【052話】汚れた天使
天界へ行く為に、ミカの記憶を辿り魔法により場所を特定する。
「なんとか天界へ行く事ができそうです。」
天界の場所が特定されたらしく、マキは他の3人にそう話す。
「じゃあ出発しましょうか。」
「はい!」
こうして4人はマキの魔法により天界へと転移した。
*****天界*****
ミカを除く3人にとって天界にくるのはこれが初めてであり、辿り着いた途端、マキの滅んだ世界を見るのとは違った意味で、言葉を失うような光景が目の前に映し出されていた。
ここは天界である為、ミカだけは姿を元の天使の姿に戻している。
まるで雲のように真っ白なふわふわとした大地に、見渡す限り青く晴れやかな空。それにミカと同じ天使が羽を広げあちこちに見える。
さらに4人は浮いている状態なのだが、ちゃんと歩く事も出来、なんともいえない不思議な感覚に見舞われる。
そこにはとても殺戮をするような者がいるとは思えない程、清らかな空気が満ち溢れている。ユキもマキもそう感じていた。
(これが天界。どう考えても天使があんな殺戮をするようには思えない。)
「ミカちゃん、ここが天界。なんだよね?」
「はい、そうです。ちょうど『天界の門』がありますので、間違いありません。」
(天界の門が壊れているわ。やはりなにかあったようね。)
辿りついた場所は、『天界の門』と呼ばれる門のある場所だミカが告げる。
「天界の門?どこにあるの?」
「なんにもないよぉ。」
「天界の門は天使にしか見えないんです。」
「なるほど、それでユキもわたしも見えないんだ。」
「とりあえず、私の知り合いの所へ行き、なにか事情をしっているか伺おうと思います。皆様ついてきていただけますか。」
「はい、お願いしますミカちゃん。」
ミカの案内の元、ミカはまず知り合いから事情を聞き、それから行動を開始することとなった。
ミカは天使が魔女を滅ぼす原因が知りたかった。いくら考えても結びつかないのだ。守護する者が何故破壊や殺戮をしたのか。
そこで一番信頼できる天使の元へ行き、詳しい事情を聞こうと思い向かっているのである。
天界には警備などもなくどこでも自由にいくことができる。
天界に攻め入る者などいないからだ。
なので、知り合いの天使のところまですんなり行くことができた。
*****天使リエルの館*****
しばらくすると立派な館が見え、開きっぱなしの入り口から中に入る。すると一人の天使が、すでに入り口の中で、まるでミカが来るのが解っていたかのように立っていた。
「ミカエル様のお嬢様、すでに転生からお戻りでしたか、ではすでに聖天使様とお呼びしたほうがよろしいですね。後ろの方々は聖天使様のお知り合いの方々ですね、わたくしは、リエルと申します。」
リエルは、ミカが転生を終え、自分のところに立ち寄ったと勘違いしているようだ。
だが、今はあいさつを交わしている場合ではない。
「リエル、あいさつは抜きで、聞きたいことがあります。とても重要なことです。全て包み隠さずお話くださるようお願いします。」
ミカの切羽詰った様子を見てただごとではないと判断したリエル、4人を奥へ通す。
「その様子だとよほど重大な事でしょうね、そちらの方々となんらかのご関係があるのですね、わかりました。私の知る限りなんでもお教えいたしましょう。」
「ありがとうリエル。実は私の大事な親友である魔女様のいた魔法の世界についてなにかご存知ないかと。」
「はい。存じ上げております。わが天界からの裏切り者ガリブが堕天使となり『天界の門』をくぐり魔法の世界を破壊したと。すでに数百年前のことです。」
(数百年前だって?どうみても数年しか経ってなかったのに。一体どういうことなんだろう。)
「破壊したって。。。お父様はなにもなさらなかったのですか!」
「いえ、知らせを聞いた我々天界は、大天使長であるミカ様父君であるミカエル様を筆頭に、追撃部隊を送りましたが、カブリはすでに『天界の門』を破壊しており、天界からミカエル様が追ってこられないようにしていました。」
「ですがその後、ミカエル様が転移ができるくらいまで門を修復し追撃に行きましたが、魔法界へ降り立ったときにはすでに…。」
(それで門は壊れていたわけね。)
「そのガリブはいまどこへ?」
「堕天使と成り下がったガリブは、異世界を次から次へと侵略し、うかつに手出しができないほどの勢力となっており、現在も所在は定かではございません。」
「なぜガリブはそのような事を…」
