事を言う。
(地下って、たしかにうちらも初めて来たときはこんな更地だったけど、ユキと同じ事言ってるな。)
「メアリー、ここは魔界でも特別な場所なんだ、それにちゃんと地上に住んでるよ、人間界より発展してるし、人口も土地の広さも凄いんだよ」
この広さを表現できる言葉が見つからないため、凄いといってごまかすマキ。
「まあ、瞬間移動ですぐに魔王城に戻れるからいいのだけど、マキちゃん、メアリーちゃんにかけてある封印を解いて、そして元の姿に戻してあげて。」
そう告げるとミサキは魔王の姿に戻った。
(魔王に戻るってことは、一応警戒はしてるってことなのかな。)
「わかりました。メアリー魔法かけるね。」
マキも何かあれば、すぐに対処できるように結界を張る。
そしてメアリーの封印を解き姿を元に戻す。
するとメアリーは、長身の背の高い女へと姿を変えた。
(こ、こいつまでもでかい。ミサ姉さんと変んないくらいの高さだ。)
「ああ、これがマキさんの言っていた魔法ですか、おかげでもとに戻れました、ありがとうございますマキさん。」
冥王と違い、姿が戻っても普通に話す闇王メアリーいやカミュが本当の名前なのだろうか、まあどっちでもいいけどとマキは闇王を見上げる。
「みんな背が高いから、嫌になっちゃう。」
「ですがマキさんはそのままでかわいいからいいと思いますよ。」
「それもそうだな、はははは。」
魔王と闇王が笑っている変な光景だ。
魔王は闇王に姿を戻したメアリーに話しかける。
「闇王よそなたの力どれほどのものかわたしに全力で試してみるが良い。わたしは一切反撃はしない。」
「魔王ミサ様、わたしはそれほどの力はありません。ですが闇王として全力で攻撃させていただきます。」
やはり呪文だけが攻撃方法ではなかったらしい、マキは結界を張り、2人を見守る。
闇王は両手から黒い炎のようなものを作り出した。そして魔王の方に両手を向け、手からは火炎放射器の様に黒い炎が噴出す。
ミサは危険を察知してか、黒い炎を一旦かわす、ミサの後ろにあった立て看板に黒炎が直撃、すると看板は黒くなり砂のように崩れ落ちた。
(なにあれ…あんな一瞬で黒い砂になっちゃった。)マキは闇王の攻撃を見て少しびびっていた。
「なるほど、よくわかった。今度は受けよう。」
そして2度目の攻撃がミサに襲い掛かる、だがその攻撃を遥かに凌駕する魔力の前ではただの黒いモノでしかなく、全く通用しなかった。
「やはり、あなたにはいかなる攻撃も通用しませんね、先ほどの炎は全てを闇にしてしまう炎なのです。」
(やっぱ炎だったんだ、しかも黒い炎って…熱くはなさそうだけど。)
「だが、相手の力さえ上回れば効果もあるだろう。姿を取り戻したばかりだからな、仕方あるまい。」
魔王ミサは闇王の力を認めているのである。
「闇王よ、その力を制御できるか?人間界でそれを使うと、すべて砂と化してしまうからな。」
「少し練習しないとだめかもしれませんが、制御できれば姿も人間界の姿に戻れるのでしょうか?」
「そうだ、わたしやミカ、ユキに至っても自身で姿を戻しておる。転生先では人間だからな。異世界とはまた違う世界もいいものだ。」
(魔界からみれば人間界が異世界なんだけど…ここはあえてスルーで。)マキは突っ込みたかったがやめた。
「わかりました、なんとか制御できるかやってみます。」
「それよりせっかく闇王に戻ったのだから、連れて行ってやろう。」
(え?どういうこと?闇王に戻ったからっていったよね。)マキにはなんのことか分からなかった、闇王も良くわかっていない表情をしていたが、ミサの瞬間移動で強制的に連れて行かれた。
移動した先はマキが雷竜を討伐した『闇穴』だった。
「ここは…闇穴では?」
「そうだな。闇王よ見覚えはあるか?」
闇王は驚いた表情だった。
「ミサ姉さん、この場所と闇王とどのような関係が?」
「この穴の奥にある世界が闇の世界だからな。」
「ええええええええええええ!!!!ほんとですか?!」
(そういえばメアリーは闇の世界のことは語らなかったな、うまいことごまかしてたような気もしたが、それに転生したのは闇の世界に絶望し死にたいと思ってたら、転生大全集が見つかりそれを読んで転生したって。)マキは秘密基地でメアリーが語ったことを思い出した。
「いまから数千年前に、雷竜を討伐した後で何故か魔族達が病にかかってな。目が紫色になり、突然暴れだし町を破壊し魔族を襲う事件がったのだ。」
「そ、それってもしかしたら。」
(この前わたしが暴れたのと同じってことだよね。)
「おそらく雷竜がいなくなり穴から闇の種族が魔界に出てきたんだろう。」
「そうです。おっしゃるとおりです。この下には闇の世界が存在します。この穴からでも光は届かない奥深くに…」
闇王は、闇の世界のことを語りはじめる。
(えええええええ!なにこの展開。。。闇穴の底には闇の世界が存在するって一体。。。)
