【062話】冥界の王イリア
イリア達が明桜学院学生寮で会話している一方で、ミサキ達は現在秘密基地に来ていた。
「イリアって子以外は、転生者って感じじゃなかったわよね」
ミサキは同じ制服を着て、立ち止っていた女子高生3人のことを言っている。
「いえ、あの3人は以前『鑑定』で見る限り転生者でした。私達と同じように能力を封じ込めているだけかもしれません。」
マキは全員が転生者だったとはっきり答えた。
「てことはーあの4人も、異世界からきたってことだよねー。じゃあ仲間が増えるってことかなー」
「あのひとたちもぉ、てんせぃだいぜんしゅぅで転生したのでしょぅか?」
「おそらくそうでしょうね。私達と同じ立場かもしれないわね。」
ミカやユキは新たな転生者が見つかり、仲間が増えると思いワクワクしていた。
「でも相手の出方次第よね、好戦的であれば駆除するし、ちゃんと話し合うんだったらそれなりに対応するしかないし。」
(駆除って。姉さんやっぱこわい。)
ミサキ達も、イリアが何者なのか解らない限り、下手にこっちからは手出ししない方がいいと3人に告げた。
「じゃあ、向こうからなんか言ってくるまで、ほっときましょうか」
ということになった。大事な仲間であるミカやマキやユキがいるので、今更こちらから出向く必要もないだろうと判断したミサキ。
そしてクリスマス、正月が過ぎ、3学期が始まろうとしていたが、特になにもなく4人は過ごした。
その間も遊びまわっていたので、イリアの事はすっかり忘れ去られていた。
*****明桜女学院学生寮*****
年が明け、各自それぞれ帰省していたが、まもなく3学期が始まる為寮に戻り、イリアの部屋に集まる3人。
「みんなひさしぶりね、ゆっくり過ごせた?」
イリアは一人寮で年を越していた。
「記憶が戻ってしまったけど、いままでと生活自体はかわんないから、それなりにのんびりできたよ。」
「それよりあの城間マキって子、すごい有名人だったわよ。なんとあの真欧学園の生徒会長だったらしいわ。」
真欧学園のある市内に実家があるエミは帰省中にいろいろ聞いて回ったらしい。
「あの子生徒会長だったんだ。そりゃ有名になるわよね。」
「エミんとこでも有名人だったの?わたしの近所でも有名だったわよ、中学の同級生が言うには『鬼畜のマキ』っていって、とんでもなかったらしいわ。」
「なにそれ、鬼畜のマキって。」
「1年前までその同級生が住んでる地域の不良の間では、知らない者がいないくらい極悪な子だったって噂よ。」
(どう見てもあんな小さい子が、そんな風に見えないわ、きっと話が大きくなってるだけでしょ。)イリアはそう思った。
「マリナ、私が聞いたのは、学園始まって以来の成績優秀者で生徒からの憧れの存在って聞いたけど。」
「ふむ。一体どちらが本当なのかしら。」
「じゃあ同じ名前の子がいるとか?それが転生の能力だったりだとか?」
「しかし、鬼畜と呼ばれ、今じゃ生徒会会長って…。」
イリアにはさっぱりマキの事がわからないので、直接会って聞くことにした。
*****3学期 真欧学園前*****
3学期が始まり、この日はどこの学校も始業式の為、早く下校する。イリアはマキと会う為、真欧学園の前にいた。3人の仲間も一緒だった。
「あの、城間マキさんてまだ学園内にいらっしゃるのかしら?」
「は、はい。生徒会長ならまだいらっしゃると思いますが。」
「あの、申し訳ないんだけど、お呼びしていただけるかしら。」
「はい!わかりました。あ、あの、ありがとうございます。」
何故かその生徒はイリアにお礼を言って『マキせんぱいと話せるー』とかいいながら嬉しそうに走って行った。
『コンコン!』
「あ、あの、城間生徒会会長。」
見慣れない1年生だったがマキは優しく聞き返す。
