【058話】最強魔法使い決定戦2
*****神殿前、3王国共同競技場*****
あっという間に3日が経過し、いよいよ『最強魔法使い決定戦』当日になった。
ミサキ、マキ、ユキの3名は観客席ではなく、ジャンヌ国、国王がいる貴賓席に招かれていた。
3日前にサーシャから『最強魔法使い決定戦』の出場を打診され渋々出場することとなったマキ。
そのことを聞いた国王が4人を城に招き、マキ以外の異世界からきてこの世界を救ってくれた3人を手厚くもてなした。
そして本日、国王が良く見えるからとこの席に招いたのである。
「すっごーい、たくさんのお客さんがいますぅ」
「これって、何万人じゃきかないわね。」
そんな会話が聞こえたのか国王が答える。
「数十万人はおるじゃろう、大会というても、国を賭けた争いみたいなものじゃから。」
どうやら各国、優秀な魔法使いを出場させ、優勝することで自国の強さを自慢できるだけでいいらしい。本当の意味は戦争して相手を滅ぼすような争いをしないようにするのが目的だ、と国王は言う。
ミサキはこの方法はとてもいい事だと思った。
(まあ、たしかに中には他国を滅ぼそうと企む者もいるだろうけど、こうして大会として競わせればそういった事もおきなくなるな。そういう事であれば魔界でもやってみる価値はありそうだな)
数十万人もいる為、あちこちで大型の四角い魔法陣が見られる。どうやらモニター代わりに実況中継を映し出す魔法陣のようだ。
ここに入場できてない一般の魔法使い達にも魔法陣を通してあちこちで放送されているらしい。3王国の全国民が注目しているらしい。
「魔法ってすごいですねー、魔法陣から映像が映ってます。」
「ほんとだーすっごーい。」
そんなことをいってうちにどうやら始まりそうである。
【大魔女】から開会の言葉があり、各国の代表選手が現れた。
各国4名ずつで行われるらしい。全部で12名。国対国の代表者で対戦かと思われたが違うらしい。出場者同士の争いなので、国がどうとかは出場者には無関係ということだった。
マキは12人の中で一番小さかったのですぐにマキがどこにいるのかが確認できた。どの異世界に行っても一番小さいようである。
マキが出場するのが知れ渡り、あちこちでなにやら騒いでいるのが分かる。かなりの有名人のようだった。
「おい!あれてって破壊のマキじゃねーか。」
「うわぁぁ破壊の魔女がでてるよぉぉぉ!」
「出場者に書いてたマキってあのマキだったのかー」
どうやら違う意味で有名のようだった。あちこちで『破壊』という言葉が聞こえる。
「マキちゃんて、なんか違う意味で有名なんだね。」
「なんかぁ、破壊ってぇみんないってますよぉ。」
「まあ、城を半分吹き飛ばしたからじゃろうが、そのくらいならこの大会に出るものなら皆できるじゃろうし。まあ普通はそんな事せんがな。」
やれやれといった感じの国王だった。
対戦者を決める為、出場者全員くじを引かされていた。同じ番号同士で闘いが行われ、勝利者はまたくじ引きで対戦者を決めるようだった。
全部で6戦、マキは4番目だった。
結界が数名の魔法使いにより張られ、いよいよ1回戦が始まる。
最初の対戦はキテラ国の選手と、サンス国の選手のようだ。
魔法陣が構築され、魔法が発動!相手は魔法陣で結界を張り、そしてすばやく魔法陣を構築し、攻撃魔法!そんなやりとりが始まった!。
「うわぁすごい。いろんな魔法があるんですねぇ。」
「これは、すごいな。結界がなければとんでもないことになってそうだわ。」
ミサキ、ミカ、ユキはその闘いの凄さに興奮気味に見ていた。
決着はサンス国の選手が魔法をもろに受けてしまい、ダウンし戦闘不能に。至急手当てが施されていた、どうやら無事のようである。
こうして始まった『最強魔法使い決定戦』であった。
順調に対戦は続いていき、いよいよマキの出番。
会場は大歓声に包まれた。破壊のマキの登場である。
「わぁマキちゃんだぉ、マキおねえちゃんがんばれー」
「マキちゃんーがんばってー」
応援するミカにユキ、ミサキはわくわくしている。
マキの対戦相手は、結構スラリとした魔女だった。
「あんたが破壊のマキさんかい、城を破壊するなんて馬鹿げたことをしたもんね。まあ、わたしなら国の半分くらい破壊できるけど」
