【053話】堕天使との闘い
「ここが天界の門です。時空の歪みは門のすぐそばって言ってましたから、この辺りにあると思います。」
「でも見渡す限り雲しか見えないね。」
「ねぇねぇ、マキねぇちゃん。ここじゃないかな?色が少し変だょ。」
「ほんとだ。ミカちゃんここかもしれない。」
「とりあえずみんなここに集まって、マキちゃん転移お願いね。」
『時空の歪み』の場所は天界の門のすぐそばに発生したままになっていた。
数百年が経過しているらしいが、実際は数年いや数ヶ月かもしれい。よくわからないが天界の門が破壊されたが為にそうなったらしい。
そして4人は『時空の歪み』に入り、マキの魔法で攻撃される前の魔女の世界へと転移することになった。
(ミカエルめ最初から我等が来ることも、この歪みを利用することも全てお見通しだったわけだな。相変わらず恐ろしいヤツめ。)ミサキはそう思った。
*****魔法の世界*****
マキの転移魔法により再び魔法の世界にたどり着いた4人。
最初に見た壊滅していた光景はなく、今は美しい世界が目の前に広がっている。
「すごぃキレイ。ここがほんとぅのまほぅの世界だったんですねぇ。マキねぇちゃん、みんな無事みたぃですよぅ。」
「自然溢れる世界だよね。本当に美しいですわ。」
ユキやミカの言葉を聞きながらマキ自身も魔法の世界が無事で嬉しいはずなのだが、ミカに対して言い放った言葉を思い出し、素直に喜べなかった。
マキの目には自然と涙が流れる。
「マキ、泣いてる場合じゃないわよ!」
ミサキはマキにそう伝える。
「そ、そうでした…。すいません。とりあえず『神殿』に向かいます」
3人を魔法で神殿まで移送するマキ。
「神殿なんてあるの?」
「はい、そこに妹、いや『大魔女』がいます。そしてこれから起こる事を話します」
神殿にたどり着いたが、マキは中には入れてもらえないだろうと考え、さらに大魔女のいる部屋の前まで移送魔法を使い移動した。
一際目立つ魔方陣の書かれたドアの部屋がある。どうやらこの部屋の中に大魔女がいるらしい。
「すごい扉ですね、複雑な魔法陣が書いてありますよ。」
「うん、この部屋には大魔女以外は入れないからね。物凄い結界が張り巡らされてるんだよ。」
「そぅなんですかぁ、それなら中には入れませんねぇ。」
「本来ならね。」
だが、大魔女を凌ぐ魔法を持つマキ、結界を簡単に破りドアを開ける。
「だれ?一体どうやってあの結界を…あああ!」
そう叫ぶ人物、そう大魔女サーシャである。
「マキお姉さん!なぜここに?なんの御用ですか!それに結界を破るなんて、無事に済みませんよ!」
若干怒り気味のサーシャ。
(マキちゃん強引なんだから、妹さん怒ってしまわれたわ。)
「サーシャ話があるんだ。とても重要な話が。」
「いくら姉でも、このような手段で入ってきといて話を聞けとはどういうことですか!さっさと出て行きなさい!」
サーシャは大魔女として、このような姉を許すことができなかった。
「えっと、マキさんの妹さん、私達からもお願いします。どうかお話を聞いてあげてください。」
「あなた方は一体どちら様でしょうか?」
「私達は異世界から参りました。マキさんがこのような手段を使ってまで大魔女様に会いに来られたのは、この魔法の世界に存亡に関わる重要なお話があるからなのです。」
「サーシャ、ごめん。無理矢理押し入った事は謝るから、話を聞いて。」
「解りました。とりあえずお話を伺います。」
マキが今まで見せたことのない真剣な表情と、天使のような美しく澄んだ瞳の女の子まで話を聞いてほしいとお願いしてきたなでサーシャは話を聞く事にした。
そしてマキはこれから起こりうることを全て話した。聞き終えた後の、サーシャの顔は青ざめた。
「そ、それは事実なのですか!でもこの世界では到底太刀打ちできません。」
「だから、来たんだ。それに私の大事な人たちが一緒に戦ってくださるから安心して!」
見た目は姉と同じような背丈のどうみても普通の女子にしかサーシャは見えない。
「はあ。大事な方々…ですか。」
大丈夫?みたいな目で3人を見るサーシャ。
妹の態度が悪いことを申し訳なく思いながらマキは謝った。
「まあ、この姿みたら仕方がないわよ、それより派手にやっちゃいましょ」
ミサキはノリノリだ。
「そうですね、わたしの大事なマキちゃんを悲しい目に遭わせたガリブは必ず私が滅ぼします」
ミカもかなりの意気込みだった。
「じゃぁ、わたしは雑魚を凍らせて粉々にしちゃいますね」
ユキまでもが元気を取り戻し、それぞれ役割分担はできていた。
