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てんせい☆  作者: MAKI
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【063話】冥王との闘い

イリアと別れた後、ミサキに連絡し、全員秘密基地に集合となった。


「じゃあイリアって子は冥界の王だって言ってたのー?」


「めいかぃってどんあとこなんでしょうかぁ」


「人間界では死んでからいく世界って言われてるけど、実際はどうなのかわからないわ」


「元に戻すにしても、かなりの警戒が必要かもしれませんね。それに他の3人もなんの転生者かわかりませんし。」


「でもマキちゃん『鑑定』したんだよね?」


「そうなんだけど、すでに記憶が戻っているせいか、転生者ってことはわかるんだけど、それ以上は。」


「そうなんだー。」


「とりあえず場所を指定し、そこからこの秘密基地の奥へ連れて行って話を聞いてからの方がいいかも。」


「そうですね、じゃあ明日の放課後にでも連れてきますね、連絡しときます。」


「マキちゃん、その子達の変身は絶対秘密基地内以外の場所では解いちゃだめだからね。」


「は、はい。大丈夫ですよ。」


(姉さんが警戒するなんてよほどの事だな。)


そしてその日の夜、イリアと連絡を取り、時間と場所を指定した。



*****秘密基地内 広間******



翌日、秘密基地内ではミサキとユキが大広間に待機していた。


マキはイリア達と合流し、時間が止まり次第秘密基地へとイリア達を連れてくることになっていた。


ミカはマキの代わりに生徒会の仕事をする為、少し遅れてくるそうだ。


ミサキは時計を見てユキに告げる。


「そろそろかな?ユキちゃんわるいけど、時間止めてきてもらえるかな。ミカは影響を受けないから大丈夫だろうし。」


「はぁい姉様!」



ユキは外に出て時間を止めた。



ユキが時間を止めたあと、すぐにマキは4人を連れて広間の中央に現れた。4人共驚きの表情だった。


(瞬間移動?それにしてもすごい能力だわ。)


広間ではミサキがすでに待機し、ユキも外から戻ってきた。


「皆さんはじめまして、ミサキといいます。私も同じく転生者です」


「ユキです。はじめまして、私も転生者です。」


(ユキがいつもと違うな。)


「私はマキってもう知ってるからいっか。」


ミサキ、ユキ、マキがそれぞれ自己紹介をする。ミサキとマキは笑顔だが、ユキは普段と違い冷たい表情だった。


「私は知水イリアです、後の3人はエミ、マリナ、カオリでそれぞれ転生前の記憶だけが戻っています。」


「転生前の記憶だけ戻ってるんですか。転生前はそれぞれどのような異世界の方々だったのですか?」


「私は冥界の冥王でした。エミは吸血鬼のお姫様で、マリナは砂の世界の女王、カオリは海の女神と、それぞれ異なる世界から転生いたしました。」


(それぞれ異世界の頂点に君臨する者達のようね。)


「先にお聞きしたいのですが、冥界の力とはどんな力なのでしょうか?」


「はい、おそらくこの世界ですとあまり意味はない力だと思われます。地獄の者を従える力ですから。」


(どんな能力の持ち主か解らないので、とりあえず信じるしかないわね。)


「地獄の者を従える能力ですか。」


「はい、ですからこの世界ではなんら影響を及ぼすとは考えられませんし、それにこちらの3人も同様です。」


(吸血鬼は危険な気がするけど。)そう思ったマキだが、ミサキが何も言わない為、あえて口には出さない。


「どちらにしても皆さんの能力は変身を解かないと解りませんので。マキちゃん、お願いね。」


「は、はいわかりました。」


(時間は止めたままだし、結界も張っている。いざとなったら姉さんがなんとかしそうだし。)


「じゃあいきますね。」


マキは広間に結界を張り、4人に魔法をかける。


一人ずつの体が無詠唱により繰り出された魔法に包まれ次々に正体を現した。


「こ、これは、私本来の姿です。」


「ありがとうございます。すごい嬉しい。」


「や、やっと元の姿に。」


エミ、マリナ、カオリの3人は元の姿に戻れた嬉しさを表情に浮かべ、マキ達に感謝していた。


(この子達には敵意はないようね。)安心するミサキだったが、イリアの様子がおかしいことに気がついた。


魔法により、本来の能力を取り戻したイリアの表情が変化する。


「フフフ愚かなヤツよ、余を復活させるとは。まあ、すぐに余の下僕となるがいい。この世界は余が支配する。」


冥王は能力を取り戻した途端、高圧的になった。


(やっぱりそうきたか。冥界の王っていかにも悪そうに感じたけど、まさにその通りだった。)