同じジャンヌ国の魔女同士の対戦だった。相手のスラリとした魔女はマキが城を破壊したただの愚かな魔女だと思っているので、最初から自分の敵でもないと舐めきっている。
(みんな破壊、破壊って、これなら魔法少女マキのがマシだぁぁぁ)とマキ自身は全く違うことを考えていた。
「まあ、死なない程度に痛めつけてあげるわ、破壊の魔女さん。私の速さに成すすべもなく自分の非力さを感じるればいいわ。」
魔女は魔法陣をすばやく構築そして魔法を発動するはずだったが、すでにマキは魔法陣から魔法を発動していた。
『どっかーーーん!』
決着はついた。スラリとした魔女は地面にめり込んでいた。なんとか生きているみただが…。
(あちゃーやりすぎちゃったかな。次はもう少し手加減しよ。)反省するマキ。しかし城内は大歓声の嵐であった。
「マキちゃんやっぱりすごいね。」
「つよすぎますぅ。つまんなぃ」
あまりにもあっけなく終わったことにスネるユキだった。
次々対戦が終わり、結局マキは決勝までいってしまった。
だが、決勝の相手はマキと同じく、一方的に勝ち上がってきたキテラ国の魔法使いだった。
(この魔女、結構強かったなぁ。)
そして決勝戦が始まった。
マキは自分から仕掛けず様子を見ている。
するとキテラ国の魔女は最初からとんでもなく強大な魔法を発動した。これには見ている観客たちも驚いた。そして見ていた国王までも。
「あれを使うとは、いくらマキでも死んでしまうぞ。」
その魔法はマキを包み込み燃え上がる!その温度は数千度らしく、最初から殺すつもりで発動したようだ、それくらいしないとマキには勝てないと相手も思ったのだろう。
場内に悲鳴が響き渡る、マキと同じジャンヌ国民と思われる者からは、これはジャンヌ国に対する宣戦布告だ!とか、大会を冒涜しているとか、罵声や雑言も入り混じっていた。観客はマキがもう燃えてしまったものだと認識しているらしい。
「すごい燃えてるぅ」
「マキちゃん熱いの苦手だっけ?」
「マキはどんな魔法つかうか楽しみだね」
国王はこの状況でこんな会話をしている3人を見て、この状況がわかっていないのか!と言おうとした時、場内から大歓声が巻き起こる。
なんとマキは炎の中から普通に歩いて出てきた。とくに結界を張った様子もなかった。まるで先程の魔法が効かなかったかのように無傷だった。
その姿を見たキテラ王国の魔女は、驚いた表情でマキを見ていた。
「やっぱりぃ、マキねえちゃんへいきでしたねぇ。」
「まあ、あれくらいじゃなんともないでしょ。」
「マキちゃんどうするのかな。」
まるであの程度の魔法ではマキには通じないと言っているような会話をしている3人に国王は耳を疑った。
そして場内では、マキはとりあえず魔法陣を構築し魔法を発動、だが当然簡単に防御される。
マキはまた魔法陣を構築、今度は2つ同時に。
それほど強力な魔法でもないので、なんなく防御されてしまった。
だが同時に魔法陣を2つ構築し、発動したことが観客を驚かせていた。通常は1つしか魔法陣を構築、発動できないのである。
マキはなるほど。と一人納得したように何かを始めた。
ちゃんと詠唱し、今度は200個ほど同時に魔法陣を構築し、発動させてしまったのだ。場内は一斉に静まりかえった。
「なんだ。あれは…。」
国王も腰を抜かすほど驚いていた。
殺してはまずいので、弱めの魔法を200個同時に発動し、相手は驚き逃げ回るが逃げる場所などあるわけもなく防ぐこともできず倒されてしまったのである。
同時に構築された魔法陣をみて静まり返った場内は、マキの勝利と共に、大歓声が巻き起こった。
「あんなにぃたくさん、マキねえちゃんの反則まけですぅ。」
「やっぱマキは強いわ、さっきの魔法も、たぶん実験でもしてたんじゃないかな」
ミサキのいうとおりであった。マキは何個まで同時に魔法陣を構築できるか実験してたのである。恐るべき魔女マキ。
大歓声は長時間にわたり続いた。
マキは妹の大魔女サーシャから優勝した賞品として杖をもらい、サーシャはこっそりマキに『異世界の皆様が言ってた事は本当だったんだね』と告げた。
こうしてマキの圧勝で『最強魔法使い決定戦』は終わった。
その為マキは『破壊の魔女』から『最強の魔女』へと2つ名も変更されることとなった。
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