【068話】卒業パーティー
*****秘密基地みんなの部屋*****
会議室は堅苦しいので、『みんなの部屋』に改名した部屋に、合格発表を終え下校した5人は集まっていた。
「みんな、今日はマキの妹のミキちゃん、それにメアリーちゃんがそれぞれ真欧学園に合格しました。」
ミサキからミキとメアリーが合格したと告げられた。
「マキちゃん妹さん合格おめでとう メアリーちゃんも試験合格おめでとう。」
「マキせんぱぃの妹さん、ミキちゃんですよねぇ、わたしがぁ入学手続きしたんですよぉ。」
「あはは、そうなんだ。新学期から妹のことよろしくなユキ。」
「はぁい、まかせてくださぃ。それにメアリーもぉ、合格おめでとぅ。」
「そっかあ、メアリーも編入試験だったんだね、合格おめでとう。」
「ミカさんマキさんユキさんありがとうございます。なんとかユキさんと同じA組に入ることができました。」
「ぬぬぬ!なんと、あたまぃぃんだねぇ。でもまけないからねぇ」
早くもライバル意識を燃やすユキ。
「試験は終わったわけですけど、ミサキお姉様の卒業式まであと一週間きっちゃいましたね。」
「だよね。姉さんが卒業したら寂しくなっちゃう。」
寂しそうな表情のマキにミカ。
ユキはメアリーと学園の事についていろいろと話し込んでいる。
「まあ、理事長として学園には、いるわけだし、なにも変らないと思うわよ」
「ミサキ姉さん、なんか大人っぽくなりましたよね。」
「あんたたちが子供すぎるのよ。それよりこれからマキちゃんとミカちゃん、ちょっと今から付き合ってくれるかしら。」
めずらしくミサキから誘われ、嬉しそうな2人。ユキはメアリーと話し中である。
「ユキちゃんはメアリーちゃんに学園の事ちゃんと教えてあげてね、じゃあ行きましょうか」
「はぁい、わっかりましたぁ。いってらっしゃぃですぅ。」
ミカとマキはどこへ行くとも教えられずミサキの後を付いていくだけだった。ミカは大体察しがついているようにも見える。
3人は秘密基地の外に駐車してあったミサキの運転する車に乗り、その車内でどこへ向かっているかを聞かされる。
「もうすぐ卒業でしょ?それでね、真欧グループで卒業祝いのパーティーをするらしいのよ。で、父がどうしてもミカとマキに会いたいらしくて。」
(え?なんでわたし?つか真欧グループって超でかい企業だし、父ってそこの社長じゃんか!)マキは動揺した。
「ミサキお姉様のお父様に会うのは久しぶりですわ、マキちゃんすっごいかっこいいから驚かないでね。」
(やっぱそうゆう地位にある人は、容姿までもが完璧なんだなぁ)かっこいいと聞かされ少しドキドキするマキだった。
「ミカちゃんは何度かお会いしてるんだ?」
「そうだよ、うちのお父さんと、お姉様のお父様がお知り合いだったらしいの。それがきっかけで何度かお会いしてるの。」
「へぇーそうなんだー。なんだか私は場違いなきがする。」
(大企業の社長と893が繋がってるって本当なんだな。)
「マキ、場違いなんかじゃないわよ行けばわかるし、でもまあいっか。」
「うんうん、そうだよ。きっとマキちゃんも行けば解るよ。」
ミサキとミカが何を言おうとしたのかマキには分からなかった。
*****高級ホテル入り口*****
そしてパーティー会場と思われる高級ホテルへ到着。3人共車を降り、置きっぱなしの車を見てマキが言う。
「車キーつけたままですよ、置いといていいんですか?」
「マキちゃん、こいう所では、車を入り口まで乗りつけると、あとはここの従業員の方が駐車場まで持っていってくださるのよ」
「そうなんだぁーすごいなー。勉強になったよミカちゃん」
マキは嬉しそうしてると、同じく会場へ向かう若い女性のグループがマキのさっきの言葉を聞き、クスクス笑いながら入っていく。小声で『どこの田舎者かしら』とか『今の本気でいったのかな?』とかかすかに聞こえてくる。
そのグループの声を聞いたミカがキレそうになったが、マキが止めた。マキは自分が場違いな事は解っているし、ミサキのパーティーなので騒ぎを起したくなかった。
(ミカちゃん怒ると怖いからなあ。それに私は気にしてないし。)
ミサキがマキの頭をよしよしと撫で、3人は着替える為に用意された部屋へ向かった。
「ミカちゃん、マキちゃん、あなた達の衣装は用意してあるから着替えてね」
「はい、お姉様。」