「どうしたのかな?なにか用?」
「は、はい!学園の前で生徒会会長をお待ちになってる方がいらっしゃいます。明桜の制服を着てらっしゃいました。」
だれだろう、少し考えたが思いつかない、とりあえずマキは行ってみることにした。
「そう、わざわざありがとね。」
ニッコリして1年生に礼を言うマキ、その生徒は凄く嬉しそうな顔し、帰って行った。
(一体だれ?なんの用かな。)マキは完全に忘れていた。
そして、学園前に辿り付き、イリアの顔を見て思い出した。
「だれかと思えば、お前達か、で、なんの用?」
「この前はごめんなさい、少し聞きたいことがあるの、いいかしら。」
イリアはこの前の事を謝罪し、マキもそんなイリアを見て(なんだ普通じゃん、最初からそういう態度ならよかったのに)と思いながら話を聞くことにした。
イリアは2人で話す方が話しやすいだろうと思い、一緒にきていた仲間達に先に帰ってもらった。
*****学園近くの公園*****
マキとイリアの2人は人気のない公園にきた。ベンチに座っている。
「なにから話せばいいかしら。」
少し考えるイリア、だがマキが先に言う。
「転生のことでしょ?知っての通り転生者だよ。あなたもそうなんでしょ?」
あっさり認めたマキに驚くも、返事をするイリア。
「そうです、私も転生者なんです。気がついたのは何年か前なのですが、自分が何者であるかははっきりわかっています。」
「私は魔女だよ、あなたは?」
「魔女さんでしたか。私は冥界の冥王でした。ですが今はただの女子高生にすぎません。」
(ちょ、冥界の冥王って、なんか危なさそう。つかなんでただの女子高生なんだ?)少し驚いたが質問を続けるマキ。
「やっぱりあなたも冥界の力かなにかで、能力を抑えてるんだね」
ミサキやミカと同じような考えなのかと思いそう告げるマキ。しかしイリアは
「はい?抑えるってどういうことでしょうか?」
「え?違うの?」
どうやら違った答えに驚くマキ。
「記憶は戻りましたが、力は人間そのものです。ただ、転生者を見分けたり、その記憶を蘇らせる事はできましたが。」
(じゃあ記憶が戻っただけで、力自体は戻ってないってことか。)
しばらくマキは考えた。そして何かを思い出した。
(そういえば、ミサキ姉さんや、ミカちゃんは私の魔法で元の姿と記憶が戻ったんだっけ、じゃあこの子は記憶のみを戻せることができたってわけか。)
「そっか、じゃああの3人の子達も、同じなんだね?」
イリアは頷き、そしてマキとイリアはそれぞれが転生した経緯と転生後に、なぜ転生前の記憶が戻ったかを話した。もちろんミサキや、ミカ、ユキのことも全て、だが転生前がなにであったかまでは話していない。
「じゃあ、あの時いた方々も転生者だったんですね、全然気がつきませんでした。まったく感知できなかったです。」
「まあ、各自能力を抑え込んでいたからね。」
ユキは能力を抑え込んではいなかったのだが、寒い季節の為、ユキの能力に気がつくはずもなかった。夏であればすぐに気が付いていたであろう。
それから、何故マキ達は能力を取り戻せたのかとか、異世界に帰ることはできるのかなど、1時間以上も話し込んでしまっていた。
「それではマキさんの魔法があれば、能力も取り戻せるんですね?」
「まあ、そうだけど、うちの姉さんのような魔力を持つ人だったりしたら、能力を取り戻した途端に人類滅亡なんてなったりしたら困るから、場所も必要だし、今は魔法で元には戻せないよ。」
「それもそうですね、私たちの持つ能力が人間界にどのような影響を及ぼすかわかりませんものね。」
納得した表情のイリア。それなら日を改めてまた会う約束をし、連絡先を交換し、それぞれ帰って行った。
そして一人で帰るイリアは不敵な笑みを浮かべていたのであった。