どうやらこの闇穴を抜けると闇の世界に辿り着くらしく、この闇穴は魔界のあちこちにあるらしい。
全ての穴に雷竜が住み着き、上へ昇ろうとすれば放電により死滅してしまうのである。しかし数百年に一度は、どこかの闇穴の雷竜が何故かいなくなる為、その隙を狙い魔界へ上がり侵略を試みる。
さきほどの闇王の攻撃力があれば雷竜を討伐できるのは?とマキが尋ねたが、雷竜は闇の力が効かないらしい。
そして闇穴を登りきったとしても少数しか登れない為、すぐに魔族に見つかり殺されてしまう。
そこで編み出したのが呪文である。
次に闇穴から出られた時に、魔族に呪文をかけ、操ろうとしたのだが、効果が出るのに数日かかる為その間に呪文をかけた闇の種族は全て排除されてしまったのである。
呪文の効果が出た魔族は目が紫色になり暴れまわったが、魔王やその配下によりすぐに制圧されてしまったのだ。
「友好的に対話しようとか思わなかったの?いきなり侵略はいくらなんでも…」
マキがそう言うと闇王は、唇を噛み締める。
「何度も、対話を持とうと使者を送ったのですが、全て殺され、闇穴から落とされてしまいました。雷竜がいない闇穴が一つだけあって、そこから使者を数回に渡り送ったのですが…。」
「そうだったんだ…ごめんなさい何も知らず口出しして…」
「使者を何度も送っただと?そのような報告は受けていないが、その使者は誰に会いにいったのだ?」
ミサキは全く覚えがないので誰なのか気になった。
「たしか、あの闇穴がある領土を統括している、マーズと言う総司令官でした。」
「マーズか…。あいつは魔界の裏切り者で、わたしがヤツの配下、領地全て消滅させてしまったが、そんなことがあったとは…。」
なんだか申し訳なさそうに話すミサ。
「闇王さん、さっきの更地がそうなんですよ。」
マキは更地になる前の領土について説明した。
「対話を試み移住の許可をもらおうと何度も使者を送ったのですが、先ほどお話したとおりの出来事があった為、我々にはもはや侵略するしか手立てがなく、魔族を滅ぼし、他の異世界をも征服するしか生きる道はないと思い。」
「しかし、何故、闇の世界から魔界へ移住しようとしたの?」
「闇の世界はずっと薄暗く、光がほとんどありません、ですが資源もあり生活には困りませんでした。しかし闇の世界を取り囲む暗黒の壁がどんどん狭くなってきており、このままでは闇の世界は暗黒の壁に飲み込まれてしまうので脱出を試みたのです。」
「その壁というのは?」
「壁というよりまさしく暗闇であり、そこに入ると飲み込まれるように消えてゆく。なんとか阻止しようと試みたのですがことごとく暗闇に飲み込まれてしまいました。」
(それは恐ろしい、そりゃ逃げたくなるわ。)
「今、その闇の世界はどうなっているのかわかりますか?」
「わたしはその絶望感で死を覚悟したときに転生大全集により、転生したので、現状はわからないが、あと数百年後には闇の世界はなくなるらしい」
「ではまだ闇の世界の種族は無事だということだな、闇王自身、転生して16年ほどしか経っておらん、それに人間界とこの魔界では時間の経ち方が違う為、闇王が転生してからまだ数日しか経過していないと思う。それに闇の世界の者が助けを必要とするならば、魔界は全面的に強力する。」
闇王を見つめそう告げるミサ。
(高い目線で感動的なお話がされているのに、わたしは参加できない…)マキは自分の背の低さが情けなく思った。
「魔王ミサ様、このような話を信じてくださるのですか?もしワナだとしたら。」
あまりにも協力的なミサに信じられないような表情で尋ねる闇王。
「ワナだとしたらこの魔王の見る目がなかったまでだ。気にするな。それより準備が出来次第救出を開始しよう。」
○闇の種族救出作戦
魔王ミサは瞬間移動をし、魔王城に到着、マキはミカとユキに先ほどまでの闇王の話を聞かせ、2人共協力することとなった。
魔王ミサは総司令官を招集し、闇穴の下に闇の種族がいることを告げ、7人に魔界のあちこちにある闇穴から救出に向かうように指令を出したが、問題が発生した。
「魔王閣下、我々では雷竜を討伐できません。」
「そうだったな、雷竜がおったか。わたしとマキで駆除してから救出へ向かうとするか。」
「しかし、救出はどのように?」
総司令官最古参のカオスが尋ねる。
「マキの魔法をしっておるだろう、巨大な魔法陣を闇の世界に描かせ、そしてこちら側にも同様な魔法陣を描いておけば、移送は楽にできる。」
「なるほど、では我々は闇の種族をその魔法陣まで誘導すればよろしいのですね」
「そうなるな、だがそれをすんなり闇の種族達が信じるかが問題だ、マーズが余計な事をしたからな。」
「魔王閣下、その為に我々を招集されたのでしょう。ならばおまかせください。」
こうして闇の種族救出大作戦が始まったのである。