「みんな…本当に、本当にありがとう。」
マキはまた泣いていた。
姉が泣いてる姿を初めて見た妹は4人の会話をただ黙って聞いているだけだった。
*****堕天使の侵略*****
今か今かと数日間神殿で待機していた4人。
その間妹の大魔女に、おかしなヤツがいないか3人の国王達に見張らせておけと命じ、サーシャはそれに従った。
「お姉ちゃん、もう3日も経つけど何も起こらないじゃない。」
「サーシャ、これは冗談で言ってるわけじゃないんだ。後数日中には必ず来るから。」
サーシャはだんだん姉の言うことが、本当なのだろうか疑い始めた。後数日経って何もなければそれなりの罰を受けてもらうと思っていた。
だがサーシャの疑いは一瞬にして消える事となる。
ついにその日がやってきたのだ。
どこから現れたのかは不明だが、突然空を覆い尽くす程の大群が現れたのだ。
その大群は、神殿の上空へと向かい、神殿は堕天使に取り囲まれた。
やはり予想通り最初の狙いは『神殿』の大魔女だった。
大魔女さえ倒せれば後は、楽に勝てることは敵も解っていたのだ。
「お姉ちゃん、こ、これは一体どういうことなんですか!」
「サーシャ、こいつらが先日話した堕天使だよ、この世界を滅ぼしにきたんだよ。」
神殿から上空を見渡すと、とんでもない数の堕天使がいる、恐ろしい殺気を放ちながら、ガブリと思われる堕天使が叫んでいた。
「大魔女よ!今すぐ出てこい!」
あまりの恐ろしさに、床にへたり込んでしまったサーシャ。マキはサーシャに、大丈夫だから見てなさいと告げる。
「きたようね、みんないくわよ。手加減しなくていいから、ちょうど敵も空だから都合もいいわ」
ミサキがそう告げると、ユキやミカはすでにヤル気満々だった。
「ユキいっきまぁーす!」
神殿を飛び出したユキは、上空にいた堕天使のほとんどを一瞬にして凍らせ、凍った堕天使はそのまま地面に落下し砕け散った。
(この方の魔法は、なんてすごいのかしら。)
サーシャはユキの魔法はすごいと感心していたのだが魔法ではない。
「あらら、ユキちゃん。ほとんど倒しちゃたのね。」
「えへへっ、でもぉ強そうなのわぁちゃんと残してますよぉ。」
ユキはミサキやミカの為に、ガブリと少し強そうな取り巻きだけは残しておいたのだ。
「じゃあわたしはガブリ以外を倒しとくわ、後はミカお願いね。」
ミサキは、堕天使の方に目を向けた。ただそれだけだった。
ガブリの周りにいた堕天使は、一瞬にして消滅してしまった。ガブリ自身も一体何が起こっているのか把握できていない様子だった。
「お、お前らは何者だ。一体、な、何をしたんだ!」
ガブリは、魔法の世界を滅ぼす為に大群を引き連れやってきた数分後には大群は消滅し、現在自分一人だけの状況にパニック状態だ。
「お姉様、簡単に倒しすぎです。」
「あはは、ごめーん。」
「姉様むちゃくちゃですぅ。」
「でわ後は私が。」
ミカは天使の姿に戻り『聖剣』エンジェルソードを握り締め神殿から飛び出した。
「この天界の裏切り者よ。滅びなさい。」
「な、なぜ天使のお前がここにいる。」
「黙りなさい。」
そう告げると、ミカは聖剣を振りかざしガブリに斬りかかった。
しかし、簡単に避けられてしまった。
「はっはっはっは、小娘の剣など当たるわけがないわ!」
(あの堕天使、ミカちゃんの事を小娘呼ばわりしやがったな。)
言い方にムカついたマキは、魔法を発動し鎖のような物でガブリを縛り付け身動きができないようにした。
「ミカちゃん、今だ!やっちゃえー」
『聖剣』がガリブを半分に切り裂き、堕天使の侵略はわずか数分でミサキ達により壊滅させられた。
あっけなかった。おそらく魔法の世界の人々は誰もこの状況が把握できていないだろう。
なんかのイベントと思われているかもしれない。
それくらいあっけなく終わってしまったのである。
だが、大魔女だけは、堕天使の数の多さや、姉が言っていた事は事実だと解り、とても感謝していた。
だがマキはサーシャに今起こった出来事は絶対に言わないようにと念を押した。
おそらく三つの国の国王達はサーシャが敵を駆逐したと思うだろう。
こうして、マキの世界は無事守られ、堕天使も倒し一件落着かと思われたのだが。
マキはミカに対して、散々酷いことを言ったのである。
醜い自分はもうミカと仲よくできないと思い話す
「ミカちゃん、わたし。。」
ミカはそっと抱きしめ、頭を撫でる。
すでに許していると態度で表したミカだった。
それを見たユキもミサキもよかったと笑顔で見守っていた。