「イリア、あなた何を言っているの?」


イリアの発言に対してマリナが声をかけるが冥王イリアは何も答えない。


それどころか、突然イリアは不可解な行動に出る。


「貴様らは余の僕となるがいい!」


イリアは仲間の3人になんらかの能力を行使し倒してしまったのだ。3人はその場からピクりとも動かなくなってしまった。


「あんた自分の仲間になにしてんだ?」


「はあ?仲間だと!たかが吸血鬼や砂や海の女王となれあっていたとは余も情けなかったわ。」


現れた冥王はかなり邪悪な存在だった。死の力のようなモノがあるらしい。


倒れたはずの3人は立ち上がり、無表情でこちらを見ているが、目は死んでいる。


「この者達はすでに余の下僕となった、あやつらを始末せよ!」


冥王がそう告げると、ユキとミサキとマキに襲いかかってきたのである。


「ユキちゃん、マキちゃん気を付けて!」


ユキには吸血鬼が襲い掛かってきたがユキは簡単にかわし反撃に出た。凍りの槍で吸血鬼の胸を貫き倒したと思われたが、吸血鬼は無表情で刺さった槍を抜いてしまう。


「こいつ。おかしい。」


まるで痛みを感じている様子が全くない吸血鬼を見てユキが言い放つ。


「そいつらに攻撃は通用せぬわ!すでに死んでおるんだからな。はっはっは。」

と冥王は笑いながらそう言った。


ミサキには砂の女王が襲いかかるが、手をかざすだけで粉砕してしまった魔力はほとんど使っていないようだ。だがすぐに砂の女王は復活しまた襲いかかる。


ミサキは特に焦った様子もなく、砂遊び程度にしか思ってなさそうだ。


マキには海の女神カオリが、海水でマキを包み込み、深海のような圧力をかける。


「マキちゃん大丈夫?」


「大丈夫ですよ。」


海水に包みこまれているが、魔法でなんなく防ぐマキ。だが相手の能力がはっきりしない今はその場でじっとしている。


ユキは痛みを感じない吸血鬼に対して、攻撃するのをあきらめ、瞬時に凍らせてしまった。


そしてマキの海水を凍らせようとしたのだが、塩分濃度が高いせいか海水は凍らなかった。


(わたしの冷気が通じないなんて、まあマキさんなら大丈夫そうだし。)


なのでユキはミサキの代わりに砂の女王と対戦していた。


吸血鬼は凍らされ、海の女王の攻撃はマキには通用せず、砂の女王はユキに何度も粉砕され続けている。


「やはりそやつら3人ではなんの役にも立たんか。」


冥王の下僕となった3人だが、強力な能力を持つミサキ達の相手ではなかった。


「冥王イリア、これ以上抵抗するなら容赦はしないけど、どうする?」


「そのような弱者を倒したくらいでいい気になるな!お前らもすぐに楽にしてやる。その後はこの世界の者どもを抹殺し余の下僕としてやる。」


「ふうん。そうか、ならば遠慮することもないな。」


(やっぱ姉さんは様子をみてたんだ、おかしいとおもった。)


「ふん、貴様ごときなにができる。」


「わたしが直接手を下せばこの世界がなくなってしまうのでな、わたしはなにもせん。」


(え?姉さんじゃあどうすんの?ユキもわたしもこいつら相手で手いっぱいだよ)


すると突然、広間に誰かが入ってきた。


「おそくなっちゃったー。」


ミカである。時間が止まったと同時に秘密基地へ向かい、やっと到着したのだった。


「ミカちゃん、ちょっとまってね結界解くね。」


「はーい。」


マキは結界と解き、ミカが広間に入ると同時にすぐに結界を張り直した。


「マキちゃん、なにしてるの?」


(ミカちゃんは余裕なのか、訳がわかっていないのかわからないなぁ)


「まさか、そいつが余を倒すのか?」


冥王はもはや、あきれ顔でそう言い放った。


「ミカちゃん、あいつに力をみせやって。」


「は、はい。」


ミカはきたばっかりで、状況が理解できていないが、どうやらイリア達が仲間になった様子ではなさそうなのを察した。


それにミサキから力を見せろと言われたので、言う通りにした。


「冥王とやっつけてミカちゃん!」


マキが叫ぶが、冥王は笑って見ていた。


「そのような者に一体何ができるのだ。そいつも下僕にしてやる。」


冥王の言葉など聞く耳も持たずに、ミカは天使へと姿を変えた。大きな白い羽、金色に光り輝くミカ、ただ姿を変えたそれだけだったのだが。


「こ、これは天界の力、まさか天界の者がいたと…は…。」


その言葉を最後に冥王はなにもできず浄化され、下僕となっていた3人も同様に浄化された。


浄化されたイリア達は女子高生の姿に戻って気を失っている。


「あ、あの、一体なにが…」


マキとユキはあっけにとられ、ミサキはこうなることが解っていたかの表情だったが、ミカ一人なにが起こったのか解らずにいた。


「ラスボスみたい。」


「天使最強ですねぇ、変身しただけでぇ悪をたおしちゃったですぅ。」


「まああの程度の能力なら、ミカが姿を戻せばこうなるわね。」


(姉さんは相手の能力まですでに見透かしていたんだ。やっぱすごいなあ。)


浄化された4人は気を失っているため移送魔法で、明桜女学院の寮の前に捨ててくることになった。


「しかし、能力が戻っ途端、本性を現すとはとんでもないヤツだった。」


「でも記憶だけが戻ってて、能力だけが戻らないってイライラするかもー」


「ですねぇ、イリアさん以外の方わぁ、よろこんでたんですけどねぇ。」


「今後もこんな子達がでてくるかもね、気をつけないと。」


いきなり4人もの転生者が現れた事で、ミサキも少し警戒しなければと思うのであった。



後日マキが明桜女学院に様子を見に行ったが、イリアも他の3人も、マキの顔を見てもなんの反応もなく、『鑑定』にも映らなくなっていたので、もう2度と冥王が復活することはないだろう。

文字数:3070字

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