「えっ?着替えって??」
何人かの着付けの人によろしくと伝えミサキは、あとから迎えにくるからと言って、部屋を出た。
「城間様、天地様、こちらへどうぞ。」
「は、はあ。」
「マキちゃん、いっぱいお洋服あるから好きなの選んでいいからね。」
(ミカちゃんは慣れてるみたいだなぁ、さすがお嬢様だ。)
それぞれ着替えに行く。マキはやっぱりフリフリのドレスだった。しかしこれが一番似合うのである。着付けを手伝った係りの人もあまりのかわいさに表情がニヤニヤしていた。
ミカはどうみても天使にしか見えない白いドレス、羽さえ付ければ完璧な天使だろうと思えるくらいキレイだった。
「うわぁ、ミカちゃんマジ天使だね。」
「ちょっとマキちゃん、それ反則!かわいすぎる」
誰が見てもその言葉が出るだろう2人であった。
しばらくしてドアをノックし、誰かが入ってきた。ミサキだと思っていたが、パーティーの係りの人らしく、ミカとマキを案内しますと言って一緒に部屋を出た。
そしてパーティーが催される部屋に案内される。かなり大勢の人たちで会場はにぎわっていた。
(うわぁ、なにこの人達、みんな豪華なドレスとか着てる。まあ私も今着てるわけだが、しかしすっごいなぁまるで結婚式みたいだ。)
「城間様、天地様、こちらにお席がご用意してございますので。」
「は、はい。」
何故かマキとミカだけ別の席に案内された。その席には3つ椅子があり、名前もあった。『真欧ミサキ様』『天地ミカ様』『城間マキ様』と、どうやら真欧学園の席らしい。
ミカはお嬢様らしく席についているが、マキは落ち着かない。
近くには入り口でマキを馬鹿にした女性達が座っている。
ミカにこの集まりはどういった人達か尋ねるとどうやら真欧グループ内のえらいさん達の娘さんや役員の人の集まりだと説明された。
室内と見渡すと他の席にも、いろんな会社名があちこちのテーブルに書かれている。これ全部が真欧グループ企業らしい。そのグループでも主に業績のいい会社だけが招待されているそうだ。
(すっごいなあ、ミサキ姉さんの会社って。)
そして、明かりが薄暗くなり、ステージにが照らし出され、一人の人物が現れると、みんな一斉に立ち上がった。ミカとマキは座ったままだ。
(これって立つべきなのかな?)
ミカの方を見たが、全く立つ様子はなく、座ったままステージを見つめていた。
そしてステージ上にいたのがミサキの父である真欧龍之介であった。
「皆様、今夜はパーティーです。会社ではないので、どうぞ座ってください。」
そう告げると、場の雰囲気が一気に盛り上がり、あちこちで笑顔が見られた。
真欧龍之介。マキはステージの上にいる人物をじっと見た。たしかに紳士でしかもイケメン背も高い。
(うらやましい。あんなお父さんなら毎日べったりしたくなるわ!)と心の中で叫んだ。
そして真欧龍之介が難しい話をしている間、マキはキョロキョロ会場を見渡していた。ミカはそんなマキの様子がかわいくてつい笑顔になってしまっていた。
ところが、そんなマキを見た、どこぞの会社の娘さん達は、『見て、キョロキョロしてるわ』とか『学園の品も堕ちたもんね』とか、やはりマキを馬鹿にしていた。
ミカは、そんな女性陣をさげすんだ眼差しで見つめた。それに気が付いたのか、女性陣は静かになった。
難しい話も終わり、司会のような人、おそらく司会だろう、その人がミサキを紹介する。主役の登場だ。みんなが拍手で迎える。マキもミカも当然拍手している。
ミサキは豪華な真っ赤なドレスで壇上に登場した。
(うわあ、めちゃくちゃキレイだし。なんか最近ますます大人っぽくなっていくな姉さん。)
司会からマイクを渡され、ミサキもあいさつし話し出す。
「皆様、お忙しい中、わたくしの卒業を祝うパーティーにご参列いただきましてあるがとうございます。わたくしはこの度真欧学園を卒業し、4月からは、皆様と同じく…」とミサキは数分間話し続けた。
(すごいな姉さん。よくあれだけ言葉がでてくるもんだ。)とミサキの人間としてのすごさにも驚いていた。
ミサキのあいさつも終わり、全員で乾杯。そして、それぞれが自由にあちこちにあいさつにいったりきたりで会場は盛り上がった。
ミカのところにも何人かあいさつにきてるようだ。マキは元々場違いだと思っていたので料理を漁っていた。
(これはうまい!これもうまい!)