「わかりません。過去にも何度か天使が堕天使に成り下がった例はございますが、どれも下級天使でした。考えられるのは、どこかの異世界へ任務で舞い降りたとき、何かをされたとしか。。」
「つまり何かに操られたか、洗脳されたかでガリブは堕天使に変貌し、天界の門を潜って魔法界に攻め込んだと。そういうわけですね。」
「はい、調査の結果そのようになっております。しかも下級天使数百を堕天使に変え、それらを率いて攻め入ったと。」
リエルは全てをを教えてくれた。ミカが人間界にいる間にそんなことが起こっていたとは、ミカも驚くことしかできなかった。
「リエル様、ありがとうございます。魔法の世界の生き残りマキと申します。必ずやガリブは我が手で滅ぼします。」
「あとひとつだけ質問があります。先ほど数百年前とおっしゃいましたが、先ほど見た限りでは数年前に思えましたが。」
「魔法界と天界の時間の差が生じた為と思います。『天界の門』を破壊したのが原因かと。」
「わかりました。その堕天使の居場所が解る方がいらっしゃいましたら、お教え願いたいのですが。」
「それなら私が案内致します。」
ミカがそう言った。自分の父親しかいないと判断した。
****大天使ミカエルの宮殿*****
4人はミカに案内され、大天使ミカエルのいる宮殿へ辿りついた。
「お父様、ミカでございます。」
「ミカよよくぞきた。要は堕天使ガリブの事であろう察しておる」
さすが大天使である。ここにミカが来ることもマキが来ることも解っていたかの様な口ぶりだった。
「魔法の世界の者よ、我が力が及ばずあのような事になってしまい申し訳ない。」
「いえ、大天使様はなにも悪くありません。滅ぼした張本人が全て悪いのです。私はそのものを許すわけにはいきません。」
「大天使ミカエルよ!さっさと堕天使の居場所を教えるがよい。」
ここまで一言も言葉を発していなかったミサキが突然大天使に言い放つ。
「魔界の魔王よ、ひさしいのう、まあまて焦るでない。」
ミカ、マキ、ユキは大天使ミカエルが魔王ミサを知っていること、さらに『ひさしい』と言ったことに驚く。
「わたしのことなどどうでもよいわ!堕天使の居場所さえわかればこんなむさ苦しいとこなぞ用はない。」
ミサキが天界に辿り着いてから黙り込んでいたのは、天界の影響で魔力が浄化されていたからだ。だがミサキほどの魔力があればミサキ自身が浄化されることはない。
「まあ待てといっておる、仇を討つのは話を聞いてからにしてくれぬか。」
「ではさっさと話せ!時間に余裕はない。」
「わかったわかった、ではよく聞くのだ。ガブリが魔女界に攻め行った時に天界の門を壊しておるのだが、それが時間に誤差を生じさせたのじゃ。その為、『時空に歪み』ができておる。」
「それがなんの関係がある!いいかげんにしろこの天界ごと消滅させるぞ!」
ミサキは回りくどい話し方をするミカエルに腹を立て、ものすごい魔力を引き出していた。
「まだ話は終わりではない。お前はせっかちすぎる。で、その歪みから魔法界へ飛べば、あの裏切り者が魔法界へ攻め入る前にいけるはずじゃ。」
「ふむ、で、われ等にそやつを退治させようというわけか、このわたしを利用するとは食えんヤツよのう」
「そう言うな、それで魔法界は元に戻り、裏切り者はいなくなるのだ。共に利になるではないか。」
「それもそうだが、それが解っていて何故お前ら天界の者はいかんのだ?」
「我等は天界の門を潜る以外異界へはいけぬ。それくらい知っておるであろうが、それにお前達がここに来れたという事は、異界へ行ける手段があるからであろう。」
「ああ、そうだったな。こんなところには用もないので忘れておったわ。ミカエルよいつかこの天界ごと滅ぼしにきてやるから楽しみにまっておれ。」
「うむ、楽しみにしておる。ミカの事は引き続き頼んだぞ。」
「ああ、まかせておけ、『聖天使』になるには、また遠いがな。ではまたな。」
*****宮殿の中庭*****
ミカエルのいた場所を出ると中庭に出た。
ミサキは『さあいきましょう』と、3人を促す。だが先ほどのやり取りを見ていた3人はとりあえず頭の中を整理させてほしいとミサキに告げた。
「あの…ミサキ姉さんは大天使ミカエル様とお知り合いなのでしょうか?」
「まあね、昔いろいろあったから、まあそのうちね。マキ聞いての通り魔女の世界はなんとかなりそうよ。先程のミカエルの話していた時空の歪みのある場所へ急ぎましょう。」
そして4人は再び、天界の門へ向かった。