女性陣が軽蔑の眼差しを送るが気にしないマキ。
バクバク食べてると誰かからマキを呼ぶ声が聞こえた。それに少し周りがざわついている。
「マキさん、マキさん」
(だれ?こんなところに知り合いなんていないのに)
振り返るとミカの父親、天地巌がスーツを着て立っていた。
とても893には見えないとても紳士だった。
「あっ!ミカちゃんのお父さんひさしぶり。」
「マキさん、お久しぶりです。お元気でしたか?今日は一段とかわいらいいですな、外歩いたら誘拐されますよ。はっはっは」
「誘拐って…それよりミカちゃんのお父さんはなんでここにいるの?」
「なんでと言われましても、一応グループ内で社長をやっておりますので。」
「えええ!じゃあほんとに社長さんだったんだ。すごい!」
「あはは、マキさんはおもしろい。マキさん、また遊びに来て勝負してくださいね。」
「はい、またいきますね。」
実はミカの父は真欧グループの企業の一つでもあったのだ。グループ内では1,2を争う社長であり、天地組の組長でもあった。当然周りにいる人々はそれを知っている。
そんな天地巌が笑顔で、しかも丁寧な言葉でマキに話しかけている。
見ている者たちは、あの女子高生は何者なんだ!とマキの素性が気になっていた。
「あら、天地のおじさまおひさしぶりです。」
マキと巌が話しているとミサキがやってきた。
「ミサキお嬢さん、ご卒業おめでとう。」
ミサキにも笑顔で接する天地巌。それは当然のことなので、誰も気にしない。
「ミサキねえさん!素敵な服を貸してくれてありがとう。ミカちゃんもミカちゃんのお父さんも、かわいいって言ってくれたよ」
そう言うとマキはミカのところへ歩いて行った。
「マキは本当に素直でいい子でしょ、もうそれはマキの服なんだから、お礼なんて言わなくていいのに」
「本当です、あの子は本当にすばらしい。それにかわいらしいし。」
ミサキと天地巌は笑顔でマキを褒める。
「おじさまがかわいいっておっしゃるなんてめずらしいですわね。」
「あはは、あの子を見てると本当に癒されるというか、自然と笑顔になるんですよ。」
そして今度は場内がざわついた。
真欧龍之介の登場だ。
龍之介が通ると、皆緊張気味になる。威圧感がすごく存在感もものすごい。
誰にも話しかけることなく真っ直ぐミサキのところへ行き、なにかを話ていた。ミサキは頷きミカとマキに声をかける。
「マキちゃん、ミカちゃんちょっといいかな。」
「はい、いまいきます」
「はい、なんでしょうか。あっ。」
龍之介に気が付いたミカは少し緊張した顔であいさつする。
「おじ様、本日はお招きいただきありがとうございます。ミサキお嬢様もご卒業おめでとうございます」
ゆっくり頭を下げあいさつする。
「ミカさん、今日は一段と美しい。とても巌の娘だとは思えないですね。」
「ミカちゃん堅苦しいのはナシね。それにお父様、天地のおじさまに失礼だわ。」
と笑顔でミサキが言った。
マキも同じようにあいさつをする。
「はじめまして城間マキです。私までこんな豪華なところにお招きいただきましてありがとうございます。ミサキさんには、数え切れないくらいお世話になってます。これからもお世話になるとおもいます。えっと…以上です」
じっと目を見て話し頭をペコリと下げる。
「あなたが城間マキさんですか、私がミサキの父龍之介です。一度お会いしたくて私がミサキに頼んで招待させて頂きました。ようこそお越し下さいました。」
(なんでわたしなんかに?)訳が解らなかった。
そうマキに告げると、なぜか龍之介はマイクを持ちだした。そして再び壇上に上がる。
マイクを持った龍之介に来場者は皆注目し場内は静まり返る。
「本日は娘の卒業祝いと、もう一つ皆様にお伝えしたいことがあります。私達のグループの建てた学園の生徒であります城間マキさんです。この方は当学園始まって以来の優秀な生徒であり、将来我社の幹部候補でもあります。皆様どうかお見知りおきを。」
龍之介がそう言うと拍手が巻き起こった。あちこちで声が聞こえる。
『すごいわ、あんなに小さいのに。』
『あの子が噂の学園始まって以来の秀才だったんだ』
『しかしかわいい、それに頭脳明晰とは。』
『社長直々だぞ、すげえよなー、こんなこと始めてだ。』
『なんでも、試験は全て満点らしいぞ。』
先ほどのマキをバカにしていた女性陣達は、かなり焦った表情をしていた。
ミカはそれを見て、キレなくてよかった。と思った。
マキは恥ずかしくなり真っ赤になっていた。
(つか、もう就職先まで決まってしまってるのか…ってなんでマイクで。。)
「ね、マキちゃん場違いなんかじゃないでしょ?」
「マキちゃんが主役になっちゃたーあはは」
壇上から降りて再びマキの目の前にきた龍之介はマキに声をかける。隣には天地巌もいる。
「しかし、本当にかわいらしい方ですな。巌がいつも自慢してくるんですよ。一回見れば解ると言われ、まさにその通りでした。」
「いえ、そんなミサキさんの選んでくれた衣装のせいです。それに私はなにもしていませんし、ミサキさんやミカさんに頼ってばかりです。」
「社長、なっ、いい子だろ。はっはっは」
「たしかに、もうファンになってしまったわ。」
社長と組長の、おじさん2人がマキをべた褒めしていた。このパーティーによって真欧グループ内でもマキの事は有名になった。
そしてパーティーは終了し、ミカとマキは部屋を用意してもらい一泊することとなった。




